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社会主義-反資本主義

【第四インターナショナル声明】パンデミック、経済不況、新自由主義 - 歴史的大転換宿す世界

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パンデミック危機は巨万の生命を脅し、地政学的危機をも加速中


2020年6月8日 第四インターナショナル執行ビューロー


 パンデミック、経済不況、新自由主義が作り出した構造的格差と抑圧の可視化、世界システムの覇権をめぐる地政学的対立、差し迫った環境崩壊の詳細な未来像……こうしたものすべてが二〇二〇年に一度に起こった。われわれの世代にとっては前代未聞の世界的パンデミックに人間全体が直面したのである。

パンデミックは、世界中で四〇万人以上の死者(六月八日現在で四〇万一千人)を出し、公式に記録された感染者は二一六カ国で六八〇万人以上にのぼった。三月後半、ロックダウンがアジアに波及し始める以前に、三〇〇万人以上の人々が自宅に隔離されていた。

現在の時点で、どの程度まで流行の第二波があるのか、そしてウイルスが突然変異するかどうかを判断するのは不可能である。

医療問題以上のもの


これは長期的に続いている諸プロセスが凝縮した瞬間である。エコロジー危機、新自由主義の限界と格差、古い帝国主義と中国の間でのヘゲモニーをめぐる地政学的闘争といったさまざまなプロセスは、それぞれ相対的に自律的な発展を遂げてきたのだが、いまや爆発的に集中している。一九四五年に形成された世界を構造的に変えつつあるプロセスが生じており、相互に作用し合っている。それは間違いなく歴史の道程における分岐点であり、すべての政治的当事者にとって大きな賭けの瞬間である。

われわれは諸危機の集中点の中にいるが、それは危険に満ちていて、資本主義文明の危機であり、二〇世紀の世界大戦以降でもっとも深刻な危機なのである。これはグラムシが有機的危機と呼んだものである。すなわち、ブルジョア権力のまさにその構造の中に裂け目が現れはじめ、ブルジョア権力による普遍性の主張が崩れはじめる。そして、以前の覇権的主張がその本当の姿―資本主義の安定性を確実にする手段―を白日のもとにさらけ出すのだ。社会的合意は悪化し、資本家の主張はもはや公共の福祉に対応しているようには見えなくなる。「病的症候群」が現れはじめるとともに、政治的分裂が発生し、エコ社会主義的反資本主義者だけでなく、極右にも獲得の可能性がある政治的な空間が開かれていくのである。

われわれが連帯にもとづいた健康政策を提案するとき、その要求が資本主義によって設定された枠組みを超えることは明らかである。われわれの健康は生活環境次第である。それはきれいな空気を呼吸するかどうか、汚染されていない水を飲めるかどうか、高品質の食料を手に入れることができるかどうか、都市が居住に適した環境であるかどうか、などにかかっている。

手短に言えば、それはわれわれが良く生きるかどうか、われわれの賃金が良い生活を保障するに足るものであるかどうかにかかっている。健康は肉体・社会・文化・環境の問題であり、人間的に豊かな生活のための基礎である。資本主義によって生み出された生活状況のもとでは、われわれは社会・文化・環境の面で良い生活を送ることができないために、連帯にもとづく健康政策は資本主義によって設定された限界を超えるのである。

エコロジー危機

 森林伐採、資源略奪、資本主義的生産性、エコシステムの破壊、監禁状態での動物飼育の増加、食肉需要の増加によって、ウイルスはより容易に、より頻繁に種の境界を跳び越えるようになった。一九六〇年以降に出現した新たな病気の四分の三は、動物由来感染症である。この中には、エボラ出血熱、エイズ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、そして新型コロナウイルスが含まれる。貿易のグローバル化はウイルスの急速な世界的拡散を導いた。巨大都市とそれと結びついたスラムの増加は、人間間での伝染のスピードを加速させている。それゆえに、新型コロナウイルスのパンデミックはグローバリゼーションのさまざまな影響の相互作用の結果である。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、二一〇〇年までには世界の平均気温上昇が六℃に達すると予測している。そのことは、大陸域のほとんどや北極海でのそれ以上の気温上昇と著しい海面上昇を引き起こし、熱波、森林火災、干ばつ、洪水、破壊的なハリケーン・台風のような異常気象がますます頻繁に、激しく発生することを意味している。これにより、三五億人の人々が海岸地帯や熱帯地方を含む陸地の一九%から離れざるをえなくなるだろう。気候破局は、それ以外の環境的なティッピング・ポイント(臨界点)(訳注)―生物多様性の著しい喪失、森林伐採、きれいな水の不足―とともに、新型コロナウイルスの影響よりもずっと恐るべき結果をもたらすだろう。しかし、パンデミックは、そうした災厄の世界的犠牲者がどうなってしまうのかをわれわれに教えてくれている。

世界には、アグリビジネスが、パンデミックの瞬間を、自然破壊を引き起こす資本主義プロジェクト推進のために利用している地域がある。これが起きている一つの例はブラジルである。ブラジルでは、今年三月と四月にアマゾン熱帯雨林の伐採が、昨年同時期と比べると二九・九%も増えた。この森林破壊の進行は、アマゾンの諸民族、とりわけ先住諸民族の集団殺戮の進行でもある。先住諸民族はすでに新型コロナウイルスによってもっとも影響を受けている集団の一つなのだ。エコ社会主義組織であるわれわれが、アマゾン熱帯雨林およびパンデミック期間中における先住諸民族の健康の国際的な防衛を繰り返し述べることは必要不可欠なことなのだ!

(訳注:ティッピング・ポイントとは、それまで小さく変化していたある物事が、突然急激に変化する時点を意味する語。環境破壊や地球温暖化に関して使われる場合、それがある地点=ティッピング・ポイントを超えると、不可逆的・爆発的に進行して、取り返しのつかない事態となることを示す)。

地政学的・地理経済的影響


アメリカ合衆国と中国の双方が攻撃的に作り出している二極対立の中で、ヘゲモニーをめぐる議論が明確となり、それは好戦的なものとなっている。

中国は、半世紀にわたって、アメリカ合衆国との戦略的パートナーシップの中で発展してきた。オバマ政権はすでに、二〇一五年に締結した環太平洋連携協定を通じて、その土台を掘り崩そうとすることにより、中国の恐るべき発展に対処しようとしたのだった。しかし、トランプ・プロジェクトによって推進された地政学的再配置の一部として、トランプ政権は二〇一七年一月にその合意を非難し、北京が主導権を発揮できる空間をそのまま残した。北京はワシントンの国家主義的保護主義に直面して、自由貿易と経済グローバリゼーションの旗手としての位置を占めはじめた。

この同盟関係の崩壊は国際社会のすべての領域に影響を及ぼしてきた。それゆえ、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合(EU)は、この面から弱体化しつつある。EUはすでにブレグジットによって打撃を受けていたが、もっとも大きなダメージを被ることになるだろう。危機に際してヨーロッパ全体として医療手段を動員できなかったことは、EUに打撃を与えることとなった。つまり、危機がヨーロッパに及んだときに加盟国は協力して行動しなかったばかりか、一方的に国境を閉鎖し、自由な移動を中断し、調整もなしに運輸ネットワークを停止してしまったのである。何週間もの間、イタリアは、フランスや(医療用品や設備の輸出を停止した)ドイツのような近隣諸国からも、EUレベルにおいても、いかなる援助も受け取ることがなかった。備品供給に関しては、中国がもっと多くをおこなった。キューバはアメリカ合衆国による犯罪的な封鎖にもかかわらず、二〇カ国以上に医療団を派遣した。

スペイン、ギリシャ、イタリアのような債務国は、二四〇〇億ユーロのパンデミック危機特別支援枠をもつEFSM(ヨーロッパ金融安定化メカニズム)の方に誘導されている。このメカニズムは、借金と引き換えに、緊縮政策や公共サービス削減を強制するのである。

アメリカでは六月初めには四千万人が失業手当を申請し、(IMFによると)年末にはアメリカ経済の減少幅が五・八%にまで達すると予想されている。社会危機(と現在進行中の人種差別に抗議する反乱の波)を背景として、アメリカでは一一月に選挙が予定されており、それは国内および国外の政治状況の道筋を示すものとなるだろう。
トランプは(詐欺行為を含む)すべての可能な手段を用いて、再選をかちとろうとするだろう。しかし、彼の目標は達成困難である。国民の半数の間での彼の威信は大きな影響を受けている。アメリカにおける現在の急進化した広範な動員の爆発は、歴史的な社会的・人種的格差、新たな世代によって蓄積された政治的不満と経験、(黒人コミュニティに対してより大きな影響を引き起こした)トランプ政権によるパンデミックへの破滅的な対応という状況の中で発生している。

より貧しい国々では、人々は健康被害と経済的影響の両方に同時に直面している。ブラジル、ペルー、チリ、メキシコでは、感染者数が実際に増加している。ブラジルでは、医療専門家は六月に新型コロナウイルスの感染爆発が起こると予見しているが、それはボルソナロの犯罪的行動によって増大している。ブラジルは急激に悪化しつつある医療危機と経済不況・深刻な構造的危機とが結びついている。ボルソナロはさらに孤立を深めているが、彼のファシスト・イデオロギーという基本的支持基盤に訴えかけている。彼は国家警察、軍隊、武装集団に支援され、あからさまな独裁的方法で支配するために議会と最高裁判所を閉鎖している。

