虹とモンスーン

アジア連帯講座のBLOG

公開講座

報告:1.22公開講座 トロツキー永続革命論の現代的意義――『歴史の終わり』の弁証法 講師/森田成也さん

20210125morita

 1月22日、アジア連帯講座は、「トロツキー永続革命論の現代的意義――『歴史の終わり』の弁証法」をテーマに森田成也さん(大学非常勤講師)を講師に招き、全水道会館で公開講座を行った。

 講座は、著者森田さんの『トロツキーと永続革命の政治学』(柘植書房新社、二〇二〇年)をテキストに「トロツキーがその永続革命論の構築を通じて、そしてその実践バージョンである十月革命とその後の社会主義建設を通じて解決しようとした二〇世紀的問いは、二一世紀の今日においてもなお解決されていない。その『問い』とは何か」を切り口にして、掘り下げていった。

 冒頭、森田さんは、「副題を『歴史の終わり』の弁証法』とした。フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』を一九八九年に発表したが(その後、著作に)、それは時代を象徴するキーワードとなった。資本主義と自由民主主義と自由市場という三位一体のもとで経済が発展していけば、あらゆる問題は解決するはずだと言っていたのだが、現実は資本主義の発展によってさまざまな問題が解決されるどころか、はるかに深刻な状況に立ち入っている。トロツキーが二〇世紀初頭に提起したことは地球的な課題になっている」と強調した。

 マルクスは、「『経済学批判』序文」で「ブルジョア社会の胎内で発展しつつある生産諸力は、同時にこの敵対の解決のための物質的諸条件をもつくり出す。したがってこの社会構成体でもって人間社会の前史は終わる」と言っており、資本主義の終わりこそマルクス主義的には「人類の本史」の始まりだと述べたが、フクヤマは、ソ連・東欧の崩壊を踏まえて、このような認識を否定した。たしかに「歴史は終わった」のだが、それは資本主義の崩壊と共産主義の勝利してではなく、共産主義の崩壊と資本主義の勝利としてそうなったのだと。だが、その後の事態はこの学者が考えたようには進まなかった。森田さんは「人間の思惑通りに進まないのが歴史だ」として、以下考察していった。(講演要旨別掲)

■森田さんの講演要旨

第Ⅰ部 『共産党宣言』から東西冷戦まで――「歴史の始まり」の弁証法

 1、後発国における「歴史の始まり」――『共産党宣言』からプレハーノフへ

 マルクスとエンゲルスは、一八四八年革命の中で永続革命的展望の萌芽とも言える次のようなテーゼを提起していた。

 「共産主義者はドイツに主な注意を向ける。なぜなら、ドイツはブルジョア革命の前夜にあり、しかもドイツが、この変革を17世紀のイギリスや18世紀のフランスと比べてヨーロッパ文明全体のより進んだ諸条件のもとで、そしてはるかに発達したプロレタリアートでもって遂行するので、ドイツのブルジョア革命はプロレタリア革命の直接の序曲となるほかないからである。」(マルクス&エンゲルス『共産党宣言』光文社古典新訳文庫)

 だが実際にこの予言は当たらず、一八四八年革命においてドイツのブルジョア革命は中途半端に終わり、その後、ヴィルヘルムの絶対君主制のもとブルジョア社会として急速な発展を遂げることになった。このことでマルクスとエンゲルスの永続革命的展望が無意味だったと解釈するのは大間違いだ。その後、後述するように、帝政ロシアなどの後発国ではこの命題の正しさが証明された。

 マルクスとエンゲルスはその後、一時的に、永続革命的展望から離れるが、そのさらに後、エンゲルスは晩年に再び永続革命的展望に立ち返る。たとえば「エンゲルスからポール・ラファルグへの手紙(一八九三年六月二七日)」において次のように言われている。

 「共和制の形態は、たんに君主制の否定にすぎない。君主制の打倒は革命の単なる随伴現象として行なわれるだろう。ドイツでは、ブルジョア諸政党は完全に破綻してしまっているので、われわれは君主制から直接に社会的共和制に移行しなければならないだろう」。

 つまり、ブルジョア諸政党は完全に破綻しており、君主制打倒の課題を担えない、だからそれを担うのは、ドイツの労働者政党・社会主義政党であり、それは権力を取ったらただちに会主義的措置へ進んでいくしかないとエンゲルスは語っているわけである。

 マルクスの生前、後発国ロシアには一〇〇万たらずの労働者しかいなかった。マルクスとエンゲルは、ドイツ革命と同様な永続的な展望がロシアで成り立つとは思っていなかった。しかし、その後、一八八〇年代にプレハーノフ(およびその他のロシア・マルクス主義者)は、マルクスとエンゲルが一八四八年にドイツ革命に見出した展望をロシアに創造的な形で適用した。第一に、彼らはナロードニキに反対して、ブルジョア革命と社会主義革命との混合を批判し、両者を明確に区別した。第二に、当面のブルジョア革命においては労働者階級とブルジョアジーとの連合が中心勢力であるとみなし、労働者階級は解放運動においてヘゲモニー的役割を担うが、権力を握るのはあくまでもブルジョアジーだとみなした。第三に、しかし、たとえブルジョア革命が勝利しても、ブルジョアジーの権力は長続きしない。なぜなら、ロシアの労働者階級は一八四八年のドイツよりもはるかに発達しているし、国際的にもヨーロッパ先進国ではすでに社会主義革命が日程に上っているからだ。

 こうしてプレハーノフは、マルクス主義者として最初に書いた著作『社会主義と政治闘争』において、「ブルジョア社会の現状および各文明国の社会的発展に対する国際関係の影響は、ロシア労働者階級の社会的解放が絶対主義の崩壊のすぐ後に続くことを期待する権利をわれわれに与える。もしドイツのブルジョアジーが『やって来るのが遅すぎた』なら、ロシアのブルジョアジーはさらに遅れ、その支配は長つづきしないだろう」と提起した。つまり、段階革命論だが、二つの段階はかなり近接して起こるという「近接型段階革命論」である。このプレハーノフの提起は、後のレーニンの労農民主独裁論やトロツキーの永続革命論の出発点として大いに役立った(もっとも、レーニンもトロツキーも、労働者階級に反専制・解放闘争のヘゲモニー的役割を見出しつつ、その主要な同盟相手はブルジョアジーではなく、農民だとみなしたのだが)。

 2、「歴史の始まり」と「歴史の終わり」との攻防

 プレハーノフの議論から出発しつつ、一九〇五年のロシア革命を踏まえて成立したトロツキーの永続革命論は、次の三重の結合論を主張している。

 第一に、後発国ロシアにおける「ブルジョア的歴史の始まり」(ブルジョア革命)と「人間社会の前史の終わりの始まり」(社会主義革命の開始)との有機的結合。第二に、ロシアにおける「前史の終わりの始まり」と先進国における「前史の終わり」(社会主義の実現)との有機的結合。第三に、この二つの結合の展望それ自体の結合。つまり、ロシア革命がヨーロッパ革命に波及してロシア労働者国家が西欧社会主義世界に統合され、こうして本来の意味での社会主義へと前進できるか(進歩的統合)、さもなくば、社会主義に至るはるか以前に労働者国家が崩壊して西欧帝国主義世界に統合され、(西欧的自由民主主義体制からも程遠い)資本主義的な独裁国家となるか(反動的統合)のどちらかであるとみなした。

 では、現実にはどうなったか。一九一七年のロシア革命は第一の結合を実現したが、第二の結合は一時的・部分的にのみ実現され、後に分離した。そして第三の結合は実現しなかった。進歩的統合も反動的統合も起こらず、ロシア労働者国家は満身創痍となりながらも生き残ったのである。

 その後、歴史の一種の釘づけ状態が発生し、スターリニズムの成立とそのイデオロギー的正統性理論としての一国社会主義論が形成された。労働者国家の理想主義が大きく後退し、スターリニズムという官僚独裁制へと帰結し、世界は東西二つの世界に分裂した。

 だが歴史はこうした分裂のもとでもその歩みを止めることはなかった。一方では、東側諸国において、労働者国家の量的拡大(第二次世界大戦後の東欧、中国、ベトナム、キューバ等々)と、質的高度化(生産力水準や分配面など)が生じ、他方の西側資本主義国では、福祉国家体制とケインズ主義への発展が見られ、社会主義政党や共産党が勢力を伸長していった。どちらにも属さない第三世界では、資本主義的な軍事独裁の流れと、民族民主主義革命から社会主義革命への永続革命の流れとの、激しいせめぎ合いが起こった。

 Ⅱ、68年革命から現代まで――「歴史の終わり」の弁証法

 1、ソ連・東欧の崩壊と「歴史の終わり」論

 ロシア革命を契機にして歴史の上昇線が生じ、それはやがて先進資本主義の中枢にまで至り、それはついに一九六八年革命として結実したが、それは結局挫折し、社会主義革命の先進国への波及はついに生じなかった。このことから歴史の上昇線は下降線屁に道を譲る。一九七九年におけるニカラグア革命を最後の永続革命として、それ以降、第三世界諸国における民主主義的変革は社会主義革命へと連続しなくなる。たとえば、一九八七年における韓国民主化、一九九一年の南アフリカでアパルトヘイト廃止、一九八〇~九〇年代におけるラテンアメリカでの軍事独裁政権の崩壊などでは、そこで起きた民主主義的変革はいずれも社会主義革命へと連続しなかった。

 この歴史の流れの転換を画するのが、一九七九~八〇年という年である。すでに述べたように、その年のニカラグア革命は最後の永続革命となったが、同年のイラン革命は、親米パーレビ独裁政権を打倒する急進的で大衆的な革命が起きたにもかかわらず、それは社会主義の方向ではなく、より反動的なイスラム原理主義体制へと連続していった。さらに同年一二月、ソ連はアフガニスタンに侵攻したが、これはソ連帝国の「終わりの始まり」を画すものとなった。そして一九七九~八〇年にイギリスとアメリカでそれぞれサッチャーとレーガンの新自由主義政権があいついで成立し、本格的な新自由主義反革命が開始された。

 このような流れの中で、一九八五年以降のゴルバチョフ改革、一九八九~九〇年の東欧労働者国家の崩壊、一九九〇~九一年のソ連の崩壊へと歴史は突き進んでいった。福祉国家的な西欧世界ではなく、すでに新自由主義化しつつあった西欧世界へと労働者国家が統合されていったことで、新自由主義的グローバリゼーションは本格的に加速化した。

 この時期に書かれたのがフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』である。最初は論文の形式で発表され、後に著作として世界を席巻した。彼は、共産主義の崩壊を受けて、西欧の「自由民主主義の勝利」が確実なものとなり、歴史は収束と終焉を迎えたと結論づけた。体制変革の時代は終わり、「資本主義、自由市場、自由民主主義」の三位一体のもとでの民主主義的切磋琢磨の時代が半永久的に続くと展望した。

 ところが、フクヤマがそう宣言するや否や「『歴史の終わり』の弁証法」が発動することになる。歴史はフクヤマが考えたようには「整理」されず、世界は一つにまとまらなかった。

 2、ソ連・東欧崩壊後の歴史の混沌

 まず第一に、イラン革命の影響とソ連東欧の崩壊によるオルタナティブの消失は、イスラム圏においてイスラム原理主義の台頭へとつながった。フクヤマの楽観主義的な「歴史の終焉」論(全世界は西欧的民主主義の体制に収斂する)に代わり、ハンチントンの「文明の衝突」論(イスラムやアジアなどの東洋文明は西洋文明と根本的に違うので、自由民主主義の体制は欧米世界に限定され、この二つの文明間で衝突が起こる)が登場する。

 誤算の第二は中国の台頭である。中国型の「国家資本主義」のダイナミズムをフクヤマは過小評価しており、一九八〇年代の天安門事件で、中国の経済成長ダイナミズムは官僚的独裁によって抑えこまれるとみなしたが、中国はその後、二〇年以上におよぶ高度経済成長を続け、アメリカ帝国に対抗しうる唯一の超大国になった。今日では新型コロナ騒動下における「一人勝ち」を謳歌している。

 第三の誤算は、バルカン諸国、中東諸国、アフリカ諸国で冷戦終結後、部族、種族、宗教、宗派が入り乱れての混とん状態に入り、「自由と民主主義」への収束には進まなかったことである(かろうじてバルカン諸国だけが、陰惨な内戦を経た後で一定の安定を見た)。

 第四の誤算は、いわゆる「共産主義の崩壊」にもかかわらず、ポスト東側諸国(東欧とロシア)などは欧米民主主義に同化せず、とんでもない独裁者たちが統治し、官僚的腐敗が蔓延していることだ。フクヤマが考えたような歴史の収斂も世界の一体化も起きなかった。新たに出現した「外部」はかつての「共産主義」よりもはるかに厄介で、はるかに自由にも民主主義にも敵対的であった。

 さらに深刻な事態は、新たな外部が出現しただけでなく、欧米社会のど真ん中で、内部から自由民主主義体制の解体と変質の過程が起きたことである。皮肉なことに(これこそが歴史の弁証法なのだが)、ソ連・東欧が崩壊したがゆえに、外部からのプレッシャーから解放された欧米ブルジョアジーやブルジョア政治家は、民主主義も労働者の生活も重視しなくなった。フクヤマの観点からすれば、「自由と民主主義」の勝利であったはずのものが実際には「自由と民主主義」の終わりの始まりとなったのである。こうして新自由主義の四〇年によって社会の荒廃、格差の天文学的拡大、政治の衰退と腐敗が進行した。すなわち、反動的ポピュリズムの台頭、レイシズムと排外主義の蔓延、ネオ家産制(アベ政治など)の席巻、トランプのような偏狭なイデオロギー政治と偏狭なアイデンティティ政治の両極化、等々である。フクヤマでさえ、今日、『政治の衰退』という新たな著作(邦訳は二〇一八年、講談社)を書いて、ネオ家産政治の蔓延について読者に警告しなければならないと感じたほどである。そして、資本主義そのものも、産業から金融へ、生産から略奪へ、利潤からレント(不労所得)へと変質していった。ある研究者はこれを「封建化する資本主義」と呼んでいるが、言い得て妙である。

 さらにフクヤマが考慮していなかったのは、地球全体を包括する問題が次々と出現したことである。大きく言って、資源の枯渇、地球温暖化、新しい感染症・疫病の蔓延という三つのものを確認することができる。フクヤマの『歴史の終わり』には地球温暖化や資源問題についても少し触れられているが、ほとんど重視されておらず、新たな技術の発達によって十分し乗り切り可能なものだと楽観的に裁断されている。

 3、永続革命論の未来――人類は「前史」で終わるのか「本史」を開始するのか

 結局、歴史の弁証法がわれわれに突きつけているのは、現代世界の中で生きている大多数の人々のプリミティブな諸要求や基本的な民主主義の諸要求が資本主義のもとで本当に達成可能なのかという問題だ。フクヤマは、たとえいろいろと問題や困難があったとしても、それらの問題は基本的に技術の発達と人々の意識の向上によって解決することができると考えたが、歴史の現実はそうでなかったことを示したし、日々示している。こうして、二〇世紀初頭にトロツキーと後発国が直面した問題が、はるかに規模を拡大した形で全人類が直面している。これがトロツキー永続革命論の現代的意義であると考える。すなわち、後発国における「戦略的永続革命」という水準を超えて、全地球的な規模での「歴史的永続革命」が二一世紀における人類的課題として突きつけられているのである。

20210125morita_pr

集会案内【アジア連帯講座1.22講座】トロツキーの永続革命論の現代的意義『トロツキーと永続革命の政治学』を読む

トロツキーの永続革命論の現代的意義 

「トロツキーと永続革命の政治学』を読む


講師:森田成也さん(大学非常勤講師)

日時:2021年1月22日(金)、午後6時30分~
場所:東京・全水道会館 4階小会議室
http://www.mizujoho.com/) (JR・都営三田線水道橋駅下車)


128 なぜ本講座を企画したのか。森田さんの問題提起の共有化を通して、あらためて現代を問いなおす水路をたぐりよせていこうと考えたからです。

 森田さんは、「トロツキーと永続革命の政治学/序文」(柘植書房新社)で言う。「長期的な視野で見るならば、資本主義の長年にわたる世界制覇のもとで、ほとんど不可逆的に進行している地球温暖化とグローバルな経済格差によって、人々の最も基礎的で根源的な生活と環境が破壊されようとしているのに、資本主義諸国はほとんど何の実効的な措置も講じることができないでいる。……したが
って、20世紀初頭においてロシア人民が直面した問いは今なお解決されていないどころか、それははるかに深刻なものになり、先進国や後進国を問わずすべての国と地域の人民に投げかけられている。その意味で、人々の最もプリミティブな諸要求と民主主義的課題の実現を、労働者階級の権力獲得と資本主義システムの変革に結びつけたトロツキーの永続革命論は、まさにこの21世紀において人類史的意義を帯びるに至っていると言えるのである」。

 さらに、「だが、人は問うだろう。そもそも、ソ連・東欧が崩壊して30年も経っている今日、トロツキーの永続革命論について何か書くことそれ自体に意味があるのかと。私は答える。意味はある、大いに意味がある、と。なぜなら、トロツキーがその永続革命論の構築を通じて、そしてその実践バージョンである10月革命とその後の社会主義建設を通じて解決しようとした20世紀的問いは、21世紀の今日においてもなお解決されていないからである。その「問い」とは何か。それは、非エリートの一般民衆のきわめて基本的で切実な諸要求(革命前のロシアにおいてそれは、土地に対する農民の要求、人間的労働条件に対する労働者の要求、専制体制を打倒して民主共和制およびその他の民主主義的諸条件を求める民衆の要求であり、十月革命前夜においては、そこに戦争からの離脱と平和の実現が加わる)は、はたして、ブルジョアジーの支配のもとで、そしてその政治的代理人たちの手によって解決できるのかという問いである」。

 このような森田さんの問題意識を土台にしながら講座では本書の解説とポイント、とりわけ、「序 文  序章 悲劇の革命家と革命論の悲劇 」、「 終章 ロシア革命─一〇〇年目の総括と展望  」の提起を受け、掘り下げていきたいと思います。ぜひご参加ください。

「トロツキーと永続革命の政治学」
https://tsugeshobo.com/modules/books/index.php?cid=1&lid=128&page=print

森田成也さん(大学非常勤講師)

 【主な著作】『資本主義と性差別』(青木書店、1997年)、『資本と剰余価値の理論』(作品社、2008年)『価値と剰余価値の理論』(作品社、2009年)、『家事労働とマルクス剰余価値論』(桜井書店、2014年)、『ラディカルに学ぶ「資本論」』(柘植書房新社、2016年)、『マルクス剰余価値論形成史』(社会評論社、2018年)、『ヘゲモニーと永続革命』、『新編マルクス経済学再入門』上下(社会評論社、2019年)、『「資本論」とロシア革命』(柘植書房新社、2019年)

 【主な翻訳書】デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義』『<資本論>入門』『資
本の<謎>』『反乱する都市』『コスモポリタニズム』『<資本論>第二巻・第三巻入門』(いずれも作品社、共訳)、トロツキー『わが生涯』上(岩波文庫)『レーニン』『永続革命論』『ニーチェからスターリンへ』『ロシア革命とは何か』、マルクス『賃労働と資本/賃金・価格・利潤』『「資本論」第一部草稿——直接的生産過程の諸結果』マルクス&エンゲルス『共産党宣言』(いずれも光文社古典新訳文庫)、他多数。


報告 アジ連10.16講座 11月大統領選挙 ~ 分裂するアメリカ BLM運動と社会運動、左派は 今

配信:喜多幡講座講師:喜多幡佳秀さん(ATTAC関西グループ)

 10月16日、アジア連帯講座は、全水道会館で喜幡多佳秀さん(ATTAC関西グループ)を招き「11月大統領選挙 ~ 分裂するアメリカ BLM運動と社会運動、左派は今」をテーマに公開講座を行った。

 11月大統領選挙に関する米メディア各種世論調査では民主党のバイデン候補の優位が報じられている。トランプは、劣勢ばん回に向けてコロナウイルス対策による郵便投票に対して「大統領選で郵便投票が広範に導入されれば、歴史上、最も不正確で詐欺的な選挙になるだろう」「選挙で不正が行われれば辞めない」と言い出している。迷走・流動的な大統領選をいかに分析し、次の局面を見いだすのか。

 講師の喜多幡さんは、米国の労働者階級と左派の方向性を問題提起してきた。その柱は、MeToo、ブラック・ライブズ・マターなどの新たな運動、民主党内サンダース議員支持勢力と左派州議員などと連携しトランプの再選阻止の陣地をひろげていくことであり、この闘いは同時に資本主義の危機に対する対案を掲げる政治勢力の登場を戦略的に準備していくことであると強調してきた。

 講座では最新のトランプ派・極右グループの動向、米左派情報の紹介なども含めて問題提起した


喜多幡さんの講演 

(1)11月大統領選挙はどうなるのか?

