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Global Justice

【第四インター声明】新しい自由貿易協定(TPP、TTIP,TISA)について

ttip-action-brusselsTTPなどの国際自由貿易協定についての第四インターナショナル国際委員会の声明を紹介します。

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声明:新しい自由貿易協定(TPP、TTIP,TISA)は、何の解決にもならない。それはさらなる問題を生じさせるだけだ

第四インターナショナル国際委員会

2016年3月1日



 強盗団が犠牲者から奪い取るように秘密裏に、そして非民主主義的やり方で――。金融機関と多国籍企業を所有しているエリートたちは、新しい「自由貿易協定」の実施に向けて進んでいる。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)、TISA(新サービス貿易協定)がそれだ。

 以前の場合――欧州連合(EU)を生み出した諸条約や北米自由貿易協定が強制された時――と同様に、支配階級はこうしたイニシアティブを、「貧困をなくし、富と繁栄を増進させる」魔法の定式であるかのように提示している。自由貿易協定のバランスシートが「魔物の誘い」に惑わされて、それを待ち望んだ人びとにとって次のようなものであることは疑いない。

多国籍企業による現存各国家の合法性と主権の侵害、企業と国家の間の紛争を解決する「民間」法廷の設立、国家が依然として保持している公共サービス(教育、保健、交通、水道)の民営化と商品化、ソーシャル・ネットワークにおける表現の自由を消滅させる通信コミュニケーションの規制緩和、自営農民・家族農業の解体とモノカルチャーや遺伝子組み換え作物や殺虫剤の拡大、環境保護法よりもどん欲の優先、都市と農村の人びとの生活・労働条件のいっそうの悪化、そして新しい移民のうねりの促進。

新しいルールはそうしたことを許容するものだ。

もしこうした条約が実際に世界貿易を拡張していたのだとすれば、なぜ三〇億人以上の人口、すなわち世界の総人口の三分の一以上を占める諸国が全体としてはじき落とされているのか。こうした新しい規制の本当の意味には二重の要素がある。西側帝国主義諸国の影響圏内にある「他の国」のプレゼンスを制限すること、かれらの多国籍企業のために最大限の利益を保障することである。

現在、資本主義がこうむっている危機は、「自由貿易」を実現する諸条件に限定が課されているなどということで引き起こされたわけではない。

少数者の手中への富の過剰な集中(国際協力団体オックスファムによれば、現在、六二の家族が残りの九九%が所有するのと同じ額のものを持っている)、労働者階級の購買力の大幅な減少、グローバルな規模での巨額に上る債務の重荷(二〇一四年の統計では二〇〇〇億ドル)、架空資本の異常なまでの拡大――こうしたことが生産能力の相対的過剰を引き起こし、二〇〇八年よりもさらに深刻な、新たなリセッションを回避する国家の能力を減退させたのである。

米国ならびにその同盟国(西欧、日本、その衛星国)と中国との、経済的利益をめぐる矛盾の拡大――それは部分的にはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)として知られる諸国との間の矛盾をも形成するが――は、こうした新しい条約を、それぞれの国の超国家企業の力を強化し、可能な限りの民営化を促進し、そうした動きと対立する完全雇用や人間的・社会的・エコロジー保全法制を廃棄するはずみにさせていくことになる。

世界の労働者階級は、国民的政治の狭い領域に閉じ込められることはできない。われわれはこうした諸矛盾を注意深く追跡し、帝国主義的盗賊どもの対外政策のセットのあらゆる秘密を習得し、世界の労働者階級や人間性の利益と完全に相いれない、見せかけの利害に自ら引きずられることを許してはならない。中国。ロシア、米国や欧州諸国の支配階級は、われわれの共通の敵である。これは国家間の闘いではなく階級闘争であり、われわれは多国籍企業や軍事化に反対して、世界のすべての人びとに手を差し伸べる。

われわれは、こうした「商業的条約」の創設に全面的に反対して、グローバルな規模ですべての労働者の生活条件・労働条件の改善にもとづくオルタナティブな政策を促進する。労働組合活動と集団的交渉の実践の自由を回復し、経済の戦略的部門を再国有化する。巨額の資産と投機的資本への強力な進歩的課税を行う。移住の自由のために国境を開放する(合法的でない人などいない)。すべての不快で、不法で、正統性のない、持続不可能な公的債務を否認する。労働の領域と人権の擁護において国際的協定の適用を求める。そしてさまざまな国家グループの間の現存する不均衡を計算に入れた国際的貿易を育成する。

第四インターナショナル――すべての大陸にいるそのメンバーはこうした条約の批准に反対する運動の一部分を構成している――は、二〇一六年二月二一日にスペインにおいて、欧州大陸のさまざまなラディカル左派政治勢力によって採択されたようなイニシアティブを歓迎する。それは民衆の社会的統合のためのオルタナティブなプログラムを発展させ、きたる二〇一六年五月二八日(土曜日)に計画されているような広範な動員を実現することを目指している。

こうしたタイプのイニシアティブを世界レベルに拡大すべきであり、大陸を結んだ統一した動員が調整されるべきだ。こうした条約の批准は、決して不可避のものではない。世界の民衆が、最後の決定権を持っているのだ。

名古屋で学習会開催ー「G7伊勢志摩サミットとは何か」

DSCN2020 3月12日(土)、元自衛隊イラク派兵差止訴訟代表の池住義憲さん(以下、「講師」という)を講師にむかえ、学習会「G7伊勢志摩サミットとは何か」(ATTAC東海、不戦へのネットワークの共催)が名古屋のウィルあいち(愛知県女性総合センター)で開催された。

土曜の夜の時間にもかかわらず、36人もの人々が全国から参加した。講義では「サミット」のこれまでの経緯、「G7伊勢志摩サミット」の概要、平和の視点からみた「G7伊勢志摩サミット」の問題点、経済と軍事の両方の視点からグローバリゼーション等がわかりやすく説明された。「グローバリゼーションとは」等の資料も配布され、講義の途中で質問をする熱心な参加者もいた。

 講師は、グローバリゼーション(地球化)についてまず、もの(商品、製品)、金(金融、投資、株式)、ひと(労働力、労働者)、情報、技術、サービス、システムというものが国境を越えて、自由に行き来でき、自由に移動できるようにすること、と定義した。講師はまた、私たちの身近にあるありとあらゆるものが国境を越えて行き来する今日の現実がグローバリゼーション、とし、国家が介入しない市場の原理に基づいた自由市場経済の世界的拡大のなかで、その背景となる新自由主義をリードしているのが「G7伊勢志摩サミット」である、と述べた。また、国境を越えたものの自由な行き来を促進するものが関税障壁の撤廃であり、世界的規模で非関税障壁を促進するものが新自由主義である、と強調した。

 講師は続けて、力の強いもの、お金のあるもの、販売力、宣伝力のあるものが世界を凌駕していく世界共通化の考え方、基準に警鐘を鳴らした。

グローバリゼーションの促進のためには、資源、エネルギーの確保、拡大が必要で、それらの拡大再生産が行われている。結果として、トヨタ自動車のような下請け、孫請けという企業のピラミッド構造が発生する。また生産物の販売のため、市場の確保・拡大が発生する。TPPの狙いは、アメリカで生産した商品の販売の市場を環太平洋に確保、拡大することにある。その段階の次に来るのは、市場での販売の強化をはかるための、外交的、軍事的、政治的な支配権力の確保・拡大である。講師は、資源の確保、市場の確保、支配の確保・拡大が猛烈な勢いで起こっているなかで、その旗振り役が「G7伊勢志摩サミット」である、と強調した。

 「G7」については国際法上、何の根拠も規定もない。「G7」は権限のない、非公式のグループに過ぎない。したがって「G7」で出された決定、声明、表明は、7か国のなかの仲間内の取り決めに過ぎない。問題なのは、「G7」があたかも「世界政府」のようにふるまい、その決定事項が何の関係のない第三世界にまで実質的に強制力、強い影響を及ぼすことである。

 講義の後の質疑応答では、主に愛知、大阪からの参加者から意見、質問が出された。地域に根差した市民の視点、またアジアの労働者と連帯する労働者の視点等から意見、質問が寄せられ、質問者自身の「G7」に対する真剣な姿勢がうかがえた。

次回の学習会はビープルズプラン研究所の小倉利丸さんを講師に招き、5月8日に開催される。学習会のあとはデモも予定されている。

5月8日の学習会、デモも、多様な市民、労働者の視点から「G7サミット」を問う場として、全国からさらに多くの参加者が期待される。

報告:つながれアジア!葬れTPP!1・30国際シンポジウム

配信:TPPシンポ写真 1月30日、TPPに反対する人々の運動は、田町交通ビルで「つながれアジア!葬れTPP!1・30国際シンポジウム」を行い、約100人が参加した。

 安倍政権は、食料主権と生活破壊、グローバル資本のための環太平洋経済連携協定(TPP)を昨年、強引に「大筋合意」を進め(10月5日)、既成事実化のキャンペーンを広げている。2月4日に12カ国政府による署名式がニュージーランドで行われる。TPPは農産品関税、食の安全基準や食品表示、投資や金融、サービス貿易全般なども含まれており、民衆の生活破壊へと直結する協定だ。だからこそ十分な情報公開が求められている。