アフリカと中東においては、医療システムは最悪のレベルにあり、それは戦争状態によってさらに悪化している。病人数が少ない中でも、エピデミックのリスクが既存のリスクに加重されている。アフリカにおいては、たとえば、二〇一八年にマラリアによって三八万人、結核で六〇万七千人、栄養失調で二~三百万人が死亡した。

各国人民は、より強化された緊縮策、低開発・食料依存・債務の深刻化、多国籍企業・国内大企業による経済・資源支配に深刻に直面するだろう。これらはアラブ地域での革命的プロセスの引き金を引いたのと同じ要因であり、新型コロナウイルス後の新しいサイクルにとって新たな原動力を与えるだろう。
V字型回復が起こるかはまったく不確かなため、資本家グループや政府はより攻撃的になりがちである。資本主義が打倒されない限りは、さまざまなより良い「次の世界」は単なるユートピアになるだろう。「次の世界」はより不平等にさえなるだろう。反資本主義的オルタナティブのための闘いはますます緊急のものとなっているのだ。

新自由主義的モデルの危機

 この危機はグローバリゼーションにその根拠を持っている。以前からある危機はすべて、このパンデミックの後には深刻化しているだろう。その上、新型コロナウイルスは、(バリュー・チェーンを通じた、そして被支配国の生産を大企業集団の利益に適応させることを通じた)最大価値の追求や成長とはほとんど無関係な利益率の追求に深く規定されているグローバル化した資本主義生産システムのもろさを暴露した。にもかかわらず、次の数カ月間における資本家の目標は、できるだけ早く「いつも通りのビジネス」を推し進めることなのである。

ここ数年で、グローバリゼーションと緊縮政策を強調することの限界はすでに明らかになっていた。二〇〇八年の金融危機以降、主要中央銀行は、アメリカ連邦準備制度、ヨーロッパ中央銀行、イングランド銀行を含めて、経済システム全体を持ちこたえさせるために巨額の資金を民間銀行に注入した。同時に、実質ゼロ金利あるいはマイナス金利にすることで、各国と資本主義企業の負債額はアメリカとヨーロッパの両方で急増した。

銀行やそれ以外の部門の資本主義大企業は、中央銀行が豊富に分配した財政手段を生産的投資には使わなかった。それらは金融資産を取得するために使われたのである。このことによって、株式市場、債券市場(たとえば債務の債権化)、そしていくつかのところでは不動産部門において、投機的なバブルが作り出された。すべての大企業はこの危機の当初において過重債務状態となっていたのだ。

深刻な社会危機

 新型コロナウイルスは、生産・製品輸送・需要の急激な中断という影響を与えた。

パンデミックによる打撃が比較的小さな地域でさえ、たとえばアフリカ(六月七日現在において五一二五人の死者、そのうちアルジェリア・カメルーン・エジプト・モロッコ・ナイジェリア・南アフリカ・スーダンだけで三五〇〇人以上)においてさえ、中国での危機やアメリカ・EUの危機が経済・社会レベルでの深刻な影響をもたらしている。世界食料計画は二〇二〇年一年間に、深刻な食料不安が憂慮される人々の数は、とりわけアフリカと中東において倍増すると予想している(二〇一九年には戦争と気候変動のために一億三五〇〇万人が食料不安に陥っていた)。

この危機の影響は、いくつかの国における労働者階級のもっとも貧しいセクターに飢餓の亡霊を呼び戻している。この中にはとりわけ、労働世界から排除されている人々、あるいはまったく労働権を持たないまま不安定なやり方で労働世界に参入している人々、いつも民族的・社会的条件によって排除されている特定の人種の人々が含まれる。

それが、飢餓と闘うための階級連帯の呼びかけを組織しようとする社会運動のイニシアチブが決定的に重要である理由であり、そのイニシアチブが貧しい地域における政治組織にとっての能力に直接的影響を与える理由である。(とりわけブラジル、アメリカ、ヨーロッパにおける)黒人コミュニティや移民コミュニティによる運動が、こうしたイニシアチブを主導してきた。そのことはパンデミックに対する大衆的抵抗を組織する上で決定的役割を果たしている。

食料生産は、現在では、各部門で支配的な一握りの大企業の手に集中している。生産されているものの多くは人間の健康にとってかなり有害である。安価で満腹感を得られるため、ジャンクフードは貧困層にもっとも悪影響を及ぼす肥満や病気の大きな原因となっている。

労働者の雇用と生活条件劣化


労働者階級(われわれはその中に貧しい農民を含めている)は、直接的には死者の数によって、間接的にはレイオフ、雇用喪失や活動停止、賃金カットによって、新型コロナウイルスの主な犠牲者となっている。

たとえばアメリカ、ブラジル、フランスでの最初の研究によれば、どの研究においても、民衆諸階級が新型コロナウイルスによる死者という点で主な犠牲者となっている。ILOの推計によれば、三三億人におよぶ勤労人口のうち、五分の四以上が労働現場の全面的閉鎖、あるいは部分的閉鎖によって影響を受けてきた。アメリカでは、四月に二千万人の雇用が失われ、三月からの新たな失業保険申請は三千万人にのぼった。イギリスでは、三月一六日から三一日までの間に九五万人の失業保険新規申請があったが、これはいつもの一〇倍に達するものだった。ヨーロッパでは、短時間就業の割合が急増した。ドイツでは、五〇万社近い企業が三月に短時間就業を採用した。これは二〇〇八年金融危機後の一カ月間の二〇倍以上になる。

アフリカ、ラテンアメリカ、アジアでは、仕事場のかなりの部分はインフォーマル経済の中に存在している。それはインドでは九〇%にも及んでいる。こうした「正規のルートによらない」労働者は、新型コロナウイルスで収入を失い、実質的に社会的保護を受けておらず、失業手当の対象でもなく、医療サービスもほとんど利用できないでいる。

多くの国々で、こうした労働者のかなりの部分は移民であり、農村部から都市へと流入した国内移民(インド、アフリカの多く)か、あるいは他の国からの移民(湾岸諸国ではアジアから、アメリカでは南アメリカ・中央アメリカから、など)のどちらかである。こうした労働者は、経済破壊だけでなく、レイシストによるスケープゴートにもされるという意味で二重に弱い位置にある。

ILOは、世界中で一六億人の人々―世界のインフォーマル労働者の四分の三にあたる―が、第二四半期に自らの生活手段を失うリスクがあると予想している。ILOの推計では、世界の労働時間の六・七%が第二四半期に失われ、これは一億九五〇〇万人のフルタイム労働者が週四八時間働くのに相当する。このうち、一億二五〇〇万人分はアジアで、二四〇〇万人分は南北アメリカで、二〇〇〇万人分はヨーロッパで失われるという。アフリカ連合による調査によれば、二〇〇〇万人の雇用がアフリカ大陸で失われ、債務が増加するとされる。

差別は一段と悪化させられた


一般的に言って、労働者階級の中でもっとも不安定な人々がウイルスによって直接・間接に一番大きな影響を受けた。ニューヨークでは、ブロンコスに住む黒人であり、アメリカ全体ではネイティブ・アメリカンであり、黒人である。パリ地区では、セーヌ=サン=ドニ県に住む特定の人種の人々であり、ブラジルではスラム(ファベーラ)の黒人である。インドでは、街頭で暮らしたりスラムに住んだりする人々の相当部分がムスリムであり、彼らはモディ首相が非常に急いで、残忍なロックダウンを強制したとき、地主や州当局によってただちに追い立てられた。その結果、人々の巨大な移動が生み出された。フィリピンでは、七万人以上の海外出稼ぎ労働者が、パンデミックの結果として帰国せざるをえなくなるだろうと推計されている。この中には建設現場で働いていた人々もいるが、多くはクルーズ船を含む接客業で働いていた。

こうした人々はすべて、より高い罹患率、より不安定な食料・居住状況、働き続けるためにあちこちを動き回る必要性の犠牲者だった。

ヨーロッパ、アメリカ合衆国、カナダ、ラテンアメリカ、インド、中国、中東では、女性に対する暴力とフェミニサイド(男性による女性の殺人)がそれ以前と比べると三〇%から一〇〇%も増加した。
アメリカ合衆国、カリブ海沿岸地域、南アメリカ(とりわけブラジル)では、アフリカ系の人々が、その大多数が貧困な状態にあることを考えると、パンデミック、失業、インフォーマル部門からの収入の喪失、国家による暴力でもっとも被害を受けている。

すべての国外退去させられた人々、難民、シリア人、パレスチナ人、ウイグル人、バングラデシュのキャンプにいるロヒンギャの人々はこの状況によってさらに大きな影響を受けている。

アラブ湾岸諸国では、南アジアからの何百万人もの移民労働者が、仕事や収入がないもっとも不安定な状況に置かれている。

貧しい家庭出身の生徒や大学生は、教育機関が物理的に閉鎖され、コンピューターやインターネットへのアクセスを全員に保障するという動きがないままに授業がオンライン化されたことによって大きな被害を被ってきた。もっと年少の子どもたちにとっては、特に家庭環境において十分な支援がないことによって、被害を受ける可能性が高い。

民主主義的自由への攻撃も助長


多くの国が緊急事態を封じ込めるという観点から、民主的権利に対する規制を導入してきた。多くの国において、特例法が制定され、反対する者は逮捕されている。たとえばフィリピンでは、ドゥテルテ大統領が新型コロナウイルスを人民管理の抑圧政策を拡大するために用いた。同じことが香港でも起きている。北京政府は民主的権利への新たな制限を導入しつつある。ラテンアメリカでは、たとえばブラジル、チリ、エクアドル、ボリビアでこうした例が見られる。多くの国では、実行されている抑圧・管理措置は、新たな追跡技術や監視技術をともなう新たな政策手段を実験する機会となっている。