 11月3日投票の大統領選挙を前に、米国では、どちらが勝つかよりも、バイデンが勝利した場合にトランプが結果を受け入れるかどうかが最大の関心事となっている。何が起こるかわからない。すでに異例の事態が起こっている。トランプは、大統領選挙の結果を受け入れない可能性を示唆し、武装した極右勢力の行動を容認し、メディアを動員している。

 トランプ政権の継続は何を意味するか? 次の四年間、アメリカ社会の分裂とファシズムへの動きに決定的に弾みがつく。大統領の権限の無制限の拡大、国際社会の分裂、国際機関や条約からの離脱が既成事実となる。その一方で米国とイスラエル、インド、英国、オーストラリアによる新たな枢軸(国連・国際機関の空洞化)が軍事的緊張と偶発的戦争の危険性を一層高める。「宇宙戦争」、サイバー戦争、小規模核兵器の実用化が現実の脅威となる。ただし後者は民主党政権の時代から始まっていたことに注意しておかなければならない。

 多くの人たちが懸念していることは気候危機、感染症対策への決定的打撃、白
人優位主義と移民・黒人への差別・抑圧・排除の拡大だ。ただし、この点でもは民主党政権が頼りになるわけではない。

特異な選挙制度と極右勢力の動き

 前回(2016年)の大統領選挙では、民主党のクリントン候補が300万票近くの差で多数の支持を獲得していたにもかかわらず、獲得した選挙人の数で上回るトランプの「圧勝」となった。2000年の大統領選挙では、激戦となった3つの州で双方が勝利を主張したため、開票作業のやり直しや裁判所での審理のため35日間にわたって空白が生じた。

 その背景には、独立戦争後の憲法制定時に、普通選挙導入にあたって南部の奴隷主への妥協として導入された選挙人制度が、「奴隷解放」の後も温存されてきたという事情がある。この制度の問題は常に指摘されてきているが、二大政党にとっては第三の政党を事実上排除するために都合のよい制度であり、憲法に規定された制度であるため、修正には手続き上のハードルも高い。

 有権者登録制度にも問題がある。全国的な有権者名簿というものが存在せず、
投票するには自分で選管に登録して有権者の資格を得なければならない。登録制度は不正を防止するために設けられたものだが、黒人や中南米出身者、貧困層の投票を抑制するために利用されている。

 今回の選挙では郵便投票が焦点になっている。2016年大統領選では郵便投票の
割合は20.9%だったが、今回はコロナ感染の影響もあり50%を超えると予想される。これがなぜ問題になっているのかは後で述べる。

 そのような背景の下で、今回の選挙がどうなるのかをめぐって、気になる動きが続いている。

 4月以降、テキサス、イリノイ、フロリダ、テネシー、インディアナ、アリゾナ、コロラド、モンタナ、ワシントンなどの州でロックダウン解除を求める集会が開かれ、その中で極右派の動きが目立ってきた。4月30日にはミシガン州ランシングで「自由のためのミシガン連合」などのグループが武装デモを行い、州議会前を一時的に占拠した。

 5月下旬からブラックライブズマター(BLM)の運動が全国に広がる中で、トランプは、オレゴン州ポートランド、ウィスコンシン州ミルウォーキーなどのBLMのデモ鎮圧に連邦の治安部隊を派遣し、弾圧をエスカレートしている。それに呼応して「第二の南北戦争」を呼びかける「ブーガルー運動」などの武装勢力が活動を活発化させる。このグループは6月に、北部カリフォルニアでデモ警備中の二人の警察官を襲撃・殺害した。これは暴力事件によって騒乱状態を作り出すことを目的とした挑発行為だったと考えられる。

 決定的な転機となったのはトランプが7月19日放送のFOXニュースのインタビューで、選挙に敗れた場合に選挙結果を受け入れるかという問いに対し、「単純にイエスとは言えない」、「選挙で不正行われれば辞めない」と言明したことだ。その後もトランプは同じ趣旨の発言を繰り返している。民主党が郵便投票を通じて大がかりな不正を行うという根拠のない情報を拡散して、とくに激戦区での投開票の「監視」、つまり妨害と有権者への威圧を扇動している。

 さらに、郵便投票の業務を委託されている郵政公社が7月末に各州の選挙管理委員会に「投函された票が期限までに届かない恐れもある」と警告する書簡を出した。6月に公社総裁に就任したルイス・デジョイはトランプへの巨額献金者だ。彼は郵便投票期間中の人員の配置や業務時間の延長の措置を拒否して、意図的に郵便投票の妨害をはかってきた。

 8月19日、トランプがテレビインタビューで極右グループQアノン(謀略論者で、トランプを救世主として崇拝)を擁護する発言をした。

 8月25日、ウィスコンシン州のBLMのデモ(同23日に起こった警察官による黒人の殺害への抗議)で、白人のティーンエージャー(武装グループのメンバー)が発砲、デモ参加者2人を殺害、1人に重傷する事件が発生している。

 9月29日、FBIが「今から1月20日(大統領就任式)までの間、白人優位主義グループによる暴力の脅威がある」とする報告書を発表。同日、トランプは「プラウドボーイズ」などの武装グループを擁護する発言をした。

 10月8日、FBIがミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致計画を阻止し、13人を逮捕したと発表した。トランプは「ウィトマー知事打倒、ミシガン州の奪回」を呼びかけていた。

 逮捕されたクロフトは「愛国運動」のリーダー。ソーシャル・メディアを通じて扇動していた。同州ではミシガン民兵隊 (MMC、一九九四年に元空軍幹部のノーマン・オルソンが創設)、ボランティアを組織し、軍事訓練を行っている。ピーク時は一万人以上、現在は数百人だと言われている。

 「空位の79日間」

 大統領選投票日の11月3日から1月20日にワシントンで大統領就任式が行われるまでの79日間は何が起こるかわからない。次の大統領が決まらない「空位の79日間」となるかもしれない。

 トランプ陣営は「不正防止」のために激戦区に五千人のボランティアを派遣すると威嚇している。開票結果に不服を申し立てるために弁護士の集団が準備を整えている。

 郵便投票は開票に時間がかかることから、即日開票分は激戦区を除く州の開票結果が先に発表されることになる。この時点では共和党が先行することが多い。激戦区の開票結果はまだ確定しない。だからこの時点で、つまり投票日の深夜にトランプが「勝利宣言」を出し、翌日から支持者たちが街頭で祝勝のパレードを繰り広げ、それを背景に残った州の開票あるいは開票結果の発表を妨害する可能性、その際に何らかの暴力的衝突を引き起こし、それを口実として強権的な措置を発動する可能性、バイデンがそのような事態を回避するために何らかの交換条件を付けて「敗北宣言」を出す可能性。さらに、選挙の結果に関わりなくトランプの任期は1月20日までであり、その間に権力を悪用することは間違いない。

 トランプ再選を阻止するには、①大差で敗北させることと、②街頭での闘争、非暴力の抵抗が必要だ。後で述べるように、米国の左派や社会運動は、あらゆる可能性に備えて、さまざまな方法で広範な大衆を動員しようとしている

トランプの4年間

 トランプ政権の下での政策上の変化を見ておこう。

そのポイントは、①金融、軍事産業、エネルギー産業の影響力が圧倒的優位にあることは変わらない ②米国経済の衰退、国際的地位の後退は加速 ③中東政策はオスロ合意の事実上の廃棄。イスラエルによる併合とアラブ諸国との関係の「正常化」(パレスチナ問題を否認する「最終解決」への動き)、イランとの核合意の破棄・封じ込め ④「新冷戦」・・・中国との対決路線:双方に相手の出方を見ながら「レッドゾーン」の見極め/確定へ(ギリギリまで挑発)。 ⑤対ロシア宥和政策と対北朝鮮政策は、民主党および共和党内での抵抗によって挫折 ⑥NATOなどの同盟関係の変調などが上げることができる。

 トランプ政権の下での社会の変化については、次のことが特徴である。「フェイク」が広範に受け入れられ、トランプの強力な支持基盤となっている。トランプは社会を分断し、自らの支持基盤にだけ訴えかけるという政治手法を使いながら、大衆の中に「強いリーダーシップ」への期待を引き出していった。

 トランプ政権の政策に対抗して気候危機、移民問題、コロナ感染等では州政府が独自の政策を打ち出してきた。

 注意しなければならないのは、これらの事態が起こっているのはトランプ政権の特異性ではなく、一過性のことでもなく、米国社会の変化に根拠があるということである。それは世界的な現象でもある(ドテルテ、モディ、ボルソナロ、ネタニヤフ、ジョンソンなど)。ファシズムが現実の問題となっている。

 しかし、このようにファシズムが台頭する条件は、民主・共和両党の新自由主義政策や移民規制、人種差別的な警察活動の容認等によってもたらされ、トランプ政権の下で加速したのであると言える。バイデンが勝っても、この条件が解消するわけではない。

 それではこの4年間、社会運動にはどのような変化があったのか。そのポイントを簡単に列挙しておく。

①  2017年1月の女性マーチがあった。全国で4~500万人が参加。その後は運動内部の論争(中絶の選択権をめぐって、イスラム系グループの「反ユダヤ主義」的発言をめぐってなど)があり、後退。

  だが2020年1月は移民の権利、クライメートジャスティス、生殖に関わる権利をテーマに開催した。10月17日には最高裁判事の任命に反対を掲げたマーチを計画している。Me Too運動は持続的に取り組まれている。

 ②移民の権利をめぐって、地域レベルでの運動へと発展した。 

 ③労働運動は、教員、物流・倉庫(アマゾンなど)、医療、清掃、小売り店など、とりわけ女性、マイノリティーが多い、組合員数は回復の兆しがみえる。

 ④若者の運動は、移民、奨学金、気候危機などをテーマに諸グループが登場している。
 
ブラックライブズマター運動の歴史的意味

 ブラックライブズマター運動の背景としては、警察官による暴力、日常的な監視と不審尋問や冤罪、閉塞感などがある。「黒人の命だって大事なんだ!」という叫び・・・広く共有されている。

 ここでブラックライブズマターの訳語について、私の意見を述べておきたい。このスローガンを黒人が叫ぶ場合は「黒人の命も大事」と訳しても特に問題はない。非黒人が叫ぶ場合、「も」には抵抗があるが「黒人の命は大事」では意味不明。被差別の当事者の叫びであることにメッセージの強さがあり、当事者性を弱めて一般論的な議論に回収してしまうような訳語は避けるべきだろう。そういう観点から、私はとりあえずは「ブラックライブズマター(黒人の命を守る運動)」と表記しているが、脈絡によって、使われている脈絡に想像を馳せることが大事だと思う。

 現在のブラックライブズマターの叫びは、公民権運動以降も変わらない人種差別に対する怒りの爆発であり、新たな歴史の開始である。警官の暴力によって命を奪われた青年への同情、映像を目にした時の衝撃、警察官への怒りから、事件を隠蔽しようとする警察そのものへの怒りへ発展している。「警察の解体、警察予算の削減」の要求は、改良ではなく革命!を意味している。

 BLMは非暴力を掲げている。一部には商店の襲撃・略奪などの暴力的行動があったことが報じられている。その一部は挑発分子によるものだが、多くは自然発生的なものだ。活動家たちが必死で防ごうとしても防げないほど、人々の怒りが蓄積されてきているのだ。襲撃されたのは警察署や警察車両以外では多くの場合、警察と連携して黒人を差別し、監視してきたスーパーなどであり、コミュニティーを侵略し、破壊してきたことへの正当な怒りである。

 BLMを支持している人たちは、警察で取り締まるよりも、学校や住宅に予算を出せば犯罪や麻薬は減ると主張してきた。治安や財産よりも命と尊厳が大事なのである。

 当初は、「警察の解体」はともかく、警察官の行動への規制や予算削減は多くの民主党市長も受け入れる事態へとなっている。さらにミネアポリスやシアトルでは一時的に警察官がデモ隊との衝突を避けるために州庁舎前から退去するほどだ。

 このようなプロセスを経て、白人優位主義者への反発抗議運動が一連の白人優位主義のモニュメントの破壊に向かったとき、「反革命」が始まった。トランプは「アンチファ」との「テロとの戦争」を呼びかけ、連邦の治安部隊(国境警備隊など)を動員し、民主党市長によって事態の収拾へと至った。その後は武装した白人優位主義者たちが街頭を跋扈する局面に入っている。これはアメリカの建国以来の歴史を問い直し、根本からの変革を迫る新しい局面の始まりである。

 「民衆のアメリカ史」の著者で政治学者のハワード・ジンは、白人優位主義の観点から語られてきた米国の歴史、特に建国や奴隷制廃止に関連して称揚されてきた「自由と平等」や民主主義が、黒人への差別と支配を組み込んだ階級支配を覆い隠すものであることを容赦なく暴き出した。彼は「・・・上流階級としては、中産階級に忠誠を誓わせなければならない。そのためには、中産階級を引きつけるようなものを差し出す必要があるのだが、自分たちの富や権力をそこなうことなく、そうする方法はあるだろうか。1760年代から70年代にかけて、支配者たちはまさにぴったりな道具を見つけ出した。それは<自由と平等>という合言葉だった。この言葉が、イギリスに反旗をひるがえすのに充分なだけの、上流階級と中産階級の白人を団結させていくことになる――しかも奴隷制も社会的不平等も終わせることなく」と述べている(ハワード・ジン「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年)。

 トランプは九月中旬に、「ホワイトハウス・アメリカの歴史会議」で、「左翼はアメリカの歴史を嘘とデタラメで歪め、否定してきた」として、ハワード・ジン(「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年))と「ニューヨーク・タイムズ」の「1619プロジェクト」を名指しで攻撃した。学校での「愛国教育」の必要を強調した。(「アトランティック」紙、9月24日付)

 米国の建国(独立革命)の歴史と「建国の父」たちの物語は「神話」となったが、BLM運動は白人優位主義との闘いの中で、この神話の解体に手を付けた。しかも白人優位主義者たちが疎外感や将来への不安を強め、ナショナリズムを拠り所にしようとしている時にである。

 ハワード・ジンが語っているように、黒人への差別は建国以来の階級支配の柱に据えられていた、したがってBLM運動はそのような階級支配を暴き出し、打倒する闘いを目指しているという点で、公民権運動の限界を超え、未完のアメリカ革命(民主主義革命)の完遂に向けての歴史的な一歩を踏み出した。支配階級には「黒人奴隷と貧困白人とが結束して、第二のベーコンの反乱を起こす」(同書)という恐怖が蘇ったに違いない。

 もし2020年大統領選挙におけるトランプが勝利するならば、そのような闘いに対する手痛い反革命となるだろう。

 11月大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の状況

 大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の立場について、主な特徴を簡潔に列挙しておく。

 ①民主党内の左派とサンダースの支持者たちは、バイデン支持だ。バイデンを通じて国民皆保険制度、グリーンニューディールなどの要求の実現を目指している。

 ②DSA(アメリカ民主社会主義者党)は、基本的には(多数は)バイデン支持だ。戦術的に「まずトランプを阻止し、それからバイデンと対決する」と設定し、民主党内左派にとどまる。

 ③緑の党は、H・ホーキンスが立候補した。H・ホーキンスは、「トランプを追い出さなければならないが、バイデンに任せておいては気候変動も人種差別も期待する進歩は実現しない。つまり、バイデンは気候変動否定論者と同じような行動をしてきたし、国民皆保険制度に関する政策を受け入れなかった。われわれがバイデンの政策を受け入れれば、バイデンが当選した場合にも彼に政策を受け入れさせるのは難しい。

 前回、緑の党が立候補をやめていたらクリントンが勝っていたという根拠はない。緑の党がメディアから無視されているのは不当。緑の党への票は反トランプの票であって、トランプを利するものではない。有権者にとって環境問題はもっとも重要な問題のはずだ。」と語っている。(「ニューズウィーク」とのインタビュー、2020年9月11日)

 左派の間での議論は、常に二つの議論が繰り返されてきた。

 一つは「より少ない悪」(民主党への投票を呼びかける)という考え方への批判であり、「第三の候補」の挑戦という主張もあった。この点ではSWP(社会主義労働者党)の独自の闘いや、2000年の消費者運動家ラルフ・ネーダー氏(288万2955票、2・74%)の取り組みがあった。緑の党は2004年以降、一貫して独自候補を立てて健闘している。

 共和党と民主党はどちらもブルジョワ政党であって、政策も変わらないし、ど
っちが政権を取っても何も変わらないというのは確かに現実である。しかし、この間の大統領選挙、特に2004年以降の選挙では、政策上の違いよりも、アイデンティティー・価値観・「雰囲気」の違いなどに着目すべきだと思う。「トランプに勝たせてはならない」という意識は重要である。

 同時に実施される両院の選挙、とくに下院選挙での左派議員(民主党)の勝利との連動や、独立的政党(ワーキングファミリー党など)、ローカル政党との連動は一定の成果を上げている。

 もう一つの議論は「労働者の党」あるいは「社会主義を掲げる党」の建設をどう展望するのかである。この点ではこれまで多くの挑戦と失敗があった。労働者階級や労働組合の受動性(保守性)があり、一方で黒人運動やフェミニズム運動からの急進的な要求に応えられていないという問題があった。

 そのような状況の中でサンダース・ブームとDSAの登場は、新たな可能性と
評価していいのではないか。

 連動して若者の間での社会主義への関心が高まっていることも、その現われだ。ただし、その内容は「グリーン・ニューディール」(資本主義の改良)であって、資本主義の廃絶がイメージされているわけではない。社会運動との結びつきが重要であり、DSA内の「分岐」も試行錯誤の一つの段階として考えるべきだろう。古い議論を繰り返すのではなく、ここから始まるということが重要であり、「何
が始まっているのか」を理解することから始めるべきだろう。

 最後に若者のグループについて紹介したい。ウエイブ配信されている主なグループをピックアップした。各グループの主張等の詳細は省略するが、直接、ブログをチェックしていただきたい。

①  Dream Defenders(警察官の暴力と人種差別に抗議、2012年) 

②  March for our lives (銃規制、2018年) 

③  Sunrise Movement (気候変動対策・再生エネルギー、2017年) 

④  United We Dream Political Action Committee(移民の青年のグループ、28州に100のグループ、40万人)など100以上のグループがProtect the Result Coalitionを結成(9月25日)。投票の権利を守るための行動を呼びかけ、投票日の動員などをブログ#COUNT ON USで発信している。

 参考までに「#COUNT ON USのよびかけ文」〈https://wecountonus.org/〉 を紹介しておく。

 「今秋、私たちの世代はトランプを打ち負かし、この国の変革を始める力を持っている。私たちには私たちの力が頼りだ。私たちは移住者の保護を勝ち取ったドリーマー(夢見る者)だ。私たちはNRA(ライフル協会)に挑戦した子どもたちだ。私たちの世代はブラックライブズマターを全米の鬨の声にしたし、グリーンニューディールを優先的な政治課題にしてきた。ドナルド・トランプと彼の大金持ちの仲間たちは自分たちが負けることを知っている。だから彼らはわざと私たちを引き裂き、私たちの声なんか関係ないと思いこませ、選挙結果を盗もうとする企みから私たちの目をそらせようとしているのだ。私たちは彼らを止めるために結集しようとしている」。


::::::::::::::::::::::::

報告 9.11 アジ連 公開講座 「入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義」

配信:寺本講座9月11日、アジア連帯講座は、「入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義」をテーマに公開講座を行った。

寺本さんは、8月に発刊された「エコロジー社会主義  気候破局へのラディカルな挑戦」著者:ミシェル・レヴィー/柘植書房新社)の翻訳を行った。ミシェル・レヴィーのアプローチをバネにクライメート・ジャスティス(気候正義)運動、「システム・チェンジ」を目標としたエコ社会主義(社会主義とエコロジーを結合させた新たな社会の展望)の取り組みを提起している。

講座は、①気候変動から気候危機・気候破局へ ②温暖化否定論者は何を言っているのか? ③気候危機と地球温暖化 ④パンデミックが映し出す気候危機の本質 ⑤システムを変えよう!気候を変えるのではなく!を柱に提起した。集約として、エコロジー社会主義を実践的に具体化し、共有化していく作業を共に担っていくことを確認した。

寺本講演


 COP21(2015パリ)、COP23(2017ボン)の対抗アクションに参加してみて、「システムを変えろ・気候を変えるな」というスローガンが、とりわけヨーロッパの気候変動に対する闘いの中で定着していることを目の当たりにした。このスローガンは、2009年のコペンハーゲンでのCOP以来、大きな基軸として掲げられてきたものである。それではシステムを変えるというとき、変えた先にあるものは何か、未来の社会のイメージがないと先に進めないのではないかと考えた。その中でミシェル・レヴィーの「エコ・ソーシャリズム」という本を翻訳してみようと思い、このたび『エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦』として、柘植書房新社より出版されることになった。

 目次を見てほしい。序章の「二一世紀の大洪水」は、昨年、ミシェル・レヴィーがフランス語版の改訂版に書き下ろしたもので、昨年の国連の気候行動サミットでのグレタ・トゥーンベリの演説なども網羅している。それ以外は、2000年~2010年代にかけて彼が書いたものだ。第5章の「マルクス・エンゲルス・エコロジー」は、斉藤幸平さんの論文も言及がある。レヴィーは、彼の立場とは違うという形で書いている。7、8章は、レヴィーはもともとブラジルの出身なのでラテン・アメリカの先住民の運動に大きな関心と力点を置いている。

 現在、世界は、① 気候危機 ② コロナ・パンデミック危機 ③ 政治・経済・社会的危機が同時に進行している。

 例えば、アメリカが発火点となったブラック・ライブズ・マターは、その背景に深く制度の中に組み込まれた人種差別の問題がある。黒人のマルクス主義者の中では、人種資本主義という概念が広く使われている。人種差別とは、資本主義の中に制度的に深く組み込まれているという議論がされている。

 三つの危機の根源は、現在の「システム」にある。では、そのオルタナティブは何か?について問題提起していきたい。

1.気候変動から気候危機・気候破局へ

 世界中で「異常気象」が「日常化」している。例えば、モスクワの2020年1月の平均気温は約0度(観測史上最高)で平年より9.3度高く、これまでの最高記録を1.5度上回った。1月の積雪量は7センチ(平年32センチ)だった。

 南極半島のアルゼンチン基地では史上最高温度18.3℃を記録し、過去50年で約3℃上昇した。南極半島西岸にある氷河は過去50年で87%失われた。産業革命以降、すでに約1度の気温上昇があるが、南極圏・北極圏の気温上昇が激しい。

 シベリアのサハ共和国ベルホヤンスクで、6月30日に38℃を記録している。永久凍土が溶けていくと、その中に閉じ込められた大量のメタン、二酸化炭素が一挙に放出される。ますます地球温暖化に拍車がかかる。

 さらに永久凍土の中に、例えば、マンモスの死骸とか、動物の死骸とかが閉じ込められている。それが溶けることによって、その中で生き残っているウイルスが出てくる。シベリアで2016年、永久凍土の中にあった動物の死骸から出てきた炭疽菌で死亡者が出た。未知の、一万年前のウイルスがさらに出てくるかもしれない。

 こうした異常気象では、もはや「異常」であることが当たり前になり、新たな「普通」など見つけるべくもなくなっていて、過去のデータに基づく気候予測は成立しなくなっている。日本でも地球温暖化の影響は現実のものとなっている。「100年に1度」の異常気象が日常化している。今年夏の「猛暑」では、8月の平均気温は平年比で、東日本で2.1℃、西日本で1.7℃高く、過去最高だ。岡山県高梁市は、24日連続で35℃以上を記録している。浜松市は、41.1℃の最高気温だった。だから人々の間では、気候温暖化という知見は共有化されているのではないか。

 集中的・局地的豪雨、巨大台風は、日本近海の海水温上昇による水蒸気量増加が原因で、台風が日本近くで発生し、日本を直撃するようになっている。2018年9月4日の台風で関西国際空港は水没した。

 オーストラリア森林大火災は、ニューサウスウェールズ州で240日以上森林火災が続き、540万haが焼失(例年の18倍)した。結果として、2月6日から豪雨によって鎮火した。極端から極端にふれるのが異常気象の特徴だと言える。

 森林火災が起こる「主犯」は地球温暖化にある。2019年のオーストラリアの平均気温は観測史上最高で、平年より1.52℃上回った。年平均降雨量は平年より4割減っていた。つまり、地球温暖化により乾燥地域が拡大している。

 現在のカリフォルニアの火事は、81万㏊にまで広がっている。東京都の3.7倍だ。その原因には、ドライライトニング現象がある。雨が降っていないのに、雷が鳴る。晴れているところに、いきなり雷が落ちてくるわけだ。カリフォルニアだけで1200箇所にドライライトニングによる雷が落ち、火災が一気に広がった。ロサンゼルスでは、9月6日、49.4℃を記録している。

 オーストラリアの場合は、昨年から年末の間に「インド洋ダイボールモード現象」の影響があると言われている。インド洋の西側海面の温度上昇によってアフリカ東部は豪雨となり、東側海面の温度低下でインドネシア、オーストラリアで少雨、乾燥となった。ただ、地球温暖化で温度上昇や低下の度合いが大きくなっている。このダイボールモード現象によって、オーストラリアでは森林火災、アフリカではサバクトビバッタが大量発生した。アフリカ東部の豪雨によって繁殖に適した環境になった。

いまや気候変動ではなく、気候危機・気候破局の段階に入っている。日本政府の「環境白書」2020年度版でも気候危機とはじめて表現された。このような気候危機・気候破局は、ある段階を超えると、気候システムが不可逆的に暴走し、地球温暖化に歯止めがかからなくなると多くの科学者が指摘している。その限界点には私たちが考えているよりもずっと早く到達するかもしれない。ミシェル・レヴィーも『エコロジー社会主義』でその点を強調している。

2.温暖化否定論者は何を言っているのか?

