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成田プロジェクト

報告 5.28成田プロジェクト「空港と原発―巨大科学技術を考える」集い

np 5月28日、成田プロジェクト(いま成田空港で何が起きているのかプロジェクト)は、「空港と原発―巨大科学技術を考える」集いを行い、90人が参加した。

 成田プロジェクトは、成田空港会社による平行滑走路供用による周辺住民への人権・環境破壊の強化をストップしていくために浅井真由美さん(『労働情報』編集長)、大野和興さん(地球的課題の実験村共同代表)、梶川凉子さん(成田バスツアーの会)、鎌田慧さん(ルポライター)、白川真澄さん(『ピープルズ・プラン』編集長)、高木久仁子さん、高橋千代司さん(三里塚一坪共有者)、中里英章さん(成田バスツアーの会)の呼びかけで2009年4月にスタートした。①三里塚農民との交流②成田空港B滑走路による人権・生存権や環境、安全性の問題点③航空機事故、騒音・低周波被害、環境汚染、グローバル社会のなかでの空港などの学習会を行ってきた。

 すでに三里塚の東峰地区では、成田空港会社の30万回発着計画のもとにジェット旅客機が90~100デシベルの大騒音をまき散らしながら頭上40メートルを1分半~2分間隔でB滑走路南端を着陸しているという深刻な人権・環境破壊が拡大していた。また、空港会社は、空港拡張政策を継続し強権的に一坪共有地や団結小屋裁判を通して強奪しようと狙っていた。

 2月時点では「成田空港 騒音問題と一坪共有地を考える」というテーマで集会準備をすすめていたが、3・11東日本大震災による多数の死者と被害の発生とともに福島第一原発事故の甚大な被害が拡大している事態に直面し、急遽、成田空港問題とともに巨大な科学技術が民衆に何をもたらし、今後どうなるのかを探っていく場として再設定した。

成田空港会社のウソと居直りを許さない!

 開催あいさつが中里さんから行われ成田プロジェクトの活動報告を行った。とりわけ服部良一衆院議員(社民党)の協力で政府に東峰地区の騒音公害を中心にした「成田国際空港周辺地区の騒音問題に関する質問主意書」(3月4日)を提出したことを紹介。その答弁が3月15日に出たが、東峰地区を「成田空港の範囲内に存する地域であることから、空港会社は、成田会社法第五条第一項第四号二の規定に基づく事業としての航空機騒音の測定は実施していないと承知している」などと言い放ち、「話合いによる解決を目指す方針に変わりない」とウソを繰り返し、東峰地区住民の人権侵害を強行していることを厳しく批判した。

 伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)は、「福島原発で何が起きたか」というテーマで福島第一原発の使用済み燃料冷却材喪失事故、水素爆発、炉心溶融へのプロセスを明らかにし、①原発震災その時何が起きたか②各地の空間線量の変化③第一原発の今④過酷な被曝労働などについて分析した。

 そのうえで「原発推進派は、事故は一千万分の一の確率だから安全が保たれると言ってきた。だが現実に事故が起きて巨大な被害が発生している。放射能拡散と汚染が長期に続く。セシウムの半減期は30年だ。60年で4分の1。90年で8分の1というようになかなか減らない。福島の事態はその一端を示している」とまとめ、脱原発を訴えた。

 平野靖識さん(地球的課題の実験村)は、成田空港・東峰と平行滑走路問題について東峰地区で「らっきょう工場」を営む立場から報告。

 成田空港問題シンポジウム(1991年)、円卓会議(1993年)を通した隅谷調査団最終氏所見の「今後は計画予定地および騒音化住民との合意を形成しながら進めること」をことごとく破ってきた経緯を紹介。黒野空港会社社長にいたっては「反省とお詫び」(2005年5月)を明らかにしたにもかかわらず平行滑走路供用を強行していったことを批判した。

 さらに住民の平和的イニシアチブの重要性を強調し「三里塚の農民は農の持つ循環の価値に着目して非循環の工業の消費文明にオルタナティヴな発信もしている。地域の合意なくしては進めないとする大規模開発の手法は『成田方式』と言われ、日本の各地で採用されつつある。しかし当の成田・三里塚ではその精神が見失われている。これが成田の地で実現するまでわたちたちの異議申し立ては続く」と発言した。