明らかに、その目的はこれらの手段を永続化させることにある。資本主義的政策がもたらしたさまざまな結果に反対する数多くの動員があったあとで、新型コロナウイルスが多くの国に達したので、ますますそうなっているのだ。たとえば、香港、アルジェリア、チリ、フランスがそうした例である。社会的に不公正な状況を拡大させたために、支配階級は当然にも社会的動員の再燃を恐れているのだ。

それでもやはり、新型コロナウイルスにもかかわらず、すでに香港では人々が北京政府の反民主主義的な法律に反対して街頭に出ている。ブラジルでも広範な運動がボルソナロの弾劾を要求して組織されつつある。われわれは次の数カ月間において多くの社会的・政治的動員が起きることを予期できる。

ミネアポリス市警の警官によってジョージ・フロイドが処刑されたことに反応したアメリカでの現在の爆発は、トランプの対ウイルス政策によって黒人コミュニティがより大きな影響を受けている中で、そして「黒人の命は大切」運動が展開されているという状況の中で起きている。

社会運動と反資本主義者は攻撃的政策の暴力に反対して団結しなければならない


  医療危機が依然として存在しており、支配階級の唯一の目標が自分たちの利益を再構築することである中では、労働者階級にとっての脅威は二重のものとなっている。事業閉鎖やレイオフが増加し、賃金が支払われなかったり削減されたりするだけでなく、労働権を保護する法律(それが存在するところでは)は緊急措置の期間中に広範囲にわたって問題にされてきたが、その狙いはそうした措置を延長することである。インドでは、モディ政権がこの方向で各州に圧力をかけ、ウッタルプラデシュ州やマディヤプラデシュ州では、健康法や新たな活動のための安全規則、解雇の促進などと一緒に、労働組合の諸権利の一時停止が実施されている。

 ドイツ、スペイン、アメリカ、ブラジルなどさまざまな国において、ロックダウンの間に、人種差別主義、外国人嫌悪、あれやこれやの陰謀説、国家主義、白人優位主義などを掲げて、極右グループがロックダウンに反対するデモを組織した。それ以外では、インドにおいて、(二億人の)ムスリムが「エピデミックに責任がある」と非難するレイシストのキャンペーンの犠牲者となっている。こうしたグループは、ロックダウンの間やその後に、多くの国で存在する社会的・政治的危機に寄生しているのだ。

 しかし、数多くの国において、ロックダウンにもかかわらず、社会運動、労働組合、民衆コミュニティが活動していた。それは、監禁状態になる前に労働組合、政治組織、社会運動によって実行されていた多くの行動や動員の継続としてであった。そうした行動や動員の例としては、性的暴力やレイシストによる暴力に反対する動員、住居の権利を求める動員、フランスの医療労働者の闘いのような被雇用者の闘い、チリ・レバノン・アルジェリア・香港における反緊縮・民主主義運動、そして過去数カ月におこなわれたクライメート・ジャスティスを求める動員などがあげられる。

 いくつかの国では、これは相互援助という新たな社会運動の成長へとつながった。その新たな運動は、現在の状況において「国の中で、国に反対して」活動するという興味深い問題を提起している。それはおそらく長期間にわたって、同じような規模では今まで存在していなかったようなコミュニティ組織を作るという問題なのである。新型コロナウイルス、そしてわれわれが生活する社会についてそれが明らかにしたことによって、こうした動員や運動は、活動を継続させ、成功させるという決意を強くすることができた。

労働の再評価と自己組織化へ


 多くの自己組織化された労働者人民のイニシアチブが、ロックダウンの期間中に、抵抗している諸領域から、農村部と都市の双方において、生まれてきた。人民からの、あるいは組織された諸セクターからのこうしたイニシアチブの例としては、小農民、先住諸民族、失業者、大都市周縁部での人々やコミュニティ、フェミニストの連帯ネットワークなどがある。こうしたイニシアチブは非常に興味深いオルタナティブを作り上げている。たとえば、伝染を確実に防ぐために布製マスクを人々に提供する共同工場のとりくみ、食料の提供やオルタナティブな生産、公的医療システムの防衛とそれを誰でも利用できるという要求、家庭で孤立している間に女性に対する暴力のエスカレーションが増えるとともに女性が担っている厳しい介護労働も増えていることへの非難などが挙げられる。

 危機の結果の一つは、非常に広範囲な民衆諸階層に、使用価値を生み出す種類の労働―エッセンシャル・ワーク―と利益を生み出すためだけに存在する種類の労働とがあることを明らかにしたことである。労働者階級のコミュニティがこの重要な労働に与えている価値を印象付けた行動によって、一般的に言っても、より特別な意味でも、医療・介護における社会的再生産という労働が重要であることが示された。家庭の中であっても、公的セクターあるいは民間セクターのいずれかで(低い)対価を支払われていても、同じように重要なのである。

 多くの国では、医療労働者への感謝の気持ちで始まった行動(拍手を送ること)によって、彼らの視野が広がり、すべての必要不可欠な労働者(エッセンシャル・ワーカーズ)、とりわけ郵便、輸送、食糧分配、小売サービスで働く労働者をも含めるようになった。こうした部門で働く者の多くが女性であり、黒人であり、移民であるということが明らかにされた。

 同時に、航空輸送の顕著な減少、そしてもう少し規模は小さいが道路輸送の著しい減少は、予期していなかった成果をもたらした。それは、「通常は」スモッグで息苦しい何千という都市で大気汚染が減ったことであり、さらに騒音が減ったことにより、この数十年間で、あるいはこれまでで初めて、多くの人々が鳥の歌声を聞けたことである。

 多くの社会運動の中で、そしてあちこちの労働運動の中で、「#ビルド・バック・ベター」というスローガンのもとで討論が始まっている。それは、「常態」というのが、おびただしい富の中での貧困、ホームレス、安全でない労働条件、女性に対する暴力、黒人や移民に対する差別、汚染やフードマイレージ(訳注)、他の側面での環境破局を意味していることを問題にするものだ。

 ロックダウンの期間中やそれが解除された後、多くの行動や労働者のストライキが起こっている。それらは、安全、不必要な生産の閉鎖、労働権の保障、賃金の支払いを求めている。たとえば、多くの国で、アマゾンで働く労働者やケータリング、輸送、物流(配達)部門の労働者が行動を起こしている。

 それゆえ、次の数カ月間における社会運動の絶対必要な任務は、雇用、社会的権利、民主主義的自由に同時に影響を与える社会的攻撃の波に直面している民衆諸階級の健康と権利を守るために、彼らを組織することであり、さらに人間と環境との持続可能な関係を再構築することである。

 (訳注:フード・マイレージとは「食料輸送距離」のことで、輸入食糧の総重量と輸送距離を掛け合わせたもの。食料の生産地から食卓までの距離が長いほど、輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、フードマイレージの高い国ほど、食料の消費が環境に対して大きな負荷を与えていることになる)

医療、住居、雇用、賃金、教育、移民、環境への要求が緊急


*あらゆるところで、とりわけパンデミックで打撃を受けた地域において、検査キットを利用できる人を大幅に増やすために有効な手段および蘇生病床・人工呼吸器の増設に資金を投入すること。適切な保護マスクと生物学的検査をすべての人々に普及させること。

*労働者の健康保護がおこなわれている場合にのみ経済活動を再始動させること。保護手段(マスク、ジェル、ゴーグル、手袋)をすべての被雇用者に提供すること。安全条件が遵守されない場合、被雇用者の保護および仕事から離れる権利の即時行使を認めること。

*仕事を一時停止した労働者の賃金について、休暇をとる、あるいは勤務しなかった時間を後で補填するという義務を課すことなく、企業/国が一〇〇%の責任を負うこと。その中には、移民労働者、不安定労働者、一時的労働者、家事労働者、フリーランス労働者、季節労働者が含まれること。雇用者が危機の間の賃金支払いを拒否した場合には、被雇用者の賃金を支払う義務を国が持つこと。政府は賃金を支払わないという罪を犯した企業に罰金を科すことによって、この介入の費用を回復しなければならない。

*きちんと生活するのに十分な額を保障されたミニマム・インカムを、インフォーマル部門の労働者、失業手当を支給されていない失業者、学生、それが必要な者すべてに国が提供すること。

*資本家グループによる解雇や事業閉鎖をすべて禁止すること。パンデミックが始まって以降に解雇された被雇用者を復職させること。

*学生・教員にとって安全な状況のもとで学校を再開すること。授業がなかったことにより学生に不利な扱いをおこなわないこと。

*ストライキ権を含む社会的権利を一時停止する独裁的で特例的な措置を禁止すること。とりわけロックダウン解除後にこうした措置を継続することを禁止すること。

*借家人の立ち退きをすべて停止すること。賃料、個人ローン、水道料金、エネルギー料金を一時猶予すること。住居が不安定な人々や住居を持たない人々に適切な住居を提供すること。空き家を接収すること。

*障害を持つ人々、高齢者、ロックダウンによって社会的に孤立している、あるいは孤立してきたすべての人々のために適切な社会的介護を提供すること。

*暴力の犠牲者である女性や子どもたちのために、ただちに緊急の保護措置を確立すること。暴力を振るう配偶者を排除する、あるいは犠牲者のための他の住居を提供する決定をすみやかにおこなうこと。重要な医療処置としての避妊・妊娠中絶を必要なときに利用できるよう保障すること。