 ボルソナロ・ブラジル大統領は、パリ協定からの離脱を示唆し、先住民を追い出して、アマゾン開発を促進している。三人の息子は「パリ協定は国際的な陰謀」「温暖化はウソ」「気候変動は左派のアジェンダ」と主張している。

 トランプ米大統領は、「地球温暖化という概念は、もともとアメリカ製造業の
競争力をそぐために中国によって中国のために作り出されたものだ」(2012年)と言っていた。

 ただ注意しなければならないのは、ボルソナロやトランプの温暖化否定論とコロナ・パンデミックでの立場が共通しているとこだ。温暖化否定は、こういう人達だけではなく、世界的に日本でも、かつて一部のエコロジスト、反原発を掲げた人達の中でそういう論議が行われていた。「地球温暖化は原発推進のためのデマ、推進するための陰謀だ」という人がいた。

 ミシェル・レヴィーは、エコロジー社会主義』の序章で「アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所前所長のジェイムズ・ハンセン」に触れている。この人は気候変動の専門家で警鐘を鳴らしている人だが、熱心な原発推進論者でもある。気候変動、地球温暖化を防ぐためには、原発を推進しなければいけないと主張している。こういう人がいることが、温暖化デマ説につながっているのかもしれない。

3.気候危機と地球温暖化

 なぜ温暖化が起こるのか。地球のエネルギー収支は一致している。入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーはイコールになっている。イコールでなかったら地球は、際限なく暑くなってしまう。温室効果ガスは、赤外線を吸収し再び放出する性質を持つ。地球の外に向かう赤外線の多くが、温室効果ガスに吸収され(熱として大気に蓄積)、放出されて地球の表面に戻り、地表付近の大気を暖めることによって地球温暖化となる。エネルギーが地球の表面にとどまることによって温暖化が促進される。

 世界気象機関は、現在の状況を「氷河時代」だとしている。南極、グリーンランド、ヒマラヤなどに氷河がある。氷河時代は氷期と間氷期が繰り返される。258万年前に始まった氷河時代のCO2の濃度は、180~280PPMで推移している。

 しかし、現在のCO2の濃度は、過去数十万年にわたる自然変動の域を超えている。だから温室効果ガスによって温暖化が進んでいることが科学的に立証されている。2015年から2016年のCO2濃度の増加は、3.3PPMでこれまでの最高だ。明らかに人為的な温室効果ガスの排出が原因だ。

 温室効果ガスはどこから排出されているのか。温室効果ガスの76%が二酸化炭素(CO2)で、65%が化石燃料に由来している(CO2換算で)。

 国連によればCO2排出量の国別順位(2016年)では、一位が中国、二位
がアメリカ、三位インド、四位ロシア、五位日本となっている。しかし、一人当たりの排出量はアメリカが突出して多い。アフリカ諸国は、総排出量でも、一人当たり排出量でも、非常に低い数字となっている。

 ドイツのCOP23対抗アクションのフォーラムに参加して、工業的農業から排出される温室効果ガスが多いことを知り、大変驚いた。食肉・乳製品製造のトップ20社が排出する温室効果ガスの量は、ドイツが排出する量を上回っている。2016年のデータでは、温室効果ガスの全排出量の14%が食肉・乳製品製造によって占められている。その中には、加工・製造・輸送などで発生するものも含まれている。今後も今のような食生活を続けるならば、いくら他でCO2を削減しても、大きな排出が残ってしまう。

4.パンデミックが映し出す気候危機の本質

 新型コロナウイルス流行でCO2排出が激減したと言われている。国際エネルギー機関の予測では、今年の世界のCO2排出量は前年比8%(約26億トン)減少(リーマン・ショック後の09年の約6倍の削減)とされている。航空輸送の中断、工場生産ストップ、発電量の減少などにより、化石燃料の使用が減少した。逆に言うと、飛行機を飛ばさなくても、クルーズ船を動かさなくても生きていけるということだ。不必要な生産がどれだけ多かったかを現わすものだ。

ボルソナロとトランプの共通した対応

 パンデミックに対してボルソナロはいまだに「われわれは生き続けなければならない。雇用を守らねばならない。普段通りに戻らなければならない」「(感染が)危険なのは60代以上。なぜ学校を閉めなければならないのか」「軽い風邪」(3月24日)、「他のウイルスの方がはるかにたくさんの死者をもたらしたのに、今回のような騒動は起きなかった」「何人かの知事や市長が行っていることは犯罪だ。ブラジルを壊している」(3月25日)などと述べている。

 トランプは当初は「フェイクニュース」「民主党によるデマ」だと言っていた。さらに「コロナウイルスは消滅しつつある。ある日、ミラクルのように消えていく」(2月28日)、「私はワクチンについても、検査と同様に感じている。新型コロナは、ワクチンがなくても消滅する。そして、一定の期間が過ぎたら、もう見ることは無いと願っている」(5月8日)などと言っていた。

 彼らは地球温暖化を否定し、パンデミックに対しても共通した態度をとった。深刻なエコロジー危機であるにもかかわらず、全く関心がなく、危機感がない。生態系を壊しても経済、金儲けを優先する態度だ。つまり、現在のコロナ危機・気候危機・新自由主義的グローバリゼーション危機の社会的危機は、相互に絡み合う有機的関係を持って進んでいることを示している。

コロナウイルスとは

 コロナウイルスは、本来の宿主であるオオコウモリや齧歯(げっし)類から「人畜共通感染症」として漏出した。エボラ出血熱、エイズ、SARS、MERS、そして新型コロナウイルスなど、1960年以降に出現した新たな病気の3/4は動物由来感染症だ。いかに動物環境に対して人間が介入し、環境を破壊したことの現れだ。

 なぜ漏出したのか。森林伐採、工業的農業の拡大、集約農業・監禁的動物飼育、鉱山開発・インフラ開発による自然破壊、野生種の利用(ペット・食用など)などのまさに生態系破壊によって、野生生物から人間への病気の漏出をもたらした。

 一方で、新自由主義的グローバリゼーションの中で爆発的な旅行の拡大、多国
間貿易、農村部破壊による都市への人口集中が、感染の世界的拡大(パンデミック)の絶好の条件となった。

 パンデミックによる被害や影響は、地域・人種・階級・ジェンダー・社会的状況などによって著しく偏在している。それは気候危機の影響と同様である。例えば、ブラジルで最初にコロナウィルスを持ち込んだのは、ヨーロッパなどに旅行に行っていた金持ちの人達だった。さらに彼らの家で働いていた人が感染し、スラムへと広がっていった。金持ちは、医療システムが崩壊していても、高いカネを払って私立病院で治療ができるので回復していった。または、田舎の別荘に移って感染しなかった。だが、社会的に脆弱な立場にある人々に感染が集中している。

 アメリカでは、黒人や中南米からの移住者、エッセンシャルワーク(病院・介護施設、物流・倉庫、公共交通、食肉加工など)の労働者が大きな被害を受けた。ヨーロッパでも老人介護施設での死亡者が多数だった。パンデミックの被害者は、ある特定の人達に集中的に影響を与えた。

 気候危機の場合はどうか。温室効果ガス排出にそれほど責任を持たない途上国の社会的に脆弱な人々に集中的に及んでいる。例えば、島嶼国・低地帯の水没・海水の浸透、砂漠化による干ばつ・食料不足・水不足、移民・難民の激増、先住民の居住地域の破壊などが拡大している。

 つまり、パンデミックや気候破局などのエコロジー危機の被害者と新自由主義的グローバリゼーションの被害者は重なっていることだ。

5.システムを変えよう!気候を変えるのではなく!

 パリ協定で決まった各国の温室効果ガス削減目標が全部達成されても、2.7℃~3.7℃の気温上昇を招く。日本は、この削減目標すら達成できそうにない国の一つだ。G20の中では他にオーストラリア、ブラジル、カナダ、韓国、南アフリカ、アメリカ合衆国もそうだ。

 日本政府は、脱石炭・脱原発に極めて消極的だ。最近になってようやく、旧式石炭火力発電所の休廃止を促す方針を表明したが、脱石炭ではなく、高効率の石炭火力発電所への転換をはかることがねらいだ。

昨年のCOP25は会議としては失敗だったが、若者たちを中心に気候アクションが盛り上がった。気候アクションで若者たちが訴えたメッセージは、「① 1.5℃目標に沿った温室効果ガス排出削減目標の更新・強化を打ち出すこと ② 2030年より早期段階での脱石炭の宣言 ③ 自然エネルギー100%目標の策定 ④ 気候変動の影響に脆弱な国・地域に住む人々(一次産業従事者・女性・先住民等)の人権を守ること」である。

 2019年には、Friday for Future などが呼びかけた気候ストやアクションが世界的に広がった(昨年3/15 140万人、9/20 400万人、9/27 200万人、11/29 200万人)。日本でも、若者を中心に気候マーチが取り組まれた。

 グレタ・トゥーンベリさんらは、今年7月16日にEU首脳・各国首脳への公開書簡を出した。

 「われわれがより少ない排出への信頼できる道筋の上にいる、さらに気候災厄を回避するために求められる行動は現在のシステム内で求めることができる-さらに言うならば、われわれが危機を危機として扱うことなしに、危機を解決することができる-と長期にわたって言い張れば言い張るほど、貴重な時間がますます失われてしまうだろう」。

 つまり、今のシステム内では気候破局を回避することは難しいということだ。具体的な要求としては以下のことを掲げている。

*ただちに、全面的に、化石燃料の探査・採掘に対する投資の中止、化石燃料への補助金の終了、化石燃料からの投資を完全撤退。

*消費指数や国際航空・海運を含む(温室効果ガス)排出全体を数値目標に含め
ること。

*拘束力のある毎年のカーボン・バジェットを確立すること。

*民主主義を保護・防衛すること。

*労働者ともっとも脆弱な人々を守る環境政策を立案し、あらゆる種類の不平等-経済・人種・ジェンダー-を減らすこと。

*気候緊急事態・エコロジー緊急事態を緊急事態として扱うこと。

 これはエコロジー社会主義と現在の運動をつなぐ過渡的要求とも言える。

 このように気候危機と社会的経済的政治的危機の問題を結びつけてとらえ、システムとつながっていることが意識しはじめられている。

6.エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦

 地球温暖化を議論する際に、気温上昇をカウントする起点は産業革命だ。つまり、資本主義生産システムが成立した時期から起算している。このことは、エコロジー危機の要因の一つである地球温暖化は、資本主義生産システムとともに進行してきたことの表現になっている。

 ところが気候変動に理解をしていると言われる資本家は、人間の存在とその活動(人口の爆発、際限ない消費の欲望、エコロジーに配慮しない企業の存在など)が地球温暖化の原因だと言う。エコロジストの一部でも同じような考えをしている人たちがいる。レヴィーの本の中でも出てくる。

 人間の存在が問題だと考えると、解決策は「人間の倫理的問題」、あるいはグリーン資本主義ということになってしまう。「車に乗らないようにしよう」「エアコンを使わないようにしよう」ということなるのか。また、グリーン資本主義は、できるだけCO2を出さない資本主義、技術革新によってCO2を貯蔵・管理する資本主義を目指すということだ。

 私たちは、こういう立場に立たない。資本主義生産システムそのものが、エコロジー危機の根源だ。さらに新自由主義グローバリゼーションがそれを加速させているという立場だ。

 そのうえでとるべきオルタナティブは何か? 資本主義生産システムそのもののオルタナティブとしてのエコロジー社会主義だ。だが社会主義は時代遅れだという意見がある。レヴィーは、それは違うと言っている。社会主義を復権するためには、エコロジー的な視点を取り入れることが重要だと言っている。

 ミシェル・レヴィーは、『なぜエコ社会主義なのか? 赤と緑の未来のために』(2018)で次のように言っている。なお、この論文は、「エコロジー社会主義」の要約的なものとなっている。

 「現代の資本主義文明は危機に瀕している。資本の無制限な蓄積、あらゆるものの商品化、労働と自然の無慈悲な搾取、そしてそれに伴う野蛮な競争は、持続可能な未来の基盤を損ない、それによって人類の生存そのものを危険にさらしている。われわれが直面している深くシステム的な脅威は、深くシステム的な変化、すなわち「大転換」を要求している。」

 「エコロジーの基本的な考え方とマルクス主義の経済学批判を統合することでエコ社会主義は、持続不可能な現状に対する根本的なオルタナティブを提供する。それは、市場の成長と量的拡大(マルクスが示すように、それは破壊的進歩である)に基づく資本主義的な「進歩」の定義を拒否して、社会的ニーズ、個人の福利、エコロジー的均衡のような非貨幣的基準に基づいて確立された政策を提唱する。エコ社会主義は、資本主義システムに挑戦しない主流の「市場型エコロジー」と、自然の限界を無視した「生産力主義的社会主義」の両方を批判する。」

 つまり、個人の福利、とりわけ労働時間の短縮が必要だと強調している。自由時間を増やすことだ。

 その中で「エコ社会主義の根幹」として「民主的でエコロジー的な計画作成」が重要であると提起している。つまり、生産手段を資本家から奪い取って、共有化するだけでは不十分だ。それはソ連型社会主義が陥った誤りである。ソ連型社会主義に欠けていたのは、「民主的でエコロジー的な計画作成」だと言っている。

 具体的には、「どのような生産分野を優遇するのか、どのように教育、医療、文化に資源を投資するのか、技術革新をどのような方向に向けていくのか、を民主主義的に決定していくこと。重要なのは、地方、広域、国家、大陸、国際的なあらゆるレベルでの民主的管理だ」。

 また、「資本主義の「破壊的進歩」からエコ社会主義への大転換は、・・・社会、文化、考え方の永続的な革命的変革の過程でもある。この転換を実現することは、新しい生産様式と平等主義的で民主的な社会につながるだけでなく、お金の支配を超えて、広告によって人為的に生み出された消費習慣を超えて、無駄で環境に有害な商品の無制限の生産を超えて、オルタナティブな生活様式、新しいエコ社会主義的文明にもつながる。」と主張している。

 生産方式の所有から変革だけではなく、その過程全体を通して人間の考え方、
生き方を変えていかなければならないということである。エコロジー社会主義は、そういうものを含むものでなければならないということだ。

 例えば、ラテンアメリカの先住民が「よく生きる」という概念を使っている。エクアドル、ボリビアでは憲法の中でも明記されている。自然と共生し、よく生きるという考え方がある。レヴィーは、このことを評価している。「所有(having)」(何をどれくらい持つか)よりも「実存(being)」(どういう生き方をするか)を優先するということだ。

 最後にレヴィーは言う。「エコ社会主義はユートピア(「どこにもない何か」の意味)であるが、現実の社会を根本的に変革するにはユートピアを夢想すること抜きにはありえないのではないか」。

 ヴァルター・ベンヤミンの「マルクスは、革命は世界史の機関車だと言った。しかしおそらく、事態はそれとは大きく異なっている。革命は、列車旅行をしている人類が非常ブレーキをかける行動なのかもしれない」を引用して、「革命とは、列車が奈落の底に落ちる前に人類が手を伸ばす非常ブレーキである」と提起している。

 一方で、エコロジー危機に対する具体的闘い、つまり石炭火力をなくすこと、原発をなくすこと、あるいは地域で地産地消の取り組みを進めていくことなど、具体的な課題がたくさんある。そういう課題に積極的に参加し、一つ一つ実現していくことも大事だ。

 私たちは、ユートピアとしてエコロジー社会主義と現在のエコロジー的危機の課題を、どのようにつなぐのか。どういう要求を掲げて、つないでいくのか。要求のもとにどれだけ多数の支持を集めていくのか。これらが私たちの具体的に問われている課題だ。ただし時間がそれほど残されているわけではない。

終わり

【アジア連帯講座10.16公開講座】米大統領選 左翼の諸動向を探る—アメリカ ブラック・ライブズ・マター

アジア連帯講座:10.16公開講座
米大統領選 左翼の諸動向を探る—アメリカ ブラック・ライブズ・マター

講師:喜多幡佳秀さん(アタック関西グループ)

日時:10月16日(金)/午後6時30分

会場:東京・全水道会館4階小会議室(http://www.mizujoho.com/) (JR水道橋駅下車)

資料代:500円
主催:アジア連帯講座 東京都渋谷区初台1-50-4-103 
新時代社気付 TEL:03-
3372-9401 FAX:03-3372-9402
ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/

file-20200615-65952-pm65vu 世界的なコロナ・パンデミックと連動して、米国においてもコロナウイルス感染が拡大し、深刻な事態に陥っています(8月11日の死者数は16万6027人)。

 トランプ政権は、当初、コロナ感染による犠牲は限定的であると過小評価し、ただでさえ医療制度が脆弱であるにもかかわらず、感染拡大を実質的に放置してしまいました。感染の危険が高い必須労働(エッセンシャルワーク)は、マスク・保護服の不足、不十分な換気設備状態下で多くの労働者(大半は黒人と中南米などからの移住者)が犠牲になっています。つまり、トランプのコロナ対策は場当たり的なため、ロックダウンによる経済活動の停止から後退へと流れ、大失業(4月、2000万人超)と貧困拡大、社会不安を拡大させたのでした。

 四月中旬、「アメリカ愛国者集会」(ミシガン州の州都ランシング)、「自由のためのミシガン連合」などがロックダウン解除を求める集会、武装デモを行い、米国各州で波及していきました。トランプは、大統領選を優勢にしていくために各州の民主党知事をターゲットにしてロックダウン解除を求める集会・武装デモへの支持、規制緩和を表明していくのでした。

 5月25日、ミネアポリスで警察官によるジョージ・フロイドさんの殺害事件が発生します。この事件を契機に、「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命を守る運動)が反トランプ・反警察・反レイシズムを柱に全国的に広がっていきました。その現れとしてミネアポリス市議会の反警察・予算打ち切り審議、シアトルの「キャピトル・ヒル自治区」宣言の攻防(6・8/1カ月間、警察署を閉鎖させ、市民の自治によって運営)、白人優位主義者や奴隷主の肖像や記念碑撤去、建物や通りの名前を変更する運動へと発展しました。

 トランプは、全国的な「ブラック・ライブズ・マター」、反トランプ・反警察・反レイシズムに対して反国家的な行動として連邦治安要員の派遣も含めた暴力弾圧を押し進めています。

 このようなかで11月大統領選挙に向けて共和・民主両党のキャンペーンが繰り広げられています。トランプは米国第一主義、反中国・反移民を掲げ共和党、極右・保守勢力を巻き込んでいます。民主党は、党内右派・中道派共闘によってバイデン元副大統領が大統領候補としてコロナ禍のなかでオンラインキャンペーンを展開しています。政策は、対中国など強硬路線、製造業支援と雇用増、IT企業などや富裕層への増税、気候変動パリ協定復帰などです。

 11月大統領選挙に関する各種世論調査では民主党のバイデン候補の優位が報じられています。トランプは、劣勢ばん回に向けてコロナウイルス対策による郵便投票に対して「大統領選で郵便投票が広範に導入されれば、歴史上、最も不正確で詐欺的な選挙になるだろう」「選挙で不正が行われれば辞めない」と言い出しています。

 このような米国情勢をいかに分析し、次の局面を見いだすのか。

 この間、喜多幡さんは、アタック関西の取り組みなどを通して、米国の労働者階級と左派の方向性を問題提起しています。その柱は、MeToo、ブラック・ライブズ・マターなどの新たな運動、民主党内サンダース議員支持勢力と左派州議員などと連携しトランプの再選阻止の陣地をひろげていくことであり、この闘いは同時に資本主義の危機に対する対案を掲げる政治勢力の登場を戦略的に準備していくとこであると強調しています。

 講座では最新の米左派情報の紹介なども含めて共に分析、評価を含めていきたいと思います。ぜひご参加ください。

【アジア連帯講座:9.11公開講座】入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義

fullsizeoutput_1e54-1-e1568398187175アジア連帯講座:9.11公開講座

入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義


講師:寺本勉さん(ATTAC関西グループ事務局員)

日時:9月11日(金)/午後6時30分

会場:東京・全水道会館4階小会議室
http://www.mizujoho.com/

資料代:500円

主催:アジア連帯講座
東京都渋谷区初台1-50-4-103
新時代社気付 TEL:03-
3372-9401 FAX:03-3372-9402
                     

 世界中で「異常気象の日常化」の激発、新型コロナウイルスの感染が拡大しています。この現象は、どのように考えればいいのでしょうか。私たちは、グローバル資本主義システムが温室効果ガスを排出し続け、「開発と成長」と称して環境破壊、生態系破壊を繰り返し、生物多様性を減少させてきた結果として、今日の気候危機とコロナ危機があるのだと言えます。そのうえで根本的な社会—エコロジー的転換が必要だと考えます。

 日本の気候危機は、すでに冬の厳しい寒波に始まり、夏には記録的な猛暑・豪雨、そして巨大台風の上陸と立て続けに異常気象に見舞われました。さらに今年の7月も九州地域における豪雨によって被害が拡大しています。やはりこの背景には、地球温暖化に伴う気温の上昇、日本周辺での海水温上昇による水蒸気量の増加があることは明らかです。

 世界的に見ても、北半球が記録的な高温となり、北極圏でも30℃を超えるかつてない高温を記録しました。各国で高温・乾燥による山火事も多発しています。

 COP25(国連気候変動枠組条約締約国会議/スペイン・マドリード/2019.
12)では「国別の温室効果ガス削減目標を引き上げる機運の醸成」と「市場メカニズムによる排出量取引のルール作り(パリ協定第六条の具体化)」を獲得目標にしていました。

 すでにCOP24を前に公表されたIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)特別報告書は、パリ協定で目標とされた1.5℃の気温上昇にとどめるには、世界のCO2排出量を2030年までに45%削減(2010年比)し、2050年ごろまでに実質ゼロにする必要があると強調していました。

 だがCOP25は、国別削減目標の大幅な引き上げを明確に義務化することはできませんでした。「各国の事情に応じて」とか「可能な限り」とかの表現を用いて、削減目標の引き上げを事実上回避できる内容です。

 日本の小泉環境相は、COP25で脱石炭や削減目標引き上げを表明できず、環
境NGOから「化石賞」を受賞するほどです。そもそも日本政府は、「第五次エネルギー基本計画」(2018年7月)で2030年における電源構成の中での原発の比率を20年22%、化石燃料の比率を56%にするという目標を掲げ、脱化石燃料にも、脱原発にも真剣にとりくむつもりがないことを明らかにしています。

 その現れとして安倍政権は、東京五輪と「復興」をリンクさせ、福島第一原発事故などなかったかのようにキャンペーンを繰り返しました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって延期に追い込まれ、今度は「ウイルスとの闘いに打ち勝って五輪を成功させたい」などととんでもないことを言い出しました。環境破壊、カネの無駄遣い、コロナ感染拡大へと導く東京五輪は中止にし、気候とコロナ危機によるすべての被害者に援助を強化していくことが必要です。

 寺本さんは、「気候危機」に立ち向かうためにクライメート・ジャスティス
(気候正義)運動、「システム・チェンジ」を目標としたエコ社会主義(社会主義とエコロジーを結合させた新たな社会の展望)の取り組みを提起しています。

 講座は、地球温暖化STOP、クライメート・ジャスティス運動、コロナ危機に立ち向かう入門編として設定しました。ぜひご参加ください。


125■8月新刊

「エコロジー社会主義  気候破局へのラディカルな挑戦」

著者:ミシェル・レヴィー
訳者:寺本 勉

柘植書房新社/2800円+税


著者ミシェル・レヴィーについて

著者のミシェル・レヴィーは、一九三八年にブラジルで生まれ、一九六九年からパリに居住している政治哲学者で、パリ国立科学研究所の社会学研究所長などを務めた。彼が研究の対象とした分野は極めて広範囲にわたっていて、マルクスの思想に関する多くの著作があるほか、中欧におけるユダヤ人文化、ラテンアメリカにおける政治と宗教、シュールレアリズム、ヴァルター・ベンヤミンの思想などについても、著作を著している。さらに、ATTACや世界社会フォーラムに参加するなど社会運動に積極的にかかわるとともに、気候変動・地球温暖化を生み出す資本主義システムに対するオルタナティブとしてのエコ社会主義について積極的な発信を続けている。(柘植書房新社のホームページから転載)

 

目次

序章 二一世紀の大洪水

第一章 エコ社会主義とは何か?

