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 福島第一原発事故から半年が経ったが、一向に解決の目処さえつかない状態で、被害はさらに拡大している。原発推進路線を突き進んできた経済産業省は、反省なきままトップのすげ替えによる延命を図りつつある。そのもとにある原子力安全・保安院は、安全性チェック機関という役目を放棄した。“原発やらせ推進院”と化したまま、再稼働に動いている。

 事故の最大の責任官庁である経済産業省・保安院を、一万人の「人間の鎖」で包囲し、「原発NO!」の意志を表しよう、との呼びかけに応えて、9月11日午後一時、日比谷公園・中幸門に1500人の人たちが集まった。デモ出発前に、郡山市議選でトップ当選した滝田はるなさんや原発立地県からの参加者の発言が行われ、午後一時半から東電前から経済産業省を通り日比谷公園までの一時間のデモを行った。そして午後三時半に経済産業省(保安院)を「人間の鎖」で包囲した。



▲前段デモ 経産省前


 経産省前をはじめ四つのスピーカーで経産省の周り900メートルをつなぎ、集会と三回のウェーブで抗議行動を行った。経産省前では以下の参加者からの訴えが行われた。

 原発現地から。滝田はるなさんが「郡山では管理区域を超える放射能が検出されている。子どもたちは窓を閉めて家にいたり、プールにも入れなかった。『福島の子』ということでの差別を心配している。郡山市議選で新人なのに脱原発を訴えてトップ当選した。保守的な街でも人々の意識の変化を感じている。子どもたちを守るために活動していきたい」と報告した。鈴木卓馬さん(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)は「浜岡原発は5月14日以来止まっている。これは運動の成果だ。裁判では一審で負けはしたが、控訴審で一・二号炉の廃炉和解を勝ち取った。今後浜岡が全国の攻防になるだろう」と語った。田中やすゑさん(怒髪天を衝く会、「さよなら原発」福岡の人)が玄海原発の再稼働と闘うと発言した。

 県外避難者の増子理香さん(つながろう!放射能から避難したママネット@東京)は「酪農をやっている夫を残して、子どもと二人で自主避難した。自主避難者は公営住宅にも入れない差別がある。そこでつながりを作り出して励ましあっている。支援を」と訴えた。上関原発反対運動を続けている岡本直也さん(上関原発計画白紙撤回・再稼働反対ハンスト者)と米原幹太さんらが、本日午後五時から10日間のハンストを経産省正門前で行うことを明らかにした
(詳細 →
http://hungerstrike.jimdo.com/)。

 その他、満田夏花さん(国際環境NGO FoE Japan)、阪上武さん(福島老朽原発を考える会)、吉田明子さん(原発輸出推進政策を止める国際署名)。自治体から。須黒奈緒さん(杉並区議、みどりの未来)、布施哲也さん(反原発自治体議員・市民連盟)、笠井亮さん(日本共産党衆院議員)、芦澤礼子さん(服部良一社民党衆院議員秘書)から、報告と訴えが行われた。

 この日、都内三カ所で脱原発の行動が行われたが、そのうちの素人の乱の新宿での行動に対して、またしても警察の弾圧により少なくとも五人の逮捕が出ていることが報告され、直ちに救援カンパが訴えられた。そして、9・19明治公園での五万人大集会への呼びかけが行われ、要請書が読み上げられた。さらに、五時からのハンスト支援への呼びかけも行われた。9・19へ向けて連続闘争への大きな弾みになる行動であった。

(M)
 
要請書

 内閣総理大臣 野田佳彦様、経済産業大臣様、原子力・安全保安院長 深野弘行様
 
 経産省・保安院は原発推進政策を断念し、脱原発に舵を切れ!
 
 新たに発足した野田内閣は、原発再稼働の意思を明確にしています。鉢呂吉雄経産相(早くも辞任)は、再稼働について、IAEA(国際原子力機関)による評価を加えることで、地元自治体の納得を得たいと表明していました。しかし、IAEAは「国際原子力ムラ」の一角を占める原発推進機関に過ぎず、安全を委ねるべき信頼性など持ち合わせてはいません。…(略)

 根本的な問題は、巨大事故を引き起こした張本人である経済産業省や保安院、安全委員会が組織の抜本的改革すらないまま、旧来の原発推進政策を事実上踏襲していることにあります。

 保安院や電力会社は、恥知らずにも「緊急安全対策」という名の小手先の措置のみを行い、6月18日にはすべての原発に関する「安全宣言」を出してみせました。それに無批判に乗っかり、玄海原発現地に乗り込んで再稼働に前のめりになった海江田元経産相の責任は重大であるにも関わらず、反省なき彼が民主党代表選の有力候補にさえなったことに、私たちはこの国の恐るべき無責任体質を見ます。

 野田新内閣のもとで、事故を引き起こした勢力が息を吹き返しつつあることに、私たちは戦慄を覚えています。誰が新経産大臣になろうと、経産省と保安院が行うべきことは明確です。私たちは以下を要求します。

 1.福島第一原発事故の早期収束に民間を含む世界のあらゆる叡智を結集して取り組むこと。そのために、事故対処態勢を抜本的に組み替えること。

 2.予断と憶測を排した事故の徹底的な原因究明を行うこと。そのためにあらゆる関連情報を即刻開示すること。

 3.巨大事故を引き起こした最大の責任官庁として、高濃度汚染地帯から人々を避難させ、雇用や生活を保障し、東電に自力避難者を含むすべての被災者への公正な賠償を行わせること。

 4.「ストレステスト」という名のアリバイテストを中止し、原発の再稼働に向けたプロセス自体を無期限停止させること。現在運転中の原発も停止させ、危険な「無免許運転」をやめさせること。

 5.建設中および計画中のすべての原発、高速増殖炉もんじゅ、核燃料再処理工場、使用済み燃料中間貯蔵施設などへの予算措置を取り止め、建設と計画を白紙撤回させること。

 6.原発輸出に向けたヨルダン、ベトナム、トルコなどとの実務者協議などを即刻中止し、原発輸出推進政策を白紙撤回すること。

 7.人類未曾有の巨大複合原発事故を引き起こした重大な責任を自覚し、再稼働を断念したうえで来春の全原発停止を受け入れ、すみやかな原発廃止に向けてあらゆる政策を総動員すること。そのために、新たに発足予定の「原子力規制庁」の内実を「脱原子力庁」へと抜本改編すること。

 2011年9月11日 福島原発事故の発生から半年の節目にあたって

 9・11再稼働反対・脱原発!全国アクション実行委員会