このIAEAの会議は、チェルノブイリの放射能被害の隠ぺいを行ってきたIAEAが、日本政府の要請によって福島に常駐することを最大に目的とするものだ。そして、歴史的に原発を推進してきたIAEAが謝罪もなく福島に進出することは許されない、と「福島の女たち」が「私たちを抜きに、福島のことを決めるな!」を合言葉に抗議行動が企画された。
14日は、福島県庁への申し入れと県庁から福島駅前までのデモが行われた。デモに先だって県庁への申し入れ。申し入れ文は「IAEAの福島進出の中止」、「除染でなく汚染地域の避難の優先」、「学校単位の疎開の開始」などを求めている。「福島の女たち」は県にその場での応答を求めたが、県側は無言で申し入れ文を受け取ったのみだった。(申し入れ文は下記に全文)
申し入れ後、郡山市の黒田節子さんは「IAEAは安全安全と言って福島を亡き者にしようとしている。IAEAがどんなものか、私たちは本質を知っている。チェルノブイリでは『IAEAを日本で解体してくれ』と言われた。何があっても声を上げ続ける。福島の女たちをなめるな」とあらためて決意表明をした。
県庁のすぐそばのもみじ山公園ではリレートーク集会。田村市の武藤類子さんの発言。「自宅近くにもIAEAが常駐することになるという。チェルノブイリの健康被害を隠ぺいして、WHO(世界保健機構)も黙らせた組織だ。福島もそうなるのか、黙っているわけにはいかない。IAEAは核推進機関であり、WHOとの1959年の協定で放射能の健康被害を発表するにはIAEAの許可が必要だとされている。今回の会議の合意文書案では『最高水準の安全性をもって原発を活用』するとしている。結局、安全アピールのための福島での会議だ。そういうことを伝えていく努力を続ける。そして、感性を研ぎ澄まして見抜いていこう」と呼びかけた。
集会では、恒例となった会津抵抗の踊り「かんしょ踊り」を参加者全体で輪になって踊り、デモに出発。150人ほどのデモは、賑やかに福島駅までの短いコースをゆっくり一時間以上かけて歩き、沿道にアピール。沿道からは好意的な反応が多く目についた。解散地点の駅前広場では集会を続行。「IAEAは福島に来るな」、「被ばく隠しから子どもたちを守ろう」などのアピールが続いた。
夜には、郡山市の労働福祉会館で「脱原発福島ネットワーク」などの主催で広瀬隆さんの講演会が開催された。300人以上の参加によって熱気ある講演集会となった。広瀬さんはIAEAの核推進の実態や密売までしてきた歴史を紐解き、「IAEAは悪魔なんです。悪魔が福島のみなさんを殺しに来ると思ってください。しかし、福島のみなさんは孤立していません。このかんの反原発運動の盛り上がりは福島は孤立していない、ということなのですから」と訴えた。
翌15日は、朝8時からIAEA会議会場の郡山ビッグパレットのすぐそばで行動を開始。この日は福島各地や全国から250人が結集した。中には「親に内緒で参加した」という地元の高校生の姿もあった。
行動の途中からフランス緑の党やベルギーなどからも抗議の来日団が到着。そして、全体で会議会場入口に移動して、IAEAに直接申し入れ文を渡す行動に移った。「福島10基の原子炉の即刻廃炉」、「地震大国日本に原発は無理であり、日本全国の原発の廃炉を日本政府に働きかけること」、「子どもたちの疎開を日本政府に促すこと」などを求める申し入れにイギリス出身のIAEAの報道官は「みなさんの不安は理解した」と述べるのみだった。
最後にフクシマ・アクション・プロジェクトの佐々木慶子さんが「福島は今年の3月11日に、福島の全原子炉の廃炉を世界に宣言している。IAEAには、そのことを強調してこの申し入れを終わらせたい」と申し入れ行動を終えた。
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2012年12月14日
福島県知事 佐藤 雄平 殿
原発いらない福島の女たち
福島県でのIAEA閣僚会議等に関する要請書
私たちは、福島原発事故以来、原発廃止のためのあらゆる活動を続けている女性グループです。経産省前での座り込み、原発事故1周年における集会など様々な活動の中から、あらゆる生命の存在を脅かす原発廃止の声を上げ、共感を呼んできました。
そのような中、福島県で、IAEA(国際原子力機関)閣僚会議が国の主催で開催されています。IAEAは、核管理の名の下に、核と原発を推進するための国際機関であり、収束さえしていない原発事故に今なお苦しみ続ける福島にそのような組織が進出することは、どのような理由であれ私たちは認めることができません。
以上のことから、私たちは、貴職に対し以下のとおり要請します。
記
【要請内容】
1.福島へのIAEAの進出をやめさせること。
2.莫大な資金を投じて1年半続けられた除染の効果は、多くの県民から疑問視されている。除染の限界を見極め、汚染地域の住民を避難させ、避難に伴う損失を県の責任で賠償すること。
3.県外避難者の住宅補助の打ち切りなど避難者への非情な扱いを止め、支援をすること。
4.子どもたちの避難を実現するため、学校単位の疎開・保養を直ちに実施すること。
5.健康被害がないとの前提で進められている県民健康管理調査を根本的に見直し、科学的で客観的、公平なものとすること。併せて、健康被害の過小評価を目的とした検討委員会の議事進行や特定の方向への議論誘導などをしないこと。
6.「秘密会」の開催や健康被害のごまかし、隠ぺいを主導してきた責任者に対し、適正な処分をすること。
7.モニタリングポストによる測定を正しく行い真摯な情報公開を行うこと。
8.福島県民の共通の願いは核・原発の廃絶である。核推進機関を呼んだ国際会議ではなく、核・原発廃絶のための国際会議を開催すること。
9.1~8までの要請を受け入れ速やかに実行した後、今回の原発事故まで原発推進の立場を取ってきた知事として、辞任という形で県民に対し責任を取ること。
(以上)