20120325hk
▲開票場前で抗議する香港市民

3月25日、香港行政のトップである行政長官選挙で親中派の梁振英が選出された。投票権を有するのは、選挙委員1200人のみで、今回投票したのは1132人。梁は当選に必要な過半数を上回る689票を得た。

同じ親中派で途中まで本命と見られていた香港行政のナンバー2の政務長官、唐英年は285票にとどまった。当初は唐候補の当選が確実視されていたが、過去のスキャンダルが噴出。「香港人による香港統治」を掲げる中国共産党にとって香港市民から嫌悪される候補者の当選は望ましくないという判断から、共産党が梁候補にてこ入れしたとも言われている。直接選挙を主張する民主党の何俊仁主席も立候補したが76票にとどまった。


行政長官の任期は五年。業界団体などから選ばれた1200人の選挙委員会の投票で過半数を得た候補者が選出される。行政長官選挙への立候補には、この選挙委員会メンバー150人の推薦が必要。行政長官は選挙委員会による間接選挙といわれるが、業界によって選挙委員会選挙の一票の格差の開きは大きく、産業界、金融界、そして親中派に有利な結果になるという批判がある。行政長官は中国全人代常務委員会の批准で任命・罷免される。


中国全人代は2017年の選挙で行政長官の直接選挙に言及している。直接選挙の早期実施について、民主党は将来的直接選挙が実現するよう中国政府から確約をとるという立場に後退した。


よりラディカルな民主派は、いますぐにでも直接選挙を実施すべきという立場。現行の行政長官の選出方法は間接選挙ともいいがたい、一部の利害関係者のみが参加する「内輪」の似非選挙であると批判し、投票ボイコットを選挙委員に呼びかけると共に、市民に対して抗議やデモなどの行動を呼びかけた。数千人の市民らが開票会場での抗議行動やデモに参加した。


23日、24日に香港大学が実施したインターネットなどを使った模擬投票では香港市民22万2990人が投票し、得票率は梁振英候補17.8%、唐英年16.3%、何俊仁11.4%で拮抗したが、54・6%もの投票者は「白票」を投じ、「内輪」選挙の結果と実際の市民らの意識との隔たりを浮き彫りにした。


以下は、香港の左翼ネットワークである左翼21の声明の翻訳。(H)



経済的平等を実現しよう!直接選挙を実施せよ!
香港行政長官選挙結果に対する声明


左翼21 2012年3月25日 
原文 


今日、「内輪」の選挙という批判のなか、梁振英が行政長官に選出された。誰が当選したとしても、この選挙は人々が参加することのできる真の選挙などではない。このような選挙は、最初から最後まで、特権階級のドタバタ劇に過ぎないからだ。


いわゆる「唐梁の争い」といわれる今回の選挙だが、両氏は異なる利害にあるそれぞれの資本家グループを代表しているに過ぎず、どちらも労働者民衆からの搾取によって成立している。それゆえどちらか一方の勝利に歓喜の声をあげることがあってはならないし、当選後には労働者民衆の利益となる政治を行うと期待することなど論外である。両候補者は、この醜悪なドタバタ劇に出演し相互に攻撃しあっているが、自らの利益集団に少しでも多くの分け前を確保することだけが目的であり、700万香港市民の未来は脇へ追いやられている。我々の頭上にのしかかる権力は、彼らのうちのどちらが当選したところで消え去るものではない。


当選した候補の選挙公約に対する不釣合いなまでの幻想をおしまいにする時がきた。労働時間規制には全く触れることなく、また長年社会的論争のあった団体交渉権についてもその影さえ見い出すことはできない。次期行政長官は労働者人民に対して何ら公約を提示せず、口約束をする勇気すらなかったことを見ておくべきだろう。滑稽なことに、梁振英は当選の見込みが高まったとみると、立法会選挙(日本の国会選挙に相当)における法人票の廃止など、進歩的と見られた一部の公約を取り消した。誠実さをアピールしてきた唐英年も自宅違法建築疑惑でデタラメが明らかになった。風見鶏と化したエリート権力者と親中派の醜悪な振る舞いからも、この一部の利害関係者だけが参加できる似非選挙が、まさに中国共産党独裁政権に尻尾を振るこれら恥知らずどものために設定されたものだということは明らかである。


この数ヶ月の間、主流メディアは市民を対象に支持率の調査を実施してきた。しかし、一部の利害関係者らだけが投票できる選挙の支持率のアンケートなど、似非選挙の実態を覆い隠すイメージ作り以外に何ら実質的な意味はない。さらに問題なのは、一部の権力エリートたちは、候補者が市民から高く支持されているというイメージ戦略にこの調査結果を利用していることだ。その目的は特権支配の合法性を維持強化するためである。われわれは、このような民意調査やそれを悪用することに批判し警戒しなければならない。


われわれは、人は生まれながらにして平等であり、経済的地位や職業の違いによって政治的権利に差別があってはならないと考える。似非選挙の問題点は、資本家や業界人だけに投票権があるとものだ。これは下層民衆へのあからさまな差別であり、プロレタリアートを二等公民と見なすものだ。この様な不公正は終わらせなければならない!


一点、言っておくべきことは、われわれの直接選挙という要求はひとつの前提に過ぎない。直接選挙によって平等な社会がすぐにでも実現するとは思っていない。経済的な平等が実現できなければ、政治権力の平等は絵に描いた餅だからだ。世界各地のブルジョア民主国家で巻き起こったオキュパイ運動は、ブルジョア民主主義では富の再分配を保障することもできず、貪欲な資本家を抑制することさえもできないことを明らかにした。財閥政治のもとで、政府の政策は大資本によって操られ、政権はブルジョアジーの玩具と化している。それゆえ、われわれは直接選挙だけでなく、経済制度の根本的な変革を追求しなければならない。政治的な民主主義を実現するとともに、労働者階級を搾取する経済制度を廃止することがわれわれの理念である。


この恥ずべき選挙の結果は、これからの未来の一連の闘争の開始を指し示しすものである。香港の特権エリートによる抑圧はますます激しくなり、政治的弾圧も続くだろう。だが生ある限り屈服はしない。政治弾圧の風雨はわれわれの勇気を奮い立たせるだけである。奴隷か解放か、独裁か自由か、われわれは二つに一つの選択を迫られている。われわれの身は、中国共産党独裁政権と香港の権力エリートが押しつけた鉄鎖に縛られている。それはわれわれ自らの力で打ち砕くしかないのだ!


経済的平等を実現しよう!直接選挙を実施せよ!すべての権力を人民に!