 ところが「大筋合意の概要」(日本語訳/2月5日)を公表したが、協定文は5500ページと膨大であり、関連文書すべてが公開・翻訳されているわけではない。安倍政権は、今国会でTPP協定について審議を押し進め、なんとしてでも批准し、その延長で関連法案なども成立させようとしている。TPP交渉を行ってきた甘利明経済再生相(TPP担当相)が金銭授受疑惑で辞任に追い込まれ、政権を直撃したが、後任に石原伸晃衆院議員(自民党)を就かせた。石原は、TPPの全貌を知らないため官僚の指示通りに発言するのみだ。

 世界の人々の間にはTPPによる貧困の拡大、農業と環境の破壊、食の安全軽視への不安が広がっている。TPPに反対する人々の運動は、海外ゲストを迎え、国際的な反対運動の連携を強めていく一環としてシンポジウム(東京・山形・大阪)を開催した。

 主催者あいさつが山浦康明さん(TPPに反対する人々の運動共同代表)から行われ、「2015年10月5日に合意したTPPは、2月4日には12カ国の署名式が予定されている。その後、各国の国会で承認の手続きに入る。日本は、TPPの既成事実化が始まっている。国会ではTPPが成立していないにもかかわらず、対策の法律や予算が先行して行われるという異常な事態を迎えている。協定文を分析したが、政府が説明しているような内容ではなく、問題点がたくさんある。グロバル企業にとって有利なルールであり、農民、労働者、農民、消費者、市民にとってはとても問題が多い協定だ。TPP担当相の甘利が金銭授受問題で辞任した。政府はガタガタだ。米国においても大統領選がスタートし、TPPどころではない。TPPを葬りさろう」と訴えた。

 三人の海外ゲストから以下のような問題提起が行われた。

 ファウワズ・アブドゥル・アズィズさん(マレーシア/第三世界ネットワーク)は「TPP、マレーシア、市民社会運動―日本での議論に向けて」について報告した。

 「2013年、52の市民団体がTPPに反対する運動(BANTAH)を立ち上げ、TPPに関する市民への啓発、政府の署名決定を覆すことができない場合でも、マレーシアにとっての費用と効果を精査するよう働きかける取り組みを行った。主に①投資とISDS(投資家国家間紛争解決)②政府調達と国有企業に関して
述べる」。 「投資の条文は、広範かつ曖昧な適用範囲であり、外国人投資家の『資本』と『投資』に与えられる一方的かつ過度な保護体制になっている。開発の努力に反する偏った条項だ。公益に反する外国企業や投資家の利益追求に対して支持者は、安全策や除外措置あるから保健衛生、環境、社会的弱者の優遇政策などで政府の権利は維持されると主張するが、公益を守るための適切な措置とはなっていない」。

 「TPPによって政府調達の際、国内企業と同じ待遇と市場参入の機会を外国企業に与えなければならなくなる。外国企業が受注した場合、国内経済への『波及効果』がかなり小さくなり、利益は大方国外へ『漏れ』出るため、成長をけん引する手段としての政府支出の効果が限定される。入札が国内企業にのみ開かれている現在の政策を変更し、基準値レベル以下の小さな案件を除いて同等かそれ以上の優遇された条件を外国企業に与えなければならなくなる。米国や他のTPP加盟国により相当額の調達案件が公開されるかもしれないが、どの程度マレーシア企業は参入できるだろうか?」。

 アズィズさんは、反TPP運動の教訓と課題について、「人権問題や持続的開発の分野で活動する市民団体に、海外での貿易や投資に関する協定と関係があることを理解してもらうことは難しく、また非ブミプラトラ(地元民)の経済団体にブミプトラ支持にみえる政策に納得してもらうことも簡単ではなかった。BANTAHはすべての民族に影響があることを指摘してきたものの、TPPがブミプラトラ寄りの優遇政策に打撃となる可能性があることが、優遇政策に反対する人々の注目を集めることになった」と指摘した。

 チョン・テインさん(韓国/韓米FTA阻止汎国民運動本部に参加)は「世界金融危機とFTA―TPPと韓米FTA」というテーマで報告。

 「現在、世界金融危機から長期停滞に向かいパワーシフト(力の移行)という危機が進行している。アジアへの軸足移行だ。その中でTPP(韓米FTA)は、市場原理主義の頂点であり、国際的な合意による民営化と規制緩和だ。オバマ米国大統領は、『TPPがあれば中国は地域のルールを設定できない。米国はそれをする』と言っているように、米国にとってアジア重視の一つで軍事的手段による中国封じ込めだ」。

 「TPPが狙う分野は、サービス、知的財産権、投資などであり、公的部門の破滅だ。とりわけこれまでの金融機関、新金融サービスに対して規制する可能性が強くし、自由貿易と逆行する構想だ。TPPの批准に対抗し、新しい公正な貿易協定を求めるために①サービスの自由化はネガティブリストではなくポジティブリストへ②不適合措置についてサービス分野からラチェットの仕組みを削除③未来最恵国待遇④ISDSの抜本的な見直しまたは削除⑤保険医療に関する章の見直しが必要だ。今後の対策として、例えば、アジアと世界の平和と繁栄に向けて、米国と中国との間で中立的な地域協定を構築することは可能か?アジアに第三の地域?は可能かなどを構想していくことが大事だろう」と強調した。


 モアナ・マニアポトさん(ニュージーランド/先住民族マオリの芸術家)は、TPPによって「政府は知的財産権に関する提訴によって生じる事柄をどのように解決するのか。投資家の権利保護として、特に鉱物や水などの天然資源をめぐる投資家対政府家の紛争解決(ISDS)による影響はどうなるのか。マオリの健康に関する権利はどうなるのか。手頃な価格で薬剤を入手できる権利はどのように保証されるのか。どれも紛争を誘発し、TPP参加国と投資企業は、自ら保護するための法的権利を手に入れることでしょう」と糾弾した。

 さらに「交渉は終結したものの、未だに条文が発表されない時に、政府は条約を受け入れるための必要条件とした『最高水準』には十分達しない状態にあるということを認めた。TPPは単なる新たな自由貿易協定などではない。すべてのものの商品化が急速に進む世界の中で、マオリは今まで以上に、未来世代に対する守護者として、私たちの祖先から受け継いだ責任というものを痛感しています」と発言した。

 最後にシンポジウムアピールが提起され、「いま地球の隅々まで広がる新自由主義的グローバリゼーションは、世界の何重もの格差と抑圧、差別を生み出し、貧困と飢えの連鎖をつくりだしています。その最先端の動きがTPPなのです」と批判し、批准阻止にむけた国際的包囲網を作り出していくことを参加者一同で
確認した。

(Y)


シリアとイラクについての革命的左翼諸グループによる国際的声明

922535889シリア、イラク、IS、そして帝国主義の「対テロ」戦争についての革命的左翼諸グループによる国際共同声明です。




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独裁、帝国主義の侵攻、ダーイシュに対決して闘おう。われわれは「国家安全保障」、レイシズム、緊縮政策の政治を拒否する



シリアとイラクについての国際的声明



 われわれは独裁、帝国主義の攻撃、そしてダーイシュ(IS)に対して闘っている。われわれは「国家安全保障」、レイシズム、緊縮政策の政治と闘っている。今こそ行動の時である。

 ここ数カ月にわたり、全中東の民衆はシリアとイラクでの衝突の激化による大きな打撃をこうむってきた。この激突のエスカレーションは、グローバルな帝国主義諸国――主に米国、ロシア、そして欧州諸国――と、サウジアラビア、カタール、トルコ、イランなど地域の帝国主義的関係者の双方によって促されたものであった。こうした紛争は、反革命の二つの異なった形態の産物である。一方では地域の独裁と反革命体制があり、他方ではダーイシュなどのような反動的イスラム勢力がいる。主要な国際的大国と地域諸国が自らの政治的・経済的ヘゲモニーをこの地域に押しつけようとする決意もまた、現在の悲劇の中心的要因である。

 シリアでは、反革命が取った最初の形態は、アサド政権への支援である。ロシアの殺人的襲撃、そしてイラン、ヒズボラ、宗派的なイラク武装勢力による介入は、このきわめて反動的で反民主主義的なプロジェクトを推進するものだ。クルド人勢力をふくむシリアの民主的・革命的勢力に向けてありきたりの形で示された西側諸国の不信行為によっても、アサドは勢いづいている。

 民主的で社会的に公正な未来のために闘っている人びとは、シリアの政権、帝国主義、そして地域のその同盟者にとって第一の攻撃目標である。反革命的役割を果たしているイスラム主義勢力は、あれこれの時点で直接的あるいは間接的に湾岸王制やトルコが支援してきたが、シリアの民主的勢力はこうしたイスラム主義勢力のターゲットでもある。

 つねにそうであるように女性たちは戦争の最初の犠牲者だ。レイプ、誘拐、そして女性の売買さえ、この紛争の身の毛もよだつような結果なのである。

 ダーイシュとは何ものか。それは、国際的・地域的双方の帝国主義による侵略と、この地域の政権、とりわけイラクとシリアの政権の独裁的・宗派的性格の産物である。この地域での宗派的緊張の拡大も、国内の弾圧と国外からの侵略の致命的複合の産物である。