第二章 エコ社会主義と民主的な計画作成

第三章 エコロジーと広告

第四章 エコ社会主義的倫理のために

第五章 マルクス・エンゲルスとエコロジー

第六章 革命とは非常ブレーキである ヴァルター・ベンヤミンの政治・エコロジー思想

第七章 シコ・メンデスとアマゾンを守る闘い

第八章 先住民によるエコ社会主義的闘い

資料1 国際エコ社会主義者宣言(二〇〇一年)

資料2 ベレン宣言(二〇〇九年)

資料3 リマ・エコ社会主義者宣言(二〇一四年)

訳者あとがき


中止となりました【アジ連4.17公開講座】入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義

3↓企画はコロナ対策のため、中止とさせていただきます。
ご理解のほどよろしくお願いします。



アジア連帯講座:4.17公開講座


入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義


 講師:寺本勉さん(ATTAC関西グループ事務局員)

4月17日(金)、文京区民センター3D/午後6時半

アジア連帯講座 東京都渋谷区初台1-50-4-103
新時代社気付

TEL:03-3372-
9401 FAX:03-3372-9402

アジア連帯講座ブログ:「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/ 


 世界中で「異常気象の日常化」ともいうべき現象を激発させています。

 日本では、昨年は冬の厳しい寒波に始まり、夏には記録的な猛暑・豪雨、そして巨大台風の上陸と立て続けに異常気象に見舞われました。この背景には、地球温暖化に伴う気温の上昇、日本周辺での海水温上昇による水蒸気量の増加があることは明らかです。

 世界的に見ても、北半球が記録的な高温となり、北極圏でも30℃を超えるかつてない高温を記録しました。各国で高温・乾燥による山火事も多発しています。

 こうした地球温暖化による諸現象に対してヨーロッパなどでは、高校生らを中心にした「未来のための金曜日」運動が展開されています。この運動に参加しているスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんは、「気候危機は危機として扱わなければならない!今のまま気候変動が進めば、まともな未来なんてないかもしれない」と訴え、毎週金曜日に学校を休み、スウェーデン国会前で、政治家がもっと気候変動を食い止める政策を実行するように求めています。

 COP25(国連気候変動枠組条約締約国会議/スペイン・マドリード/2019.12)では「国別の温室効果ガス削減目標を引き上げる機運の醸成」と「市場メカニズムによる排出量取引のルール作り(パリ協定第六条の具体化)」を獲得目標にしていました。

 すでにCOP24を前に公表されたIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)特別報告書は、パリ協定で目標とされた1.5℃の気温上昇にとどめるには、世界のCO2排出量を2020年までに45%削減(2010年比)し、2050年ごろまでに実質ゼロにする必要があると強調していました。

 だがCOP25は、国別削減目標の大幅な引き上げを明確に義務化することはできませんでした。「各国の事情に応じて」とか「可能な限り」とかの表現を用いて、削減目標の引き上げを事実上回避できる内容です。

 日本の小泉環境相は、COP25で脱石炭や削減目標引き上げを表明できず、環境NGOから「化石賞」を受賞するほどです。そもそも日本政府は、「第五次エネルギー基本計画」(2018年7月)で2030年における電源構成の中での原発の比率を20年22%、化石燃料の比率を56%にするという目標を掲げ、脱化石燃料にも、脱原発にも真剣にとりくむつもりがないことを明らかにしています。

 その現れとして安倍政権は、東京五輪と「復興」をリンクさせ、福島第一原発事故などなかったかのようにキャンペーンを繰り返しています。さらに東京電力による原発事故被災者への補償と生活保障、除染・廃炉労働者の賃金・権利・労働条件・労災補償などの後退を無責任に容認している始末です。原発マフィアと一体となって原発再稼働へと加速化させています。地球温暖化阻止とともに脱原発運動を拡大させていかなければなりません。

 寺本さんは、「異常気象の日常化」が地球温暖化による気候変動の一部であり、まさに地球のエコシステム(生態系)自体に亀裂が生じている結果と強調しています。気候変動を食い止め、クライメート・ジャスティス(気候正義)を実現する運動作りを訴えています。また、運動のスローガンである「システム・チェンジ」を現実の目標としていくためにエコ社会主義(社会主義とエコロジーを結合させた新たな社会の展望)という考え方を提起し、運動の中において脱石炭・脱原発・気候危機との闘いと反緊縮運動とを結びつけていくことが重要だと提起しています。

 講座は、地球温暖化STOP、クライメート・ジャスティス運動に向けた入門編として設定しました。ぜひご参加ください。

12

【アジ連10.25講座報告】イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

配信:浅見講座アジア連帯講座:10・25公開講座/文京区民センター

イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

講師:浅見和彦さん(専修大学)


 イギリスの経済危機などを背景に2015年5月の総選挙で保守党は、英国の「ブレグジット」(欧州連合離脱)の是非を問う国民投票の実施を公約し、16年6月に国民投票を行った。結果は、離脱賛成が過半数だった。ところが保守党のメイ首相は、EU離脱協定案を議会に提出したが、否決。「ブレグジット」をめぐって混迷を深めていくことになる。メイ首相辞任後、7月に保守党党首となったボリス・ジョンソンは、「EUとの合意があってもなくても2019年10月31日の期限までに必ず離脱する」と公言。労働党は、第2回国民投票案が提出されれば支持すると表明しているが、内部的にはスタンスのとり方の違いある。


 このような流れの中で左派系・労働組合はどういう態度なのだろうか。「レフト・ユニティー(左翼統一)」(映画監督のケン・ローチなどが呼びかけ、2013年11月に結成)は、「今回の国民投票は、反移民感情に突き動かされ、レイシズムが焚きつけた極右からの圧力がもたらしたものだ。これは英国の政治史の中で最も反動的な全国運動であり、極右の公然たる登場に結果してしまった」と批判。また、左派系も「レイシズム、外国人排撃、英民族主義の右翼の構想」と批判してきたが、諸傾向と温度差があり一括りできない状況だ。


 分析・評価するための情報が少ないなかで、英国の「ブレグジット」問題をこじ開けるための第一歩として公開講座を設定した。浅見和彦さん(専修大学)は、「現代労働組合研究会/新しい労働組合運動のゆくえ・戦後労働運動の歴史をたどり、イギリス運輸・一般労組の研究」というテーマで研究活動を行ってきた。浅見さんから「ブレグジット」問題をめぐる労働組合の諸傾向、人々の動向などのレポートを含めて報告してもらった。


btbrexit201903312ブレグジット(Brexit)問題―背景と経過

  2016年にブレグジット(EU離脱)をめぐる国民投票が行われた。国民投票を実施したのは、キャメロン政権だった。戦後は、保守党か労働党の単独政権だったが、保守党だけでなく自由民主党という第三党の力を借りて、戦後初めて連立政権として成立したのがキャメロン政権だった。

 なぜ国民投票を行ったのか。連立政権を組まざるを得ないなかで、保守党内の離脱強硬派(ボリス・ジョンソンなど)の存在があり、また当時、UKIP(イギリス独立党)という党派もできた。保守党の政治基盤の弱体化への危機感が一方にあり、しかしながら党内では解決できず、そのため国民投票にかけて、危機を「克服」しようとするという動機もあった。

 連立を組んでいる自由民主党は、元々は残留派で、国民投票にも反対だった。だがキャメロンが打って出たのだ。

 当時、誰もが離脱が多数を占めるとは思っていなかった。しかし、結果は投票率72%で、「離脱」52 % 、「残留」48%で、離脱派が多数派となり、みなが驚いていた。

 キャメロン首相も辞任せざるをえず、その後メイが首相になった。

 なぜ離脱派が多数となったのか。保守党の元副幹事長のアッシュクロフトは、世論調査会社を持っていて、保守党の政策に反映させるため、およそ13000人が回答したアンケート調査を行い、国民投票の分析を行っている。

 それによると、特徴としては、若い人は残留支持が多く、 18-24 歳は73 %が「残留」に投票、 25-34 歳は62 %が「残留」で、他方、45歳以上は過半数が「離脱」で、とくに 65 歳以上は60%が「離脱」だった。

 労働者のなかでは、残留支持が多かった。労働者(フルタイム、パートタイム)の過半数は「残留」で、大卒労働者の 57 %は「残留」、専門職・管理職も 57 %は「残留」支持だった。

 政党支持別(2015 年の総選挙時の投票先)に見ると、 保守党支持者は離脱派が多く、 53 %は「離脱」だった。 UKIP(イギリス独立党)への投票者は、当然ながらほとんどが「離脱」である。

 それ以外の党では「残留」が多数を占めた。労働党への投票者の 63%は「残留」 、スコットランド独立党(SNP)の 64 %は「残留」 、自由民主党、緑の党の投票者の7割以上は「残留」であった。

 「離脱」派の最大の理由(49 %)は、「イギリスのことはイギリスが決めるべき」 (いわゆる「主権」問題)が多かった 。「離脱」派の 33 %は、「入国審査と国境管理の回復」 を理由にあげている。この調査では問われていないが、新自由主義的な政策に対する反発で、底辺の人たちがかなり強い抗議を示したといわれた。

 「残留」派は、経済・雇用重視している。「残留」派の最大の理由(43 %)は、「離脱すれば、経済、雇用、物価などへのリスクが大きすぎること」 であり、「残留」派の 31 %は、「イギリスと単一市場との双方にとって最善だから」と答えている。

 2017年に総選挙がおこなわれた。保守党 313議席(-13)、労働党 262 議席(+30) という結果だった。労働党は、コービン党首で左派的な反緊縮政策が支持されていた。

 議席を減らした保守党は北アイルランドの民主統一党と連立政権を組み、第二次メイ政権はジョンソン外相らの強硬派を含めて発足した。メイ自身は、もともと残留派だった。

 メイ政権は、EUとの交渉では移行期間、清算金などは合意したが、北アイルランドとアイルランドとの国境問題で対立が続いた。EU側は、北アイルランドだけは、EUの関税同盟に残せという要求だった。離脱強硬派は、これに反対した。

 2019 年3月 29 日の離脱起期限は、まず4月 12 日まで延期になり、さらに 10月 31日まで延期となった。 2018年 11月、メイ政権が EUとのあいだで離脱合意案をまとめるが、今年に入って、離脱合意案は3度にわたってイギリス議会で否決され、メイ首相は辞任に追い込まれた。

最近の動き

 7月に保守党の党首選挙があり、ボリス・ジョンソンが外相のハントを破り、党首となって、首相に就任した。

 ジョンソンは、9月からの「議会休会」強行しようとしたが、議会内の反発と「クーデター反対」の大規模デモが行われた。最高裁も、「議会休会」に対して「違法」の判決を出した。

 この過程において保守党内の穏健派の離反で、議会の過半数割れとなってしまう。保守党内の1人が自由民主党へ移り、この時点で過半数割れとなる。 さらに、前財務相などの保守党の有力者を含む21人が造反し、除名された。結果、大幅に過半数割れとなったのである。

 労働党など野党と保守党の除名組が離脱延期法案(交渉期限の3か月延期〈2010 年1月末まで〉を EUに対して政府が要請することを求める法案)を提出し、可決された。法案が成立したためジョンソンも要請せざるをえなかった。

 労働党の態度は、どうなのか。コービンは、党首としての声明(2019年6月)で、「合意なき離脱も、保守党による離脱にも反対し、私としては、労働党が残留を支持するキャンペーンをおこなうことを鮮明にしたい」という態度を示した。ただ労働党としての結論ではなかった。

 10月25日、ジョンソンは、労働党に総選挙をやらないかと呼びかけた。解散・総選挙には下院の3分の2の賛成が必要で、保守党、労働党がOKを出さないと総選挙ができないからだ。

 2019年9月末の労働党大会でコービンは「離脱の52%ではなく、また残留の48 %でもなく、99%のために」とあいまいな発言をしている。影の離脱担当相のケア・スターマーも、あいまいな残留支持の立場だ。

 「週刊かけはし」に掲載されていたアラン・ソーネットの論評(10月21日号)は、態度がはっきりしていると評価しているようだが、全体としてはそうとは言えないと思う。

 なぜかというと、労働党の中のコービンとコンビを組んでいる最左翼の影の財務相マクドネルは、「残留」をより強調したい意向だったし、左派組合の UNISON(公務員)があいまいさに反発し、「残留」を強調している。つまり、労働党は「残留」で固まっていないということだ。

  ジョンソン政権がEUとあいだで合意した協定の改訂案

 ジョンソン政権とEUは、改訂案で合意したことを発表した。基本的な性格は、①メイ前首相のときのハードボーダー(バックストップ)を回避する ②その他の部分は、基本的にはメイのときの協定案と同じだ。

 関税については、① イギリスは EUの関税同盟から(形式的には)離脱する ②したがって、離脱後は、イギリスは各国とのあいだで貿易協定を締結する ③法的には、北アイルランドとアイルランドの国境での関税に関する国境ができる ④しかし、実際には、グレートブリテン島から北アイルランドへ送られる物品について自動的に課税されるわけではない。 ⑤イギリスとアイルランドの共同委員会で、どの物品に課税するかを決めることになる ⑥一般の人が送る物品には課税されない ⑦北アイルランドは、イギリスの規制や関税ではなく、EU の規制や関税が適用されることを意味する。

 移行期間は、メイのときと同じで、2020年末までで、1~2年の延長も可能となっている。市民権は、移行期間中は、イギリス国民の EU 諸国での市民権、EU 諸国の国民のイギリスでの市民権は保障される。清算金は、正確な金額は決まっていないが、日本円でおよそ4兆6千億円を 2022 年末までに 支払うことになると推測されている。自由貿易協定は、イギリスがEUから脱退して、独立した国として、経済関係について他の国とどうするのかとなった場合、各国と貿易の協定を結ぶ形になる。来年の9月に会合を開く予定といわれる。

 整理すると、最初は北アイルランドだけはEUの関税同盟に入れておけというEUの姿勢が、ある程度軟化して、形式的に離脱するという形を認めた。それを保守党の強硬離脱派も受け入れた。ただ現実には、北アイルランドは特別扱いで、EUのいろんな規制や関税に関するルールが適用されることになった。実質的には関税同盟から脱退しない。形式と実質を、言い訳的に使ってEUの譲歩をイギリスが勝ち取ったんだ、という評価にしている。

 北アイルランドとアイルランドの関係だが、アイルランドはEUの加盟国なので、これからは共同委員会で協議していくことになる。イギリスとアイルランドと相談するといっても、アイルランドはEUの加盟国だから、イギリスとEUが相談するような形になってしまっている。当然、おかしいという批判は出ている。
 
 10月 17日に、ジョンソン政権の改訂案に対して、EUは合意した発表している。翌日には、EUは 27カ国(イギリス以外)の首脳会議が一致して承認した。

 10月19 日、ジョンソンは議会で改定案の採決を求めたが、保守党を除名されたレトウィン議員提案の動議によって、法的な準備が整うまで、離脱条件の採決を延期することになった(322票対 306票)。この間、再度の国民投票などを求める大規模デモが行われた。

b479d07a30fc41129e28ad46aa2f9d90_18 労働党の変貌と現状― 2015年以降

 2015 年労働党首選で、最左翼のジェレミー・コービンが右派のオーエン・スミスに勝利した。以降、党内右派は「コービン不信任」動議などの抵抗を続けた。

 しかし、2017年総選挙で労働党は30議席増となった。党内外で、コービン主導で行った政策が受入れられたと評価され、コービン派の地盤の拡大・強化されることになった。そして、労働党党員が50万人以上に増えた。

 党内左派のコービン支持グループである「モメンタム」 が 2015年結成され、現在、4万2000人のメンバーを擁している。 当初は、非党員も少なくなかったが、その後は党員であることが条件になった。

 1980年代、トニーベンを中心したに左派グループがあったが、コービンが当選すると、それら党内外の左派系の人々が労働党に再結集してきた。同時に、党外の政治グループをブロックする必要があった。それが、社会主義労働者党(SWP)や社会主義党(SP)などの加入戦術に反対という態度の現れであった。

 欧州を見ると、ドイツ社民党、フランス社会党が衰退しているにもかかわらず、イギリス労働党は増えるという対照的な動きがある。ギリシャ、スペインでも急進左派の登場があるが、最近は失速しつつある。イギリス労働党が欧州最大の左派政党になったというのは興味深い現れだ。

ブレグジットに対する労働組合の態度
新自由主義の下での労使関係


 1979年以降、サッチャリズムとニューレーバーの下で労働組合運動は後退していった。ストライキなどの労働争議も激減していった。イギリスは、もともとストライキは法的な権利保障がなくて、免責があるだけだ。ストライキをやったら組合が損害賠償されることはない(民事免責)し、ストライキをやっても恐喝とはならない(刑事免責)というものだ。

 1979年から1997年まで保守党政権だった。この間、労働組合規制法をたくさん作った。例えば、クローズドショップに対し、組合員の雇用を優先するような協約を作ってはいけないとした。組合員を雇用させるという組合側のメリット、企業側も熟練労働者を確保できるというメリットがあったが、それが否定されたわけだ。

 組合のストライキなどの方針決定の時、挙手で採決するのとはだめだとなり、かならず秘密投票をおこなえとなった。連帯ストライキを禁止した。他産業の労働者との連帯ストライキだけではなく、同一産業の労働者との連帯ストライキも禁止された。自分の企業の使用者にたいするストライキだけが認められるとなったのだ。

 1997年以降、2010年までの13年間の労働党政権(ニューレーバー)も、サッチャー、メジャー政権時に作った労働組合規制法を一本も廃止していない。

 ただ変わったのは2つある。1つは、全国一律最賃と一定の条件の下での組合承認制度(使用者が団体交渉に応じなければならない制度)が導入されたことだ。イギリスでは、一般に組合の実力で団体交渉を認めさせなければならない。使用者側に応諾義務がないからだ。

 労働組合の組織的な後退が目立つ。サッチャー政権成立時の1979年の 54%から 2018年の 23%へ下がっている。

 産業別交渉機構の廃止と労働協約適用率の縮小も大きい。 協約の適用率は、1980 年の 86 %から 2018 年の 20%へ下がっている。

 大陸欧州諸国、北欧諸国は労働組合組織率が高い。ドイツ、オーストリア、イタリア、フランスの労働組合の組織率はそんなに高くはないが、協約適用率が高い。これは拡張適用制度があり、同じ産業内に適用できるシステムを作っているからである。

 イギリス、日本、アメリカ、韓国は労働組合組織率も、労働協約適用率も低い。

 イギリスには拡張適用という制度がないし、かつての産業別の交渉が潰された。ところが労働組合はその対応に対して反対しなかった。産業別交渉機構は、労働組合専従の右派がやっているからだというのが理由だった。昔は、全国交渉をやっている人たちは右派の人たちだった。しかも交渉による賃金水準は実収賃金の半分ぐらいの場合が多く、あとは職場で頑張らないと獲得できないから、左翼的な人たちは企業内で頑張れという傾向が強かった。日本の場合は、企業横断的に闘えと主張されてきたが、イギリスの場合はそんなものは役にたたないという評価だった。

 さすがにそれではまずいので、労働党の「マニフェスト 2017」では、労働法の学者などの意見を取り入れて、 産業別交渉機構の設置の義務化を提案している。

 EU指令とイギリスの労働改革

 イギリスの労働組合がEUに残留すべきだという理由の1つとしてあるのが、サッチャー保守党政権時代にできた集団的労使関係の法律は変わっていないことだ。むしろEUに加盟していることによって、労働者の権利を守るために国内法を整備しろというEUの指令によって労働者の権利が守られるという形になるからだ。労働運動の力が弱まっていることもあり、運動で諸条件を勝ち取っていくというよりは、EUに依存する傾向がある。

 EU の指令による労働改革には、①労働時間・年次有給休暇、②妊娠・出産休暇、③ 年齢・宗教・信条・性別による差別の禁止、④パートタイム労働者や有期雇用労働者などの非典型労働者の権利、⑤派遣労働者の均等待遇、⑥事業継承に伴う 労働者の権利、⑦情報・協議の権利、⑧健康・安全がある。

 イギリス労働組合指導層の変化

 全国組合の指導部には左派の人たちが多い。全体として労働組合は後退しているのに、役員のトップだけは左翼が多い。

 振り返ると、1970年代は共産党が強かったが、1980年代以降、共産党の分裂・後退とトロツキスト諸派が進出してくる。とはいえ、職場の活動家層が 1970年代のように厚みがあるとは言えない。

 労働組合の中央執行委員レベルには、かなりトロツキストがいる。 なかでも、かつてトニー・クリフが率いていた社会主義労働者党(SWP)と旧ミリタントの分裂後の多数派である社会主義党(SP)が中心だ。最大労組のUnite(一般/123万人)の執行部には、SWP1人とSWPから分かれたカウンターファイヤー1人の計2人のトロツキストがいる。2番目のUNISON(公務公共/119万人) には、SWP4人とSP6人の計10人のトロツキストが中央執行委員にいる。

 教員組合も45人の中執のうちSP4人、SWP3人、労働者解放同盟(AWL)2人の計9人がトロツキストで、公共・民間サービス労組には37人の中執のうち10人がSWPとSPによって占められている。大学教職員組合にいたっては、64人の中執のうち15人がSWPだ。主要組合の中執には56人のトロツキストがおり、かなり指導部に入っているといえる。

 SWPは特定組合に集中し、旧ミリタントのSPはいろんな組合にいるのが特徴だ。

 労働組合のブレグジットに対する態度はどうなっているか。主流派は、残留支持だ。Uniteはコービン支持の最大中核勢力で、UNISON は、コービン労働党に対して、「残留」をより明確にすることを2019年大会で要求している。穏健派の GMB(一般/61万人)、USDAW(小売・流通関連労組/43万人)も残留支持になっている。

 離脱支持派は、中小組合で、最左翼のRMT(鉄道労組/8万5000人)とBFAWU(製パン・食品関連労組/1万人)だ。

 ナショナルセンターのTUC(イギリス労働組合会議)に加盟する主要労働組合の態度は、国民投票の時と基本的な変化はない 。TUC非加盟の「中立」組合が「残留」支持へ転換したケースがあるだけである。

労働党外の左翼諸党派―その勢力とブレグジットへの態度

 基本的に多数派は、離脱支持派だ。

 労働党以外では最大党派の社会主義労働者党(SWP/5886人)は、 2016 年の国民投票でも離脱を支持した。態度は、①資本家のためではなく、労働者のためのブレグジットをめざす②EU は資本家のクラブであり、労働者とその権利を擁護しない。左翼ブレグジットのためのたたかいが必要③総選挙でのコービン支持、保守党打倒などである。

 旧ミリタント分裂後の主流派である社会主義党(SP/2000人)は、社会主義的綱領をもって、コービン政権を樹立し、EUとの交渉を、という立場だ。①離脱派の組合のRMT(鉄道労組)や BFAWU(製パン・食品関連労組)以外の労働組合指導者は、資本家クラブである EU からの離脱という挑戦を提起できていない②労働組合運動の左翼的転換、労働者によるブレグジットを③欧州諸国で社会主義諸国家を樹立し、その連合をつくろう、という主張だ。

 イギリス共産党(CPB/769人)も、 国民投票でも EU 離脱支持した。①総選挙での労働党主導政権の樹立を支持するが、EU 在留に反対し、国民投票の結果にもとづいて離脱すべきだ②EU の改革 は不可能である③TUC が EU の指令などがイギリス労働者の権利保護に 貢献していたとしている見解に同意できない、としている。

  SWP から分裂したカウンターファイヤー(Counterfire/300人)は、民衆のブレグジットのためのたたかいを広げる、という態度だ。

 旧ヒーリー派の労働者革命党(WRP/120人)は、国民投票でも EU 離脱支持し、革命でこそ真のブレグジットが実現できる、と 主張している。

 残留してたたかうという態度のトロツキスト党派は、2つしかいない。

 労働者解放同盟(AWL/140人) は、国民投票時も EU 離脱に反対した。現在も、残留してたたかうとする路線で、当面、欧州レベルにおける民主主義的で連邦制の欧州合衆国を樹しよう、という立場だ。

 第4インター派のソシアリスト・レジスタンス(SR/95人)は、EU 残留支持の態度で、①EUが資本主義の進歩的形態であるという理由によるのではない②ブレグジットは排外主義と極右にドアを開くことになるからだ③「もう一つの欧州」は可能であり、欧州左翼とともにたたかう④労働党のなかで活動し、コービン労働党政権の樹立を支持するとしている。

 「どちらでもない」というトロツキスト党派は、旧ミリタント分裂後の少数派であるソシアリスト・アピール(300人)だ。①資本家の EUにノー、イギリスの緊縮政策にノー②EU内であれ、その外であれ、 資本主義こそが民営化、規制緩和、緊縮政策の根因である③社会主義をめざす欧州労働者の連帯で社会主義の欧州合衆国の樹立を、という路線である。

 国民世論のうごき

 10月15日のOpinium による 世論調査を紹介する(他の調査機関もほぼ同様の数字)。

 まず、政党支持率は、保守党 37 %、労働党 24 %、自由民主党 16%、ブレグジット党 12 %、スコットランド民族党 4 %、緑の党 4 %、イギリス独立党 2%となっている。

 次に、ジョンソンの離脱改定案が提案されれば、下院議員は「賛成するべき」が 46 %、「反対すべき」が25%だった。

 離脱改定案が下院を通過しなかった場合、次のステップはどうすべきかでは、「再度の国民投票」が29 %、 「総選挙の実施」が 26 %になっている。

 なぜ保守党がリードしているのかだが、一つは2016年国民投票の「離脱」という結論が出ていることが重いと考えられる。強硬派は、依然「離脱」強行派だ。議会休会の強行など、ジョンソン政権への批判はもちろん在留派のなかで強いのだが、離脱派はそういうジョンソンをつよく支持する傾向が強い。
 労働党とコービンの支持率が低迷しているのはなぜか。その理由としては、①残留派の世論は、労働党と自由民主党に支持が分裂していて、直近の調査では、自由民主党への支持が徐々に増える傾向にある②労働党とコービンは再度の国民投票を強調してきたが、それでも「残留」の態度を強く打ち出せず、あいまいさがあることへの批判・不信が指摘されている、などが考えられる。