*閉じられた難民センターを衛生設備のある開かれた受付センターに転換すること。すべての「不法」移民や難民をただちに合法化すること。すべての社会保護システムを利用できるようにして、あらゆる排除をやめること。超過密状態にある難民収容所、とりわけレスボス島にあるモリア収容所やアメリカ・メキシコ国境沿いの収容所をただちに閉鎖すること。


民衆諸階級の利益と社会的必要を一連の緊急解決策の先頭に

1.医療保険を含む医療システムの必要不可欠な領域すべて、および製薬業とバイオ産業、すべての医学・薬品の研究・開発は、最終的には公営化されて、公的管理のもとに置かなければならない。薬品・知見・医療製品の特許は廃止されなければならない。医学研究は、国際的な連帯精神のもとで、人間に奉仕するためだけにおこなわれなければならない。知見や技術はあらゆる国で自由に使えなければならない。

2.このことは、介護・看護・医療のための無料の社会インフラの発展と同時におこなわなければならない。社会的再生産という必要不可欠な仕事は、ほとんど、あるいはもっぱら女性が担っているが、社会的に再検討され、もっとよい報酬が与えられなければならない。

3.医療システムを再建するという状況では、すべての民間病院は公的管理のもとに置かれ、社会的所有へと移行されるべきなのは自明のことである。統一された医療・病院部門は絶対に不可欠である。

4.病院やそれ以外の医療設備を機能させるために必要な清掃やさまざまなサービスは、公共の仕事に戻されるべきである。関連労働に就いている被雇用者にはきちんと賃金を支払わなければならない。労働現場でのきちんとした医療を保障しなければならない。

5.これら全部をうまく処理できるように、一切の武器生産をやめ、武器工場を社会的に有用な生産へと転換し、これによって生まれた資金を同時に医療システムの発展に投資すること。

6.多額の所得・利益・資産には特別税を課して、医療システム拡大にかかる費用を調達すること。危機対策の費用は、最近数十年間に一般大衆の犠牲によって巨大な利益を上げ、富を蓄積してきた者たちに確実に負担させなければならない。

7.労働環境によって人々が病気になることがあってはならない。労働環境は人々の発展と健康に貢献できるものでなければならない。これは食肉産業、農業、高齢者介護、配達サービスで働く未熟練労働者にとって、とりわけ急を要するものである。労働安全、適切な衛生・健康措置が保障されなければならない。労働時間の短縮やよりよい休憩の手配。

8.高品質の公共住宅を建設する都市計画によって、居住に適さない住宅をなくすこと。

9.公共教育システムの強化・拡充。インターネット学習パッケージを提案する企業の発展を理由にした教育の民営化を拒否する。

10.主要なソーシャルメディアであるフェイスブック、ワッツアップ、アマゾン、ズームは、ロックダウンによって大きな利益をあげ、将来の巨額の利益を生み出すデータを収集している。こうしたソーシャルメディアを公的所有に移すこと。それらは(すでにあまりにも多くをかき集めているので、一切の補償なしに)、支配権を移されるべきである。それらは、利益のためではなく、透明性を持った公的なサービスとして運営されるべきである。

11.あらゆる国において、葬祭サービスを公的所有に移すこと。民間企業が人の死から利益を上げ、自らの売り上げの最大化のために人々の悲しみを操作するのは許されるべきではない。

12.持続可能な農業および世界的な食料正義(フード・ジャスティス)。社会的ニーズにもとづいて生産・分配の循環を再組織すること。フード・マイレージと食肉消費の削減。森林伐採を終わらせること。とりわけアグリビジネスによって推進されている森林伐採を終わらせること。

13.民間銀行を大株主への補償なしに収用すること。金融システムを市民管理のもとで社会化すること。個人口座への銀行手数料の一時的停止。当面のニーズを満たすために労働者階級にゼロ金利ローンを提供すること。家計への銀行債務、マイクロクレジット、家賃を凍結すること。誰に対しても水、電気、ガス、インターネットを保証すること。

14.公的債務支払いを当面の間停止することは、パンデミック期間中に大衆的ニーズを満たすために、さまざまな国が必要とする有効な資金を動員することを可能にするに違いない。債務支払いの一時停止は、不当な部分を特定し、それを帳消しにするための市民参加による監査と結びつかなければならない。

15.難民に法的地位を与え、医療・社会保障サービスが利用できるようするとともに、難民の安全な入国のために国境を開放すること。

16.先住民、移民、黒人、女性、LGBTIQ、障害を持った人々に公共サービスを提供する際の差別と闘うためには、何世紀にもわたる構造的差別と闘う積極的行動のプログラム、およびあらゆる人のニーズを真に満たすサービスを作り上げるための本当の政策決定において、コミュニティとの協議や関与をすすめるプログラムが必要不可欠である。


もう一つの世界は急を要する


現在の危機を収束させるためには、それが人間の生命の基盤を危機に陥れるので、エコ社会主義的展望を持った反資本主義的政策が必要である。それは社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段の公的所有をともなう社会が緊急に求められていることを示している。そして、この危機が示すのは、その緊急性が気候変動の原因にブレーキをかけること、「われわれの共同の故郷」を破壊し、生物多様性を減少させ、ウイルス性の深刻な呼吸器症候群のような現代のペストへの道を開いている環境破壊を食い止めることが必要であるということである。

新自由主義の最初の一〇年間において、「もう一つの世界は可能だ!」という熱望があり、さまざまな社会分野が「もう一つの世界は可能だ!」と言って一体となったのなら、今日において、われわれは団結して「もう一つの世界は必要であり、緊急である!」と言わなければならない。われわれは共同の国際主義的行動を必要としているが、それは生命が利益よりも価値がある世界に向けた道筋をわれわれに指し示すものでなければならない。そこでは自然が商品であるのをやめるのだ。現在の危機は明らかに、資本主義生産のかなりの部分が純粋に略奪的で、完全に余計なもので、無駄に使われるものであることを示している。

二〇〇〇年代はじめ、グローバル・ジャスティス運動は、社会運動や労働組合のメンバー何百万人を団結させ、そこに急進的左翼組織が参加していった。今日では、われわれは資本主義、気候変動、差別に反対して闘うための要求を提起しながら、そうした結集を作り上げる必要がある。この目標を追求する上で、さまざまな国において、あるいは国際的レベルで、いくつかのイニシアチブが生まれ始めている。第四インターナショナルの諸組織と活動家は、そのようなイニシアチブの成功に向けて努力を傾注するだろう。社会主義・反資本主義・革命をめざす諸組織と諸潮流が、地域レベルであれ、国際的レベルであれ、共同行動を調整し、論議し、確立することは緊急に必要なのである。

新型コロナウイルス以前のいわゆる通常の状態に戻ることは不可能だろう。未来の人間と地球を脅威にさらしてきたのは、資本主義的「常態」だったからである。社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段を公的所有に移した新たな社会へと変革することは緊急の課題である。それが根本的な社会―エコロジー的転換の展望が必要な理由である。    

メキシコ・トロツキー博物館への財政的支援を訴える

image新型コロナ・ウィルスの流行の打撃を受けるレオン・トロツキー博物館

 一九四〇年、暗殺者ラモン・メルカデルは、メキシコのコヨアカンにある亡命中のトロツキーの住宅に押し入り、スターリンからの暗殺命令を実行した。トロツキーの孫で後に技師となったエステバン・ヴォルコフ・ブロンシュテインは、この暗殺まで祖父のレオン・トロツキーやナタリア・セドフとともにこの館で暮らしていた。トロツキーの一家で、今日、唯一生存者であるヴォルコフは、レオン・トロツキー博物館となっているこの館の経済的存続が危機に陥っているとの警告を発している。

 新型コロナ・ウィルスの流行のために博物館への訪問者が途絶えている。入場料と販売金が、遺品を管理するメキシコのさまざまな行政機関からの委託を管理を行っている、レオン・トロツキー亡命の権利博物館協会の主要な収入源だが、その財政状態は改善不可能な危機に瀕している。

 博物館は、トロツキーが生活していた家屋と庭と警護施設から成り立っていて、
家屋はその当時のままに維持されているが、とりわけその書斎はラモン・メルカデルがトロツキーを暗殺した時そのままである。

 博物館がなくなることになれば、それは革命の歴史の記憶にたいする実に重大
な打撃となるだろう。

 第四インターナショナル・スペイン支部、『アンティカピタリスタス』がカン
パを集める運動を計画している。

 この計画をともに担うことを望む人々はこの活動に参加できる。

宛先: Association Anticapitalistas
IBAN: ES25 1491 0001 2221 7799 8321
基金の名称:Donacion Museo


 皆さんの支援を望む。額の多少は問題ない。この必要に応じて連帯を。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::

 以上のカンパ要請は、フランスの月刊誌「ランティ・カピタリスト」(2020年4月号)に掲載されたものです。

■新時代社の口座に振り込み、トロツキー博物館支援のためと書いて下さい。そうすればまとめて送金します。

新時代社 郵便振替 00290=6=64430


報告 2.11 「高校闘争から半世紀―私たちは何を残したのか、未来への継承 高校生が世界 を変える」シンポジウム

DSC_1030 二月一一日午後一時より、東京・連合会館で「高校闘争から半世紀―私たちは何を残したのか、未来への継承 高校生が世界を変える」シンポジウムが実行委主催で開かれ、会場一杯の三〇〇人が集まった。

 集会の主旨は次の通り。

 今から半世紀前、日本の高校生たちは自由を求めて起ち上がった。「高校紛(闘)争」と呼ばれたこの闘いは、制服の自由化や管理教育の廃止を求め、時に校舎をバリケードで封鎖したり、授業ボイコット、卒業式中止など多種多様、同時多発的な高校生の叛乱だった。……