 これこそ、アンカラ、ベイルート、パリ、クウェート、サウジアラビア、そしてチュニジアで起きた最近の攻撃と、エジプトでのロシア機への攻撃についてわれわれが理解すべき情勢の枠組みである。こうした攻撃は、それらを輩出した悪――国家テロリズムを強化するだけである

 「テロとの戦争」というレトリックは、その物質的表現を、戦争とレイシズムにおける権威主義的国家安全保障政策という威嚇の中に見出している。レイシズム、とりわけイスラモフォビア(イスラム嫌悪症)が幾何級数的に拡大し、欧州全体で国家政策となっている。帝国主義諸国は、独裁政権への支持と、自由への制限を正当化するために「テロとの対決」というレトリックを使っており、他方、地域の独裁者たちは同じ言葉を、自分たち自身による弾圧を擁護するために使ってきた。

 いまやフランス、ロシア、米国、トルコそしてシリアの政権を団結させているのは、すべてを包含するこの同じ世界観である――それぞれが独自の利害を持っているにもかかわらず、である。このようにしてかれらは、直接的あるいは間接的に、シリアでの攻撃と軍事作戦を調整している。

 現在、「テロとの戦争」の名の下で、フランス国家はテロを遂行する権力を求めている。いわゆる「フランス的価値」の名の下に、自由が攻撃されている。フランソワ・オランドは権威主義的一直線路線でシリアとイラクを爆撃した。その一方、戦争と高貴な「諸価値」に関するすべての言葉は、フランスの勤労諸階級の政治的・社会的願望への回答を用意することを不可能にさせている。こうした状況において非登録移民、難民、ムスリム、ベールを身に付けた女性、ロマの人びと、外国人などは、すべて「内なる敵」に仕立て上げられようとしている。

 広域中東圏全体で、政治的反対派と社会運動への国家的弾圧が高まっている。エジプトでもどこでも、ここ数カ月の間に幾百人もの死刑判決が下された。

 一時的な大衆運動の停滞、抑圧された人びとの大きな部分が方針喪失状況に陥っている現実に直面する中で、われわれは建設的イニシアティブへの挑戦を強めなければならない。実践的には次のようになる。



●強権主義政策反対、すべての人びとの民主主義的諸権利を擁護せよ。

●帝国主義によるあらゆる軍事的攻撃反対、同時に独裁体制、反革命体制への非和解的批判を。

●西側諸国のシリアでの軍事作戦反対、空爆にも西側諸国軍隊の直接侵攻作戦にも反対、西側に支援された軍事紛争への参加にも反対。

●中東、マグレブ(サハラ以北の北アフリカ地域)、そしてどこにおいても反革命のあらゆる形態との闘いを。

●ヨーロッパでも、アジアでも、アフリカでも抑圧的安全保障政策、レイシズム、緊縮政策と闘おう。

●「欧州要塞」と闘おう、すべての難民と移民に国境を開放し、まともな生活条件を保障するよう求める。

●中東、マグレブ、そして全世界で自由と解放のために闘っている人びととの連帯を強化しよう。

●アラブ地域全体の民主主義的・進歩的・反帝国主義的勢力との連帯を。

●中東とマグレブで解放と外国の侵略に反対するための正当な闘いを行っている人びととの連帯を。われわれは、この地域の民衆の解放は民衆自身の活動による、と強調する。



署名組織(さらに追加されるだろう)



革命的左翼潮流(シリア)

社会主義フォーラム(レバノン)

革命的社会主義者(エジプト)

労働者左翼同盟(LGO チュニジア)

革命的共産主義者同盟―社会主義労働者党(LCR-SAP ベルギー)

反資本主義新党(NPA フランス)

ソーシャリスト・レジスタンス(イギリス)

社会主義労働者党(SWP イギリス)

二一世紀の革命的社会主義(rs21 イギリス)

ザ・エディタース サルベージ(イギリス)

ソリダリテS(スイス)

国際社会主義者・スコットランド(ISS スコットランド)

SAP―グレンツェルース(オランダ)

国際社会主義者(オランダ)

反資本主義(スペイン)

エン・ルチャ―エン・イルイタ(スペイン)

国際社会主義左翼(ISL ドイツ)

社会主義的民主主義左翼・イェニ・ヨル(トルコ)

社会主義オルタナティブ(オーストラリア)

国際社会主義組織(ISO 米国)



(二〇一五年一二月一一日)

香港:下からの組織化と長期的な闘争の準備を!

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 香港では街頭を占拠して民主化闘争がつづいている

【解説】香港の民主化闘争は、オキュパイ・セントラルという大規模な街頭闘争を成功させた。9月22日からはじまった大学生や高校生らの授業ボイコット運動、そして9月26日の街頭における機動隊の暴力と学生リーダーへの弾圧に対する広範な市民の憤激による自発的な街頭占拠闘争、9月29日には学生と市民による街頭占拠闘争を支持するための独立系労働組合ナショナルセンターによるゼネスト宣言を経て、10月1日の国慶節には10万余りの市民が、行政長官官邸から見下ろすことができる大通りを含む市内数か所を占拠するまでに発展した。オキュパイ運動は(1)中国政府が決定した2016年議会選挙(職能別議席の温存)と2017年香港行政長官選挙(親中派が占める候補者選定委員会による候補者の確定)の方法を撤回すること、(2)行政長官および選挙制度改革チーム責任者の辞任、(3)オキュパイ空間の確保などを要求している。以下は、独立系労働組合ナショナルセンターのゼネスト呼びかけ当日であり、市民による自発的な街頭占拠が始まりつつあった9月29日未明に書かれた林致良同志の呼びかけである。(H)

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人民による正義の闘争を支持し、偽りの選挙に反対する
下からの組織化と長期的な闘争の準備を!


林致良


ここ両日、数万の香港市民、特に青年たちが、無私無欲の精神を発揮し、自発的に集会闘争を展開し、香港政府本庁舎前の学生たちを支援している。大衆運動は拡大し継続しつつある。本日未明、一部の市民はすでに自発的に銅鑼湾と旺角の通り[どちらも繁華街]を占拠した!

闘争に道理あり
偽りの選挙を恥じよ


デモに参加している市民たちは、行政長官の選出方法についての中国全人代常務委員会の決定に反対し、市民候補者と自由選挙の真の普通選挙を要求している。これは全く正当であり、かつなんら急進的な要求ではないにもかかわらず、北京当局はかたくなにそれを拒否している。北京当局は、選挙候補者指名委員会によってふるいにかけられた候補者のなかから、有権者が一人一票で選ぶ選挙を普通選挙として香港人に押しつけようとしている。このような方法は上流階級の特権を保障し、市民の真の選挙権を奪うものでしかなく、そもそも普通選挙と呼ぶことなどできない代物である。このような反動的制度と公然たるペテンに反対するために、学生たちが授業をボイコットし、市民らが平和的な集会を行うことは、まったく正当な闘争にほかならない!

各分野の闘争のための
プラットフォームの組織を


政府によるかたくなな拒否から、真の普通選挙をかちとる闘争は長期の奮闘が必要となるだろう。より多くの香港市民の支持が必要となるだけでなく、中国人民の支持を得ることが(すでに中国国内のSNSなどでは香港人民を支持する書き込みなどが見られる)、勝利をかちとるカギになるだろう。必要なことは香港の労働者民衆による下からの組織化であり、労働者、学生、女性など各分野の闘争委員会を組織し、民主化闘争の継続を共同で準備する必要がある。

街頭での議論の組織を
生活分野での民主化をいかに実現すべきか


真の普通選挙を実現することはごく当たり前のことであるが、しかしそれだけでは深刻な人々の生活困窮問題を解決することはできない。今日の民衆、とくに青年たちは、物価高騰、低賃金、長時間労働、公共住宅への永遠の入居待ちなど、未来に展望を見出すことができない。こうして織りなされるさまざまな不満は資本主義社会に普遍的な現象であり、香港においても例外ではない。それゆえ、われわれは政治制度の民主化を実現する必要があるとともに、同時に生活の困窮も改善しなければならない。専制反対の政治闘争と大企業独占反対の生活経済闘争は相互に補完するものである。

真の普通選挙は香港市民による現状変革のツールの一つであり、われわれは積極的にこのツールを手にしなければならない。同時に「われわれの生活はいかなる抑圧に直面し、その抑圧は何故に生み出されているのか?もし市民派候補者が実現するのなら、われわれはいかなる政治的手段で理想的な生活を保障し実現するのか?」について検討し討論することが極めて重要である。

大規模な大衆集会で最も貴重なのは、異なる業種、異なる居住区の人々が遭遇するチャンスをつくりだすことである。われわれは街頭で民主的政治制度を実現しようと奮闘する市民の皆さんに、みなさんの周囲の10~20人を一つの単位としたグループをつくることを呼びかけたい。そしてそこで、真の普通選挙というツールの実現のだけでなく、理想的な民主主義にはどのような実質的な内容が含まれるのか、われわれが考える真の民衆のための政府は物価高騰、低賃金と長時間労働、家賃高騰などの問題をいかに解決するのか、いかにして民主主義を経済生活のなかで実現するのかなどについて、討論することを呼びかけたい。

