『知らないうちにみられてる これ一冊でわかる監視社会』
編集・発行 「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、共謀罪NO!実行委員会
頒価 300円
安倍政権は、日米安保下における米軍との共同作戦・実戦への踏み込みに向け たグローバル派兵国家建設の一環として特定秘密保護法(2013年12月6日成立)、 共謀罪(改正組織犯罪処罰法/2017年6月15日)を次々と成立させた。
この二法の 制定後、この二法の戦争法としての危険性と人権侵害に満ちた市民監視のねらい を社会的に告発してきた「秘密保護法」廃止へ!実行委員会、共謀罪NO!実行 委員会は、すでに内閣情報室が政府機関の中枢として野党、官僚、市民の監視の 強化とともに治安対策と称して市民の個人情報を集積している実態を明らかにし、 あらためて監視社会の現在を共に共有化し、人権侵害を許さないスクラムを構築 していくためのバネとして本パンフを発刊した。
小笠原みどり(ジャーナリスト、社会学者)は、巻頭論文で「ネット監視はこ うして日本で始まった―アメリカの世界スパイ網に協力して国民を見張る政府」 (パンフ)を暴いている。 2012年末、安倍政権は、インターネツトの大量無差別監視に着手した。大量無 差別監視とは、インターネットでのメール、チャット、ビデオ通話、ウェブサイ トの閲覧・書き込みなど政治に関係なく全てを集積することだ。この作戦の実施 は、2001年からの米国の対テロ戦争と連動して国家安全保障局(NSA)による 「すべて収集する」原則(海底ケーブルの上陸地点、グーグル、アップル、マイ クロソフト、フェイスブックのサーバーに介入し全て集積する)の追随であった。 政府が言う「サイバー・ネットワーク防衛」とは、ネットの大量無差別監視の強行のことだ。
このことを暴露(2013年6月)したのがNSAの元契約社員エドワード・スノー デンだった。NSAが米空軍横田基地に国防省日本特別代表部を置き、日本の民 衆のコミュニケーションを収集していたことを明らかにした。しかも日本政府が そのためにNSA監視装置の建設のために莫大なカネをつぎ込んでいた。この詳 細は、「スノーデン・ファイル徹底検証 日本はアメリカの世界監視システムに どう加担してきたのか」小笠原みどり(毎日新聞出版刊)を参照していただきたい。
小笠原は言う。「腐敗のオンパレードにもかかわらず、安倍首相が戦後最長記 録を達成できたのには、こうした監視活動を秘密裏に広げて、メディアを含む世 論操作に成功してきたことにも一因であることを見逃してはなりません」の指摘 は、さらに掘り下げて分析していく必要がある。
なお筆者は、「かけはし 2018年9月24日号」で「『スノーデン 監視大国日本 を語る』(エドワード・スノーデン著/集英社新書 )の紹介で日米政府による秘 密の共謀によって「①防衛省情報本部電波部がNSAの日本側パートナーとなっ ている。同様に内閣情報調査室もその役割を担い、日本のネット諜報導入を推進 していると明記。②米軍横田基地内通信機器製造工場が日本政府の思いやり予算 によって年間37万5000ドルを計上。③1990年代から2000年代のはじめにかけて、 クロスヘア作戦(内容不明)と呼ばれる諜報作戦に日本も参加。④防衛省情報本 部電波部の傍受施設は全国に6カ所ある。⑤2012年以降、コードネームがマラード と呼ばれる衛星傍受システムにより、日本は、民間衛星を経由しているインター ネットから大量の情報を収集している」ことが明らかとなっており、継続した監 視と摘発が求められていることを強調してきた。
政府による大量無差別監視の推進エンジンについて海渡雄一(弁護士)は、 「内調を核として政権に奉仕する情報監視体制が確立しつつある―プライバシー 権で監視社会に対抗しよう―」(パンフ)で分析している。とりわけ安倍首相が 官邸の重要ポストに警察出身者を重用し配置してきたことを指摘する。
とりわけ北村滋(国家安全保障局長、内閣特別顧問)に焦点をあて、情報操作、 フレームアップなどを繰り返してきたことを浮き彫りにし、「公安警察が集めた 個人情報によって、政治家や官僚の弱みを握って黙らせるという、独裁的な政治 を進めているように思います」と総括している。海渡は、控えめに総括している が、まさに公安政治警察の非合法活動も含めて重厚に治安弾圧体制を構築してきたのである。
その実例として、①北海道―安倍首相の演説に対するヤジを飛ばしただけで警 察に拘束された事件を契機にして、全国一斉に安倍演説の警備強化とヤジに対す る排除が進められた。②「これが本当なら『現代の特高』前川元次官が語る告発 ノベル「官邸ポリス」のリアル(毎日新聞・19・6・20)を取り上げ、国家安全保 障局の局長に北村滋が就任して以降、これまでの国家安全保障局のポストには外 務省、防衛両省のメンバーが中心だったが、組織のトップに警察官僚が「君臨」 していることを批判している。
かつて青木理(ジャーナリスト)は、2010年時点で公安政治警察内の「I・S (インテリジェンス・サポート)/〇〇7」の存在をクローズアップさせ、警察 庁警備局の元幹部の「『幅広情報』の中で最も重視されているのは政治関連の情 報、そしてマスコミ関連の動向です。特に政治情報は与野党を問わず、地方議会 レベルの動きから中央政界における閣僚や有力議員のスキャンダルに至るまで、 ありとあらゆる情報を掻き集め」ていることの独白を紹介していた。つまり、奉仕する政権に公安政治警察のこのような存在意義を売りにして組織再編・拡大を ねらっていた。 公安政治警察の野望の到達点としてあるのが、安倍首相・官邸と北村滋をはじめ とする公安政治警察の連携プレーだ。
最後に海渡は、闘う全国の力によってはね返していく陣形の中に「プライバシー の権利に基づく人権侵害抑圧メカニズム」の実現、秘密保護法・共謀罪廃止運動を広げていこうと訴える。
さらにパンフに収録されている論文は、「オリンピックで一挙に進む監視社会」 (宮崎俊郎)、「国家を上回る個人情報法収集力をもつ巨大IT企業」(角田富 夫)、「監視カメラは目に見えない一種のパパラッチ」(原沢史郎)、「監視の 社会基盤としてのマイナンバー制度」(原田富弘)、「生活の道具が監視の道具 にもなる 『IoT機器』とは」(中森圭子)、「捜査照会」(鈴木猛)などを 取り上げている。グローバル派兵国家建設のための治安弾圧体制の現在を暴き出す、本パンフの一読を!
(Y)
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