 高校生が世界を変える。いびつな大人社会へ否を突き付け、研ぎ澄まされた感性と熱情を持ち、恐れを知らず起ち上がった高校生運動の足跡を語り継ぎ、未来への糧に繋がるよう、「高校闘争50年集会」を企画した。かつての高校生は、半世紀の時間をどう生きてきたのか。様々な人生をくぐりながらも高校生としての決意を原点に生き抜いてきた仲間も少なくない。学生運動とは似て非なる高校生運動、その実相に迫り、現在、未来の高校生に何を伝えられるか探る集いである。(呼びかけより)

 シンポジウムは以下の三部からなっていた。

Ⅰ部 1968 年は我々に何をもたらしたか ―自己否定を巡って―山本義隆(東大全共闘)+高校全共闘 司会:高橋順一(武蔵高校・早稲田大学教育学部教授)

Ⅱ部 運動の現場から ―香港の学生・日本の高校生の闘い―
香港の闘う学生+日本の闘う学生 司会:初沢亜利(ドキュメンタリー写真家、東北・沖縄・北朝鮮・香港などの現場撮影取材)

Ⅲ部 いま高校生は社会とどう向き合っているか 現役・卒業高校生+保坂展人
(東京世田谷区長)司会:小林哲夫(『高校生紛争』1969―1970「闘争」の歴史と証言 著者)

 元大阪府高連OB有志からのメッセージの紹介、一九六七年一〇・八羽田闘争で虐殺された山崎博昭さんへの黙とうから会が始まった。

 Ⅰ部。都立北高、麻布学園、都立上野高、慶応高校、教育大付属駒場の元高校
生たちがどのように闘ったのかを証言した。

 池田実さん。都立北高は進学校ではなく、定時制も併設されていた。学内問題とベトナム反戦、王子野戦病院撤去などを求めて、一カ月間バリケード封鎖した。警察の導入による封鎖解除の時、先に教師が来て生徒を逃した。スローガンは「永続バリケードを続ける」、それが革命に続く。全日・夜間の三人ずつが退学処分になった。中卒で郵政に入り、一九七八年の年賀をとばす闘いで解雇されたが撤回闘争を続けて勝利し、職場復帰した。物事を知らないから闘えたし、自分で考え行動する、社会を変えるという信念でその後の人生を生きてきた。

 麻布学園。リベラルの学校だったが山内校長代行が就任してから、生徒への処分を乱発し生徒会を凍結した。それに生徒が怒り大衆的な高校生デモ。学校が学園を封鎖した。全校生徒集会で追及し、山内がその場で辞任を表明し勝利した。街頭デモで逮捕されたが楽しかったし、真実の価値観を見つけた。勝つことで自信がついた。

 その他の高校闘争が紹介された。世界的な閉塞した状況の解放に向けた新しい文化の発信を受けていた。新鮮な怒りの発露であったとの証言。



 そして、元東大全共闘の山本義隆さんが次のように発言した。

 六〇年安保の年に大学に入学した。東大闘争の時は大学院生。一九五八年当時全学連委員長の塩川喜信さん(助手共闘)がいて、集会で発言してもらったら参加していた学生から「ウォー」という驚きと共感の声があがった。

 一九六八年七月に安田講堂を占拠した。もともと本部学館を占拠し、安田講堂は開放しようと考えていた。主導したのはノンセクトと青医連だった。東大闘争は突然起こったのではなく、砂川闘争やベトナム反戦会議の運動の蓄積があったからだ。

 帝大解体というスローガンは国策大学批判として初めからあったが「自己否定」という言い方は安田闘争の後ではないか。

 一九六六年、日本物理学会が米国から援助金をもらった。「科学が発達すれば
いい。政治を持ち込むな」と。ベトナム戦争の最中であり、米国からの援助は政治的なことだった。研究を進めるとは何かが問われた。なぜ、国がカネを出すのか。それは近代的国家になっていく、国際社会に認められるという国威発揚のためだ。

 中曽根元首相は原子力開発を最初に言い出した。核武装のためというより、核技術を持つことが一等国になる、超大国の扱いを受けるという狙いがあった。企業からカネが入ってくる。官産学で推進した。それを支えたのが旧帝大で、特権階級だ。その枠内での運動ではいけないということで、「自己否定」という考えが出てきた。
 

 二〇一一年福島原発事故が起きた。この時、東大の学生は何もしていない。去年、香港の大学に機動隊が突入する時、京大の学園祭に行ったが、連帯の盾看が一つもなかった。ダメだと思った。「この五〇年何をやっていたのか。若い人たちに何も伝えてこなかった」。悔しい思いでいっぱいだ。

 Ⅱ部。香港から陳逸正さん(在日香港人)、劉燕子(香港人、東海大講師)が参加し、香港の事態について報告した。

 新コロナウィルス問題では、マスク、水、トイレットペーパーも足りない、パ
ニック状態だ。香港政府・中国政府はまったく信用できない。患者・死者数はゼロが二つ多いのではないか、家から出ないようにしていると報告した。

 香港のデモの特徴は何か。

 ①リーダーは不在②勇武派と穏健派、内ゲバ対立が起きていない。区の選挙で大勝した。今後ともテロリズムは起きないだろう。勇武派が出てきたのは百万デモやヒューマンチェーンをやっても何も変えられなかったからだ。警察のすさまじい暴力によって、それに対抗する勇武派が登場した。民主派が闘えば勇武派にもなる。理工大の攻防の時、市民が救援に駆けつけた。数十億円のカンパが集められた。

 「時代革命」というスローガン。すべての普遍的価値を求める。香港の一国二制度が終わる二〇四七年に生きなければならない。不安を抱えながら生活していく。今後も何回もうねりが起こり成長していくだろう。皆さんの応援がぜひ必要だ。

 竹中平蔵の授業ボイコットを訴えて闘った元東洋大生の船橋秀人さんがエールを送った。

 Ⅲ部。旭川東、都立上野、国際、杉並、東京学芸大学附属国際、神奈川県立相模原、上溝南などの生徒さん、出身の学生さんなど一〇人が発言した。

◦温暖化対策を求める世界の動きと連動して、都内や全国でデモなどを取り組んだ。

◦二〇一五年安保法制反対の行動。進学校ではない、私立・党派を超えて・キリスト教など多様な人々が集まった。一八歳で選挙権が認められたが政治活動は認めない、届け出制や禁止。政治活動をしようとすると圧力をかけられた。同級生を意識しSNSでの発信、メディア写りを考えてサウンドデモ。それでも各学校二~三人、全国で百人、よく集まって三〇人。アベと言えば、巨人のアベの話になってしまった。

◦「ブラック」(ママ)校則。高校一年の時、校則が一方的に変えられた。自主・自立の自由な高校だった。署名・臨時の生徒大会をやったが、校則は校長が作るものだとはねつけられた。

◦三年間生徒会長をやったが、ブラック校則問題など考える生徒がほとんどいなかった。違和感・疑問を持っている生徒もいないわけではない。どうアプローチしていいのか悩んだ。

◦定時制高校を六年かけて卒業した。校内新聞は検閲され一旦廃刊にされた。いまは日本自治委員会をつくり、昨年から二四の都立高校で表現の自由のチラシをまいている。全校生徒の頭髪検査がやられるなど人権が侵害されている。

◦二〇一五年の夏、三里塚闘争の本を読み、運動に目覚めた。声をあげていくことが大切だ。

◦原水禁の活動に参加している。生徒会は低調で、教員組織の私兵のようになっている。教員から圧力がある。反発生徒もぽつぽついる。ひずみは大きくなっている。未来は開けてくるだろう。世代を超えていっしょにやっていきたい。

◦頭髪問題がおき、署名活動や校長室への直談判を行ったが分断工作で敗北した。国会前のハンスト実に参加したり反ヘイト直接行動をやってきた。

◦北海道の田舎では運動はなかなか広がらない。アイヌ民族への差別が行われてい
た。苦労している福島と沖縄を見ないといけない。声なき声に向き合っていきたい。

五〇年前に闘った元仙台一高が五年かけて制服の自由を勝ち取った報告を行った。



 保坂展人さん(東京世田谷区長)が自らの闘いと世田谷区での取り組みを報告した。

 私は六四歳だが中学生の時、学内新聞を作って「ベトナム反戦や部落差別問題」を訴え、政治活動をさせろと要求した。このことが高校受験の時、内申書に否定的に書かれ、すべての高校受験で落とされた。内申書裁判を起こし、地裁で勝ったが高裁・最高裁で負けた。しかし、学ぶ側の権利権で主張は認められ、その後内申書を使った弾圧はやんだ。

 役に立たない校則を見直そうと呼びかけている。世田谷区立桜丘中学で生徒会が三つの要求を出した。①体育館にエアコンをつける②校庭を芝生に③定期テストの廃止。学校側が①③を受けれ、制服の廃止、携帯電話の使用も認めた。そうすると生徒の自主的活動が活発になり、文化祭には外からも含めて一〇〇〇人もの人が押し寄せた。

 いじめ・不登校について。不登校生は五年前の倍になっている。これに対して、教育機会均等法ができ、夜間中学やフリースクールの支援が行われるようになった。東京シューレのような公設民営の学校でもオルタナティブ教育が広がっている。

 オランダのラーク(高校生連合)は国からの一億円の補助金を使い、高校生が三人の職員を雇い、ロビー活動やテストの監視をやっていて、自治拠点が生まれている。日本でも政権交代を行い、実現してほしい。