 イギリスのブレグジットをめぐる動向に、今後も継続して注目していきたい。

報告:アジア連帯講座 8.9公開講座 参院選・統一地方選の結果をどう見るか? ~大阪からの視点~

配信:寺本講座講師:寺本 勉さん (どないする大阪の未来ネット 〈 どないネット〉運営委員)

 8月9日、アジア連帯講座は、寺本 勉さん (どないする大阪の未来ネット 〈どないネット〉運営委員)を講師に招き、「参院選・統一地方選の結果をどう見るか? ~大阪からの視点~」をテーマに文京区民センターで公開講座を行った。

 大阪で活動される寺本さんは、「どないネット」の活動を通して、「大阪都構想」、地下鉄・水道など の民営化、夢洲へのカジノ(IR)・万博誘致などに反対する運動にとりくみ、情報交流・共有のネットワー クを広げてきた。この間の経験から大阪府知事・市長選挙、参院選の結果分析を通して大阪および日本の政
治動向を浮き彫りにした。

 とりわけ参院選挙について2012~2019の国政選挙の得票数の推移を分析し、戦後二番目に低い投票率(48・8%)について寺本さんは、「安倍政権は低い投票率の中で、政権を維持していることがわかる。『無関心の組織化』『政治的諦めの組織化』ともいうべき政治戦略だ。その中でも18~19歳の投票率は31.33%と低かった。森友・加計問題に典型的な徹底した責任回避、ごまかし、まともな論議をしない、臭い物に蓋をする(原発で顕著)など、政治不信をかきたてる姿勢(意図的と思える)の結果だ」と述べた。また、「共産党・公明党・社民党の緩やかな衰退」傾向なども明らかにした。

 そのうえで①左右のポピュリズム政党の台頭 ②維新とはどういう政治勢力か?なぜ大阪で強いのか? ③グローバルな視点でローカルな問題を考える―について提起した(①~③報告要旨別掲)。

 最後に寺本さんは、「新しい局面の可能性を現実化させるにはグローバルな視点が重要だ。そして、オルタナティブな社会とはどういうものか、そこに至る道筋とは何かについての議論を積み重ね、民衆の共同実践を目的意識的に形にしていく努力が求められている」と強調した。

(Y)


寺本さん①~③報告要旨

 ①左右のポピュリズム政党の台頭

 「れいわ新選組」の特徴は、①徹底的に反緊縮政策②多様性を実際に体現した候補者選び③SNSを活用した。街頭から支持を拡大させ、連動して草の根カンパで四億円を集めた。それは米のサンダース旋風を想起するような状態だった。

 朝日新聞出口調査では5%が比例区の投票先に「れいわ」を挙げた。無党派層に
限ると、10%がれいわ(公明、国民、共産、社民を上回る)だった。無党派層の自民と公明への支持は前回の参院選から大きく変わらず、ほかの野党支持層の流入があったとみられる。

 つまり、今回は、新たな層を投票行動に引き入れたというよりは、従来の立憲
民主・共産・社民の支持層からの流出が主だった。

 NHKから国民を守る党(N国党)は、表向きは「NHKスクランブル放送の実現」というワン・イシュー政党であり、立花代表のワンマン政党とも言える。本人は、右翼的主張を一切表に出さない。

 政治性格においても、例えば候補者41人中、九条改憲賛成19人、反対6人、無回答16人(毎日新聞の候補者アンケートによる)で統一性がない。だが、統一地方選立候補者には、極右レイシストが相当数入り込み、何人かは当選している。

 真鍋博さんは、「N国『躍進』の背景にあるものは何か」と問いながら、次の
ように問題提起している。

 「『NHK』という事業体そのものの改革の是非というよりは、NHKは分かりやすい〝的(まと)〟にされているに過ぎない。『NHK』に象徴される『巨大な既得権益』への反発であり、自分たちのお金を強制的に吸い上げる一方で、自分たちの生き死にに対しては一切関心を示さない、目には見えない力に対する拒絶のサインである」。

 「もしこれらの階層に潜在している怨嗟(えんさ)を上手く手当てすることができなければ、『N国党』でなくとも別の新興勢力のようなものが、数百万人は存在するであろう『怨嗟の票田』を得て急伸するだけである。想定外の事態へと突き進むポテンシャルがあることに、果たしてどれだけの人々が気付いているだろうか」と政治性格をまとめている。今後も注意し、監視していかなければならない。

 ②維新とはどういう政治勢力か?なぜ大阪で強いのか?

 日本維新の会は、右派ポピュリスト政党のはしり的存在だと言える。大阪では、10年以上にわたって、実際の行政の経験を積み、持続的な支持を得ている。しっかりした支持者名簿を持ってドブ板的選挙を展開し、きっちりした票割りを行っている。しかも参院選では、地域政党(名古屋の減税日本、北海道の新党大地、東京の「あたらしい党」など)との連携で全国展開を図った。基本的には「大阪のような改革=身を切る改革を全国で」という立場だ。

 2012年総選挙から2019年参院選での維新の比例区得票数の推移、知事・市長選の得票数の推移(略)を通して、橋下徹と維新登場の背景が見えてくる。それは大阪における「オール与党」体制という閉塞した政治状況への反発だ。つまり、東京一極集中による大阪経済の地盤沈下への不安を根拠にした一点突破型のリーダーシップへの期待へと流れていった。維新は、橋下知事(当時)によって仕掛けられた大阪自民党の大分裂によって生まれた。

 一連の維新圧勝をもたらしたのは大阪の社会的状況がある。それは①深刻な格
差と貧困②府下一斉テスト(チャレンジテスト)による内申書評価の「修正」などによる教育差別・分断の強化③公務員労働者への攻撃を集中。大阪を新自由主義の実験場とするためには不可欠だった。

 しかも維新のコアな支持層は、大阪の住民の深刻な分断状況の中で、いわゆる「勝ち組」(と思っている人々)が維新・都構想を支持した。30代から50代にかけての男性で、一定の所得がある階層だと言われている。自分たちの税金が、公務員や「負け組」のために使われることへの嫌悪感がある。そのことを2019ダブル選挙のスローガン「大阪の成長を止めるな!」に現われている。

 吉富有治さん(フェイスブック「ヨシトミの毎日、ときどき隔日の随感」から)は、次のように分析している。

 「維新は『改革』を訴えるから新しいタイプの革新政党のように見えますが、わたしの考えは違います。公立高校の廃止や統廃合、文化事業への突き放した態度を見ると公明党の福祉重視か共産党のような左派とも似ていない。それどころか、万博やIR・カジノの誘致といった公共事業型の景気対策を推し進めるあたりは自民党の体質に近いのです。維新とはつまり、自民党が変異した『ネオ自民党』ではないかと思うのです」。

 「大阪で維新に人気があるのも改革政党だからというより、安倍政権や国政自民党に人気があるのに通じるものがあるのでしょう。安倍政権のめざす新自由主義的『改革』の露払いの役割を持っており、その意味では、安倍政権の「突撃隊」的な性格を持っている」。

 ③グローバルな視点でローカルな問題を考える

 ウォルデン・ベロさん(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス元代表)は、ヨーロッパにおける右派ポピュリズム政治勢力台頭の背景(2017年2月講演より)について次のように分析している。

 「ヨーロッパの極右政党は、階層格差の拡大にともなってグローバリズム批判を展開するようになった。イアン・ブルーマが『右翼は新しい左翼である』と指摘したように、社会主義勢力が放棄した政策を極右が横領した形になっている。たとえば、フランス国民戦線は、当初アルジェリアからの引き揚げ者を支持基盤として、ルペン父はウルトラ自由主義を信奉していた。しかし、娘のマリーヌ・ルペンは、反資本主義、反グローバリズムを掲げ、保護主義による国民経済擁護、ユーロ離脱、社会保障制度再建という国家社会主義路線をとっている。しかし、彼女の言う社会保障制度再建は、福祉排外主義であり、福祉共同体からの外国人の排除を意味する」。

 ここでのポイントは、「オルタ・グローバリゼーション運動は極右に主張を横領された」と結論づけていることだ。

 それでは日本におけるヨーロッパ型の極右政党が台頭する可能性はあるのか。例えば、入管法改悪による「移民労働者」の急増を一つの契機にして高まるかもしれない。そもそも安倍政権は、極右ポピュリズム的性格を持つ形になっていると言ってもいいだろう。バーチャルな「改革」への幻想を自己の基盤とする点では、ヨーロッパと共通するところがある。

 一方、2011年以降、左派ポピュリズムも台頭してきた。それはギリシャのシリザ、スペインのポデモス、アメリカのサンダース、イギリスのコービン、フランスの「不服従のフランス」(メランション)などだ。

 実践的には、広場占拠を軸とする社会運動の拡大、ヨーロッパにおける若い世代を中心にした社会運動の継続などがあげられる。具体的には、ドイツの反ヘイト運動、フランスの「黄色いベスト」運動、各地での「森を守る」闘い、高校生を軸にした「フライデー・フォー・フューチャー」運動、イギリスの「絶滅への反逆」運動などをあげることができる。

 しかし、ヨーロッパの左派ポピュリズムは、すでにその限界を示しつつあるのではないか? 例えば、①2017シリザによるトロイカ(EU、欧州中央銀行、国際通貨基金)への屈服②スペイン・ポデモスの内部対立と「混乱」 ③連続する社会運動と左派ポピュリズム政党との断絶―などを上げることができる。

 今後の課題として、れいわ新選組とN国党の台頭から何を読み取るのか、読み取れるのかという問題についてともに継続して分析していこう。

 れいわ新選組は日本における左派ポピュリズムの可能性を示すのか? れいわ新選組「現象」は、新しい局面を予兆させるものが確かに存在している。山本太郎さんの街頭演説への結集とヨーロッパの「広場占拠」とは違うと思うがどうだろうか。人々の感覚を「山本太郎」という個人に集中させたもので、運動化されていないまま、「漂流」する可能性をも含んでいる。ある意味、より危機的なのかもしれない。「左」右のポピュリズムが合流してしまう可能性もあるのではないか。

 先に述べた N国党に投票した人々の感覚は、フランスの「黄色いベスト運動」の参加者に近いと思われるが、どうだろうか?

 N国党に現われた民衆の意識は、ヨーロッパの極右レイシスト政党に流れてい
った傾向と共通点はあるのかなどを追跡調査していかなければならない。いずれにしても状況としては、遅ればせながらヨーロッパに近づきつつあるのではないか。

【10.25公開講座】イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

Screenshot_20190819-155635~2イギリスは今 ブレグジット(EU離脱)をめぐる労働組合運動の状況

講師:浅見和彦さん(専修大学)

日時:10月25日(金)/午後6時30分〜

場所:文京区民センター3C会議室(都営地下鉄三田線春日駅下車)/
https://www.city.bunkyo.lg.jp

 イギリスの経済危機などを背景に2015年5月の総選挙で保守党は、英国の「ブレグジット」(欧州連合離脱)の是非を問う国民投票の実施を公約し、16年6月に国民投票を行いました。結果は、離脱賛成が過半数でした。ところが保守党のメイ首相は、EU離脱協定案を議会に提出したが、否決。「ブレグジット」をめぐって混迷を深めていくことになります。

メイ首相辞任後、7月に保守党党首とな
ったボリス・ジョンソンは、「EUとの合意があってもなくても10月31日の期限までに必ず離脱する」と公言しています。労働党は、第二回国民投票案が提出されれば支持すると表明していますが、内部的にはスタンスのとり方の違いがあるようです。

 このような流れの中で左派系・労働組合はどういう態度なのだろうか。「レフト・ユニティー(左翼統一)」(映画監督のケン・ローチなどが呼びかけ、2013年11月に結成)は、「今回の国民投票は、反移民感情に突き動かされ、レイシズムが焚きつけた極右からの圧力がもたらしたものだ。これは英国の政治史の中で最も反動的な全国運動であり、極右の公然たる登場に結果してしまった」と批判。また、左派系も「レイシズム、外国人排撃、英民族主義の右翼の構想」と批判してきたが、諸傾向と温度差があり一括りできない状況です。

 分析・評価するための情報が少ないなかで、英国の「ブレグジット」問題をこじ開けるための第一歩として公開講座を設定しました。浅見和彦さん(専修大学)は、「現代労働組合研究会/新しい労働組合運動のゆくえ・戦後労働運動の歴史をたどり、イギリス運輸・一般労組の研究」というテーマで研究活動を行っています。近日、ギリス現地調査に向かう予定です。浅見さんから「ブレグジット」問題をめぐる労働組合の諸傾向、人々の動向などのレポートを含めて報告していただきます。


浅見和彦さん(専修大学)のブログ http://e-kyodo.sakura.ne.jp/asamikazuhiko/unyuippan.htm

アジア連帯講座 東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-
9401 FAX:03-3372-9402
アジア連帯講座ブログ:「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/ 

案内 8.9アジア連帯講座:公開講座 参院選・統一地方選の結果をどう見るか?〜大阪からの視点〜

8.9アジア連帯講座:公開講座

参院選・統一地方選の結果をどう見るか?
〜大阪からの視点〜


講師:寺本 勉さん
(どないする大阪の未来ネット〈どないネット〉運営委員)


日時:8月9日(金)/午後6時30分
会場:文京区民センター3D会議室(東京メトロ丸ノ内線・後楽園駅/都営三田線
・春日駅)
        資料代:500円
主催:アジア連帯講座
  東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-9401 FAX:
03-3372-9402
       ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/

 今日、社会に対する閉塞感と不安は世界的に拡がっています。現状突破に向けた民衆の闘争が世界各地で模索される一方、現状への不安は右翼の台頭としても現れ、情勢は混迷を深めつつあるかに見えます。

 大阪では、この不安を吸い取るかのように、大阪維新の会による府・市政支配が長く続き、トップダウンの政策決定手法による地方自治と民主主義の破壊が続いています。維新の会は、経済的には新自由主義、政治的には保守反動の立場におり、民衆の分断・対立をもたらしました。その一方で深刻な貧困と格差は、解決の目処すら見出されていません。にもかかわらず、維新はなぜ支持を得ているのか、その根っこには安倍自民党への根強い支持とつながるものがあります。

 大阪で活動される寺本勉さんは、「どないネット」の活動を通して、「大阪都構想」、地下鉄・水道などの民営化、夢洲へのカジノ(IR)・万博誘致などに反対する運動にとりくみ、情報交流・共有のネットワークを広げてきました。

 寺本さんには、「どないネット」の経験とともに、この間の大阪府知事・市長選挙、さらに参院選の結果分析を通して、今後の大阪および日本の政治動向を共に探っていくために問題提起をしていただきます。共同の議論を進め、民衆の運動を再構築する道を模索していきましょう。

【アジア連帯講座:7.12公開講座】フランスはいま 「黄色いベスト」運動を学ぶ

1Screenshot_20190526-231447~2アジア連帯講座:7.12公開講座

フランスはいま
「黄色いベスト」運動を学ぶ


講師:湯川順夫さん(翻訳家)

日時:7月12日(金)18:30~

場所:文京区民センター3D会議室


 フランス・マクロン政権に抗議する「黄色いベスト」運動は、2018年11月から始まり、この5月18日で半年を迎え、フランス全土で4万1000人(主催者発表/最盛時の参加者は30万人以上)が参加しています。警察権力の弾圧に抗して持続的な民衆パワーを示し続けている。

 『黄色いベスト』運動は、燃料増税の中止など生活、雇用、年金、緊縮政策の中止などにわたって要求しています。つまり、民衆の生存権行使の要求を具体化し、同時に資本家のためのマクロン政権を許さず、デモという表現を繰り広げているのです。だからこそ「燎原の火」のごとくフランス全土に広がったのでしょう。

 『黄色いベスト』運動について、フランスの社会運動に詳しい湯川順夫さん(翻訳家)を招き、運動の分析・解説をしていただきます。日本の民衆運動とも比較しながら、今後の運動の方向性について論議していきたいと思います。

湯川さんが翻訳した著作
◦『フランス社会運動の再生――失業・不安定雇用・社会的排除に抗し』 クリストフ・アギトン、ダニエル・ベンサイド著、柘植書房新社、2001年◦『新しいインターナショナリズムの胎動――帝国の戦争と地球の私有化に対抗して』 ダニエル・ベンサイド著、加藤洋介、星野秀明共訳、柘植書房新社、2009年◦『21世紀マルクス主義の模索』 ダニエル・ベンサイド著、柘植書房新社、2011年……その他、
多数


■紹介
フランスNPA(反資本主義新党)の全国スポークスパーソンは語る
『黄色いベスト』運動は、新しい種類の民衆運動だ

                
 「……運動は、ソーシャルネットワーク上で野火のように広がった請願署名で始まった。それはこのような形で、あらゆる政治的枠組みあるいは労組の枠組みの外で発展した。高速道路上での環状交差路に対する封鎖が11月に始まった。経済的機能を乱し、トラック運行を妨げるために、町々のすぐ外側の交差点が標的にされた。数10万人(最低でも30万人)のジレ・ジョーヌ(「黄色いベスト」運動)が、およそ2500ヵ所の封鎖に参加した。昨年11月17日から、警察との調整がない無届けデモが毎週末、数10万人の参加者を連れ出した。

 パリではその連れ出し先が、労働者運動のデモが向かわない高級住宅街、政府省庁の事務所、権力の現場、そして市中心部だった。デモに対する警察の抑圧は、度を増し続けてきた。12月1日には、凱旋門が標的にされ、非常に激しい衝突の中で外観が傷付けられ、ル・ピュイ・アン・ブレ(オート・ロワール県の自治体:訳者)では知事官舎が焼き討ちされ、ニースとナンテールの空港が封鎖された。一
二月八日、政府は、軍用武器と装甲車を装備した警官85000人を動員、パリや大都市のほとんどでのデモを止めることもなく2000人以上の「予防」拘禁を行い、一つのメッセージを送りたいと思った。

 この日以後弾圧が、ジレ・ジョーヌがパリで一斉にデモを行うことを妨げることになった。しかしこの国の残りではそうはなっていない。12月半ば以後デモ参加者数が減少したとはいえ、その数は毎土曜日、依然非常に高い水準を保ってきた。運動は今なお存在し、非常に決意の固い人々数万人を動員し続けている。それでも政府は、ジレ・ジョーヌを住民の残りから政治的に孤立させようと、僅かな譲歩を行い、見せかけの論争を始めつつ、前例のない警察の弾圧と法を使った弾圧によって、決起を破壊するためにあらゆることを行ってきた。

 政府は12月1日のデモの後、抗議の起点になった燃料税引き上げの取り消しを公表した。しかしそれは小さすぎ遅すぎた。政府は12月8日のデモの後、「あなたにプレゼントを贈るが、その支払いはあなただ」との全体原則にしたがった公表を行った。プレゼントの資金はすべて税金から当てられる。富裕層や経営者から徴収される資金は一ユーロもない。そしてそのプレゼントとは、「費用を雇用主に課すことがまったくない」、被雇用者に対する最低賃金月額100ユーロ引き上げ、諸企業における年末ボーナス(雇用主がそれを選択すれば)、時間外労働に関する税控除の復活、そして月収2000ユーロ以下の年金生活者に対する、社会保障資金を補助する税の引き上げ取り消しなどだった。それはトリックだが、しかし象徴となる形で、彼らは後退したのだ!……」




アジ連講座報告:3.22小西誠さん講座 / 自衛隊の南西シフト 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態

配信:小西講座②3月22日、アジア連帯講座は、小西誠さん(軍事ジャーナリスト)を講師に招き、「自衛隊の南西シフト 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態」をテーマに講座を行った。
 

 開催にあたって司会は、「急ピッチで進行している南西諸島への自衛隊配備、新基地建設について、その意図するところがどういうところにあるのか。この自衛隊配備が具体化したのは、2009年の鳩山民主党政権の時だった。防衛省内文書で明らかとなった。2010年、菅政権の時に新防衛大綱で具体化され、与那国島の配備(2016年3月28日開設)を強行した。3月1日には、石垣島で基地建設に向けて旧ジュマールゴルフ場の造成工事着工した。自衛隊配備によって住民の分断、生活が破壊され、さらに基地建設によって赤土が海上に大量に流出し、サンゴが破壊されるということも報告されている。3月27日には宮古島、奄美大島で自衛隊新基地が運用される。車輌、人員が到着している。一連の自衛隊配備、基地建設の意図を正しく把握し、ヤマト・本土で配備反対運動を大きく作り切れていない現状も見据え、現地と結びつきながら少しでも止めることができるか。そのステップとして企画した」と発言。

 小西さんは、現地取材で撮影した220枚の写真をプロジェクターで映し出しながら、①「東シナ海限定戦争」を想定する「島嶼防衛戦」 ②与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島、種子島(馬毛島)への自衛隊配備 ③沖縄本島の自衛隊配備 ④日米共同作戦態勢の実態―について提起した。

 最後に司会は、「琉球弧自衛隊配備反対アクションが明日、『石垣島工事着工・宮古島&奄美大島基地運用開始を許さない―自衛隊新基地はあってはならない3.23アクション」を行う。首相官邸前で抗議の声を上げていこう」と呼びかけた。

(Y)


小西誠さんの講演(要旨)

米軍事戦略と自衛隊の南西シフト

 米政府は、2010年QDR(4年ごとの国防計画の見直し)で「統合空海戦闘構想の開発」を打ち出し、エア・シー・バトル(JABC)の統合部隊による中国への縦深攻撃を想定する。つまり、エア・シー・バトルはアメリカによる中国への「対抗的封じ込め戦略」であり、「陸海空・宇宙・サイバー空間における統合作戦」であり、米軍の新冷戦戦略ともいうべきものである。

 そのうえで実際の作戦として策定されたのが、A2/AD戦略(アクセス(接近)阻止/エリア(領域)拒否)であり、実体化したのがオフショア・コントロール戦略だ。ポイントは、①抑止力と信頼性の増大②核エスカレーションの可能性低下③紛争終結の可能性が高まる④平時のコストを低減⑤中国に武器システム最大距離で戦うことを強制⑥米国の海軍力発揮が可能と設定している。つまり、中国軍と米軍の死傷者を少なくし、経済的後退にむけた圧力を行使していくことにある。

 このオフショア・コントロールに基づいて自衛隊に対して「拒否的抑止戦略」(DBD)と「島嶼防衛戦略」を担わせることにある。すでに日米安保共同宣言(1996年)、日米防衛協力のための指針改定(1997年)から新ガイドライン、中国封じ込め政策を軸にした日米安保再編に動き出していた。連動して防衛省・自衛隊は、「統合幕僚監部『日米の[動的防衛協力]』について」(2012年)を策定し、「対中防衛」を軸にした南西シフト態勢を初めて明記する。

 この延長においてトランプ政権は、中国を米国の覇権に挑戦する最大の脅威とみなし、そして、中国とロシアとの『長期的な戦略的競争』に備える体制に転換するという方針を打ち出した。米新軍事戦略下のうえで安倍政権の「インド太平洋戦略」が設計され、対中抑止戦略を米と共同して、その先兵を担うことなのである。それは南西諸島におけるミサイル部隊配備にとどまらず、沖縄本島への水陸機動団一個連隊の配備、在沖米軍基地が自衛隊との共同運営さえも射程にしていた。

 要するに、在沖海兵隊の司令部、戦闘部隊のほとんどは、グアムなどへの移駐を決定しているが、この米海兵隊の穴埋めを狙っているのが、水陸機動団ということだ。このような総戦略のうえで南西諸島シフトと日米共同作戦態勢が現在進行している。このプロセスについて、マスコミや反戦運動の関心が薄いのが現状だ。

 与那国島への自衛隊配備

 2016年3月28日に与那国島に自衛隊が配備された。第303沿岸監視隊160人、空自移動警戒隊約50人。「兵站施設」(巨大弾薬庫)配備の位置づけだが、正式には事前集積拠点という。武器、弾薬などを事前に集積する。

 さらに「情報保全隊(旧調査隊)」と「警務隊」の配備も公表した。大部隊の配備を想定して配備されたといえる。対住民情報などの調査活動は行う。

 しかし、これだけにとどまらずミサイル部隊も配備されるだろう。防衛省文書には、機動展開として配備すると書いている。常駐はしないが、いざとなったら本土から部隊を送るということだ。こういう部隊配備を許したら、どんどん増殖する。与那国は、160人だが、500から1000人へと膨らむだろう。その兆候として、情報公開でわかったが、防衛省は頻繁に現地を訪問し、土地売買、住民対策をしている。