人民による積極的な討論を通じたコンセンサスの形成こそが、民主主義を選挙の時だけのものに限定させず、真の民主的生活を実現させることができるのである。

2014年9月29日 午前3時

報告:6.1TICAD(アフリカ開発会議)を問う-誰のための経済成長なのか? 南アから仲間を迎えてシンポとデモ

1アフリカ 219 【神奈川】6月1日から3日にかけて横浜・みなとみらい地区では外務省、世界銀行などの主催でアフリカ開発会議(TICAD Ⅴ)がおこなわれていた。その対抗アクションとして「横浜
でTICADを考える六・一国際シンポジウム実行委員会」は、「誰のためのTICADか?」と題して、集会とデモに取り組んだ。

 今回ゲストで来日したチャイナ・ングワネさんは南アフリカの社会活動家であり、大学の奨学金プログラムのコーディネーターとして、排外主義、貧困を課題に掲げて行動している。精力的な地域コミュニティー作りをする原動力は、チャイナさんが出身国であるジンバブエから移住せざるをえなかった事情とも結びついている。

 チャイナさんはこの集会の前後数日間の滞在中に、横浜寿町を訪れ、2日の反原発集会、モザンビーク・プロサヴァンナ計画に反対する集会などにも参加し、各所で討論を重ねた。

 この日もシンポジストの1人としてTICADについてグローバル企業が覇権を持っていること、透明性の欠如を指摘した。また、スライドを用いて、たとえばドルの奴隷を表すロゴ・ジャミングなどを紹介し、具体的には、スラム地域での要請行動の中でタイヤを燃やしながらの路上封鎖などによってコミュニティーの意志を伝えている様子、中国からの不法武器輸出船の入港に反対する行動の様子を紹介した。

 ジンバブエにおける政府軍兵士のダイヤモンド鉱山略奪とアジアへの輸出、などを経験したことにより、外国企業による開発が人命の犠牲をともなうものだとチャイナさんは確信している。TICADも環境破壊を持ち込むものでしかなく、かつての植民地帝国主義諸国同様TICADもまたアフリカでの殺人行為を進めていると語るチャイナさんは、快活ながら揺らぐことのない信念に支えられているのだと感じた。



「多文化共生」の裏にあるもの



 チャイナさんと並ぶシンポジストとして登場した近藤昇さん(寿日雇い労働者組合)は、簡易宿泊所が集まる横浜・寿町は外国人労働者の町でもあるとし、南アフリカの格差とつながる状況もあるという。山下公園の襲撃後も横浜市教育委員会は人権教育として「(情操教育のため)犬を飼う」という方針しか出せなかったこと、景気の動向に関わらず、毎週金曜日の炊き出しをやめることができない現状、TICADのような国際会議との関連で言えば、APEC開催時に大規模な追い出しが頻発し、それに加担しようとした行政担当者との交渉を通じて勝ち取った成果についても報告した。

 稲葉奈々子さん(NO―VOX「持たざる者」の国際連帯行動)はアフリカから日本に渡る人の多くが、日本での最底辺労働に従事し、多くは難民申請をしては却下されている現状を報告した。「多文化共生」という言葉と裏腹に、消費文化とグローバルな企業展開の中でアフリカからの移住労働者が果たしている役割を考えたいということが提起する一点目であった。

 そして、バングラデシュ出身の活動家と知り合ったときの例をひきながら、欧米NGOの貧困支援活動の中から、微妙だが、先進国の基準をそのまま当てはめている側面があるのではないかという、二点目の提起をおこなった。



ソマリアの海賊とされた人々



 提起を受けて、質疑が続いた。なぜ横浜でTICADが開催され、営利のための企業進出に肯定的な報道が多いのかという質問、排外主義に対する労働組合の闘い方はどうかという質問があり、アフリカから移住して難民申請に取り組む人についての発言もあった。

 また、横浜でTICADを考える会の小倉利丸さんは、TICAD外交の問題点としてアフリカ諸国の成長率の高さにのみ着眼している点などをあげ、歴史的な格差の放置を棚に上げて、アフリカ人民が等しく文明化を成し遂げるかのような幻想が矛盾に満ちていることを強調した。ついで、日本政府の矛盾のひとつとして、ソマリアで海賊行為を働いたとして捕まり、日本で拘留されている青年たちについて、ソマリ語通訳の確保など刑事手続き上の基本的な権利も担保されていない現状を小倉さんは訴え、支援継続の決意を表明した。

 チャイナさんは、労働組合についてはワークショップを開き、「仕事がないのは外国人のせいではない。政府の腐敗のせいだ」ということを説明し続けるという。厳しい環境の中で培われた明快なメッセージは、グローバル企業の横暴と、排外主義の暴力に対抗する運動体にとっても寄与するところが大きいはずだ。



ズールー語でデモのコール



 デモは会場である横浜市従会館を出発し、桜木町駅、赤レンガ倉庫横を経由して象の鼻パークで解散した。参加者は50人あまりだったが、「トーイ、トーイ」「ハイ」というかけあい、「パワーは、私たちのもの」、「うそをついているのは、あいつら」など、チャイナさんの指導でズールー語のコールを織り交ぜて街頭に呼びかけることができた。神奈川県警本部の裏手ではこの間の不当な弾圧にも精一杯抗議をおこない、楽しくデモを完遂した。

 TICAD V開催期間中、天皇なども呼びながら第2回野口英世賞授与式が行われ、安倍首相は「横浜宣言」を発表して閉幕した。「横浜宣言」は農業従事者は主人公、女性の権利向上等もうたい、アフリカの「オーナーシップ」,日本の「パートナーシップ」をうたってきている点は従来どおりだ。しかし小農の権利、都市での失業にふれず成長と開発をうたうことは欺まん以外の何ものでもない。そして、自衛隊派兵などで企業進出の安全を確保するという思考は、アフリカ人民による平和構築を妨げるものでしかないということは、継続して発信しなければならない。   (海田)
 

【案内】6/1シンポ&デモ!「誰のためのTICAD(アフリカ開発会議)か? -グローバリゼーションのなかで搾取と排除に抵抗するアフリカとアジアの人々-」

6/1シンポ&デモ!
誰のためのTICAD(アフリカ開発会議)か?
-グローバリゼーションのなかで搾取と排除に抵抗するアフリカとアジアの人々-


【ゲスト】
 チャイナ・ングバネさん
  南アフリカ共和国:クワズールー・ナタール大学市民社会センター
  デニス・ブルータス・コミュニティー奨学金プログラムのコーディネーター

【シンポジスト】
・日本のアフリカ外交の問題点
 小倉利丸さん(横浜でTICADを考える会)
・ヨコハマ・コトブキの地域活動から
 近藤昇さん(寿日雇労働者組合)
ジブラルタルや喜望峰を越えてくる人びとと
 稲葉奈々子さん(NO-VOX「持たざる者」の国際連帯行動)

※会場では英語→日本語の逐次通訳はあります。

日 時:2013年6月1日(土)
    シンポジウム 13:30~16:30
    横浜市内デモ 17:00~
場 所:横浜市従会館 4階ホール
    神奈川県横浜市西区宮崎町25
交 通:JR桜木町駅、京浜急行日ノ出町」駅10分
地 図:http://www.siju.or.jp/hall_info
参加費:500円(申し込み不要)
主 催:横浜でTICADを考える6・1国際シンポジウム実行委員会

★チャイナ・ングバネさん★
1974年、ジンバブエに生まれる。現在は南アフリカ・ダーバンに在住し、クワズル・ナタール大学の市民社会センターで、デニス・ブルータス・コミュニティー奨学金プログラムのコーディネーターを務める。国境なき市民、人道的活動家。ジンバブエなど周辺国から迫害を逃れて、あるいは生活のために南アに移り住む人々が、南アの住民から迫害される「外国人排除」との闘いに尽力。地域コミュニティにおける社会的抵抗と共存に尽力。国境なき開かれたアフリカを夢見ながら、地域の社会正義実現のための運動を組織。2013年3月にダーバンで行われたBRICsサミットに対抗して開かれたカウンター民衆サミット「Brics-from-below civil society summit」でも活躍した。
http://ticakov.hatenablog.com/entry/2013/05/14/204638

※チャイナさんが現地新聞に寄稿した社会運動の記事をはじめ、これまでの学習会やアフリカ関連の資料などは、ブログに掲載していきます。


 6月1日から3日まで、横浜で行われるアフリカ開発会議(TICAD)にあわせて、シンポジウムとデモをやります!TICADは日本政府の対アフリカ外交が目的の政府間会議です。外務省が作成したTICADのパンフレットのタイトルは「躍動のアフリカと手を携えて」。躍動するアフリカ市場へ日本企業が進出することが大きな目的の一つとなっています。

 そのために「平和・安定」と呼ばれる自衛隊や海上保安官の派遣、「援助」と呼ばれる企業支援、「友好」と呼ばれる非民主的政権との外交が日本政府の対アフリカ外交の基調になっています。

 私たちはTICAD開催を契機に、大企業や軍隊による「成長」や「安定」とは違う関係を考える取組みをおこないます。シンポジウムでは、アフリカ一の「先進国」となった南アフリカにおけるグローバル化と社会的亀裂、そしてそれに直面する社会運動のいまを南アフリカからのゲストに語ってもらいます。

 TICADの会場、みなとみらい地区のパシフィコ横浜は、横浜を象徴する華やかなビジネス・観光地帯の象徴ですが、そのすぐそばには港湾都市ヨコハマの発展を底辺で支えてきた労働者のまち、寿町があります。アフリカだけでなく日本でも貧困や人権の問題は深刻化しています。「躍動のアフリカ」のもうひとつの現実を知り、日本社会の問題をグローバルに理解する一助になることを願っています。

 シンポジウム後には、TICAD会場となっているみなとみらい地区周辺をデモします。TICADで来日しているアフリカの友人たちに、TICADでは聞けないもうひとつの声があることを街頭で訴えます。ぜひ参加を!