 四時間にわたる盛りだくさんのシンポジウムは成功裏に終わったが、現在の高校生が置かれている人権侵害をどうするか、五〇年前の高校生の闘争が個々の生き方として継承されたが、世代としてバトンタッチできなかったのはなぜ?かなど、今後も究明していかなければならない課題が残された。

(M)

【第四インター声明】われわれの未来を取りもどせ、気候変動ではなくシステムの変革を

_20191005_231405(アフガニスタンでの金曜気候ストライキ運動 9月20日)

声明

われわれの未来を取りもどせ、気候変動ではなくシステムの変革を

2019年9月26日 第四インターナショナル執行ビューロー

 九月二〇日の金曜日に始まった動員の一週間は、歴史的な規模を持つものだった。すでに一五六カ国で四〇〇万人がデモに参加し、五〇〇〇以上のイベントが行われている。数十万人の若者たちが何か月にもわたって学校や大学の外に出て、気候ストライキを行っていたが、今週はさらに大規模なものとなった。それは多くの場合、グレタ・トゥンベリの呼びかけに応えたものだった。現に進行中の気候破局を回避しようとする新しい世代が、地球上のすべての大陸で広がっている。

 二〇一九年七月は、これまでの記録の中で最も暑い七月だった。何ものにも代えがたい何十万ヘクタールものアマゾン流域の森林が灰燼に帰し、かつてなかった森林火災がグリーンランド、シベリア、アラスカで猛威をふるった。ハリケーン「ドリアン」がバハマを、台風ファクサイ(日本での呼称は台風15号)が日本を襲い、スペイン南部では滝のような豪雨が降り注いだ……。このリストはさらに長く続き、この一世紀半をかけた平均気温の一・五℃上昇の劇的な影響を示すものとなっている。

 摂氏二度は、安全のリミットだなどとは全く言えない。最大限でも一・五℃以下にとどめることがパリ協定で示されている。それは気候問題での大衆運動と、最初に海面水位上昇に脅かされる諸国からの圧力によるものだった。しかし二〇一五年以後、温暖化ガスの排出は増え続け、摂氏七度上昇にも達するという予測も出されている。

 今週、ニューヨークで国連気候行動サミットが開催されている。すでに四年前になされた極めて不適切な約束にも達していないにもかかわらず、国連事務総長は、これら諸国に「二〇五〇年までの炭素ガス排出ゼロを達成する計画」「化石燃料に代わるエネルギー源をどうするか」、「炭素税」、「二〇二〇年以後、新しい石炭火力発電所を稼働させない方法」を問うている。われわれは、この何度目か分からないサミットからは何ものも生まれないこと、資本主義は気候犯罪を続けるだろうことを、すでに知っている。

 気候を変動させないためには、システムを変えなければならない。われわれの希望は、変わったことの中にある。それは若者たちが主導するグローバルな結集である。われわれは労働者運動、女性運動、LGBTQ運動、略奪的資本主義によって直接虐殺された先住民族、グローバルな反レイシスト・反ホモフォビア(同性愛忌避に対する闘い)運動に、すべての人が生きることのできる惑星をめざす、この根本的な闘いに結集することを呼びかける。

 ストライキや気候行進が九月二七日、二八日の週末に、再度行われる。この行動を強化し、社会的公正と気候正義をめざす国際的で大規模のラディカルな運動を共に作り出そう。

青年戦線第195号(2019.9.23)ができました。

配信●青年戦線195表紙1・表紙4青年戦線第195号(2019.9.23)ができました。

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400円

編集発行

日本共産青年同盟「青年戦線」編集委員会
東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付
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FAX 03-3372-9402


目次

◆終わりにしよう天皇制 4.27—5.1反天WEEK 1p

◆オリンピック災害おことわり! 
     「東京五輪」1年前「返上」アクション 8p

◆「2020年東京五輪に反対する18の理由」 16p

アジア連帯講座:公開講座

◆反自衛隊連続講座1
反基地運動から見えてきた自衛隊の今/池田五律さん 17p

◆反自衛隊連続講座2
自衛隊の南西シフト 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態/小西 誠さん 21p

◆フランス「黄色いベスト」運動を学ぶ/湯川順夫さん 27p

◆参院選・統一地方選の結果をどう見るか? 大阪からの視点/寺本 勉さん 45p

【10.25公開講座】イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

Screenshot_20190819-155635~2イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

講師:浅見和彦さん(専修大学)

日時:10月25日(金)/午後6時30分〜

場所:文京区民センター3C会議室(都営地下鉄三田線春日駅下車)/
https://www.city.bunkyo.lg.jp

 イギリスの経済危機などを背景に2015年5月の総選挙で保守党は、英国の「ブレグジット」(欧州連合離脱)の是非を問う国民投票の実施を公約し、16年6月に国民投票を行いました。結果は、離脱賛成が過半数でした。ところが保守党のメイ首相は、EU離脱協定案を議会に提出したが、否決。「ブレグジット」をめぐって混迷を深めていくことになります。

メイ首相辞任後、7月に保守党党首とな
ったボリス・ジョンソンは、「EUとの合意があってもなくても10月31日の期限までに必ず離脱する」と公言しています。労働党は、第二回国民投票案が提出されれば支持すると表明していますが、内部的にはスタンスのとり方の違いがあるようです。

 このような流れの中で左派系・労働組合はどういう態度なのだろうか。「レフト・ユニティー(左翼統一)」(映画監督のケン・ローチなどが呼びかけ、2013年11月に結成)は、「今回の国民投票は、反移民感情に突き動かされ、レイシズムが焚きつけた極右からの圧力がもたらしたものだ。これは英国の政治史の中で最も反動的な全国運動であり、極右の公然たる登場に結果してしまった」と批判。また、左派系も「レイシズム、外国人排撃、英民族主義の右翼の構想」と批判してきたが、諸傾向と温度差があり一括りできない状況です。

 分析・評価するための情報が少ないなかで、英国の「ブレグジット」問題をこじ開けるための第一歩として公開講座を設定しました。浅見和彦さん(専修大学)は、「現代労働組合研究会/新しい労働組合運動のゆくえ・戦後労働運動の歴史をたどり、イギリス運輸・一般労組の研究」というテーマで研究活動を行っています。近日、ギリス現地調査に向かう予定です。浅見さんから「ブレグジット」問題をめぐる労働組合の諸傾向、人々の動向などのレポートを含めて報告していただきます。


浅見和彦さん(専修大学)のブログ http://e-kyodo.sakura.ne.jp/asamikazuhiko/unyuippan.htm

アジア連帯講座 東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-
9401 FAX:03-3372-9402
アジア連帯講座ブログ:「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/ 

【映画紹介】『ルイズ その旅立ち』

mako-ruizu-1001映画

『ルイズ その旅立ち』

製作・監督・脚本 藤原智子 
1997年/ドキュメンタリー/98分


迫害・弾圧をバネに生き抜くこと

NHKBSの「悪女伝説」(7月13日)で伊藤野枝を取り上げていた。「原始女性は太陽であった」と平塚らいてうが「青鞜」創刊号で、鮮烈にフェミズニム宣言をした。その後、伊藤野枝が二代目編集長に就任。伊藤は封建的女性支配の根幹を婚姻制度に求め、「結婚制度の廃止」を主張した。平塚と伊藤の間には考え方の違い、溝が広がっていった。伊藤が大杉と出会い、明治支配体制を根本から否定するようになっていったからであろう。

このテレビの放映後、七月一六日、東京江東区豊洲のシビックホールで「ルイズその旅立ち」が、中井厚さんと東京琉球館の島袋陽子さんで組織する「きっかけとなる映画を上映する会」によって上映された。

鎖を断ち切った後半生を追う

一九二二年、伊藤ルイさんは大杉栄と伊藤野枝の四女として生まれた。大杉によって、フランス・パリコミューンで活躍した無政府主義者ルイズ・ミッシェルにちなんでルイズと命名された。一九二三年九月一六日、大震災の混乱に乗じて、大杉栄と伊藤野枝そして甥の橘宗一は甘粕憲兵大尉らによって虐殺された。朝鮮人や労働運動家も大量虐殺された。一九一七年ロシア革命、一九一八年米騒動、一九一九年朝鮮三・一万歳独立運動と国内外における政治・民族運動に恐れをなした支配者による予防反革命的大弾圧の一環だった。

ルイさんは福岡の野枝の両親の所に引き取られ育てられた。ルイさんは四〇歳代になるまで、社会運動に関わることはなく、素性も明らかにしなかった。一九八二年、「ルイズ―父に貰いし名は」(松下竜一著)が世に出てから、飛び放たれたように、自らを明らかにして活動に邁進した。一九九六年六月にルイさんは七四歳でがんで亡くなった。

虐殺された両親の真実・生き方

映画はルイさんが亡くなった一カ月後の七月に開かれた「みんなでルイさんを送る会」から始まる。ルイさんの子どもたちや幼なじみ、市民運動の仲間たちによって、人間伊藤ルイがどのような人生を歩んできたかが明らかにされていく。そして、大杉らの虐殺問題が取り上げられていく。両親と甥の殺害がどのように行われたか、その墓の行方について明らかにされていく。橘宗一少年の父による「一九二三年九月十六日、大杉栄、伊藤野枝と共に犬共に虐殺さる」と刻まれた墓碑が作られたが、その墓碑は草むらに隠される所にあった。一九七二年、発見された。野枝の墓は一九二四年に建てられ、その大きな石の無名碑(「野枝さんの墓」と村民たちが呼ばれていた)は三度にわたって移動させられた。

