虹とモンスーン

アジア連帯講座のBLOG

反監視社会

共通番号制度関連法案反対!国家による一元管理を許すな

watching you uncle sam poster Big Brother 1984 Orwellian 野田政権は、民主・自民・公明党の合意による消費増税関連法案の衆院可決強行(6月26日)に続いて、参院での成立を狙っている。同時に消費税増税法案に「番号制度の本格的な稼働及び定着を前提とする」と明記し、民衆監視と管理、税・保険料の徴収強化のための共通番号制度関連法案(マイナンバー法案)の成立に向けて加速しつつある。

 野田首相は、国会の会期を9月8日まで延長したうえで消費税増税法案の参院8月上旬採決強行に続いて、自民・公明から衆院解散・総選挙を迫られつつもその前提条件として特例公債法案、共通番号制法案、公務員制度改革法案、衆院選挙制度改革関連法案の成立を主張しだした。これだけの法案を一挙に成立させるというのだ。ほとんど無謀だが、消費税増税法成立阻止とともに、こんな暴挙を許してはならない。



共通番号制度のねらい



 共通番号制度は、2014年6月から個人と企業に番号を割り振り、15年1月に「番号カード」を交付し、運用開始する予定だ。民衆一人ひとりに個人番号「マイナンバー」を付け、税務署や自治体などが別々に把握している所得や納税、社会保障サービスなどの状況を管理し、年金、医療、介護保険、生活保護、労働保険、税務の六分野で活用するとしている(「社会保障・税番号大綱」)。

 さらに民衆監視・管理のためにIC(登録証)カード(氏名、生年月日、性別、住所を記載し、ICチップに番号を記録する)を持たせ、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の住民票コードを利用し、住民登録・戸籍・収入・税・健康保険・医療・福祉給付・介護保険・年金・免許・旅券・犯歴などの個人情報を国家が一元管理するということだ。つまり「省庁自治体間のデータ連携」の一環として警察庁とリンクすることによってグローバル派兵国家構築のための治安弾圧システムへと飛躍的に「変質」してしまう可能性があるのだ。

 この実現は、長年の支配者、財界の願望でもあった。しかも導入費用は、とんでもない巨額になっている。政府が明らかにした内訳だけでも①国税庁や日本年金機構など情報保有機関のシステム整備3200億円②各個人情報を一元化する組織の設立700億円③ICカード導入800億円④個人情報を利用者が確認できるインターネットサイト「マイ・ポータル」開設300億円⑤個人情報の漏洩(ろうえい)を監視する第三者機関の設置10億円などとなっている。また、システム運用に年350億円の経費もかかるというのだ。IT大企業が大喜びの代物でしかない。



個人情報流出は必至だ



 共通番号制度法案は、2月14日に国会に上程し、衆院内閣委員会で審議に入る予定だったが、政府の消費税増税法案の審議入り、成立を優先したため審議が止まっていた。だから消費税推進派の読売新聞は、わざわざ社説(7月18日)で「共通番号法案 なぜ審議入りできないのか」という見出しを掲げて恫喝し、消費税率引き上げ第一弾の2014年4月に8%に続いて、第二弾の2015年10月10%の引き上げに間に合うために「早急に議論を詰め、確実に成立させるべきだ」と応援するほどだ。

 だが共通番号制度導入の最大の欠陥である「個人情報の漏洩(ろうえい)防止には万全の措置を講じなければならない」と触れざるをえない。そのうえで「法案は「『個人番号情報保護委員会』の設置や、懲役四年以下の罰則などを盛り込んでいる」から大丈夫だと言わんばかりだ。結局、「与野党はこの点についても、十分に議論を深めてもらいたい」などと制度導入のために強引にやれというのだ。

 すでに番号制度創設推進本部が11年度から12年度にかけ、全国四七都道府県で「マイナンバーシンポジウム」を開催し、いずれもヤラセの導入賛美発言を繰り返しているのだが、会場から「今、導入する必要性がわからない」「情報が漏れる危険性がある」「PR不足だ」(7月7日、京都大津市シンポ)という批判・疑問が続出している状態だ。

 内閣府の共通番号制度世論調査(11年11月/全国の成人男女三3000人)でも制度が「必要」が57.4%、「必要だと思わない」が27.3%と誘導した。しかし共通番号制度の個人情報に関して、最も不安に思うことを聞いたところ、「特にない」が11%、「プライバシー侵害のおそれ」が41%、「情報の不正利用により被害に遭うおそれ」が32%、「国により個人情報が一元管理され、監視されるおそれ」が13%と、何らかの懸念を感じていると答えた人は86%という結果だった。つまり、制度導入に反対が多数であり、各地のシンポでの会場発言においても拡大していることを証明している。