                     横浜でTICADを考える6・1国際シンポジウム実行委員会


※6・1シンポジウムでは賛同金を集めています。個人1000円、団体3000円です。こちらにもぜひご協力ください!
郵便振替口座 
口座番号:00230-1-37721
加入者名:人権を考える会

資料:89年民主化運動の性格と歴史的位置

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▲学生の民主運動支援に駆けつけた北京の労働者たち

以下に紹介するのは、1989年「北京の春」民主化運動を革命運動として評価した香港・先駆社の論評です。89年9月に書かれたもので、すこし古いですが「堕落した労働者国家」が巨大な共産党一党独裁体制を維持したまま資本主義へ進むことを可能にした政治的・階級的背景を理解する前提となるとおもいますので、翻訳紹介します。

この論評が書かれてから20年以上が経過しました。その間、組織された民主化運動(政治革命)の芽は徹底して摘み取られてきました。一方、弾圧体制と一党独裁の強化というターボエンジンを原動力とする官僚制という伝動ベルトによって、資本主義が中国の隅々にまで浸透するなかで、経済的、社会的不平等に対する中国人民の怒りは職場や地域に蔓延しています。

巨大な「政治革命」の萌芽であった89年民主化運動の敗北は、「堕落した労働者国家」である中国における反革命=資本主義復活を阻止する最大の勢力としての労働者(政治革命の主体)の抵抗を徹底して粉砕しました。それは中国官僚支配体制が大きく反革命=資本主義復活の道に踏み出す条件を作り出したといえるでしょう。(H)


89年民主化運動の性格と歴史的位置
向青


六四天安門大虐殺から100日目の今日、世界各地で大衆的な追悼が行われている。ここ数カ月、中国の民主化運動を支持し、中国共産党による血の弾圧を非難するという全世界の中国人の主張は大いに一致している。しかし今回の民主化運動の意義をいかに理解するかについては深刻な分岐がある。民主化運動の継続的発展と最終的な勝利を促すために、われわれはこの分岐の存在を認め、研究し、正確な結論を導き出さなければならない。


89年民主化運動は革命運動


多くの人が今回の民主化運動は平和的な請願示威行動だと純粋に考えている。もっとも貴重な特徴は一貫して非暴力を堅持し、暴力に対して暴力を用いなかったことであり、共産党当局の主要な犯罪は度を過ぎた弾圧によって不要な流血を招いたことである、というものだ。私たちはこのような考えは正確ではないと考える。このような考えの最も明白な誤りは「中国共産党の弾圧がもう少し『度をわきまえたもの』であるなら非難しなくてもよい」というふうにつながるからである。

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報告:10.13-14 IMF・世界銀行東京総会への対抗アクション

DSCN3099 10月13日、IMF・世銀東京総会反対行動実行委員会は、都心厳戒態勢に抗して水谷橋公園から「IMF・世界銀行東京総会への対抗デモ」を行い、300人が参加した。

 IMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が10月12日~一四日、東京(有楽町・国際フォーラム、帝国ホテル、ホテルオークラ)で行われる。世界約180カ国から財務大臣、財務官僚、中央銀行総裁をはじめ、業界関係者、NGOなど2万人が集まる。会議は、世界経済危機の延命のために各国に対して緊縮財政計画と増税を強要し、「金貸し集団」として太ってきた。新自由主義路線(規制緩和、民営化、社会保障費の削減、非正規雇用の拡大など)の強化によって経済格差、貧困増大を促進していく「談合」を繰り広げようというのだ。こんな支配者たちの会議に対して闘う世界の民衆は「IMF・世界銀行による経済支配は、もうたくさんだ!IMF・世界銀行は、1%の金持ち(グローバル金融資本)の代理人!」「もう、たくさんだ! 我慢も限界だ!」と叫び、グローバルなうねりを作り出しつつある。対抗デモは、世界の仲間たちと結びつきながら総会会場を包囲していった。



生存を脅かすIMF・世銀はいらない!



 デモの出発前の打ち合わせでは、稲垣豊さん(ATTACジャパン)からアピールが行われ、「IMF・世界銀行の年次総会は、当初、エジプトで開催される予定だったが、昨年からのアラブの春とエジプト民衆によるバラク独裁体制打倒の闘いがあり、開催できなくなった。この事態が総会の本質を象徴している。IMF・世銀は、これまで各国の軍事独裁政権を支え、自民党政権も支えてきた。城島財務相は、会議でビルマ支援再開、アフリカ支援を表明した。アメリカのビルマ支援の流れに乗ったものだ。ビルマやアフリカを食い物にする経済支配の強化を許してはならない。すでにビルマでアジア商業的農業会議が行われたが、農民たちはヤンゴンの会場前にテントを張り『多国籍資本が支配する農業はNO!』を突きつけた。さらにエクアドルに続きアフリカでも債務帳消し運動があり、チュニジアは、債務支払い拒否の取り組みを行っている。チュニジアでは来年三月、世界社会フォーラムが開催される。世界的な労働者民衆運動のネットワークでパートナーシップを示していこう」と呼びかけた。

 「持たざる者」の国際連帯行動の原隆さんは、「No more IMF―IMF・世銀による経済支配は、もうたくさんだ!『持たざる者』の国際連帯行動アピール」を読み上げ、「私たちが望むのは、貧困や失業を拡大する競争社会じゃない。私たちが望むのは、誰も虐げられない人間らしく生きられる公正・平等で連帯に基づいた社会だ。生存を脅かすIMF・世銀はいらない!原発もいらない!沖縄の米軍基地もいらない!」と強調した。

 デモに移り、有楽町付近では会場の国際フォーラムにむけて「IMF・世界銀行はいらない!新自由主義路線反対!国境超えてIMF・世界銀行の横暴をやめさせるぞ!」とシュプレヒコールをたたきつけた。
 
 

10.14対抗フォーラム



 10月14日、「対抗フォーラム」(呼びかけ・「持たざる者」の国際連帯行動実行委員会)が水道橋・たんぽぽ舎で行われた。

 実行委は、「昨日の対抗デモは、300人の参加で成功した。搾取と貧困の元凶であるIMF・世銀に抗議するグローバルノイズ、ミュージシャンたちも参加し、会議会場に向けて抗議のシュプレヒコールを行った。外国メディア、銀座の外国人たちにも注目された。今後も民衆の世界的なネットワークでIMF・世銀を包囲していこう」と発言した。

 小倉利丸さん(富山大学教員)から対抗フォーラムとしての提起が行われ、とりわけ今後の反IMF・世銀運動の方向性について次のような問題意識を提起した。

 「グローバル資本主義の深刻な危機が続いている。どの国も財政危機にあり、経済成長は限界だ。現在の国民国家、市場を中心とする資本主義システムでは、危機を乗り越えるための処方箋は出せない。この局面は、われわれが次のシステムを考えるチャンスでもある。問題は、次の経済システムは何かだ。かつては社会主義、共産主義だと言えばまとまっていたが、今はまとまらない。ところがこれは日本限定の状況かもしれない。ヨーロッパでは社会民主主義、新自由主義の経験のうえで、再度コミュニズムをまじめに考えなおすべきだと、かなり多くの左翼知識人が議論し始めている。僕も真剣に考えるべきだと思っている」。

 「世界社会フォーラムは、もう一つの世界は可能だというスローガンを掲げた。フォーラムで多様な議論を交わされたが、もう一つの世界が具体化するだろうという期待があったが、かならずしもそうはならなかった。二〇世紀型社会主義、共産主義の議論は長く行われてきて、その中から私たち組むべきものが多いにあるのではないか。躊躇することなく議論していくことは重要であり、党派的なイデオロギーに回収されないような、新しい考え方の中で再生できるかどうか試みていく価値があるだろう」と呼びかけた。

 さらに小倉さんは、第三世界の知識人の議論の場としてサウス・サウス・フォーラムを紹介し、「先進国の枠組みで作られた社会保障、低所得者層対策への配分は、第三世界の搾取によって成り立ってきたものだと指摘する。だからケインズ主義、新自由主義システムを選択することはできないと結論づけている。第三の選択肢を探す議論が行われている。この論議も注目していきたい」と述べた。

 小倉さんの提起後、質疑応答が行われた。「ビルマにおける土地強奪に反対するグローバル連帯のよびかけ」、稲葉奈々子さん(茨城大学准教授)からのメッセージ「返済できない債務を負う『先進国』―反グローバリズム運動を問い直すために」が紹介された。
 
(Y)
 