 鎌田 慧さん(ドキュメンタリー作家)は、「巨大科学技術の時代」について講演し、アメリカの核戦力と商業利用の一環として進めてきた歴史や巨額なカネを投入してきた買収構造、利権システムを批判し、原発をつぶすプランを創っていこうと呼びかけた(発言要旨・別掲)

パネルディスカッション

 集いの後半は、パネルディスカッション。司会は大野和興(農業ジャーナリスト)さん、三里塚現地から柳川秀夫さん(三里塚の農民)、石井紀子さん(三里塚・東峰の農民)が加わり、鎌田慧さん、伴英幸さん、平野靖識さんとともに行われた。

 柳川さんは、「現在、共有地裁判を行っているが『和解』するつもりはないし、闘いは続けていくことを宣言しておく。原発事故被害だが、ほうれん草、お茶などが汚染の被害を受けている。汚染しているお茶を市場に出すことはできない。今後は、自分で作ったお茶が飲めなくなってしまった。だから福島の人々の気持はよくわかる。人生、生活すべて断絶されてしまったとしみじみ思う。経済成長優先でやってきた結果だ。温暖化、原発事故は必至だった。限界がはっきりしているのだから大きな転換をしていかなければならない。自然界と共存していくことだ」と強調した。

 石井さんは、「無農薬・有機栽培を産直を三六年間続けてきた。ワンパックを営んできた。しかし今回の福島原発事故によって、これまで畑に化学物質を使ってこなかったにもかかわらず、一瞬で破壊されてしまった。一時は絶望的になったが、とても怒っている。多古町で汚染されたほうれん草が問題となったが、私たちは少しでも洗って出荷し続けた。避難所にも洗って出荷している。基準値を超えていないが、日々、不安な状態が続いている。天災はしょうがないけど原発事故は人災だ。野菜の力と人々とのつながりを信じてやっていきたい」と結んだ。

 質疑応答に入り反原発・生産者からのアプローチ、放射能拡散と測定活動、被曝問題、原発産業と下請け構造についてなどの意見交換が行われた。

 ディスカッションの最後に鎌田さんは、「福島原発事故で忘れられたのが沖縄・辺野古の米軍新基地問題だ。沖縄の闘いも非暴力抵抗闘争で積み上げられてきた。三里塚闘争も実力闘争を行ってきた。そのような闘いを継承し、膨大な民衆のうねりによって政府に原発廃止をつきつけていくような闘争を実現していこう。9月19日に私も含めて大江健三郎さん、坂本龍一さん、澤地久恵さんなどの呼びかけで明治公園で集会を行う。各地で集会を行い、結びつけ国会を包囲していく闘いをやっていこう」と呼びかけた。(Y)

 
鎌田 慧さん(ドキュメンタリー作家)の講演要旨

 
kamata satoshi 成田空港の決定プロセスは、地元に相談もせずきわめて非民主主義的だった。農民は自民党政府の非条理なやり方に立ち向かった。多くの人々から共感を呼び、今でも空港の中に民家が存在している。人間を無視している空港が実態だ。

 原発は大きく破綻した。それでも政策決定者から「原発を止めよう」という声が出てこない。この構造は何か。決定者たちは、都市に住んでいて原発から離れているということがある。身の危険を感じていないのだ。原発設置場所はほとんどが過疎地、人口が少ないから政府は許可してきた。しかし数十キロ周辺には人口過密地域が存在し、福島原発事故でもわかるように被害地域が拡大してしまっている。杜撰な計算で原発を乱立させてきたのだ。

 原発は非民主主義的な存在だと言ってきた。初めからカネで出発した事業だ。1954年、アメリカの原発政策を中曽根康弘が中心になって電力資本とともに推し進めてきた。余った核燃料を原発に使い世界を支配していこうという政策だ。核の平和利用などとコマーシャルするほどだった。自民党政府は、巨額な核・原発開発予算を積み上げてきた。建設地にカネをばらまいて広げていった。56年に日本原子力産業会議を発足させ、財閥系とともに原発推進態勢を本格化させた。同時に、電力資本の独占体制を作り上げ膨大なカネを投入し、宣伝活動も広範囲に行った。マスコミも買収された。これが日本の核政策、核文化だったのだ。

