石原都知事と東京都教育委員会による新自由主義的教育破壊の一環としてある卒・入学式時の「日の丸・君が代」を強制する「10・23通達」(2003年10月23日)を発出してから九年がたった。教育労働者の「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏の闘いへの報復弾圧として441人が処分されている。再雇用職員・再任用・非常勤教員等の合格取消・採用拒否も70人にのぼっている。さらに都教委は、都立高校の防災宿泊訓練での自衛隊との連携、侵略戦争美化の副読本の発行、競争と「自己責任」の教育の推進、教職員の管理・支配を強化している。
連動して大阪でも橋下大阪市長率いる維新の会が主導して、新自由主義的教育破壊と弾圧を押し進めている。集会は、法定内外で粘り強く闘う10・23通達関連訴訟団が軸となり、新たな反撃を作り出し、大阪で闘う仲間たちと連帯していく場として行われた。
主催者あいさつが近藤徹さん(「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会)から行われ、「都教委は、不起立教員の抵抗を根絶しようと『再発防止研修』を質量ともに強化している。だが学校現場での不服従の闘いは続いている。集会は、訴訟団が共同し『日の丸・君が代』強制反対の裁判勝利をめざす運動の結節点とすると共に、東京の『破壊的教育改革』に反撃していこう」と発言した。
10・23通達関連訴訟団の紹介、宇都宮健児さん(前日弁連会長、弁護士)、落合恵子さん(作家)からのメッセージが紹介された。
これからの課題
大内裕和さん(中京大教授)の講演が行われ、「『日の丸・君が代』強制反対運動のこれからの課題~東京と大阪から考える~」について以下のように提起した。
①「日の丸・君が代」強制反対運動の意義―「10・23通達が憲法の『思想及び良心の自由』に関わる問題であることを明確にした。「国論二分」状況をつくりだした」。
②教育における新自由主義と国家主義―「都教委による新自由主義的教育破壊とは、日の丸・君が代』強制だけでなく、階層的な職階制度とトップダウン体制/教員人事考課制度/学校評価制度/高校再編と中高一貫校の設置/教員給与格差などであった。教員の日々の教育実践のプロセスへの統制・介入、政治支配であり、単純な『戦前回帰』ではなく、新自由主義への『抵抗体』への攻撃であり、解体であった」。
「橋下・大阪維新の会は、教育行政基本条例、府立学校条例、職員基本条例によって知事の政治支配が教育現場まで貫徹する仕組みをねらった。また、高校再編と整備、公立校と私立校の競争促進などによってグローバルな人材育成にある。会は、富の不均衡の拡大の中で庶民の将来の不安と不満の鬱積を公務員・教員バッシングに向かわせ、労働者間を分断させていった。変えてくれるなら独裁でもいいという雰囲気に流れていった」。
③今後の課題―「第1は、『思想及び良心の自由』(憲法19条)にプラスして『日の丸・君が代』が日本の帝国主義的侵略とアジア・太平洋に果たした歴史的役割の認識を広げることだ」。
「第2は、教育領域ばかりではなく社会全般での新自由主義による『格差と貧困』のサイクルを批判し、反貧困のための闘いと連携していくことが重要だ。具体的には、同一労働同一賃金の原則による最低賃金の飛躍的上昇、時給1200円プラス家賃補助の政策の実現であり、生存権が結集軸だ」。
「第3は、新たな帝国主義台頭に対する反戦運動の構築だ。とりわけ『尖閣問題』では、国有化を撤回し、外交交渉の場をつくるべきだ。反原発、反消費税増税、反貧困、反TPP、反米軍基地(オスプレイ)の運動を憲法改悪反対の運動とつなげていくことだ。大学の秋入学の前にボランティア活動を促進させると言っているが、ここに自衛隊体験入隊が設定されてくる可能性がある。先取り的な『徴兵制』を警戒しなければならない」。
大阪の闘い
後半は、よしだよしこさん(シンガーソングライター)のメッセーソングで再開した。
奥野泰孝さん(大阪・被処分者、府立学校教員)は、「今春の卒業式・入学式で君が代斉唱時に不起立であったことで戒告処分を受け、人事委員会に不服申し立てを行った。仲間たちで不起立の思いをグループZAZAでまとめた。自分の人生の筋を通すために権力の横暴に反対していく」と述べ、府教委を批判した。
最後に集会アピールを参加者全体で採択した。(Y)