IMF・世界銀行年次総会に抗議の声を!10.13対抗デモへ

10.13 IMF/世界銀行総会対抗デモ
10月13日(土)正午
東京・水谷橋公園(東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅下車)
主催:実行委

biz1 10月12日から14日までの日程でIMF(国際通貨基金)・世界銀行の年次総会が東京国際フォーラムや帝国ホテルをメイン会場にして開催される。

 IMF・世界銀行とは何か。東京で開催される今年の年次総会にあたって作られた公式サイトから引用しよう。まずIMFである。

 「IMFの基本的な使命は国際システムの安定性を確保することであり、この安定性の確保は、3つの方法により行われます。すなわち、世界及び加盟国の経済状況を把握すること、国際収支が悪化した国に融資を行うこと、加盟国に対して事実支援を提供することです」。

「サーベイランス:IMFは国際金融システム、加盟国の金融・経済政策を監視しています。IMFは各国、地域、グローバルなベースで、経済活動を把握し、加盟国と定期的に協議を行い、マクロ経済政策・金融政策面のアドバイスを行っています」。

 「技術支援:主として低・中所得国による自国経済の効果的運営を支援するため、IMFは、制度の改善、適切なマクロ経済政策・金融政策・構造政策の立案に関する技術的な指導と研修を提供しています」。

 「融資:IMFは、対外支払いに困難が生じており、妥当な条件で十分な資金調達先を見つけることができない国に対して、融資を提供しています。この資金支援は、各国が外貨準備の再構築、自国通貨の安定化、輸入の支払い(これらすべては経済成長を再開するための必要条件である)によって、マクロ経済の安定性を回復するのを助けることを意図したものです。またIMFは、低所得国の経済発展・貧困削減を助けるため、これらの国に譲許的融資を提供しています」。

 次に世界銀行である。

 「文字通り『世界の銀行』として、開発途上国の貧困削減への努力を支援することを目的にしています。途上国の持続的成長や生活水準の向上につながる事業に対して、融資による支援や政策アドバイスを行っています」。



 しかしこの自己宣伝を信じる人は、そう多くはいまい。実際のところIMFや世界銀行が、グローバルな金融資本主義の司令塔として各国に新自由主義政策を強制し、債務危機を口実に「構造調整政策」を導入してさまざまな民衆支援策を解体し、「途上国」の債務奴隷化と、市場競争原理による貧困・格差を拡大してきた張本人であることは、今や多くの人びとが知ることである。

 「加盟国が経済危機に陥った場合、常にIMFが最初に介入します。/ある国の財政が火の車になり、支払いを続けられなくなった途端、IMFは財政消防隊に変身します。ところが、この消防隊は実は放火魔で、構造調整政策という(SAPs)という扇で火を煽るのです」「借り手の国の経済政策は、いまやIMFとそのウルトラ自由主義経済専門家の支配下に置かれることになります。こうして新しい形の植民地支配ができあがります。もはや以前のように、占領軍や行政官をその国に駐在させる必要はありません。なぜなら、債務があるというただそれだけで、債権者に依存し続けなければならない状況ができあがってしまったのですから」(ダミアン・ミレー、エリック・トゥサン『世界の貧困をなくすための50の質問』、大倉純子訳、つげ書房新社刊)。

 そして今や、この債務危機・債務奴隷化の波が、途上国から欧州など先進資本主義国にも押し寄せ、失業・賃下げ・年金改悪・社会福祉の切り捨てによる社会全体の解体と貧困をもたらしていることはギリシャ危機などで周知の事実である。金融資本による過剰貸付の野放図な強制、債務返済の不履行、債務危機の発生と金融資本の救済、そのための「緊縮政策」による労働者民衆への犠牲の強制と労働者の社会的諸権利の解体――こうした構図を強制したのはIMF・欧州委員会・欧州中央銀行から成る「トロイカ」だった。

 IMF専務理事のクリスチーヌ・ラガルドは今年、トロイカによる過酷な「緊縮政策」の強制に対して闘うギリシャと労働者民衆を嘲りながら「私は、3人で1つの椅子を分かち合い、教育を得ようと切実に熱望しつつも日に2時間しか教育を受けていないニジェール小さな村の子どもたちのことのほうを、もっとたくさん考えている」と言い放った。しかしアフリカのニジェールの子どもたちにそうした状況をもたらしたものこそ、IMFが長期にわたって強制してきた構造調整政策であることを彼女が知らないはずはない。

 民主主義・人権を破壊し、貧困と差別、グローバル資本の新たな植民地支配をもたらした元凶である金融資本の総本山、IMF・世界銀行に対して、途上国の人びとも先進資本主義国の労働者・民衆も闘いに立ち上がっている。

 チュニジア、エジプトの労働者・市民が切り開いた「アラブ革命」、そしてスペインの「怒れる者たち」の広場占拠の闘い、ギリシャのゼネストと職場占拠・街頭決起、そしてウィスコンシンからウォール街にいたる米国の「オキュパイ」運動の急速な拡大は、グローバル金融資本に対する怒りの世界的・同時的拡大を示している。

 自らの闘いとしてこのIMF・世銀総会への抗議の意思を表明し、世界の人びととの連帯を求めていこうではないか。



 IMF・世銀総会が東京で開催されるのは、1964年以来、48年ぶりである。

IMF・世界銀行年次総会準備事務局長である財務省の仲浩史は同年次総会のサイトで東京開催の意味について次のように語っている。

「東京での開催は一九六四年以来、2度目となります。1度目の総会は、同じ年に開かれた東京オリンピックと共に、日本を世界へとアピールする舞台となり、戦後からの『再出発』の原動力となりました。/そして半世紀たった今、日本が再び国際通貨基金・世界銀行年次総会の開催地として立候補したのは、もう一度『再出発』を実現したい、という思いからでした。/大震災から力強く復興するこの国の姿を、世界のみなさまに見ていただくために……」。

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そして10月9日から始まる多くのIMF・世銀総会関連企画の中には10月9日、10日に仙台で開催される「防災と開発に関連する仙台会合」が含まれている。ここでは「災害に強い社会を構築して持続可能な開発を支えていく」という観点からのパネルディスカッションが企画している。しかしこの企画においては、被災者の生活再建をなおざりにした資本主導の「復興」の問題点が排除されているばかりか、何よりも現在、さらに深刻化している福島原発災害の問題が完全に切り捨てられている。原発事故の惨状と被害の実態を語らずに、どのようにして「災害からの復興の教訓」など語られるのか!

われわれはこのような問題を改めて前面に押し出しながら、貧困、失業と飢餓、差別と権利破壊、環境破壊を押し付けるグローバル資本主義の司令塔であるIMF・世界銀行年次総会に抗議の意思を示そう。

10月13日正午、東京・水谷橋公園(東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅下車)に結集しよう。(K)
 

【報告】9.18STOP TPP 官邸アクション 遺伝子組み換え作物広げるモンサント社に抗議行動

反TPP世界同時アクションとして

 九月一八日、STOP TPP!! 官邸前アクション★オキュパイモンサントスペシャルが同実行委員会主催で開かれ、世界同時アクションに呼応して、日本モンサント社前と首相官邸前で「STOP TPP」と同時に「NO!モンサント」を訴える特別プログラムを行った。モンサント社前行動に一五〇人、官邸前には四〇〇人が参加した。

 STOP TPP!官邸前アクションは、八月中旬より毎週火曜日、午後六時から八時まで首相官邸前で活動を開始し、今回で五回目だ。

 今年九月は、米国で「ウォール街占拠」が始まって一年。全米各地では様々な行動が企画されている。OCCUPY MONSANTO(モンサント社を占拠せよ!)も、こうした中から生まれた世界同時アクションの一つ。世界有数の多国籍企業である同社は、遺伝子組み換え作物を世界に広げ、種を支配することで世界中で農民を、食べ物を支配し、各国の食糧主権を脅かしている。こうした暴挙を止めるため、世界各地の農民や消費者団体、NGOなどが九月一七日を「OCCUPY MONSANTO」の世界同時アクションデーに決め、全世界に呼びかけた。

 モンサントはTPPによって参加国へのさらなる「進出」も目論んでいる。もちろん日本もその対象の一つ。TPPを強烈に推進している経団連の米倉会長が会長を務める住友化学は、モンサントと提携をしている。

 午後六時から始まった官邸前では様々なアクションが行われた。スピーチ、ラップ、大きなスクリーンを登場させ、映画『モンサントの不自然な食べ物』予告編上映、海外アクションの映像を交えて紹介した。そしてモンサントがいかに悪どいことを行っているかを現した演劇は迫力満点で拍手喝采。

先住民の土地を略奪するな

 オキュパイ モンサント行動には全世界で七〇カ国が参加した、と司会が報告。最初にスピーチ。福岡県久留米のJAみいから六人が参加。「福島原発事故によって肉の値段が下がり、今でも苦しい。九州は山間部が多く畜産が盛んだ。TPPが導入されれば畜産は一〇〇%生き残れない。社会の形が維持できなくなる。水・自然を守ってきた文化、ふるさとを捨てざるを得なくなる。農家をつぶさないでくれ。TPP参加に絶対に反対だ」。