 福島原発の事故後、御用学者たちが登場してきた。エリートの末路を現している。技術が私物化されてきた実態を露呈した。さらに官僚たちの電力資本への膨大な天下り構造が増殖されてきた実態も明らかになった。巨額なカネで買収され、まったくモラルがない。原発をつぶしていくプランを砕いて木に出していくことが今後の課題だ。

【案内】5.28成田プロジェクト「空港と原発―巨大科学技術を考える」

narita 5.28成田プロジェクト

 「空港と原発巨大科学技術を考える」
 講 演 巨大科学技術の時代…………鎌田 慧(ドキュメンタリー作家)

 報告1 福島原発で何が起きたか……伴 英幸(原子力資料情報室共同代表)

 報告2 騒音直下の東峰から…………平野靖識(地球的課題の実験村)

 パネルディスカッション/司会 大野和興(農業ジャーナリスト)/鎌田 慧、伴 英幸、平野靖識、柳川秀夫(三里塚の農民)、石井紀子(三里塚・東峰の農民)

日時:528日(土)/開会200(開場130) 閉会450

会場:コア・いけぶくろ(豊島区民センター) 5階・音楽室(JR山手線池袋駅東口下車 徒歩約5分)/資料代:500

主催:成田プロジェクト 電話 03-3818-1835 ファクス 03-3818-9312 メール narita-pj@pen.co.jp
 

 「いま成田空港で何が起きているのかプロジェクト」(成田プロジェクト)は、来る5月28日に「空港と原発──巨大科学技術を考える」というテーマの集会を行います。

 当初は「成田空港 騒音問題と一坪共有地を考える」というテーマで集会準備をすすめていました。三里塚の東峰地区では、巨大なジェット旅客機が90100デシベルの大騒音をまき散らしながら、農家の頭上わずか40メートルを1分半~2分間隔で舞い降りてきています。そして、成田国際空港会社は強権的に一坪用地を巻き上げようとしているからです。

fukushima4 ところが311東北大震災による多数の死者とたいへんな被害の発生。さらに福島第一原発(16号炉)と第二原発(14機号炉)では炉心溶融、使用済み燃料冷却材喪失事故、水素爆発など予断を許さない危機的状況が続くなか、成田空港問題とともに深刻な原発事故についても考え、巨大な科学技術が私たちに何をもたらしているのかを見つめ直し、これからの未来を考えていくことになりました。

 成田プロジェクトは、二〇〇九年四月にスタートし、成田空港=三里塚問題にこだわりつづける浅井真由美さん(『労働情報』編集長)、大野和興さん(地球的課題の実験村共同代表)、梶川凉子さん(成田バスツアーの会)、鎌田慧さん(ルポライター)、白川真澄さん(『ピープルズ・プラン』編集長)、高木久仁子さん、高橋千代司さん(三里塚一坪共有者)、中里英章さん(成田バスツアーの会)が呼びかけました。三里塚農民との交流成田空港B滑走路による人権・生存権や環境、安全性の問題点航空機事故、騒音・低周波被害、環境汚染、グローバル社会のなかでの空港などの学習会を行ってきました。

 呼びかけ人の鎌田さんは、「青森の六ヶ所村にも通ったが『過激派』を入れると三里塚のようになってしまうとキャンペーンをやられ、住民間で分断しあっていった。延伸されたB滑走路が供用されるが、ジャンボジェット機の轟音はすさまじい。島村家に対して『死ね』というものだ。人道問題として空港会社の暴挙を許してはならない」(〇九年九月/映画『三里塚 第二砦の人々』上映&トーク」)と訴えてきました。

 今回の福島原発事故に対しても、「原発ほどカネで人心を惑わす汚い事業はないですよ。危ない物は1基でも2基でも同じと、地元は次々に受け入れる。毒まんじゅうです」と原発体制によって引き起こされる問題点を批判しています(毎日新聞・特集ワイド/11年4月28日)。

 
さらに「原発反対と書き続けながら大事故を防げなかった。僕も切迫感が足りなかった」と自戒をこめながら反原発運動の取組みに奮闘していく決意を述べています。

 鎌田さんのアピールを受け止めつつ、ともに人権・生存権破壊を許さない取組みを加速させていきましょう。(Y)

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