 石垣島への自衛隊配備
 
 自衛隊基地建設に向けて3月1日、旧ジュマールゴルフ場の造成工事を着工した。土地は幸福の科学の市会議員のものだったが、防衛省が買収した。19年度以降、約600人規模の警備部隊と対艦・対空ミサイル部隊を配備予定だ。だが、防衛省の「「機動展開構想概案」では2000人規模の部隊を投入すると明記している。だから当初計画の約600人規模はうそだ。また、石垣島を実際の戦闘現場と想定し、自衛隊の戦力などを検討していたことも分かっている。

 現在のところ基地建設予定地の全体は買収されていない。基地建設反対派の土地がまだ残っている。住宅地、最良の農地がある。石垣空港反対闘争の三四年間の歴史があり、簡単に基地建設が進むとは思わない。
  
 宮古島への自衛隊配備

 自衛隊の南西諸島への配備は、2010年から始まっている。電波傍受施設が建設されていた。これは早い時期から対中国シフトのうえで配備していたと考えられる。2017年には、新型のレーダーが作られた。

 さらに野原(のばる)岳の手前に、航空自衛隊基地が作られた。宮古島に800人規模で警備部隊と対艦・対空ミサイル部隊を配備、ミサイル指揮統制部隊約200人を配備予定だ。

 宮古島の闘いで重要なことは、孤立しながらも大福地区に予定されていた駐屯地を中止に追い込んだ。宮古島は、山がない、川がない平坦な島だ。水はサンゴ礁の地盤の下に溜まる。地下ダムを造り、水をあげて供給している。この水源を守るために中止に追い込んだ。

 基地建設は3月1日に着工されたが、真相は環境アセスメントを逃れるためにあわてて強行着工した、ということだ。

 これは宮古島の住民運動が中心になって沖縄県に20ヘクタール以上の自衛隊基地を環境アセスメントの適用対象にしろと運動して、沖縄県が認めた。その結果、4月1日から沖縄県の20ヘクタール以上の基地建設予定は、環境アセスをやらなければならなくなった。だから自衛隊は、石垣島の基地工事着工した。さらに市城辺保良(ぐすくべぼら)地区の基地予定地を19ヘクタールにせざるをえなかった。

 三月四日には、100台の装甲車をはじめ自衛隊車輌が入ってきた。住民は阻止行動を取り組んだ。さらに、まだ半分もできていないことだ。千代田地区に警備部隊が入ってきたが、ミサイル部隊はまだ入っていない。鉱山跡地の市城辺保良(ぐすくべぼら)に弾薬庫などの配備を発表(2018年秋)し、測量入札を開始している。問題は、ミサイル弾薬庫の近くに住宅地があることだ。こんなところに作るのは今までにないことだ。

 宮古島では少人数でも連日抗議行動を続けている。3月26、27日、抗議が行われる。


 奄美大島への自衛隊配備

 奄美大島に警備部隊と対艦・対空ミサイル部隊を二カ所に計550人規模。また空自の移動警戒隊を約50人などを配備する。最低四箇所の基地建設は、巨大な陸自基地となる。さらに海自の古仁屋港誘致ならび艦艇部隊を配備もねらっている。大熊地区が30ヘクタール、節子地区が28ヘクタールだ。

 宮古と同じ3月1日、夜中に部隊が入ってきた。大熊地区で隊友会などによる歓迎式典が行われた。奄美市全体で歓迎式典が行われたわけではない。ここに弱点もあると考えている。

 住民が情報公開請求して、五本のトンネルと整備工場があることがわかった。弾薬貯蔵庫は、南西シフトに動員されるミサイル弾薬庫となる。

 岩屋防衛大臣は、「日本の守りの最前線は南西地域にあるわけですけれども、安全保障上の観点から言って、現在の移設計画が適切だと考えております」(19年2月)と言った。これは奄美、種子島、南西諸島への機動展開事前集積拠点、兵站拠点として具体的に着手していることの現われだ。

 琉球弧に沿って配備される部隊は、基本的に対艦ミサイル部隊だ。車載式で移動が簡単にみえるが、そんなに簡単に動けない。1個中隊で10数台が動くから動きは鈍い。これを守るために地対空ミサイル部隊が必要となる。これらを守る部隊が警備部隊だ。だから奄美、種子島、馬毛島の部隊は、南西諸島の部隊を先島、八重山の部隊の機動展開拠点として位置づけている。2012年「奄美大島等の薩南諸島の防衛上の意義について」で明らかにしている。要するに機動展開拠点・事前集積拠点・上陸作戦訓練拠点としての奄美大島―種子島(馬毛島)の要塞化だ。

 すでに5年前から演習が行われている。奄美・種子島などでの演習を「鎮西演習」と名付けた生地訓練(市街地戦闘訓練) が行われている。奄美市内は、武装した自衛隊が展開する。民間フェリーをチャーターもしている。有事になれば民間船舶はすべて徴用するつもりだ。海員組合は、戦争動員に反対している。

 種子島(馬毛島)への自衛隊配備

 報道は、政府が馬毛島の買収を決定すると報道している。だが、馬毛島は米軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練(FCLP)施設だと報道しているが、間違いだ。米軍のFCLPは、年間の1カ月も使わない。主力は自衛隊だ。2012年統幕文書で「南西諸島の防衛中継拠点として馬毛島を確保する」と言っている。

 地元の説明資料では、2011年防衛省資料「国を守る」では、馬毛島に上陸訓練・物資集積拠点、FCLP(空母艦載機着陸訓練) にすることを言っている。つまり、主力は自衛隊基地であり、南西シフトの機動展開事前集積拠点という位置づけだ。このことを報道は一切行わない。

 3年前、種子島に全国地対艦ミサイル部隊が集結し、演習を行った。この後、図上演習など軍事演習も行っている。さらに種子島から奄美大島、徳之島、沖永良部島の北琉球―薩南諸島は、自衛隊の南西シフト態勢の、「機動展開拠点」「事前集積拠点」「上陸訓練・演習拠点」また「島嶼戦争の出撃拠点」(馬毛島の航空基地化)という位置づけで急ピッチに推進されつつある。

 こういう状況の中、政府・自衛隊は、徳之島の基地化にまで踏み込もうとしている。住民はオスプレイ反対の取り組みをしているが、地元の一部は自衛隊誘致運動を始めている。さらに十島(としま)村・臥蛇島(がじゃじま)の実弾射爆場(産経・2016年 9月 16日)もねらい、南西諸島全体の軍事化を押し進めている。

 沖縄本島への自衛隊配備

 沖縄本島の自衛隊配備は、2010年で約6300人、16年が8050人。ここ5年で約1750人増、空自で約1210人増に達した。さらに陸自は、第15混成団の旅団への昇格(2010年)し、人員は現在約2200人(1個連隊増強) だ。対艦サイル部隊も配備(18年1月) された。

 空自も第9航空団へ昇格(第83航空隊から第9航空団の新編F15で40機態勢)、早期警戒機E2C、4機を配備した。第60三飛行隊の編成へと至っている。

 これだけではない。17年7月、南西航空混成団から「南西航空方面隊」へ昇格し、1000人以上増員した。 海自・潜水艦部隊も増強し、16隻から22隻態勢となった。護衛艦も47隻から54隻へと増強し、1個護衛隊へと増強した。イージス艦も6隻から8隻態勢となり、同時に沖縄本島に20機の対潜哨戒機(P3C)が配備された。

 ところが自衛隊は、那覇空港しかなく、民間航空機とともに過密状況だ。「空の危険」が増しているにもかかわらず、九州の航空自衛隊も増強態勢に入っている。南九州―沖縄の空自の増強は、日米共同基地化の踏み込みだ。

 新防衛大綱等で「いずも」型護衛艦の空母への改修を決定した。南西シフトの観点から見ると琉球列島弧の島々の航空基地化――要塞化 として位置づけた。新中期防ではF35Bを20機、新防衛大綱で42機(空自編成)へと増強する。空母も2隻から3隻に向けて5年、10年かけて改修していく。

日米共同作戦態勢の実態

 日米共同作戦態勢の現れとして、キャンプ・ハンセンに陸自部隊を配備する予定だ。すでにキャンプ・シュワブ、ハンセン等の米軍基地・訓練場・射爆場など全ての米軍基地が日米共同使用になっている。これも2012年統合幕僚監部「日米の『動的防衛協力』について」で「沖縄本島における恒常的な共同使用にかかわる新たな陸上部隊の配置」 「対中戦略」と南西シフト態勢を策定について明らかしている。

 実際の有事を想定して「統合衛生」という戦時治療態勢=野戦病院づくりも着手している。統合衛生ロードマップには、「島嶼部における治療後送・態勢」を明記した。防衛省「自衛隊病院等在り方検討委員会」報告書では、統合後送態勢構築のために飛行場及び港湾の輸送上の要所 に整備、関東地区の飛行場近傍に病院を整備することも明らかにしている。

 さらに共同作戦態勢の強化として陸自は在日米陸軍司令部(座間)に中央即応集団(18年3月廃止)から、「陸自総隊司令部・日米共同部」を新設している。在日米空軍司令部の横田基地に空自航空総隊司令部も設置している(2012年) 。在日米海軍司令部・第7艦隊司令部と海自護衛艦隊司令部も横須賀に同居している。このように米軍基地を自衛隊が共同使用することは、米軍と自衛隊は一体化するということだ。戦略的プレゼンスとして「中国の海洋権益を阻止する」ことを柱にしている。対中戦略を正面から日米共同戦略とし押し出した。

 琉球列島弧・第1列島線の中に中国軍、中国の経済力を封じ込める体制を作り上げることだ。ただちに戦争になるのではなく、軍事外交、砲艦外交、空母を出して圧力をかける。北朝鮮に対して空母、B1を出して圧力をかけたが、同様の手法で中国に対して行う。

 しかし、当然、中国も軍事的に対応してくる。それで軍拡競争となる。去年九月、中国艦艇と米軍艦艇が東シナ海でぶつかる寸前となった。12メートルで止まった。防衛白書でも言っているように島嶼戦争は、平事から有事へ、シームレスに、切れ目なく発展する。すでにこのように南シナ海、東シナ海で始まっている。こんな緊迫した状況にもかかわらず日中間のホットラインも構築されていない。

 最初は限定すると言っているが、しかしかならず限定できなくなる。段々と規模が大きくなっていく。戦争がエスカレートする。今、日米経済、世界経済の状況からすれば必死に限定せざるをえない。世界恐慌にまで至ってしまうからだ。だが限定戦争が西太平洋における通常型戦争へと拡大する可能性もある。核戦争だってないとは言えない。

 私たちはどうするか。3月26日、宮古島、奄美でアクション行動がある。僕も3月31日に奄美に行く予定です。

(講演要旨、文責編集部)


報告 1.18アジア連帯講座 「反基地運動から見えてきた自衛隊の今」

配信:池田さん講座アジア連帯講座
反自衛隊連続講座①
「反基地運動から見えてきた自衛隊の今」

報告:池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)


 アジア連帯講座は、1月18日、文京区民センターで反自衛隊連続講座①「反基地運動から見えてきた自衛隊の今」をテーマに池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)を講師に公開講座を行った。

 日米安保体制下、グローバル派兵に向けて自衛隊と基地が大きく変貌しつつある。安倍政権は、2013年に決定した防衛計画の大綱(防衛大綱)を2018年12月に改定した。大綱は、対中国シフトを強め、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」やステルス戦闘機F35など高額な武器を米国から購入、さらに宇宙やインターネット空間での能力の強化、離島防衛として長射程の巡航ミサイルの導入などを明記し、自衛隊の敵基地攻撃能力を持つことを軸に再編しようとしている。

 池田五律さんは、自衛隊再編について①朝霞駐屯地と練馬駐屯地について②自
衛隊観閲式から見えてくるもの③東京都防災訓練と自衛隊④地域に溶け込む自衛隊を柱に報告した(発言要旨別掲)。

 さらに新防衛大綱分析、安倍政権の憲法九条改悪の性格と批判を行い、ともに反基地運動の取り組みの強化を呼びかけた。(Y)

 池田五律さん報告(要旨)

 東京北部の反基地運動から見えてきた自衛隊をお話したいと思います。

 朝霞駐屯地は、埼玉県朝霞市、和光市、志木市、東京都練馬、西東京市にまたがる九九七〇〇平方㍍の広大な敷地を持っている。

 朝霞駐屯地では日米合同指揮所演習「ヤマサクラ」が、各方面隊の持ち回りなので五年に一回行われている。日米地位協定の第2条第4項Bで自衛隊施設は、自動的に米軍が使いたい時は、使えるようになっている。朝霞駐屯地の機能が本格的に強化されたのは、東部方面総監部が市ヶ谷から朝霞に移転した1993年以降になる。

 大きな変化としては、去年3月末に陸自総隊司令部が朝霞駐屯地に発足した。自衛隊には、北部(北海道、東北)、東部(関東、甲信越、静岡)、中部(東海三県、北陸、近畿、中四国)、西部(九州・沖縄)方面隊がある。陸上自衛隊の場合は、各方面隊を越えた統一司令部はなかった。それは戦前の陸軍参謀本部の暴走の教訓から陸上自衛隊全体を一元的に動かせるような司令部をつくるのはまずいという判断があった。ところがそれが作られ、一元的に陸上自衛隊を動かせることになった。さらに総隊司令部の下に各方面隊があるだけではなく、総隊直轄部隊がある。宇都宮駐屯地にある中央即応連隊(海外派兵専門部隊)、習志野駐屯地の空挺団、覆面部隊の特殊作戦軍がある。

 木更津駐屯地には、水陸機動団、自衛隊版の海兵隊がある。朝霞駐屯地は、こういう部隊の要の司令部機能を持っている。

 もう一つの朝霞駐屯地の役割は、広報機能。陸上自衛隊広報センターがあり、
「りっくんランド」という無料で遊べる「戦争」ゲームセンターがある。体感できる3Dシアター、ヘリコプターの模型に乗れたりするので子ども連れの人たちがたくん来ている。修学旅行のコース、はとバスのコースにもなっている。

 さらに自衛隊体育学校があり、メダリストをはじめとするアスリートがたくさ
んいる。「アスリートと交流しませんか」とかで、大きな広報の役割をしている。一番すごいのが、戦争賛美の振武館といって付属記念館があります。敗戦を認めないという陸軍予科士官の「血判状」とかの資料が展示されている。

 練馬駐屯地は、2万2419平方メートルの敷地があり、川越街道で朝霞駐屯地と繋がっている。東部方面隊は、南関東を管轄している第1師団で練馬駐屯地に司令部がある。第一師団は、政経中枢を守る役割をになっている。第12旅団は、群馬に拠点を置き、空中機動展開旅団と呼ぶ。ヘリコプター部隊とかと連携しながら首都圏でなにかあった場合、緊急展開する。

●観閲式から見えてくるもの

 観閲式とは、自衛隊の戦力を誇示する大々的な軍事パレードだ。

 米軍などの駐在武官とかが見にくる。同時に米軍が友情参加しており、日米安保の威力を見せつける役割を果たしている。

 観閲式の一週間前、予行演習が行われるが、目撃情報では夜中にゴミ出しに行
ったら、自衛隊の制服部隊がウロウロしていたと報告されている。イラク派兵の時は、東武練馬と平和台の間に練馬駐屯地があるが、駅周辺はもちろんのこと、春日町あたりまで自衛隊員がうろついていたり、学校の屋上にも来たという情報もある。

 練馬駐屯地に対し、4月の第2土曜日に駐屯地祭があって、毎年ビラを撒いている。6月の第1か、第2日曜日にデモをしているが、警察・公安だけではなく、駐屯地の中から自衛隊警務隊が写真を撮りまくっている。

 ビックレスキュー東京2000では石原慎太郎が「三国人の騒擾が予想されるから頑張れ」という差別排外主義発言があり、銀座では自衛隊装甲車を出した。まだ開通していなかった大江戸線の都庁から北回りで自衛隊の部隊進出も行った。ビッグレスキューのスローガンは、「首都を守れ」であり、「都民を守れ」ではなかった。

 自衛隊員とか、その家族にとっては、観閲式は「晴れ」の舞台だ。以前、大泉学園で観閲式反対のビラを撒いていたら、若い女の子がビラを受け取ってくれたが「兄が出るンです」と言っていた。大泉学園は、高級住宅地であり、そこは自衛隊幹部の高級住宅地になる。

 観閲式の前日に、防衛省本庁舎のメモリアルパークで、1年間に亡くなった自衛官の追悼「慰霊」式典が行われる。自衛隊版靖国が市ヶ谷にある。

 警察にとっても観閲式は、テロ対処訓練だ。埼玉県の予算要求書には、観閲式
は東京オリンピックテロ対処訓練という位置づけで要求されている。テロ対処で自衛隊と警察は連携している。

●防災訓練から見えてくるもの

 9月の第1日曜日に東京都総合防災訓練が行われ、環状7号線封鎖訓練をやっている。環7は、政経中枢を維持するうえでの一つの柱だ。防災車輌を優先的に動かす。だから道路を一般車両に使用させない。

 大規模震災、緊急事態が起きたら内側から出てくる人たちを誘導して、検問する。それに紛れてテロリストが逃げたり、攪乱するようなやつは中に入れない。

 防災訓練の時も自衛隊が航空管制を握る。2002年、練馬区の東京都総合防災訓
練ではじめて自衛隊が航空管制を行った。

 ビックレスキューの時は、警察は自衛隊アレルギーを持っていたが、その後、国家安全保障局が設立され、自衛隊、警察が出向し、防災訓練、テロ対処訓練を通して警察と自衛隊の連携が深まっていった。治安出動の時も、自衛隊と警察の協定というものが、2002年ぐらいに新協定が結ばれている。洞爺湖サミットで警察と自衛隊の連携が完成化された。北海道自衛隊駐屯地で機動隊が訓練していた。

 最近の防災訓練では自衛隊は前面に出てこない。2~3年前、上野音楽堂でやったテロ対処訓練でも、化学物質が撒かれたという想定だが、消防とかが中心だった。実践の場で自衛隊は来ないよということを想定した訓練になっている。防災訓練は自衛隊をデモンストレーションする役割がなくなってきている。

 私たちは、去年の東京都防災訓練の前、8月に都に対して質問書を出し、交渉した。それでわかったことだが、都が自衛隊に対してこういう施設で、こういう時間帯で訓練をやりますけど、やりたいことがあったら企画をたててくださいということだった。だから自衛隊は、どこどこの会場だったらこんな訓練ができそうだ、自分たちの都合がいい訓練を企画していたことがわかった。

 この間の防災訓練は、参加している高校生に対する自衛隊へのリクルート活動が中心だ。東京都防災訓練では、とくに中高一貫校が狙われ、動員を要請している。総合学習、ボランティア授業の一環として防災訓練に参加させている。

 ほとんどが見学だが、何人かは自衛隊と一緒に、自衛隊が作った給食を配布したり、その間に「自衛隊に入らない」とかのリクルート、声かけをやりまくっている。

 高校の中には、生徒会活動の一環として防災支援隊が作られたり、大学でも防災ボランティアクラブというサークルができている。田無工業高校では、防災訓練だとして朝霞駐屯地で訓練させている。自衛隊には、防災訓練のプログラムはない。送り込む学校が勝手に位置づけている。防災教育指定校もあり、自衛隊が呼ばれて講演をしたりしている。

 訓練場では、防災と関係ない「PKOで活躍しています」とかの展示をやっている。子どもに自衛隊制服を着せて記念写真とかもやる。抗議したら一時期、後景にしりぞいたが、ほっとくとまたやりだした。

 最近は、自衛隊独自の防災訓練をやっている。2012年に夜間徒歩訓練があった。練馬駐屯地から夜中二人~三人一組で徒歩で偵察で動き、区庁の危機管理室に宿泊したりしながら、進出拠点に行く。次に来るのが通信部隊で通信網を作る。

 板橋区は、危機管理室は自衛隊出身者だ。阪神大震災以降、自衛隊は「危機管
理のエキスパートを自治体に入れませんか」とセールスし、民間企業に対しても同様の手法で自衛隊を送りこんでいる。

 自衛隊が大きな訓練を実施するときは、かつては自治体に事前連絡がきていたが、最近は連絡もない。「騒音がすごい」という苦情が練馬区に入り、あわてて自衛隊に問い合わせて、初めて知るという事態になっている。この自衛隊の姿勢は、小学校、高校などに「基地見学にきませんか」とダイレクトにアプローチしたりもしている。

 少子高齢化で小学校は、自衛隊員の子どもが多い。練馬駐屯地内に居酒屋「はなの舞」がある。隊員を町の飲み屋に行かせないためだ。自衛隊で町起こしはありえない。

 自衛隊友の会などが網の目で作られ、自衛隊出身の議員が増えている。地域一体になっている。選挙では、自衛隊とOBは自民党の集票マシーンにもなっている。

 こういった地域一体構造は、自衛隊イベントとしてのオリンピックを通して強まっていかざるをえない。これら全体構造とどのように構えていくのか、沖縄連帯とともに粘り強く反戦反基地運動を強化していこう。

【2019.1.18アジア連帯講座:反自衛隊連続講座①】反基地運動から見えてきた自衛隊の今

Screenshot_20181201-0345362019.1.18アジア連帯講座:反自衛隊連続講座①

反基地運動から見えてきた自衛隊の今


 報告:池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)

日時:2019年1月18日(金)/午後6時30分
会場:文京区民センター3D会議室
        資料代:500円
主催:アジア連帯講座
  東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-9401 FAX:03-3372-9402

       ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/ 


 日米安保体制下、グローバル派兵に向けて自衛隊と基地が大きく変貌しつつあります。

安倍政権は、2013年に決定した防衛計画の大綱(防衛大綱)を改定
します(2018.12)。大綱は、日米安保体制下、対中国シフトを強め、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」やステルス戦闘機F35など高額な武器を米国から購入、さらに宇宙やインターネット空間での能力の強化、離島防衛と称して長射程の巡航ミサイルの導入などを明記しています。つまり、自衛隊の敵基地攻撃能力を持つことを軸に再編しようとしています。

 講座は、長年、反基地運動と米軍・自衛隊をシャープな切り口で分析、批判し
てきた池田五律さんに自衛隊と基地の現段階、今後の反対運動の取り組みの方向性などを報告していただきます。ぜひ参加を


■2019.3.22アジア連帯講座:反自衛隊連続講座②

自衛隊の南西シフト: 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態
小西誠さん(軍事ジャーナリスト)

2019年3月22日(金)午後6時半/都内


報告:反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会

配信:アジ連写真 10月19日、アジア連帯講座は、文京区民センターで公開講座「反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会」を行った。

 2018年2月、第四インターナショナル第17回世界大会(ヨーロッパ)が開催され、
アジア・オセアニア、中東、アフリカ、欧州、南北アメリカの三六カ国の仲間が参加した。論点は、①「資本主義的グローバル化、帝国主義、地政学的カオスとその意味」、②「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」、③「社会的激動、反撃、オルタナティブ」だった。

 世界大会は、新自由主義的グローバル化の危機と、レイシズム、あるいは排外主義的ポピュリズムの広がりの中で、労働者民衆の新たな反撃を組織し、反資本主義的オルタナティブへの水路をいかに切り拓いていくかという問題意識の下に熱心な論議が展開された。つまり、労働運動の不均等発展の中での課題、自己組織化と協同組合、農民の闘い、民主主義・社会的公正を求める運動の位置、社会における失業青年の位置、暴力・レイプ・「フェミニサイド」(女性へのジェノサイド)に反対し女性の権利を守ること、LGBTプラスの闘い、移民の権利を守る闘い、地球温暖化に反対する運動について各国の仲間たちから様々な闘いのうえで報告された。世界大会の論議を決議集としてまとめた。

 講座は、大会に参加した国富建治さん(新時代社)、大道寺毅さん(労働者の力社)から問題提起を受けた。

 国富さんは、「第四インターナショナル第17回世界大会に参加して」というテーマから次のように提起した。

 「私が最初に参加した世界大会は、1991年の第13回世界大会でソ連・東欧ブロックの崩壊と湾岸戦争の開始という情勢だった。続いて2003年、第15回大会は、反グローバリゼーション運動の拡大とイラク戦争下だった。2010年 第16回世界大会は、08年のリーマンショックを受けてオルタグローバリゼーション運動の困難に直面した。さらに、あらためて中心的テーマとして強調されたのは『気候変動』の問題であり、エコ社会主義問題だった」。