 ワーカーズコープ(共済協同組合)。「自分たちで仕事を作っていく運動をしている。人の命を守れないTPPに反対。人間が人間らしく生きられる社会を取り戻そう」。毎回参加している紙智子さん(共産党、参議院議員)が連帯のあいさつを行った。

 秋田・横手の佐藤さん(農民連)は「五〇年コメ作りをしている。一俵一六六〇〇円がTPPに入れば、三五〇〇円になる。とても農業はできない」と強く反対の意思を語った。信州の林さんは「四軒分の田んぼ六町歩を耕しているが年収で三〇〇万円にしかならない。自分の跡継ぎはいない。田んぼはダムの役割をして環境を守ってきた。食糧をまもるためにがんばりたい」と発言した。

 ゲストトークに移り、世界の種を支配するモンサントの戦略と人々の運動につ
いて、印鑰智哉さん(国際連帯活動家)が報告した。

 「モンサントは種の遺伝子組み換えを行い、その面積は世界の耕作地の一割を超えている。南北アメリカ大陸を中心に、南ア、インド、フィリピンに広がっている。特に南米がひどい。パラグアイでは小農民の立場に立つ大統領を代えるためにクーデターまで起こさせた。メキシコでは先住民がモンサントの種を買わないと犯罪になるというモンサント法が出され、反対にあい現在保留になっている。先住民の土地が奪われている」。

 茨城県のモンサント実験圃場で何が起きているのか!?、高士太郎さん(にゃんとま~)(自由業)が「一九九七年からコメのめぐみという直播の種を作っている。耕す人は地元の人を雇いモンサントの制服を着せている。モンサントになじんで農協を批判するようになっている。まずは人々の意識を変えようとしている」と報告。

 生活クラブ連合会の清水さんが「一九九七年から遺伝子組み換え食品を使わないようにしている。最近アメリカに行き、TPP反対の人たちと交流した。アメリカ政府の後ろ盾となっている一部の大企業が推進していて、人々は反対している」と語った。

新しい形の植民地支配

 大地を守る会の発言の後、映画「モンサントの不自然なたべもの」を上映している渋谷のアップリンクの松下さんが「地球を滅ぼす、食糧で世界を支配する、静かなテロのようだ。種に特許を作ってはいけない」と映画を紹介した。

 脅かされる食の安全と食料主権をテーマに、安田節子さん(「食政策センター ビジョン21」主宰人)が「TPPは最悪の協定だ。多国籍企業群があやつっている。なぜ日本がねらわれているのか。それは八〇兆円の食糧品市場があるからだ。関税を撤廃させ、もうけようとしている。農薬、BSE対策など規制の緩和のために動いている。モンサントは遺伝子組み換え種の九割、普通の種の二割の特許を持っている。特許侵害をビジネスにしている。日本は普通の種の特許を認めていない。知的所有物の強化ということで食べ物を支配しようとしている。それは軍隊によらない新しい形の植民地支配だ。関税を撤廃することは日本の食糧安全保障が崩壊することだ」と訴えた。

 遺伝子組み換え食品はいらないキャンペーンは「日本もベトナムなどにモンサントと同じようなことをしている」と指摘した。

 最後に「モンサントポリスを日本に入れてはいけない!」という寸劇が行われ、大いに盛り上がった。TPP、多国籍企業モンサントとの闘いは日本だけの闘いでなく、世界的な闘いであることが分かる行動でもあった。

(M) 

グローバル資本が主導する国家主義のスポーツイベント=オリンピックはいらない!


▲ロンドンでの反オリンピック・デモ

グローバル資本が主導する国家主義のスポーツイベント=オリンピックはいらない!
 
 7月27日(日本時間7月28日朝)、イギリスのロンドンで第30回オリンピックが始まった。テレビをつければニュースのトップはオリンピック。番組の多くも五輪報道を中心に大幅に改編され、メダルの数がどうだこうだという話題に湧きかえっている。応援席では「国旗」が乱舞する。「いい加減にしてくれ」という辟易の思いは、少なからぬ人々に共有されているだろう。

 メディアも国際オリンピック委員会も、もちろんそうした人々の批判に耳を傾けようと言うポーズを見せないわけではない。たとえば国際オリンピック委員会加盟204カ国のうち今まで女性の選手を送ってこなかったイスラム圏のブルネイ、カタール、サウジアラビアの3カ国が初めて女性選手を派遣し、さらに全競技に女性への門戸が開放されて、「男女の機会均等」が実現された、ということなどだ。

 朝日新聞は近代オリンピックに貫かれた国家主義への批判を意識して「物語の主役は国から人に」と題する沢村同社欧州総局長のコメントを掲載した(7月28日朝刊)。

 「今は『自由にスポーツができる環境』を求めて選手が『国』を選ぶ時代だ。戦火や圧制を逃れた選手がいれば、外国で練習を積み、外国人コーチや外国企業の支援を受ける選手もいる。彼らが五輪という舞台で背負う看板はもはや国家ではなく、国境のないグローバル社会なのだ」。

 「1908年のロンドン大会で英国は新興国の米国と威信をかけた競争を繰り広げた。1948年の大会は英国にとって大戦からの復興を宣伝する絶好の機会となった。だが、成熟した二一世紀の先進国で開かれる大会は国の『威信』や『結束』などとは縁遠くなりつつある」。

 だがこの対比は適切なものなのか。国境を超えたグローバル企業が、ますますオリンピックの企画・運営を支える主役になっていることはその通りだ。しかしそれは「国家ではなく、国境のないグローバルな社会」が選手たちの背負う「看板」になっている、ということとはまったく意味が違う。グローバルな資本主義自体、グローバルな「国家システム」ぬきには存在し得ない。新自由主義的なグローバル市場が、強力な「国家」と排外主義にいろどられたナショナリズムと相携えて展開してきた事実をわれわれは知っている。

 資本主義のグローバル・システムが「国境のないグローバル社会」を実現したかのように持ち上げる「朝日」の主張は、この複合的で矛盾に満ちた現実にふたをする。資本主義の危機は、ナショナリズムを不断に再生する。金メダリストは「国旗」と「国歌」によってその栄誉を称えられるのである。「国家間競争」がオリンピックの原動力となっていることは変わっていないのだ。

 本紙で先鋭で精彩に満ちたオリンピック・ワールドカップ批判を掲載してきた故・右島一朗(彼が南アルプスで不幸な滑落事故で亡くなったのはアテネ五輪直前の2004年8月8日だった)が「金権と国家主義の反動的スポーツショー」と批判した、その性格は何も変わっていない(高島義一「オリンピックはシドニーでおしまいにしよう」『右島一朗著作集』p549~559)。



 ロンドンオリンピックに対する市民の批判も強い。最初に引用した「朝日新聞」沢村欧州総局長の記事も、選手村建設で家を立ち退きさせられたジュリアン・チェインさんの「財政難で住民向けの運動施設を閉じておいて、巨額を投じてエリート向けの施設を作るのは納得できない」という批判を紹介していた。

 五輪によるスポーツ振興という大義名分はどうか。

 「近代スポーツ発祥の地である英国では、19世紀後半から各地にプレーイングフィールド(PF)と呼ばれる運動場を持つ公園が整備され、市民のレクリエーションの場として親しまれてきた。だが、サッチャー首相が就任した79年からメージャー首相が退任した97年までの保守党政権時代、PFは財政赤字解消のために次々と売却された。……18年間で約1万カ所が住宅地に変わり、若者が最も手軽にエネルギーを発散させられる場が失われた」「教師の部活動指導の手当が廃止されたことなどから、週2時間程度の運動をする生徒が全体の25%以下にまで落ち込み、スポーツ離れが進んだ」(「英国市民と五輪 1」(「毎日新聞」2012年1月3日)。

 この傾向は、ブレア政権時代に予算を割いて学校での運動を奨励したため一定の改善をみたが、現在のキャメロン保守党政権は不況下で厳しい緊縮政策を行っており、予算は削減されている。エリートスポーツとしての五輪には経済効果を求めて投資しても、一般住民、若者たちのスポーツする権利は奪われたままだ。

 五輪公園が建設されたロンドン東部のハックニー地区は失業者や貧しい人びと、移民などが住む地区だ。昨年8月、警察官が黒人の若者を射殺したことを口火に広がった若者たちをはじめとした暴動は、この地域にも波及した。今回のロンドン五輪は、このロンドン東部の「再開発」をも目的にしていた。

 ロンドン五輪開催が決定された2005年の時点から4倍に膨れ上がった予算は、総額で約93億ポンド(1兆1300億円)。財政難の中でのこの投資が一時的にブームを呼ぶことがあったとしても、それがインフレを呼び、深刻な雇用の改善どころか、五輪が終わったあと住民にいっそうの苦難を引き起こす可能性も取りざたされている。

 さらにオリンピックに伴う「治安対策」を名目に、イギリス政府は住宅の屋上に地対空ミサイルを設置された。住民たちは中止を求めて提訴したが却下された。オリンピック会場付近にはいたるところに監視カメラが設置され、ジェット戦闘機四機が常時警戒にあたり、さらに地対空ミサイル六基も配備、テムズ川の河口には軍艦一隻が配置されるというものものしい「五輪警備」の中でのロンドン大会なのだ。

 開会式翌日の7月28日には、ロンドン市内で「テロ対策」強化・住宅屋上へのミサイル配備に反対する抗議デモが500人が参加して行われた。また市内の幹線道路の一車線が、選手や五輪組織委員会の幹部たちの専用レーンとなり、常時緑信号で特別待遇を受けることについてもタクシー運転手が抗議デモを行った。

 こうして膨大な経費を使い、住民の民主主義的権利を侵害して行われる金権・商業主義・国家主義のスポーツイベントとしてのオリンピックの性格はここでもはっきりと示された。

 あらゆる美辞麗句はごまかしにすぎない。オリンピックをもうおしまいにさせよう。2020年東京五輪招致に反対しよう!