万全のセキュリティーなんて不可能



 不安や疑問が続いているのは、 官民レベルの個人情報流出事故が次々と発生しているからだ。たとえ守秘義務があっても、個人情報、秘密データ、犯罪歴・病歴などの漏洩事件が報道され続けている。

 共通番号制度法案では、①目的外利用などに罰則強化②第三者機関を設置し行政や医療機関を監督する③自分の情報へのアクセス記録を本人が確認できる仕組み、医療分野の病歴などの個人情報保護のための特別法をつくるとしているが、「完璧」なガードシステム、セキュリティーシステムが完成したということがいまだに報道されていないようにインチキなものなのである。要するに現在の「技術水準」では個人情報流出事故は、阻止できないのである。個人情報の流出を前提にした国家の民衆一元支配を優先した制度は必要ないのだ。

 民主党は、制度導入に対する民衆の危機感の広がりに動揺し、政府に対して万全のセキュリティー対策を構築することなどを求める中間報告を提出せざるをえなかった(7月16日)。だがあくまでも「着実な実施」を踏まえて①情報漏えいの早期発見や漏えいした場合に機動的に対処できるよう専門の職員を配置②システムをバックアップする拠点を複数の場所に設置③情報公開などのレベルでしかない。これでは個人情報の追跡・突合に対する懸念、財産その他の被害への懸念、他人の番号を盗用する「成りすまし」などの不正を阻止することはできない。

 民衆一人ひとりに番号を割り振って税金を搾り取り、社会保障費支出抑制をしながら、同時に監視・管理を強化する共通番号制度導入に反対していこう。

(Y)
 

報告:「シンポジウム 共通番号制のすべてを知ろう」

saban 共通番号制を考える市民シンポジウム実行委員会は、七月二二日、上智大学で「シンポジウム 共通番号制のすべてを知ろう」を行い、九〇人が参加した。 野田政権は、「行政手続における特定個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(通称「マイナンバー法案」)を二月一四日に閣議決定し、国会に上程した。政府は、消費税増税法案の成立とともに法案成立をねらっているが、まだ衆院内閣委員会で審議が始まっていない。推進派による全国シンポジウムでは各地で共通番号制は「いらない」「不安だ」「何かおかしい」という意見が噴出しているにもかかわらず、国会情勢から判断して消費税増税法案の成立後、短時間で法案強行成立を策動してくることが予想される。法案阻止のための取り組みが急務だ。

 集会は、法案反対運動を粘り強く取組んできた仲間たちによって準備された。



米は成りすまし犯罪者天国化



 シンポジウムPartⅠは、「共通番号制の本質と問題点を考えるために」というテーマ。

 田島泰彦さん (上智大学教授)は、「情報統制と監視のなかの共通番号制」という観点から①情報は誰のものか?②監視強化のなかの共通番号制③民主党政権下の「新たな表現規制」について明らかにし、「情報を市民のものに取り戻すために、まず必要なことは民主党幻想の克服だ。歴代の政権がやろうとしてきた情報統制と表現規制を現在の民主党政権がやろうとしている。情報公開と市民的自由は、普遍的な課題として取組んでいくべきだ」と強調した。

 白石 孝さん(反住基ネット連絡会)は、 「住基ネットから共通番号制へ、どこが違い、どこが問題か~わが国における国家管理の特徴と問題点」について解説し、「制度上の保護措置として、第三者機関による監視、罰則強化、目的外利用の制限などが言われているが、それは絵空事でしかない」と厳しく批判した。

 石村耕治さん (プライバシーインターナショナルジャパン<PIJ>代表)は、「共通番号でなりすまし犯罪社会化する米国の現状」について報告し、「米国では共通番号制によって成りすまし犯罪者天国化している。だから国防省は、不正アクセスなどを阻止するために一一年四月から国防省本人確認番号を使うことになった。分野別番号に戻さなければならない状態だ。日本は、米国の深刻な状況を知っていながらIT企業と利権拡大のために共通番号制を導入しようとしている。こんな暴挙を許してはならない」と発言した。

 続いて、実行委から「韓国における情報流出となりすまし被害の実情」が紹介された。




8月法案採決阻止を


 PartⅡは、「共通番号制で便利になるという幻想を見抜くために」というテーマ。

 知念哲さん(神奈川県保険医協会)が医療の現場から医療制度の将来の危険性を指摘。三浦清春さん(全国保険医団体連合会政策部員)も発言。辻村祥造さん(税理士、PIJ副代表)が「所得の捕捉と税制の課題」 、西邑亨さん (反住基ネット連絡会/入管法対策会議)が「強まる外国人管理~改定住基台帳法・改定入管法と共通番号制」、桐山桂一さん(東京新聞論説委員)が取材現場から共通番号制の危険性を明らかにした。


