_20210116_213402 政府は新型コロナウイルス感染症を巡る法改正で罰則を導入しようとしている。感染症対策は、あくまでも理解と協力のもと行わななければならない。理解と協力を得る努力を抜きにこれを強権で行えば、感染者を犯罪者のように扱うことになる。現在のように何の補償もないまま入院・宿泊療養を強制していけば、何らかの理由で入院・宿泊療養に応じられない人は検査を避けるようになり、結果的に感染を封じ込むことが逆に難しくなるだろう。

 また政府は、コロナ病床の受け入れを拒んだ医療機関名を公表することを盛り込んでいる。民間医療機関の多くがコロナ患者の受け入れに消極的なのは、コロナ患者を受け入れていなくとも受診者の減少で減収になっており、コロナ患者を受け入れるための人的・物的投資ができなくなっているからである。

東京では都立・公社病院を事実上のコロナ専門病院とすることで病床を確保しようとしている。一時的にコロナ専門病院となる都立広尾病院は、東京の島しょ医療、三次救急を担う病院である。広尾の場合、島しょ医療や三次救急の受け入れ機能を落とさないように地域でどのように再分担していくのか丁寧な計画が必要になる。

民間病院がコロナ患者を受け入れるためには一般医療を制限せざるを得ない。その時に今まで診療していた患者の受信先を見つけられなければコロナ患者を受け入れることはできない。このような事前の調整抜きに社会的制裁をまず加えれば、地域ごとの病院の連携は破壊されてしまう。

 日本医学会連合も14日緊急声明を出し「措置に伴って発⽣する社会的不利益に対して、本⼈の就労機会の保障、所得保障や医療介護サービス、その家族への育児介護サービスの無償提供などの⼗分な補償を⾏うこと。」が重要であり「刑事罰や罰則を伴わせる条項を設けないこと。」を求めている。

 政府の政策に決定的に足りていないのは、十分な補償とPCR検査数、患者家族、そして医療従事者への差別を防止する法的措置である。コロナ感染を理由に解雇された、コロナ病床で働く看護師の子どもが保育園で登園を拒否されるなどと言うことがないようにしなくてはいけない。

このような差別が広がったのは、政府がPCR検査数拡大を怠り医療へのアクセスを制限し、科学的根拠をもたない場当たり的な対応を繰り返した結果である。そのためコロナウイルス感染症は、ある人には死をもたらす感染経路不明な恐るべき病気となり、またある人には、罹患しても症状も出ないたいしたことのない病気になってしまった。

 政府は過去にも、ハンセン病患者を犯罪者として取り締まり取り返しのつかない人権侵害を引き起こした。医学会連合の声明も「かつて結核・ハンセン病では患者・感染者の強制収容が法的になされ、蔓延防⽌の名⽬のもと、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、著しい⼈権侵害が⾏われてきました。上記のように現⾏の感染症法は、この歴史的反省のうえに成⽴した経緯があることを深く認識する必要があります。」と指摘している。

#罰則でコロナは封じ込められない
#自粛と補償はセット

を拡散させよう。罰則導入反対の世論を高め感染症法などの改悪を阻止しよう。 

(矢野薫)