(K)
 

【報告】5.22 市民と政府の意見交換会~TPPを考えよう

IMG_1057 五月二二日、「市民と政府の意見交換会~TPPを考えよう~」が、同意見交換会・東京実行委員会が主催して、東京の文京シビックセンター・小ホールで開催された。このTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)協議に関する情報公開と市民参加を求める呼びかけ八団体(アジア太平洋資料センター、国際協力NGOセンター、日本国際ボランティアセンター、TPPに反対する人々の運動、名古屋NGOセンター、AMネット、関西NGO協議会、WOW! Japan)が、さる二月二〇日に政府に申し入れ、三カ月をかけてようやく実現されたもの。

 第一部が「有識者によるTPP解説」、第二部が「政府によるTPP概略説明、有識者と政府協議担当者の対話」、第三部が「会場参加者・有識者と大臣政務官・政府協議担当者の対話」という構成である。四月末の日米首脳会談、日米共同声明でも野田首相は「TPP交渉への参加」を明言しなかった。しかし実際には、すでに「事前交渉」は進んでいると見るべきだ。その情報は市民に対して全く明らかにされないまま、舞台裏で事態が進行している。

 主催者あいさつに立った日本国際ボランティアセンター(JVC)代表の谷山博史さんは、「今回、はじめて政府と市民の側の双方向の論議が始まったことに意義がある。二〇一〇年にマレーシアが交渉に入る直前、市民が情報公開を求める声明を発表した。ニュージーランドでもアメリカでも市民が動いている。政府が十分な情報公開をしないままに既定方針で突っ走っている時、市民一人ひとりが理解し、判断して、決めることが必要だ」と訴えた。



 「有識者によるTPP解説」では、鈴木宣弘さん(東京大学大学院農学生命学研究科教授)、安田節子さん(食政策センター・ビジョン21)、色平哲郎さん(JA長野厚生連佐久総合病院医師)の三人が発言した。

 鈴木さんは「すでに事前交渉は進んでいる。情報収集のための事前協議などではない。アメリカからは自動車、郵政、BSE(いわゆる『狂牛病』)などでイチャモン的条件が付けられている。日本はこのイチャモンを可能なかぎり受け入れている。本交渉は日本を入れずに六月中にも始まろうとしており、日本はそれを受け入れるだけになろうとしている」と批判した。

そして「農産物の例外なき完全自由化によって『競争力のある農業』などと語られているが、日本は土地条件の差を乗り越えることなどできない。ISD条項(投資企業が投資先国家の規制策を訴えることができる条項)への批判も、NAFTAや米韓FTAでつぶされてきた。TPPは日本の産業空洞化を促進し、雇用を奪ってしまう。TPPと距離を置き、ASEAN+3など柔軟で互恵的な選択肢を選ぶことが必要だ」と語った。

安田さんは「TPPはこれまでの貿易協定とは異なる最悪のFTAだ」と批判し、それが「国内法に外資が侵入・干渉して国家の主権を侵害し、労働者の権利、環境、農業。食の安全を犠牲にするものだ」と訴えた。そして「知的所有権の強化」を口実に医薬品の使用方法、農薬の使い方にまでライセンス料を支払わなければならない可能性が生じ、金融簡保サービスの自由化によって郵貯・簡保・農協共済などがターゲットになっていることを指摘した。さらに食品安全分野ではBSE問題、放射線照射や体細胞クローン家畜の畜産物、遺伝子組み換え食品などの自由化によって発生する諸問題の危険性を訴えた。

色平さんは一九九四年以来の「日米構造協議」の中で日本は国家予算を公共投資にムダ遣いすることを強制された、と指摘し、「TPPとはつまるところ制度やルールそのもののアメリカ化であり、医療が市場化されれば自由競争で医療の国民皆保険制度は崩されることになる、と語った。



第二部では、第一部での発言者が政府の協議担当者に質問するという形で進められた。政府側の出席者は黒田篤郎(内閣官房 内閣審議官)、別所健一(外務省経済局南東アジア経済連携協定交渉室長)、渡辺健(経産省通商政策局経済連携課長)、水野政義(農水省大臣官房国際部国際経済課長)の各氏。後から大串博志・内閣府大臣政務官も加わった。

やり取りは以下のようなものだった。



――政府の「食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」(二〇一一年一〇月)では、「食料自給率を五〇%に上げる」としているが、農水省の計算ではTPPによって食料自給率は一三%に落ち込むことになっている。それをどう説明するのか。またTPPで「アジアの経済成長」を日本の発展に取りこむと説明されているが、アジア太平洋地域のTPP参加拡大の動きはどなっているのか。



 「自給率を五〇%に上げることを目標にしている、農水省の計算は全世界に向けて関税をゼロにするならば、という仮定だ。確かにTPPは自給率上昇へのマイナス要因になるが、さまざまな施策で自給率五〇%をめざす。現在TPP交渉にはアジア太平洋地域ではベトナム、マレーシア、ブルネイが入っており、中国、韓国、タイ、インドネシアも関心を持っている。TPPはアジア太平洋の貿易投資ルール作りの上がり口だ、いずれアジア諸国が入ってくることを目指している。日中韓FTAも年内に交渉開始となる。ASEAN+3、ないし+6のFTA交渉も年内開始をめざしている。いろんな角度から検討していく(内閣官房・黒田)

 「独自試算では食料生産は四五%減少し、食料自給率は一三%にまで低下する。コメについては日本の生産の九割がなくなる。『食と農の再生計画』はTPP参加を前提にしたものではない。TPP参加の際の具体的な方策は別途検討が必要だ」(農水省・水野)。

 (日本の皮革産業が崩壊するのでは、という質問に対して)「交渉に参加した場合、個別の品目に関しては具体的に交渉の中で決めていくことになる」(経産省・渡辺)



――すでに事前交渉は始まっており、アメリカ側から自動車、簡保などについて注文が付けられているのではないか。

 「事前協議と言われるが交渉参加を決めたわけではない。国民的議論を経て決めることになる。日米首脳会談で、オバマ大統領から自動車、保険などでの関心が示されたのは確かだが、それは事前協議とは関係ない。また外交的秘密に関わることに関しては秘密扱いにせざるをえない」(内閣官房・黒田)



――交渉過程は秘密にして、四年間は秘密扱いにするという合意文書があると言われているが、それは確かか。TPP協定が結ばれれば食品の安全を含めて国内法改正が必要になるのではないか。

 「外交上のやり取りは秘密だ。日本政府は合意文書を見せてもらってはいない。表に出せるものは出していく。ニュージーランドとの交渉の中で四年間は秘密扱いとするとのことだが、それは通常の外交上の慣習だ。交渉に参加すればテキストを見ることができるし、見た上で内容に有利な点を入れていきたい。場合によっては交渉からの離脱はありうる。いずれにせよ条約を批准するのは政府と国会だ。

 ISD条項の問題について言われたが、ほとんどの投資協定にISD条項は入っている。協定違反で具体的に損害をこうむった場合のことだが、法理論的には条約は国内法に優先する」(外務省・別所)。



 この後、大串博志・内閣府大臣政務官が参加して次のように語った。

 「TPPについては交渉参加に向けた各国協議の段階で、可能な限りの情報収集を確認しているが、その中で得られた情報についてはできるかぎり示していこうとしている。しかし情報を得る上でのもどかしさも感じている」。

 「食料自給率五〇%と食の安全に関しては、守っていきたい。日本に何が求められているのかを情報収集して判断していく」。

 こうした発言に対して、さらに「米国の関心は、当初から自動車、保険、牛肉だと報じられており、それは交渉参加にあたっての条件・頭金ではないのか」という質問が出されたが大串政務官は「そのようなものとは受けとめていない。個別・具体的な頭金ではない」との回答に終始した。また「労働基本権、具体的には解雇自由化が求められることにならないか」という質問に対しては「それがTPP交渉で論議の対象になるかどうかはわからない」との返事だった。

 TPP交渉での情報公開を求める意見に対しても「むずかしい問題だが、相手との交渉の中で情報公開のラインを決めていく」とのあいまいな答えを崩さなかった。

 このように「市民と政府との意見交換会」の一回目は、「交渉のテキストも見せてもらえない」中で、「事前協議」から「交渉参加」にのめり込む政府の姿勢、TPP交渉の徹底した秘密主義とその危険性を。あらためて実感させるものとなった。

 結局、政府の側は「何も分からない」ままで、事実上の交渉開始のテーブルにつこうとしているのだ。労働者・農漁民・市民の生活と雇用、食糧主権、環境・食の安全、社会保障、そして民主主義をも破壊するTPP反対の主張と運動を、多様かつ広範に広げよう。(K)
 
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