一九七六年、大杉ら三人の死因鑑定書が発見された。検死をした軍医が写しを大切なものとして二重蓋の下に、保管していたものを遺族が発見した。それによると、大杉らは連行後、激しい暴行が加えられ、首を絞められ、殺された。麻布にくるまれ古井戸に投げ込まれ埋められた。軍医によってその麻袋の遺体が描かれていた。ルイさんはこの事実を知り、甚だしいショックを受けた。

o-ruiz弾圧された人々の思いを胸に

ルイさんは「朝鮮人被爆者孫振斗さんに治療と在留を!」運動、「九・一六の会」(多くの有名・無名の虐殺された人々、刑死・獄死・拷問死の人たち、話を聞いたりしようという会)を始める。えん罪事件「甲山事件」の救援、東京拘置所が死刑囚にTシャツの差し入れ拒否したのに対して、本人訴訟で提訴。原告団長を引き受ける。一九八三年、松下竜一さん主宰の「草の根通信」に、全国各地の“草の根”の人々を訪ねての旅日記がしばしば登場するようになる。市民運動をつなぐネット作りに貢献した。

「水に流してはいけない事がいっぱいあるんです。それをためて人生のバネにするんです」(ルイさんの言葉)。

映画上映後に、大杉豊さん(大杉栄の弟を父にもつ)が大杉らの虐殺の経過を詳しく説明し、ルイさんについて「不正義と闘い、闘い尽して、生き切った人生だった。大杉、野枝にも見せたかった映画だ」と話した。

映画のエンディングはワルシャワ労働歌であった。非常に気分がよく、「がんばろう」、「ルイさん、ありがとう」と口ずさみながら映画館を後にした。

伊藤ルイ著作
「海の歌う日―大杉栄・伊藤野枝へ―ルイズより」講談社
「必然の出会い―時代、ひとをみつめて」記録社
「海を翔ける―草の根を紡ぐ旅」八月書館
「この世に希望と解放 そして平和の思いを―ルイさんの遺言―」うみの会

なお、「ルイズ、その絆は~関東大震災60年目」(RKB毎日放送、一九八二年)
上映会があります。八月七日(水)午後七時~東京琉球館(JR駒込駅東口下車2分、固定電話03―5974―1333)要予約10人 

青年戦線 第194号(2019.1.1)ができました。

Screenshot_20190102-151544~2青年戦線 第194号(2019.1.1)ができました。


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青年戦線第194号(2019.1.1) 誌面案内

◆特集 「天皇代替わり」とどう闘うか

   天野恵一さん(反天皇制運動連絡会)に聞く

◆なぜ元号はいらないのか?7.21集会

◆10.22 「明治150年」記念式典反対デモ

◆終わりにしよう天皇制 11.25大集会&デモ

◆「教育勅語」礼賛の文科相は辞任せよ

◆読書案内 「日本会議の野望」

◆安田純平さん人質事件をどう見るか

◆12.2「三里塚大地共有運動の会」設立報告集会

◆アジア連帯講座・10.19公開講座
「反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ」


報告:反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会

配信:アジ連写真 10月19日、アジア連帯講座は、文京区民センターで公開講座「反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会」を行った。

 2018年2月、第四インターナショナル第17回世界大会(ヨーロッパ)が開催され、
アジア・オセアニア、中東、アフリカ、欧州、南北アメリカの三六カ国の仲間が参加した。論点は、①「資本主義的グローバル化、帝国主義、地政学的カオスとその意味」、②「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」、③「社会的激動、反撃、オルタナティブ」だった。

 世界大会は、新自由主義的グローバル化の危機と、レイシズム、あるいは排外主義的ポピュリズムの広がりの中で、労働者民衆の新たな反撃を組織し、反資本主義的オルタナティブへの水路をいかに切り拓いていくかという問題意識の下に熱心な論議が展開された。つまり、労働運動の不均等発展の中での課題、自己組織化と協同組合、農民の闘い、民主主義・社会的公正を求める運動の位置、社会における失業青年の位置、暴力・レイプ・「フェミニサイド」(女性へのジェノサイド)に反対し女性の権利を守ること、LGBTプラスの闘い、移民の権利を守る闘い、地球温暖化に反対する運動について各国の仲間たちから様々な闘いのうえで報告された。世界大会の論議を決議集としてまとめた。

 講座は、大会に参加した国富建治さん(新時代社)、大道寺毅さん(労働者の力社)から問題提起を受けた。

 国富さんは、「第四インターナショナル第17回世界大会に参加して」というテーマから次のように提起した。

 「私が最初に参加した世界大会は、1991年の第13回世界大会でソ連・東欧ブロックの崩壊と湾岸戦争の開始という情勢だった。続いて2003年、第15回大会は、反グローバリゼーション運動の拡大とイラク戦争下だった。2010年 第16回世界大会は、08年のリーマンショックを受けてオルタグローバリゼーション運動の困難に直面した。さらに、あらためて中心的テーマとして強調されたのは『気候変動』の問題であり、エコ社会主義問題だった」。

 「今回の世界大会は、新しい反資本主義的左翼再編問題、例えば、フランス・NPAをはじめとした左翼再編の困難性についても改めて自覚的にならざるを得ない。同時にアジアでは、フィリピン・IIREマニラ、パキスタンのアワミ労働者党(AWP)の積極的な活動、朝鮮半島(とりわけ韓国との関係)、香港の仲間たちとの関係をいかに豊富化させていくのか、その責任は大きい。アジアの同志たちにとっては、日本に同志たちがいて、活動を継続している という事実そのものが貴重なことなのだろうと思う。そのあたりを意識してわれわれの政治論議を積み重ねよう。とりわけ安倍改憲のタイムスケジュールが煮詰まっていく中で沖縄闘争の政治的意味、天皇代替わり問題、2020年五輪に対して、国際主義をどう貫くかが求められる」。

 大道寺さんは、「総括的感想」を次のように提起した。

 「主に『社会的抵抗』議題の論議において、第一に資本主義の歴史的な限界を底流とした、総体的な深い危機という客観的な現実の捉え方に対する不一致はない。だが、不一致は現実に対する対応の方向性だ。民衆の闘争体制(階級意識の後退、社会主義の否定的認識)に対する政治、その克服と再建のあり方に対する違いがある。討論は極めて活発であり、型にはまった発言ではなく、各々の活動から得ている実感を基礎においた模索がにじみ出ていた。また、その中で制度化への吸収というリスクにどう対処するか、にも明確な問題意識が見られた」。

 「議論の中では、伝統的な改良主義の指導部が総逃亡している状況の中で、各国の同志たちが多様な戦線での民衆的抵抗を組織する重要な部分になっていることが示されていた。その中で新しい型で階級闘争を再建しつつ、それを足場とする世界的な社会主義革命の道筋・経路をどうつかみ取るか、という強い問題意識が広く感じられた。その上で、階級闘争に有益な幅広い政党建設、それを通じた力関係転換に向けた挑戦という任務設定に対する幅広い共有感覚があった。この活動実践での経験を裏付けに、討論を先の戦略的方向の探究に向けてどれだけ具体的に深めていけるかが今後の課題だと思われる」。

 提起を受けて質疑応答、討論を行い、今後も「第四インターナショナル第17回世界大会決議集」や「週刊かけはし」を通して継続討論をしていくことを確認した。

(Y)

 

報告:11.4シンポジウム 世界を揺るがした100年間~世界史からみたロシア革命

PB040244 11月4日、「シンポジウム 世界を揺るがした100年間~世界史からみたロシア革命」を亀戸文化センターで行った。主催は実行委、共催がトロツキー研究所、アジア連帯講座、東アジア研究会。参加者は83人。

 1917年のロシア10月革命から100年。この史上初の社会主義革命は、労働者の権利獲得、民族自決、男女同権、反戦平和などを実現した。その後のスターリニスト的歪曲にもかかわらず、一〇〇年ものあいだ世界を揺るがせ続けてきた。いま改めてロシア革命を世界史の中に位置づけるとともに、ヨーロッパとアジアに及ぼしたその影響を振り返った。

 開会あいさつが山本大さん(トロツキー研究所)から行われ、「1989年のベルリンの壁崩壊に始まった東欧民主革命は、ソ連の影響下にあった東ヨーロッパ全体に及び、1992年、共産党の独裁下にあったソ連も崩壊した。こうした一連の事態からロシア革命と社会主義の歴史は一党独裁の負の歴史であるとして否定的に捉え、またヒトラーやムッソリーニの全体主義と並べて、スターリンによる独裁を左右の全体主義として歴史の闇に葬ろうとしている。シンポジウムは、こうした流れに抗し、また、ロシア革命とその後の歩み全体を賛美して、肯定的に総括しようとするものとも無縁だ。世界初のプロレタリア社会主義革命であり、永続革命として行われたロシア革命を世界史の中で検証していきたいと考えて企画した」と発言し、シンポジウムの討論の方向性を示した。

報告─森田成也さん

 森田成也さん(大学非常勤講師)は、「世界革命としてのロシア革命――ヨーロッパ、ロシア、アジア」をテーマに以下のように報告した。

 「ロシア革命の成立条件の国際的文脈と国際性」について、「その国内的諸条件として歴史的後発性、不均等複合発展の産物としてのロシア社会の特殊性、ブルジョア民主主義的課題の歴史的先送り、ブルジョアジーの反動化、労働者階級の発達とヘゲモニー、同盟者としての農民階級の革命性、都市のヘゲモニーがあり、これらがすべて合わさって典型的な永続革命的軌道をたどった。また世界大戦と帝国主義の最も弱い環としての国際的条件が存在していた」。