 「今回の世界大会は、新しい反資本主義的左翼再編問題、例えば、フランス・NPAをはじめとした左翼再編の困難性についても改めて自覚的にならざるを得ない。同時にアジアでは、フィリピン・IIREマニラ、パキスタンのアワミ労働者党(AWP)の積極的な活動、朝鮮半島(とりわけ韓国との関係)、香港の仲間たちとの関係をいかに豊富化させていくのか、その責任は大きい。アジアの同志たちにとっては、日本に同志たちがいて、活動を継続している という事実そのものが貴重なことなのだろうと思う。そのあたりを意識してわれわれの政治論議を積み重ねよう。とりわけ安倍改憲のタイムスケジュールが煮詰まっていく中で沖縄闘争の政治的意味、天皇代替わり問題、2020年五輪に対して、国際主義をどう貫くかが求められる」。

 大道寺さんは、「総括的感想」を次のように提起した。

 「主に『社会的抵抗』議題の論議において、第一に資本主義の歴史的な限界を底流とした、総体的な深い危機という客観的な現実の捉え方に対する不一致はない。だが、不一致は現実に対する対応の方向性だ。民衆の闘争体制(階級意識の後退、社会主義の否定的認識)に対する政治、その克服と再建のあり方に対する違いがある。討論は極めて活発であり、型にはまった発言ではなく、各々の活動から得ている実感を基礎においた模索がにじみ出ていた。また、その中で制度化への吸収というリスクにどう対処するか、にも明確な問題意識が見られた」。

 「議論の中では、伝統的な改良主義の指導部が総逃亡している状況の中で、各国の同志たちが多様な戦線での民衆的抵抗を組織する重要な部分になっていることが示されていた。その中で新しい型で階級闘争を再建しつつ、それを足場とする世界的な社会主義革命の道筋・経路をどうつかみ取るか、という強い問題意識が広く感じられた。その上で、階級闘争に有益な幅広い政党建設、それを通じた力関係転換に向けた挑戦という任務設定に対する幅広い共有感覚があった。この活動実践での経験を裏付けに、討論を先の戦略的方向の探究に向けてどれだけ具体的に深めていけるかが今後の課題だと思われる」。

 提起を受けて質疑応答、討論を行い、今後も「第四インターナショナル第17回世界大会決議集」や「週刊かけはし」を通して継続討論をしていくことを確認した。

(Y)

 

【案内】10.19アジア連帯講座:公開講座 10.19アジア連帯講座:公開講座 反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ ―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会―

配信:FI7 表紙10.19アジア連帯講座:公開講座

反資本主義の共同から21世紀の社会主義へ

―第四インターナショナル第17回世界大会決議集発刊講演会―


問題提起:国富建治さん(新時代社)、大道寺毅さん(労働者の力社)

日時:10月19日(金)/午後6時30分
会場:文京区民センター3D会議室
        資料代:500円
主催:アジア連帯講座
  東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-9401 FAX:
03-3372-9402
       ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/

 新自由主義的グローバル化の危機と、レイシズム、あるいは排外主義的ポピュリズムの広がりの中で、労働者民衆の新たな反撃を組織し、反資本主義的オルタナティブへの水路をいかに切り拓いていくか。

 この命題に向けて第四インターナショナル第17回世界大会(ヨーロッパ/18年2月)が開催され、アジア・オセアニア、中東、アフリカ、欧州、南北アメリカの三六カ国の仲間が参加しました。論点は、①「資本主義的グローバル化、帝国主義、地政学的カオスとその意味」、②「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」、③「社会的激動、反撃、オルタナティブ」について設定し、活発に論議されました。

 それは国際的な労働運動・民衆運動の国・地域・産業別に不均等な展開のなかで、社会で生起するすべての問題(戦争、失業、レイシズム、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、女性に対する差別、住宅問題、環境破壊など)に立ち向かっていくこと、 すなわちグローバル資本主義システムとの闘いの中からこの「反資本主義的過渡的綱領」への挑戦をどのように創り出していくのかということでした。

 論議を集約した決議集は、労働運動の不均等発展の中での課題、自己組織化と
協同組合、農民の闘い、民主主義・社会的公正を求める運動の位置、社会における失業青年の位置、暴力・レイプ・「フェミニサイド」(女性へのジェノサイド)に反対し女性の権利を守ること、LGBTプラスの闘い、移民の権利を守る闘い、地球温暖化に反対する運動について個々に簡潔にまとめています。

 日本から参加した仲間から問題提起を受け、大会での論議、各決議などを踏ま
え、新たな国内外情勢局面のうえで今後の方向性を探っていくために共に論議を深めていきましょう。

報告 : アジア連帯講座公開講座「アラブ革命の展望を考える『アラブの春』の後の中東はどこへ? ジルベール・アシュカルの提起を受けて」

湯川講座 4月20日、アジア連帯講座は、文京区民センターで「アラブ革命の展望を考える『アラブの春』の後の中東はどこへ? ジルベール・アシュカルの提起を受けて」をテーマに公開講座を行った。

 2011年にチュニジアからはじまり、エジプト、リビア、そしてアラブ全域に一気に広がった「アラブの春」の運動は、イスラム主義勢力ではなく、青年、学生、女性、労働者が中心的な担い手であり、自由と民主主義と社会的要求をかかげ、独裁体制による警察・軍隊を使った残虐な弾圧にもけっして屈することなく抜いた。だが、この民衆反乱は、そのまま発展することなく、「イスラム国」の台頭、シリア内戦の激化に見られるように、中東全体が再びアラブの春以前の状態に舞い戻ってしまったかのようである。
 一体、「アラブの春」はどうなってしまったのか、どこへ行ってしまったのだろうか? 民衆の運動の後退は長期にわたって続くのだろうか? 

 ジルベール・アシュカル(レバノン/アラブ中東問題)は、多くの人々が抱くこの疑問に対して、「アラブ革命の展望を考える」(柘植書房新社)で提起している。アシュカルは言う。「『アラブの春』は挫折し、今日、『アラブの冬』を迎えることとなってしまった。だが、アラブ全域の革命過程は長期にわたる過程であるとみなしていて、現在が揺り戻しの局面に入っているからといって、けっして悲観的な立場には立っていない。長期的展望に立って、革命派の極を強化し
>ていく必要がある」と強調する。

 講座は、本書を翻訳した湯川順夫さんが解説(別掲)の提起を行った。

 国富建治さん(新時代社)は、「『アラブの春』年表」に基づいて、

①2011年1月14日のエジプトで民衆の広場占拠から独裁者ムバラクが大統領辞任(2月11日)
②リビアへの闘いの波及とシリアへの波及(しかし家産国家の付属物としての軍の役割)について
③リビア―NATOに支持されたリビア国民評議会が首都トリポリ制圧(8月)からリビアの独裁者カダフィ殺害(10月)について検証した。

 さらにエジプトにしぼり、
①議会選挙(11月~12月)でムスリム同胞団が第1党になり、2012年7月のエジプト大統領選挙でムスリム同胞団のモルシの当選について
②12月の新憲法を問う国民投票―ムスリム同胞団と軍ならびに大衆との離反の深まり局面
③七月、軍のクーデターによってムスリム同胞団=モルシ体制が転覆され、軍主導のシシ大統領政権が成立する。軍政権=シシ体制の下での新自由主義的開発政策を強行していくプロセスなどを明らかにした。

(Y)

『アラブ革命の展望を考える』を読む   湯川順夫

 ロシア十月革命は、民族自決権を掲げた東方諸民族大会(1920年9月)、全ロシア・ムスリム大会の決議(1917年5月22日)、「女性問題についての大会決議」(5月23日)などにみられるようにロシア・ツァー体制と結びついた土着支配体制の専制と搾取 それからの社会解放の展望をアラブ・中東世界にも影響を与えた。その後のスターリニズム体制下で希望は幻滅へと向かうが影響は残り続ける。

 第2次大戦後、ナセルやバース党に代表されるアラブ民族主義が当初、マルクス主義の勢力に対抗するため急進的路線を取らざるをえなかった。既存の政権は、1980年代以降、共産党、パレスチナ解放人民戦線 イスラム主義ではない潮流に対する恐れからイスラム原理主義による防波堤を建設せざるをえなかった。また、アラブ民族主義に対抗するためにサウジ王国によるイスラム主義勢力への支援が開始される。1973年10月の第4次中東戦争とその後の『石油戦略』、多額のオイルマネーがイスラム主義勢力支援によりいっそう注がれていく。

 このプロセスを私市正年は、『原理主義の終焉か ポスト・イスラム主義論』(山川出版社)で次のように要約している。

 「産油国にはアラブ諸国から敬虔な青年たちが教師や宗教指導者として集まり、多額の賃金を獲得した。都市には失業者や貧困者のスラム街が形成されていたが、国家の福祉政策は遅れ、そこに支援の手を差し伸べたのがモスク建設や慈善活動やイスラム教育などにかかわったイスラム主義者であった。彼らの活動資金は石油の富からもたらされていたのである。こうして都市スラムの住民たちがイスラーム主義者の連帯のネットワークに包み込まれていった」。

 「爆発的な人口の増加により、都市には人口が集中したが、国家はこれに対し大学の定員をふやすことで対応した。しかしそのため教室にはいりきれない学生や、本も買えず授業や試験対策も十分できない学生が急増した。イスラム主義者たちは、こうした学生たちのためにモスクで補習授業をしたり、安い値段で教材を複製コピーしたり、さらには特別のスクールバスを用意して女子学生が安心して登校できるようにもした。これらの活動にも石油の富が使われた。まさしく『石油』イスラムの誕生である」。

 「体制を攻撃したマルクス主義者たちが深刻化する社会矛盾や経済危機に有効な手段を講じられないでいるあいだに、イスラム主義者の勢力が伸長し、1970年代半ばになると、大学や職場でイスラム主義者と世俗的なマルクス主義者とのあいだで主導権争いが激化し、時には暴力的な衝突に発展することもあった」。

 「1980年代にはいると、イスラム主義運動はムスリム諸国全体に広がった。国家中枢における腐敗や汚職の実態が表にでるようになると、ナショナリストの政治指導者はますます専制的になった。またマルクス主義の権威はまったく力を失い、かわってイスラーム主義が政治権力を主張するようになった。イスラミストがとく公正な社会の実現は、宗教的な言説で語られ、具体像が提示されなかったが、腐敗、経済政策の失敗、専制主義、自由の抑圧を痛罵するメッセージ性は未来の理想社会として多くのムスリムを魅了した」。

 その後、1979年のイラン革命を契機にしながら80年代「イスラム主義の勝利」が広がり、支配層にとって「半体制」としての「ムスリム同胞団」の存在意義が示されていくのであった。

 このよう認識を参考にしながらアシュカルはアラブ世界、中東世界を観る視点を次のように提起している。

 ①歴史的に見れば、イスラム主義が一貫して強固に支配続ける「不変の」世界とはみない。歴史上、常にイスラム主義が前面に出続けて来たわけではない。内部が均質的な社会ではない。
 ②世界資本主義体制の中に組み込まれた従属的「周辺」として帝国主義支配下におかれてきたが、パレスチナ解放闘争を軸にしたアラブ民衆の反帝国主義的反シオニズム的結集という共通基盤がある。そのもとでの家産的資本主義下の国家機関、軍隊、経済への一族支配がある。だがそれを反映した内部矛盾と対立が発生し、青年、学生、女性、労働者の闘いが持続している。

 アシュカルは、本書(序章「革命のサイクルと季節」/終章:「アラブの冬」と希望を中心に)でこの構造を「一つの革命、二つの反革命」と規定し、「アラブ/中東世界における3つの勢力のトライアングル」(①イスラム主義勢力②世俗派既存政権③革命派=青年、学生、女性、労働者)を次のように分析している。

 「それは、直接的でない場合でも潜在的に三つ巴の闘争を生み出した。これは、歴史上の大部分の革命的激動におけるような革命と反革命という二項対立ではなくて、一方におけるひとつの革命的極ともう一方における二つの相互に対立し合う反革命陣営との間の三つ巴の対立なのである。後者は、地域の旧体制とそれに対する反動的な対立勢力であって、この二つはともに『アラブの春』という解放を目指す願望に同じく敵対している」。

 「この複雑性を知っていたなら誰であれ、アラブの反乱が短期で平和的なものになるかもしれないなどという幻想をけっして抱かなかったであろう。この地域では、革命的極を組織的に体現するほど十分に強力で、アラブ諸都市の広場で表明された『人民の意思』に沿った社会・政治的変革を政治的に指導する能力をもつ組織的に十分な勢力が存在していない。そうした中では、二つの反革命的陣営の間の二項対立的な衝突が、革命的極を背後に追いやることによって、支配的になってしまった。このようにして作り出された情勢は、危険な可能性をはらんでいた」。

 「『地域の政治的軌跡において、過去数十年間の反動的展開を消し去り、十分に民主主義的な基礎の上に進歩的な社会プログラムを復活させることができるような根本的な変革が起こらないならば、地域全体が野蛮に陥るという危険がある』……はたせるかな、実際には、地域の政治的軌跡の根本的で持続的な転換は起こらなかった。そうした転換は、組織的で断固とした進歩的大衆の指導部が登場した結果としてはじめて生まれ得たからである。そうした中で、『アラブの春』の陶酔感は間もなく、『アラブの冬』とほとんど断定的に呼ばれるようなものの暗黒に飲み込まれてしまった」。

 次にアシュカルは、2013年の中東情勢から一つの転換であったことを明らかにしている。要約すれば①シリア―崩壊寸前だったアサド政権がイランの軍事的支援によって生き延び、反転攻勢へ ②エジプト―同胞団のモルシ政権の打倒、軍部のクーデター、シシ政権の成立 ③イスラム主義勢力の中心的源泉―サウジアラビア。湾岸諸国の首長体制 ④カタール=「ムスリム同胞団」、アメリカのオバマ政権の路線とも合致 ⑤イラン―シーア派=イラクの支配層、レバノンのヒズボラ、湾岸諸国のシーア派 ⑥トルコのエルドアン体制―国内の危機からトルコ民族主義の強化へ→クルド族への軍事的弾圧作戦のエスカレート―などとスケッチすることができる。

 そのうえでアシュカルは、左翼の闘う指針に向けて「左翼にとって同盟とは」と問い、「長期的な戦略的同盟ではなくて、情勢に応じた柔軟で短期的な戦術的統一戦線政治的に独立した勢力として自らを堅持すること」の重要性について掘り下げる。

 例えば、「チュニジアにおけるイスラム主義派(アンナハダ)と旧体制派に対する第三の極が必要」であり、エジプトにおいては、「ムスリム同胞団との同盟は? 対ムバラク闘争の局面とムバラク後の選挙の局面との違い」はどうだったのか。「中東・アラブ世界におけるイラク反戦の大衆運動の組織化するためにイスラム主義潮流とは?」どうするのかについてアプローチし、次のようにまとめている。  「……中心的問題は、自らが宣言する、あるいは真の左翼であればおしなべて宣言すべき価値観に対して、アラブの左翼の主要部分が過去において忠実なままにとどまりつづけることができなかったということである。搾取され、虐げられたすべての人々のために、ありとあらゆる範囲の社会的・民主的闘争に積極的かつ断固として参加する左翼―フェミニスト的価値観や民族解放の価値観を擁護して活動するとともに、宗教に関する民主的な諸権利とともに世俗主義をも大胆に支持する左翼(きちんと理解された世俗主義が第一に擁護すべきなのは、ヒジャブを被らない女性の権利と同じくらいにヒジャブを着用する女性の権利である)―このような左翼だけが、中核となるべきいかなる価値観についても反対の極に立っている勢力との短期的な戦術的同盟を結ぶことができるのである」。

 「左翼は、その時々に純然たる戦術的理由で『ありそうもない仲間』と『共に打つ』―旧政権の勢力に反対してイスラム勢力と協力する、あるいはその逆であっても―のだが、どちらの場合においても、二つの反革命陣営から同じように距離を置いて自身の根本的な道を明らかにすることで、常に『別個に進んで』いくべきなのである。戦術的な同盟は必要な場合には悪魔との間でも結ぶことができる。だが、そうした場合でも悪魔を天使として描くようなことを決してしてはならない。たとえば『ムスリム同胞団』を『改良主義者』と呼んだり、旧体制勢力を『世俗派』と呼んだりして、その深く反動的な本質を表面的に飾り立てることはしてはならないのである」。

つまり闘う指針は、こうだ。「統一したアラブの革命」を展望し、①パレスチナの解放②石油・天然ガス資源の国営化③ユダヤ人やキリスト教徒やクルド人などの宗教的、民族的マイノリティーの権利の尊重、自決権の承認④国家と宗教の分離⑤女性への抑圧の撤廃などの人権と平等の確立、男女の平等、夫婦における権利の平等、未成年者の結婚に禁止、離婚の権利、名誉殺人の禁止⑥言論、結社の自由、労働者の権利、労働組合の権利の確立合⑦王制、首長制の廃止―などを掲げることだ。

 「アラブの春」の運動とは何だったのか。

 酒井啓子は、『9・11後の現代史』(講談社現代新書)の中で「『春』に希望を抱くアラブ知識人のなかには、『今はまだ長い革命の途上なのだ』と主張し、フランス革命やロシア革命など、歴史上の大革命の例を引いて自己弁護する者も少なくない」と評して遠回しでアシュカルを批判する。

 だがアシュカルが強調するのは、「歴史の終焉」=20世紀とともに「革命の時代は終わった」、「資本主義は永遠に続く」と称するブルジョア評論家たちに抗して21世紀になってもいぜん「革命」の潜在的可能性が失われていないことを立証し、21世紀になって新自由主義の下でパンなどの食料品価格の高騰、青年の失業の増大、政権の腐敗、民主主義と自由の欠如に現れる、アラブ・中東世界の矛盾はいっそう深まっている時代認識を捉えきることが重要なのである。

 この視点は、ツァー体制下のロシア1917年2月にも似た情勢という観点から分析すると興味深い。新自由主義の下でのアラブ・中東地域の経済の行き詰まりがあり、近代化とオイルマネーによる教育水準の大幅な向上があるにもかかわらず青年、女性の慢性的な高失業率だ。しかも家産的資本主義の下で、縁故(コネ)がなければ職にありつけない。女性が高学歴の教育を受けられるようになって来たにもかかわらず、差別のために就職口が限られている。このような民衆の鬱積が沸騰点に達していた。チュニジアの反乱は、露天商を営む失業青年の抗議の焼身自殺だったことに現れている。

 革命の観点から掘り下げていくためにトロツキーの提起が参考になる。

 『ロシア革命史』では「革命の最も明白な特徴は、大衆が歴史的事件に直接干渉することである。平時にあっては、……歴史はそれぞれの専門家-君主、大臣、官僚、議会人、 ジャーナリスト-によってつくられる。ところが、旧秩序が大衆にとってもはやたえがたいものとなる決定的瞬間には、大衆は彼らを政治的領域からしめだしている障壁を突き破り、彼の伝統的代表者たちを一掃し、彼ら自身の干渉によって新制度への最初の基礎工事をつくりだすのである」。

 トロツキーの視点を土台すれば、次のように要約することができる。

 「アラブの春」は、もはやたえがたいもののとなっていた旧体制に対して、やむにやまれない形で大衆が決起した。しかし、イスラム主義派は、既存のイスラーム主義政権や世俗派政権に対する具体的なオールターナティブを提示できない。現実の大衆の要求にもとづく社会運動を展開して、既存の政権(世俗派政権にもイスラム主義政権にも)に反対する運動を展開できない。

 民衆は、携帯、スマホという最先端の情報技術を武器に専制体制の検閲と弾圧をかいくぐり、情報を交換し、討論し、独裁打倒へと結集していった―不均等・複合発展の法則を体現していると言える。

 その中心勢力は青年、学生、女性、労働者であり、社会的要求を掲げた。賃上げ、組合活動の自由、女性の権利などだ。イスラム主義的要求は前面にはでなかった。世俗派、イスラム主義、宗教の違いを超えて結集した。

「春」を担った青年、学生、労働者の主体は、パレスチナ民衆のインティファーダへの連帯闘争、官製組合の指導部に抗して自立的な独立労組を求め、賃上げや食料品価格の高騰に反対するストライキ闘争、労働者のストライキを支援する学生の連帯闘争、女性の権利を守る闘いなどを通じて準備されていた。

 民衆の憎悪の的であった警察機構が真っ先に解体し、ひるむことなく決死の覚悟で決起した圧倒的多数の前では、軍隊の兵士は動揺し、分解せざるを得ない。まさにロシア革命と同じだ。

 民衆の決起は、旧国家機関を麻痺・解体し、新しい民衆自身の下からの権力機関を自ら生み出していく。萌芽的に二重権力状態だった。

 この決起によって旧来の国家権力機関は麻痺し、半ば解体状態に陥った。この権力の「空白」に対して、独裁体制を打倒した民衆は、自らの権利を主張し始めた。労働者は独裁体制とつながっていた経営者を追放し、国家と癒着した半官製の労働組合とは別に新たな自立した労働熊井の結成を開始し、賃上げを勝ち取り、非正規雇用の身分を脱して正規雇用の地位を勝ち取りつつある。チュニジア、エジプトなどでは地区では自分たちで地区委員会を結成し、革命の成果を防衛し、自らの社会・経済生活を自分たちで管理し始めた。 既存の国家権力の暴力装置に対しても同様のことが見られた。

トロツキーは言う。

 「群衆は、警官にたいしては、凶暴な憎悪をしめした。彼らは、口笛、石塊、氷の破片をもって、騎馬巡査をおいだした。一方、労働者は全然ちがった態度をもって兵士に接近した。兵営、歩哨、巡邏(じゅんら)兵、および列兵の周囲には、男女労働者があつまって、兵たちと友情的な言葉を交わしていた。これは、ストライキの発展、および労働者と軍隊との個人的結合によって生まれた新しい段階であった。このような段階は、あらゆる革命に必然的にあらわれる」(『ロシア革命史』)。

 こうした事態が「アラブの春」では起こらなかっただろうか? 軍隊による弾圧にもひるまない圧倒的大衆の蜂起の中で、アラブの既存国家の中の軍隊の兵士は動揺しなかっただろうか? リビアではカダフィによって絶望的で残虐な大量虐殺に投入された軍隊は完全に分解し、その一部は反乱する民衆の側に合流した。
 この事態を恐れたチュニジアとエジプトの軍上層部は、軍による大々的な流血の弾圧によって生じる可能性のある軍隊の全面的分解を防ぐために、それまで自らが支えて来たベン・アリとムバラクという独裁者の切り捨てに踏み切った。

 それではロシア革命との違いは何かを見てみよう。ロシア革命は、1905年の革命を経験した労働者の先進層と社会主義政党指導部の存在があったが、「アラブの春」はあくまでも「統一したアラブの革命」の長い革命の過程の始まりであった。

 また強力なこの大衆運動のもうひとつの注目すべき特徴は、イスラム主義が前面にでなかったという点であり、イスラム主義勢力が最初から前面に出てこなかったという点である。それどころか、エジプトのムスリム同胞団は当初、この運動への参加をためらいさえした。また、高揚した運動の中では、宗教、宗派を超えた連帯が見られた。広場におけるムスリム同胞団とキリスト教系のコプト教徒の連帯 対ムバラク独裁体制の闘いが展開された。西はモロッコから東はイエーメン、イランにまでアラブ・中東全域に運動が拡大したことだ。

  アシュカルは、「トランプ政権下のアラブ・中東情勢の現局面」と設定し、アラブ・中東地域における主要勢力の相互関係の構図を予測している。次のように要約しておく。

①アメリカ帝国主義

  ブッシュ時代のイラク軍事侵攻が今日の地域の野蛮状態を生み出した 『野蛮の衝突』(アシュカル著/作品社)。 オバマ政権は、アフガニスタン、イラクの直接的な軍事侵攻の破産の後を受けて地上軍の撤退、クルド勢力を切り札とした介入=地域全体に対してはカタールを通じて間接的介入へ。シリア反政府派に対する積極的支援はしなかった。アサド政権のみがイラン、次いでロシアから一方的に国際的に支援される。その結果、アサド側が優勢になり内戦の力関係の逆転する。反政府勢力の中で、サウジなど湾岸諸国からの軍事的、経済的支援を受けた原理主義派部隊が優位に その一部はヌスラ戦線を経て「イスラム国」へ流れていった。チュニジア・エジプト型の大衆蜂起型の展望の挫折へとつながる。

