中国の陳独秀研究者の唐宝林氏が1994年に台湾で出版した『中国トロツキスト史』の全訳が出版された。日本での書名は『中国トロツキスト全史』。
この本については94年の出版直後から、当事者である王凡西や鄭超麟ら中国の老トロツキストたちからの批判的見解が表明され、日本でも『トロツキー研究』誌上でもそれらの批判的見解が翻訳紹介されていた。
日本でも当初この本の出版を検討していたという事情もあったことから、著者の唐氏も老トロツキストらの批判に反論し、もし問題があるなら(1)本文の箇所はそのままにして、老トロツキストの批判的書評と唐氏の反論を合わせて掲載する、(2)本文の基調は変えずに、指摘された問題箇所を修正するか、関連資料を資料として掲載する、ということで、日本での出版を進められないか、という提案がされた経緯がある。結局、出版の話はお流れになってしまったようだった。
それから10年以上が経過して日本語での出版というニュースを聞き、「いまさら?」とややおどろいたが、もしかして上記の(1)か(2)のような加工を加えた上で、出版あとがきか訳者あとがきで説明がされているかな、と期待してさっそく購入したのだが、残念ながらそのような形跡はみうけられなかった。
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訳者あとがきでは、本書への批判として「トロツキズムへの理解をほとんど欠落されている」という見解の一言のみを紹介しているだけで、中国老トロツキストの批判的書評は参考文献にさえ紹介されていない。
以下に王凡西と鄭超麟の批判的書評、および唐宝林氏による反論などが掲載された『トロツキー研究』を紹介する。
・王凡西:書評『中国トロツキスト史』
・鄭超麟:書評『中国トロツキスト史』
長堀祐造 訳 『トロツキー研究』17号(1995年秋号)掲載
・グレゴール・ベントン:王凡西へのインタビュー
長堀祐造 訳 『トロツキー研究』19号(1996年春号)掲載
・唐宝林:歴史の真相は隠蔽しえない!
緒方康 訳 『トロツキー研究』20・21号(1996年夏・秋号)掲載
・王凡西:『中国トロツキスト史』の著者に答える
長堀祐造 訳 『トロツキー研究』20・21号(1997年夏号)掲載