 「思想的諸条件としてはマルクス主義の国際性、多民族国家ロシアにおける少数民族の革命性(とくにラトビア人、ユダヤ人、 ポーランド人) があり、最終的勝利の条件としてヨーロッパ革命を展望していた。しかし第一次大戦後のヨーロッパへの波及と挫折(ドイツ、 オーストリア、イタリア、ハンガリー、等) によってロシア革命が完結しうる国際的条件の強制的停止とスターリニズムへの軌道の開始となった。また、ロシア革命はアジアへの巨大なインパクトを与え、第二次中国革命の高揚を作り出したが挫折の道を辿った」。

 「ロシア革命の世界史的位置づけと世界史的意義」について、「ロシア革命は、欧米周辺国および植民地諸国に下からの近代化、民主主義化の過程を可能としたこと(それは勝利の軌道を描いた場合には社会主義革命と必然的に結合する)と、欧米社会それ自身に社会主義的要素を大なり小なり取りこむことを余儀なくさせた(福祉国家化)。ロシア革命は、社会的平等(労働者・農民の権利、女性・少数民族・同性愛者の権利、植民地解放と民族自決権)を重視する現代社会の基礎をつくり出した。逆説的なことに、ソ連東欧の崩壊は資本主義世界システムの進歩的生命力の終焉をも意味した」と指摘した。

 さらに森田さんは、「『永続革命の時代』終焉後の21世紀はいかなる時代になるのか?」と問いかけ、「理論的推論」として「世界の資本主義化の完了と世界資本主義の危機の深化を前提にして、世界、とくに先進資本主義国を(再度)中心とした『反資本主義革命の時代』(21世紀) だ。つまり、社会主義的意識・展望の大幅な後退と、資本主義それ自身の危機・行き詰まりの深化という歴史的矛盾があり、21世紀が本当に『反資本主義革命の時代』になるかどうかは、今後の展開と主体的努力しだい。 未来はいい意味でも悪い意味でも決定されていない」と集約した。

報告─中村勝己さん

 中村勝己さん(大学非常勤講師)は、「ヨーロッパから見たロシア革命」をテーマに報告した。

 「はじめに」では、「ロシア革命はレーニン、トロツキーらが唱える『プロレタリアートの独裁』を実現したものとみなされ、これをめぐり彼らボリシェヴィキのリーダーたちとヨーロッパのマルクス主義者たちが論争を繰り広げた。カール・カウツキー(1854~1938)、ローザ・ルクセンブルク(1871~1919)らである。いずれも革命のあり方およびその後の社会の運営の原理として『プロレタリア独裁』を認めるが、その内容がかなり異なるところが興味深い。論争の際の論点はたくさんあったが、今回はあえて『社会主義革命と自由主義、民主主義は両立するのか? 例えばロシア革命で憲法制定議会を解散させたことは正しかったか?』をめぐる論争に絞って見てみることにする」と中村さんの問題意識を提起した。

 そのうえで「ロシア革命論争」として

①カウツキー『プロレタリアートの独裁』における「公開性と多元性」

②レーニンのプロレタリアートの独裁論

③ローザ・ルクセンブルクの『ロシア革命論』に見る「民主主義と自由」を比較分析し、「ローザの独裁批判は、カウツキーとは異なり民衆の自由を拡大するものとしてロシア革命を肯定的に捉えている。しかしまた、カウツキーとローザの独裁批判にはある種の共通点も見てとれる。それは、民主主義(人民主権)には多元性(複数性)を保障する論理が必要だという視点である。西欧で多元性を重視したのは自由主義の伝統である。自由主義の視点をカウツキーは明示的に、ローザは暗黙の形で前提としている。そして彼らの批判は、レーニン死去後、スターリン独裁体制の成立により裏づけられたともいえる」ことを明らかにした。

 次に中村さんは、「 グラムシとロシア革命――『資本論』に反する革命」について提起し、「グラムシは、ロシアにおける資本主義発展の遅れを取り戻す力がボリシェヴェキの主体的な行動にかかっていると考えていた。これは、カウツキーの客観主義的=待機主義的なロシア革命理解への批判にもなっている。これを指して多くの研究者たちが「初期グラムシの主意主義(主体性中心主義)」と呼んでいた。青年時代のグラムシがこうした強い主意主義的傾向をもってロシア革命の意味を解釈したことの背景には、当時のマルクス主義の主流派が社会進化論的、実証主義的な傾向を示していたのに対して、そうした実証主義への「反逆」として新たな思想潮流が登場しつつあり、それにグラムシが影響を受けていたことが挙げられる」と分析した。

 さらに「グラムシ『獄中ノート』における省察――機動戦から陣地戦への転換」では、「トロツキーが唱えた『永続革命論』とは、ロシアのような後進資本主義国における革命は、大都市の労働者階級(プロレタリアート)の主導による自由と民主主義を求める革命(ブルジョア革命)をもって始まり、そのまま中断することなく、社会主義革命へと連続していかざるをえないこと、また、その革命は先進資本主義諸国の社会主義革命へと連続的に波及し、その援助を受けることを必要とすることなどを骨子とする。グラムシは、この永続革命論に陣地戦論を対置し、西欧の革命を可能とする条件を考察する」と評価した。

 そして、「グラムシは、市民社会における知識人の役割、アメリカニズム(フォーディズム)の導入による労働と生活の規範の規律化、政党としてのメディアの役割、社会運動におけるサバルタン(従属的諸集団)の自立の過程、〈現代の君主〉としての政党の役割などのテーマを掘り下げていく。その際に注目されるのはつねに〈ヘゲモニー〉というミクロな権力作用である。物理的な強制力とは別の精神的、文化的、道徳的などの影響力がいかに国家権力による支配を支えているか、民衆はいかにそこから自立するのかが注目されている。このように獄中期グラムシの主要な関心は、ロシア革命の再審よりも来たるべき西欧革命の方向性を探ることにあったと言えるだろう」と語った。

 また「来たるべき革命は、機動戦か陣地戦か、情報戦か空間占拠戦か、といった戦術レベルでの議論をする前に、そもそも私たちが目指すべき社会とはどのような社会なのかという戦略レベルでの議論をしないと、ロシア革命を参照点とする左翼は21世紀の遠くない将来に消滅するだろう。そうならないための議論を、ロシア革命100年に際しても継続することが必要だと私は考える」と問題提起した。

 2人の報告に対して湯川順夫さん(トロツキー研究所)は、「複数制と民主主義」の論点についてダニエル・ベンサイドの「21世紀マルクス主義の模索」を紹介しながらコメントし、論議の深化を呼びかけた。

報告─江田憲治さん

 江田憲治さん(京都大学教授、中国現代政治思想史、中国共産党史)は、「ロシア革命論の継承─中国・陳独秀の場合」をテーマにして、「ロシア革命における革命理論が中国でどのように継承されたのか、この問題を、中国共産党の創立者にして初期指導者(1921~27年)、そして中国トロツキー派の指導者(の1人)であった陳独秀について検証しようというのが、本報告のねらいである」と述べた。

 そのうえで①はじめに─陳独秀と中国革命②陳独秀=「2回革命論者」説の検討③中国トロツキー派の成立と「永続革命」論争についての分析を報告した。

 さらに④「陳独秀における民主主義と社会主義」について、次のように指摘した。

 「陳独秀がロシア革命の革命論から継承していたのが、民主主義についての議論である。トロツキストとしての彼の場合、民主主義闘争から社会主義革命達成、民主主義と社会主義との併存を説き続けていたことは確かである。陳独秀は『われわれの現段階での政治闘争の戦術問題』では、民主主義そのものをブルジョアジーの専売特許とは見なさなかった」。

 「プロレタリアートは、何の遠慮会釈もなくブルジョアジーのこの切っ先鋭い道具(民主主義)を借用して、ブルジョアジーに対抗するべきなのだと言っている。さらに『ブルジョア民主主義の視点は、プロレタリア民主主義の起点につながる』と述べ、両者の同質性を指摘し、さらに『徹底した民主主義の国民会議の実現要求を通して行われる武装暴動で、プロレタリアの政権を実現し、同時に徹底した民主主義の国民会議を実現する。これがわれわれの観点である』と結論づけている」。

 「陳独秀のこうした論点は、陳独秀が獄中からトロツキー派の機関誌に掲載させた『プロレタリアートと民主主義』(『火花』1936年3月)でも、そしてまた『陳独秀最後の論文と書信』(1948年)に収録された彼のトロツキー派宛ての書簡(1940年)や、『私の根本意見』(1940年)で、より明確なかたちで(後者ではボルシェヴィキのプロレタリア独裁に対する糾弾を含みながら)、提起されることになる」と重要な示唆をしていることを強調した。

 江田報告に対して長堀祐造さん(慶應義塾大学教授、中国近現代文学─魯迅及びその周辺)は、「中国トロツキスト回想録―中国革命の再発掘  王凡西」(1979年) や「陳独秀文集」(2016年)を紹介し、「中国革命と陳独秀」の歴史的意義についてコメントした。

 質疑応答と討論を行い、最後に国富建治さん(アジア連帯講座)から閉会あいさつが行われ、「ソ連邦の崩壊という現実からロシア革命の歴史的意味を否定的に解釈するのではなく、その過程でのさまざまな可能性をつかみとり、今日の現実作業と重なりあわせて対象化する作業を今後も続けていこう」と集約した。


(Y)
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