 こうしてシリア内戦は、シリア人民に依拠した勢力の対立から遊離し、人民に統制されることのない「根無し草」的「傭兵部隊」相互間の無慈悲な戦争に転化。クルド勢力のみが大衆的基盤の上に立っている。
 トランプ政権は、イランを排除したロシアとの合意によるシリア和平 ロシアがイランを見限ることはないのでジレンマに陥っている。オバマにもとで冷却したサウジアラビアとの関係の修復の試みるが、反カタールとエルサレム問題がある。これは地域全体の戦略から導き出されたものではなく、トランプ政権の米国内基盤(シオニスト・ロビー、キリスト教保守派)をつなぎとめるものだ。保守派全体の支持を得られるかどうかは疑問だ。

②ロシア・プーチン政権

 エネルギー資源のみに依存するロシア経済から脱却できない。この危機の中でロシア民族主義にもとづく対外強硬路線、対アメリカ、対EU強硬路線(ウクライナ問題など)を選択している。それはシリアへの直接的軍事的支援をイランと結び、トルコのエルドアン政権への接近、利用へと踏み込んでいる。③イラン 核問題による対外経済関係の悪化のために経済情勢が悪化し、イスラム主義にもとづく国内に対する締め付けに対する民衆の不満が増大している。その圧力の下で支配層内で強硬路線の継続か改革かの路線の対立が発生している。

 中東地域全体に対してサウジアラビアとの間で覇権争いが起きている。シーア派勢力への支援という「口実」でシリアへの積極的な軍事支援し、レバノンのヒズボラの民兵部隊をアサド支援に投入している。

③イラン

 核問題による対外経済関係の悪化のために経済情勢が悪化し、イスラム主義にもとづく国内に対する締め付けに対する民衆の不満が増大している。その圧力の下で支配層内で強硬路線の継続か改革かの路線の対立が発生している。

 中東地域全体に対してサウジアラビアとの間で覇権争いが起きている。シーア派勢力への支援という「口実」でシリアへの積極的な軍事支援し、レバノンのヒズボラの民兵部隊をアサド支援に投入している。

④トルコ

 NATO加盟国であり、地域におけるアメリカ帝国主義の重要な同盟国だ。エルドアン政権の危機は、2015年の総選挙で現れた。公正発展党(AKP)が敗北、過半数を失う。クルド+左翼勢力の連合、極右民族主義派の伸長へ。結果としてトルコ民族主義を前面に出す路線に転換し、クルドに対する戦争を再開する。アメリカのシリア内クルド支援策と衝突し、ロシアに「接近」していく。

⑤カタール

「ムスリム同胞団」を通じた「アラブの春」の勢力の取り込みを行う。イスラム主義だが、「アラブの春」をイスラム主義の水路へと導いていった。オバマ路線とも一致だったが、しかしサウジアラビアと衝突する。

⑥サウジアラビア


 既存の政権の打倒はサウジを含む湾岸諸国の体制の危機につながるから「春」には反対だった。例外は、イランが影響力をもつ既存政権=シリア・アサド政権は打倒の対象だ。地域の覇権をめぐるイランとの対抗が基本路線だ。米軍侵攻後のイラクにおけるシーア派の台頭やシリアのアサド政権へのイランの軍事的支援に危機感を持っている。イエメンの内戦への介入を行っている。

 「アラブの春」の潜在的脅威、地域におけるイランの覇権の強まり、石油収入依存の経済から脱却し得ていない状態が続き、世界的な化石燃料「離れ」などによる危機の深まりがある。「冬」の到来による二つの反革命的陣営の対立が前面に入っている。

⑦リビア

ハフタル(旧カダフィ体制残党)対「ムスリム同胞団」系+原理主義派の内戦状態。


⑧イエメン

 現大統領(サウジの後押し)対前大統領サーレハ派+フーシ派(シーア派の一派)の間の内戦状態にある。

シリア情勢について

 アシュカルの『野蛮の衝突』の第1章を中心にして報告したい。

 当初は、地区委員会の結成などチュニジア、エジプト型の反アサド政権の大衆運動 シリア民衆に依拠した大衆的運動が拡大し、アサド政権、崩壊の危機に直面する。そのことを「今日、シリアの非アサド派地域全体に何百もの地区評議会が存在している。……これらの地区評議会は、市民社会の組織の広範なネットワークによって支えられている。これはシリアにとって、これまでになかった経験である。これこそシリア革命のエッセンスである。地区評議会と市民社会の諸組織のこの組合せは、下からの地区単位の試みの結合である。地区の人々のためにあらゆるリスクをものともしない女性と男性はヒーローである」とまとめている。

 だが、チュニジア、リビア、エジプトの前例、すなわち、ベン・アリ一族、カダフィー一族、ムバラク一家の滅亡から、アサド一族は、「政権を譲っても自分たちが生き残れる未来はない」とする「教訓」を導き出し、最後まで戦うしかない、となった。

 反政府運動が圧倒的な大衆的蜂起に向かうのを回避し、その運動を純軍事的、宗派的な軍事的衝突に持っていった。刑務所から反政府派のスンナ派原理主義派の戦士の釈放される。「イスラム国」との取引が行われた。

 こうして、大衆的デモの人数が減少するにつれて、スンナ派原理主義部隊による「ジハード」的戦闘が前面に出てくる。これはアサド政権の望むところであり、アサドはこれによって無慈悲な軍事作戦をエスカレートすることが可能になった。「テロリストと戦っている」のだという大義名分を得ることができるからだ。

アメリカのオバマ政権の対応についての評価を延べたい。

 イラク、リビアの破綻から直接的な反政府派への軍事的支援が困難になる。

 直接的軍事的支援は、クルドだけに限定した。反政府派全体への直接的な支援は行わない。「アサド政権」との和平という枠組みが基本政策だ。イラク、リビアへの介入の失敗からアメリカが引き出した教訓からだ。既存の国家体制の完全な解体は、新たな支配秩序の再建を著しく困難となり、既存の国家体制を残す。

 窮地に立つアサド政権に対しては、2013年以降、イラン、ロシアが直接的な軍事的支援を行った。

 イランはレバノンのシーア派民兵のヒズボラの部隊を投入した。2013年以降、アサド政権側の反転攻勢によって内戦の形勢逆転が起こる。イランは、当初は「アラブの春」を支持するがシリアにまで波及すると、一転して「アラブの春」に敵対する陣営に移った。

 トルコのエルドアン政権は、アサド政権やイスラム国との戦いではなくて、クルド攻撃が主要動機だった。

 サウジアラビアなどの湾岸諸国は、イランとの対抗もあり、スンナ派原理主義「戦士」を軍事的、経済的に支援した。反政府派の中で原理主義派兵士が主流になるが、その一部は、「イスラム」国に流れた。

 こうしてサウジを中心とする湾岸諸国からの大量の軍事的、経済的支援を得たスンニ派原理主義戦士たちが反政府派の中で優位になる。大衆的基盤を持たないこれらの戦士たちは、アサド政権から民衆を防衛しているというよりも、産油国の豊富な資金に寄生し、民衆から遊離した「傭兵部隊」としての性格を強めていった。

 クルド族は、トルコ、シリア、イラク、イランにまたがって存在している。現時点では、唯一、大衆的基盤を持った反政府派だ。「イスラム国」と本当に戦ったのは、クルド派民兵だ。アメリカの支援を受けるが、トルコ対アメリカ関係の亀裂、トルコの「ロシア」への接近によって困難な局面に入る。

 こうして三つ巴の対立の中で、シリアは、革命派の運動は後景に追いやられ、2つの反動的陣営の対立が前面に出る野蛮の衝突の局面に入る。

 アシュカルは、「春」の後のエジプトについての情勢について、「ムスリム同胞団」支配の破綻からシシのクーデターへのプロセスを分析している。以下、要約して報告する。

 「2011年1月5日に開始された革命の波には、その後まもなく、既成体制に対する反対派の中で主要な反動的構成要素であるムスリム同胞団が参加してきた。進歩的構成要素である左翼とリベラル派は、ムスリム同胞団とはそれまで不安定な協力関係を維持していた。同胞団は革命プロセスの拡大を食い止めようとして、潜在的反革命の選択肢として闘争に加わった」。

 この革命の第一波は、軍による2月11日のクーデターで乗っ取られた。これは、ムスリム同胞団の支持を得て、旧体制を保護しようとする保守的クーデターだった。反革命両派はどちらも1月25日革命の目標に敵対していたが、イスラム原理主義派の影響力が大きくなり、国家支配を求めての最後の一線を越えようとするまでは協力していた。

 一方、革命プロセスは発展を継続させ第二波へと突入していた。その第二波は、とりわけ労働者の闘争が頂点を迎える中に出現し、2013年6月30日に運動がクライマックスに到達する前には現実のものとなっていた。この第二波は、モルシが2013年6月30日に大統領となった瞬間から、反革命的イスラム原理主義を第一の攻撃対象としていたので、革命勢力には再び[腐敗した]反対派の主要な反動的構成要素、すなわち反革命の別の翼、今回は旧体制派が加わってきた。

 革命の第二波は、次の7月3日、反動的クーデターで乗っ取られた。軍が本格的に旧体制を復活し始めるまでにそんなに長くはかからなかった。エジプト革命の絡み合った道筋は完全に一回りした。要するに、それは長期的な革命プロセスにおける最初のサイクルであった。

 この過程でモルシ(ムスリム同胞団)の政権と軍事クーデターによってそれを倒したシシ政権に共通することは、①IMFの構造調整策への無条件の屈伏とその履行(緊縮と赤字財政の解消)②公共労働者への締め付け、物価高騰③労働運動に対する弾圧の強化などだ。

 以上の過程におけるアラブ民族主義派と左翼の連合の戦略の問題点は、二つの反革命陣営に対して第三の戦線を構築しようとする首尾一貫した戦略を追求しようとしなかった。

 2011年11月~12月、同胞団主導の「民主連合」の一員として選挙に(6議席、同胞団125議席)出る。


  その後、ムルシ政権と対立すると、2012年の大統領選挙に第三の陣営として立候補する。


 「フルル(ムバラク残党)でもなく、同胞団でもなく、革命はまだ広場にある」のスローガンが象徴的だ。第1回投票で20.7%を獲得したが、その後、ムバラク派の残党や軍との連合を選択する。だが、第3の戦線の路線を貫徹できずの状態が続いている。

案内 : 【公開講座】「アラブ革命の展望を考える 『アラブの春』の後の中東はどこへ?」

アシュカル本写真4.20 アジア連帯講座:公開講座

「アラブ革命の展望を考える
『アラブの春』の後の中東はどこへ?」


ジルベール・アシュカルの提起を受けて

解説:湯川順夫さん(翻訳家) 
コメント:国富建治さん(新時代社)


日時:4月20日(金)/午後6時30分

会場:文京区民センター2D会議室

        資料代:500円
主催:アジア連帯講座
  東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付 TEL:03-3372-9401 FAX:
03-3372-9402
       ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/

 ジルベール・アシュカル(レバノン/アラブ中東問題)著者の「アラブ革命の展望を考える」(柘植書房新社)が発刊されました。本書を翻訳した湯川さんは、「訳者あとがき」で次のようにまとめています。

 2011年にチュニジアからはじまり、エジプト、リビア、そしてアラブ全域に一気に広がった「アラブの春」の運動は、イスラム主義勢力ではなく、青年、学生、女性、労働者が中心的な担い手であり、自由と民主主義と社会的要求をかかげ、独裁体制による警察・軍隊を使った残虐な弾圧にもけっして屈することなく闘い抜いた。だが、この民衆反乱は、そのまま発展することなく、「イスラム国」の台頭、シリア内戦の激化に見られるように、中東全体が再びアラブの春以前の状態に舞い戻ってしまったかのようである。一体、「アラブの春」はどうなってしまったのか、どこへ行ってしまったのだろうか? 民衆の運動の後退は長期にわたって続くのだろうか? 多くの人々が抱くこの疑問に対して、アシュカルは、本書においてその解明を試みている。

 アシュカルは言う。「アラブの春」は挫折し、今日、「アラブの冬」を迎えることとなってしまった。だが、アラブ全域の革命過程は長期にわたる過程であるとみなしていて、現在が揺り戻しの局面に入っているからといって、けっして悲観的な立場には立っていない。長期的展望に立って、革命派の極を強化していく必要がある、としているのである。

 講座では湯川さんの解説、国富さんのコメントを参考にしながら、本書をいか

に読み、今後のアラブを展望するのかを論議しましょう。

報告:11.4シンポジウム 世界を揺るがした100年間~世界史からみたロシア革命

PB040244 11月4日、「シンポジウム 世界を揺るがした100年間~世界史からみたロシア革命」を亀戸文化センターで行った。主催は実行委、共催がトロツキー研究所、アジア連帯講座、東アジア研究会。参加者は83人。

 1917年のロシア10月革命から100年。この史上初の社会主義革命は、労働者の権利獲得、民族自決、男女同権、反戦平和などを実現した。その後のスターリニスト的歪曲にもかかわらず、一〇〇年ものあいだ世界を揺るがせ続けてきた。いま改めてロシア革命を世界史の中に位置づけるとともに、ヨーロッパとアジアに及ぼしたその影響を振り返った。

 開会あいさつが山本大さん(トロツキー研究所)から行われ、「1989年のベルリンの壁崩壊に始まった東欧民主革命は、ソ連の影響下にあった東ヨーロッパ全体に及び、1992年、共産党の独裁下にあったソ連も崩壊した。こうした一連の事態からロシア革命と社会主義の歴史は一党独裁の負の歴史であるとして否定的に捉え、またヒトラーやムッソリーニの全体主義と並べて、スターリンによる独裁を左右の全体主義として歴史の闇に葬ろうとしている。シンポジウムは、こうした流れに抗し、また、ロシア革命とその後の歩み全体を賛美して、肯定的に総括しようとするものとも無縁だ。世界初のプロレタリア社会主義革命であり、永続革命として行われたロシア革命を世界史の中で検証していきたいと考えて企画した」と発言し、シンポジウムの討論の方向性を示した。

報告─森田成也さん

 森田成也さん(大学非常勤講師)は、「世界革命としてのロシア革命――ヨーロッパ、ロシア、アジア」をテーマに以下のように報告した。

 「ロシア革命の成立条件の国際的文脈と国際性」について、「その国内的諸条件として歴史的後発性、不均等複合発展の産物としてのロシア社会の特殊性、ブルジョア民主主義的課題の歴史的先送り、ブルジョアジーの反動化、労働者階級の発達とヘゲモニー、同盟者としての農民階級の革命性、都市のヘゲモニーがあり、これらがすべて合わさって典型的な永続革命的軌道をたどった。また世界大戦と帝国主義の最も弱い環としての国際的条件が存在していた」。

 「思想的諸条件としてはマルクス主義の国際性、多民族国家ロシアにおける少数民族の革命性(とくにラトビア人、ユダヤ人、 ポーランド人) があり、最終的勝利の条件としてヨーロッパ革命を展望していた。しかし第一次大戦後のヨーロッパへの波及と挫折(ドイツ、 オーストリア、イタリア、ハンガリー、等) によってロシア革命が完結しうる国際的条件の強制的停止とスターリニズムへの軌道の開始となった。また、ロシア革命はアジアへの巨大なインパクトを与え、第二次中国革命の高揚を作り出したが挫折の道を辿った」。

 「ロシア革命の世界史的位置づけと世界史的意義」について、「ロシア革命は、欧米周辺国および植民地諸国に下からの近代化、民主主義化の過程を可能としたこと(それは勝利の軌道を描いた場合には社会主義革命と必然的に結合する)と、欧米社会それ自身に社会主義的要素を大なり小なり取りこむことを余儀なくさせた(福祉国家化)。ロシア革命は、社会的平等(労働者・農民の権利、女性・少数民族・同性愛者の権利、植民地解放と民族自決権)を重視する現代社会の基礎をつくり出した。逆説的なことに、ソ連東欧の崩壊は資本主義世界システムの進歩的生命力の終焉をも意味した」と指摘した。

 さらに森田さんは、「『永続革命の時代』終焉後の21世紀はいかなる時代になるのか?」と問いかけ、「理論的推論」として「世界の資本主義化の完了と世界資本主義の危機の深化を前提にして、世界、とくに先進資本主義国を(再度)中心とした『反資本主義革命の時代』(21世紀) だ。つまり、社会主義的意識・展望の大幅な後退と、資本主義それ自身の危機・行き詰まりの深化という歴史的矛盾があり、21世紀が本当に『反資本主義革命の時代』になるかどうかは、今後の展開と主体的努力しだい。 未来はいい意味でも悪い意味でも決定されていない」と集約した。

報告─中村勝己さん

 中村勝己さん(大学非常勤講師)は、「ヨーロッパから見たロシア革命」をテーマに報告した。

 「はじめに」では、「ロシア革命はレーニン、トロツキーらが唱える『プロレタリアートの独裁』を実現したものとみなされ、これをめぐり彼らボリシェヴィキのリーダーたちとヨーロッパのマルクス主義者たちが論争を繰り広げた。カール・カウツキー(1854~1938)、ローザ・ルクセンブルク(1871~1919)らである。いずれも革命のあり方およびその後の社会の運営の原理として『プロレタリア独裁』を認めるが、その内容がかなり異なるところが興味深い。論争の際の論点はたくさんあったが、今回はあえて『社会主義革命と自由主義、民主主義は両立するのか? 例えばロシア革命で憲法制定議会を解散させたことは正しかったか?』をめぐる論争に絞って見てみることにする」と中村さんの問題意識を提起した。

 そのうえで「ロシア革命論争」として

①カウツキー『プロレタリアートの独裁』における「公開性と多元性」

②レーニンのプロレタリアートの独裁論

③ローザ・ルクセンブルクの『ロシア革命論』に見る「民主主義と自由」を比較分析し、「ローザの独裁批判は、カウツキーとは異なり民衆の自由を拡大するものとしてロシア革命を肯定的に捉えている。しかしまた、カウツキーとローザの独裁批判にはある種の共通点も見てとれる。それは、民主主義(人民主権)には多元性(複数性)を保障する論理が必要だという視点である。西欧で多元性を重視したのは自由主義の伝統である。自由主義の視点をカウツキーは明示的に、ローザは暗黙の形で前提としている。そして彼らの批判は、レーニン死去後、スターリン独裁体制の成立により裏づけられたともいえる」ことを明らかにした。

 次に中村さんは、「 グラムシとロシア革命――『資本論』に反する革命」について提起し、「グラムシは、ロシアにおける資本主義発展の遅れを取り戻す力がボリシェヴェキの主体的な行動にかかっていると考えていた。これは、カウツキーの客観主義的=待機主義的なロシア革命理解への批判にもなっている。これを指して多くの研究者たちが「初期グラムシの主意主義(主体性中心主義)」と呼んでいた。青年時代のグラムシがこうした強い主意主義的傾向をもってロシア革命の意味を解釈したことの背景には、当時のマルクス主義の主流派が社会進化論的、実証主義的な傾向を示していたのに対して、そうした実証主義への「反逆」として新たな思想潮流が登場しつつあり、それにグラムシが影響を受けていたことが挙げられる」と分析した。

 さらに「グラムシ『獄中ノート』における省察――機動戦から陣地戦への転換」では、「トロツキーが唱えた『永続革命論』とは、ロシアのような後進資本主義国における革命は、大都市の労働者階級(プロレタリアート)の主導による自由と民主主義を求める革命(ブルジョア革命)をもって始まり、そのまま中断することなく、社会主義革命へと連続していかざるをえないこと、また、その革命は先進資本主義諸国の社会主義革命へと連続的に波及し、その援助を受けることを必要とすることなどを骨子とする。グラムシは、この永続革命論に陣地戦論を対置し、西欧の革命を可能とする条件を考察する」と評価した。

 そして、「グラムシは、市民社会における知識人の役割、アメリカニズム(フォーディズム)の導入による労働と生活の規範の規律化、政党としてのメディアの役割、社会運動におけるサバルタン(従属的諸集団)の自立の過程、〈現代の君主〉としての政党の役割などのテーマを掘り下げていく。その際に注目されるのはつねに〈ヘゲモニー〉というミクロな権力作用である。物理的な強制力とは別の精神的、文化的、道徳的などの影響力がいかに国家権力による支配を支えているか、民衆はいかにそこから自立するのかが注目されている。このように獄中期グラムシの主要な関心は、ロシア革命の再審よりも来たるべき西欧革命の方向性を探ることにあったと言えるだろう」と語った。

 また「来たるべき革命は、機動戦か陣地戦か、情報戦か空間占拠戦か、といった戦術レベルでの議論をする前に、そもそも私たちが目指すべき社会とはどのような社会なのかという戦略レベルでの議論をしないと、ロシア革命を参照点とする左翼は21世紀の遠くない将来に消滅するだろう。そうならないための議論を、ロシア革命100年に際しても継続することが必要だと私は考える」と問題提起した。

 2人の報告に対して湯川順夫さん(トロツキー研究所)は、「複数制と民主主義」の論点についてダニエル・ベンサイドの「21世紀マルクス主義の模索」を紹介しながらコメントし、論議の深化を呼びかけた。

報告─江田憲治さん

 江田憲治さん(京都大学教授、中国現代政治思想史、中国共産党史)は、「ロシア革命論の継承─中国・陳独秀の場合」をテーマにして、「ロシア革命における革命理論が中国でどのように継承されたのか、この問題を、中国共産党の創立者にして初期指導者(1921~27年)、そして中国トロツキー派の指導者(の1人)であった陳独秀について検証しようというのが、本報告のねらいである」と述べた。

 そのうえで①はじめに─陳独秀と中国革命②陳独秀=「2回革命論者」説の検討③中国トロツキー派の成立と「永続革命」論争についての分析を報告した。

 さらに④「陳独秀における民主主義と社会主義」について、次のように指摘した。

 「陳独秀がロシア革命の革命論から継承していたのが、民主主義についての議論である。トロツキストとしての彼の場合、民主主義闘争から社会主義革命達成、民主主義と社会主義との併存を説き続けていたことは確かである。陳独秀は『われわれの現段階での政治闘争の戦術問題』では、民主主義そのものをブルジョアジーの専売特許とは見なさなかった」。

 「プロレタリアートは、何の遠慮会釈もなくブルジョアジーのこの切っ先鋭い道具(民主主義)を借用して、ブルジョアジーに対抗するべきなのだと言っている。さらに『ブルジョア民主主義の視点は、プロレタリア民主主義の起点につながる』と述べ、両者の同質性を指摘し、さらに『徹底した民主主義の国民会議の実現要求を通して行われる武装暴動で、プロレタリアの政権を実現し、同時に徹底した民主主義の国民会議を実現する。これがわれわれの観点である』と結論づけている」。

 「陳独秀のこうした論点は、陳独秀が獄中からトロツキー派の機関誌に掲載させた『プロレタリアートと民主主義』(『火花』1936年3月)でも、そしてまた『陳独秀最後の論文と書信』(1948年)に収録された彼のトロツキー派宛ての書簡(1940年)や、『私の根本意見』(1940年)で、より明確なかたちで(後者ではボルシェヴィキのプロレタリア独裁に対する糾弾を含みながら)、提起されることになる」と重要な示唆をしていることを強調した。

 江田報告に対して長堀祐造さん(慶應義塾大学教授、中国近現代文学─魯迅及びその周辺)は、「中国トロツキスト回想録―中国革命の再発掘  王凡西」(1979年) や「陳独秀文集」(2016年)を紹介し、「中国革命と陳独秀」の歴史的意義についてコメントした。

 質疑応答と討論を行い、最後に国富建治さん(アジア連帯講座)から閉会あいさつが行われ、「ソ連邦の崩壊という現実からロシア革命の歴史的意味を否定的に解釈するのではなく、その過程でのさまざまな可能性をつかみとり、今日の現実作業と重なりあわせて対象化する作業を今後も続けていこう」と集約した。


(Y)
記事検索
最新記事