 最後に瀬川宏貴さん(自由法曹団)が共通番号制と秘密保全法制の関連性と法案阻止に向けた取組みの緊急性を訴えた。


(Y)
 

報告:いらない!共通番号制 3・21市民集会 安全神話はない!原発もマイナンバーも

背番号+003 反住基ネット連絡会は、3月21日、総評会館会議室で「いらない!共通番号制 3・21市民集会 安全神話はない!原発もマイナンバーも」を行なった。

 野田政権は、2月14日、共通番号法案(=マイナンバー法案)と関連法案(整備、機構法)を国会上程した。法案は、消費税増税と社会保障削減の一体的強行とセットである民衆監視・管理のための社会保障・税番号制度導入だ。2014年6月から個人と企業に番号を割り振り、15年1月に「番号カード」を交付し、運用開始という計画だ。制度は民衆一人ひとりに個人番号「マイナンバー」を付け、税務署や自治体などが別々に把握している所得や納税、社会保障サービスなどの状況を管理し、年金、医療、介護保険、生活保護、労働保険、税務の六分野で活用するとしている(「社会保障・税番号大綱」)。

 さらに民衆監視・管理のためにIC(登録証)カード(氏名、生年月日、性別、住所を記載し、ICチップに番号を記録する)を持たせ、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の住民票コードを利用し、住民登録・戸籍・収入・税・健康保険・医療・福祉給付・介護保険・年金・免許・旅券・犯歴などの個人情報を一元化するとともに個人情報を確認できるインターネットサイト「マイ・ポータル」を開発し、各種の社会保障サービスが受けられるなどと宣伝している。まともなセキュリティーさえも完成しておらず、ITゼネコンと利権のために制度導入を強行しようとしている。国家による個人情報の一元管理体制である共通番号制度導入に反対していこう。



統治強化のための国家一元管理を許すな



 集会は、連絡会から基調報告が行なわれ、法案のポイントと問題点として①「国民が主権者」から国民管理に変質した番号制度の目的②サービス提供から国民管理に拡大した利用事務③番号利用法での個人番号の利用範囲などを批判し、「法案段階になって急に目的や利用範囲を曖昧にしたのは、導入後どんどん利用拡大を行なっていきたいという推進派の焦りだ。まさに『国民総背番号制』の本質が露にし出した。法案反対に向けて『マイナンバーなんていらない!』の取り組みを強めていこう」と呼びかけた。

 水永誠二さん(弁護士)は、「社会保障・税共通番号法(マイナンバー法)案の特徴」について報告し、「法案の制度目的、利用目的が明確でなく、限定されていない。プライバシーに配慮した制度設計になっていない。プライバシー情報の名寄せ・統合(データマッチング)がなされる危険性が最も高い。第三者機関(個人番号情報保護委員会)は非力で、監督権限は、警察等に及ばない」と批判した。

 藤田倫成さん(神奈川県保険医師協会)は、「医療と社会保障改悪に反対してきた。共通番号制は、所得を補足し保険料等の上限を決めて給付を抑制していくことを目的にしている。反対だ」と発言した。

 辻村祥造さん(税理士)は、「納税者番号として使うということは、一旦民間に公開するということなので、際限もなく広がるということが全ての前提になっている。民間企業等において当然、番号を元に勤務者のデータを集め、それを企業間で連携させたいという圧力はどんどん強くなっていく」と危険性を指摘した。

 パネルディスカッションに入り、石村耕治さん(PIJ代表)、黒田充さん(自治体問題研究所)、清水雅彦さん(日体大・憲法学)、から共通番号制の欠陥と人権侵害の危険性の実態を批判した。

 田島泰彦さん(上智大学)は、共通番号制と秘密保全法(公務員が特別秘密を漏洩したら厳罰を科し、知る権利や報道の自由に対する規制強化が目的)の関連、国家の一元的民衆管理の性格について明らかにした。

 さらに「昨日、藤村官房長官が秘密保全法を国会上程を慎重にすると言った。かつての国家機密法は、防衛の秘密に関してだったが、秘密保全法は『公共の安全と秩序、外交』まで網をかけ、取扱い者も調査、管理するひどい悪法だ。アメリカとの関係もあって、かならず制定するだろう」と警鐘した。

 最後に、福島瑞穂さん(社民党党首)が国会情勢、清水勉さん(日弁連情報問題対策委員会委員長 )さんが共通番号制を批判した『デジタル社会のプライバシー

―共通番号制・ライフログ・電子マネー』([編著]日本弁護士連合会/航思社)を紹介した。

(Y)
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