反買春10.17
岡村隆史発言が見せつけた売春容認社会に怒ろう
岡村発言から売春社会を考える会


 一〇月一七日午後二時から、渋谷勤労福祉会館で「岡村が見せつけた買春容認社会」学習会が岡村発言から買春社会を考える会の主催によって開かれた。

 お笑いコンビ「ナインティナイン」の岡村隆史が四月二三日深夜のオールナイトニッポンのラジオ放送で、「コロナが終息したら絶対面白いことあるんですよ。美人さんがお嬢(風俗嬢)やります。短時間でお金を稼がないと苦しいですから」などと発言。この発言は買春容認を助長するものだと批判する会を立ち上げ渋谷駅頭で抗議行動を行ってきた。この日も学習会前に抗議行動を予定していたが、マイクの不調で行動は中止し、学習会のみになった。

 学習会は三人から提起が行われた。

 森田成也さん(ポルノ・買春問題研究会)が「売買春が合法化されて誰が得をするのか」、三井マリ子さん(新刊『さよなら!一強政治:徹底ルポ小選挙区制の日本と比例代表制のノルウェー』著者、元都議)が「買春禁止法に向かったノルウェーの政治」、キャロライン・ノーマさん(オーストラリアRMIT工科大学教員)が「オーストラリアの合法買春状況とメディアの沈黙」と題して問題提起した。
 
 森田さんの提起から
 
1.売買春に対する旧来の3つの法的アプローチと2つの新しいアプローチ
 
 三つの法的アプローチ。禁止主義(北米型で売買春を一律に罰する)、古い合法主義(公娼制度の容認)、古い廃止主義(日本など戦後多くの国が採用した売買春の勧誘、強要などを禁止)。禁止主義と古い廃止主義の中から、北欧モデル(新しい廃止主義)と共犯罪化モデル(新しい合法主義)が登場している。

 北欧(平等)モデル(権利論&主としてサバイバーの声)……売買春という制
度そのものが、その中の女性たちおよびすべての女性に対する男性の性的搾取・暴力・構造的差別にもとづいており、したがってそれ自体が人権侵害であるという考えから、その中で被害を受けている当事者(つまり被買春女性)を非犯罪化しつつ、買春者を業者ともに犯罪化し、前者には必要な支援・離脱サービス等を提供し、後者には一定の処遇&再教育を与える。

  完全(包括的)非犯罪化モデル(権利論&主として現役従事者の声)……児童や強制に基づくのでないかぎり売買春は無害で、当事者の自由に委ねるべきであり、売買春を規制するあらゆる法律を撤廃して、最大限の自由化を図り、その中で偶発的に起こる暴力や不当な搾取のみを規制するべきであるとする。ただし、文字通りの意味で完全に非犯罪化することはできないので、これは結局、一定の規制を含んだ合法主義にならざるをえず、「新しい合法主義」と呼ぶべきもの。

 国際機関・国際人権団体の態度。欧州議会と欧州評議会は北欧モデルを勧告。
イクオリティ・ナウ、ヨーロッパ・ウイメンズ・ロビーも北欧モデルを支持。しかし、アムネスティ・インターナショナルとヒューマンライツ・ウォッチは完全非犯罪化を支持。国連では両潮流が激しいつばせり合いをやっているが、資金面で圧倒的な有利な非犯罪化推進ロビー団体(性産業および金満で「リベラル」な「慈善団体」はことごとく非犯罪化支持)が有利に進めている。各国でも激しい攻防が展開されている。
 
2.売買春合法化国の実態
 
 爆発的に需要が増大するとともに、ドイツのように巨大売春店が本格的に売買春産業に乗り出し、女性の身体を売買することがノーマルな行為になり、政治家も警察官も人権団体幹部も平然と買春するようになった。売春業者が立派なビジネスマンとなり、テレビや雑誌に登場し、政党(社会民主党や緑の党など左派政党の含む)の幹部と一緒に写真を撮ったり対談をしたりしている。

 爆発的に増大した需要を満たすため、国外から人身売買を通じて大量の外国人女性が性産業に吸収された(数十万規模)。とくに、ソ連・東欧が崩壊したことで、そこから数百万人の若くて貧しい女性たちが入ってきた。また一部は「代理母」として生殖機能が搾取された。ウクライナは商業的代理母制度が合法化された。その他、アジア諸国(とくにタイやフィリピン、中国からオーストラリアやニュージーランドに向けて)、アフリカ諸国(とくにナイジェリアからスペイン、イタリアへ)、中南米諸国からスペイン語圏へ、等々。

 買春者と業者が正当性を持つようになったので、被買春女性がいっそう従属的地位に陥り、現場で暴力と殺人がまん延するようになった。

 北欧モデルのスウェーデンでは性的被害・殺人は一件も起きていないが、合法化国ではどこでも大量の殺人事件が発生している。
 
3.売買春の合法化で利益を享受しているのは誰か
 
 買春者と性産業(人身売買業者も含む)であり、どちらも男性が圧倒的に支配的である。ドイツでは、毎日一二〇万人もの男が買春をしており、ドイツ人男性の四人に三人が買春経験者であり、また売春女性の売り上げの半分を業者が奪い取ることを合法化している。

 性産業はそれだけで存在する単独の産業ではなく、大規模な複合産業。性産業は世界的な成長産業となっている(オーストラリアでは毎年六%成長)、さまざまな産業がタイアップしている。

 ●観光産業●カジノ産業。カジノ産業と性産業は一体となっている。●不動産
業と金融業●美容整形産業と医療業界、多くの被買春女性は整形手術や豊胸手術を受けざるをえず、被買春女性の定期的検査は莫大な利権を生む産業。メンタルヘルスをやられる女性も膨大にのぼる。精神安定剤など合法ドラックでのもうけ●違法ドラッグ産業とアルコール産業。

 国家と自治体。ドイツでは売春登録者に対して一種の人頭税(歓楽税、一日二五~三〇ユーロ)や各種保険料を課しており、それが膨大な税収を生んでいる。性産業の誘致を積極的に行っている。

 「国家=性産業複合体」が一丸となって、各国および世界で性産業の完全自由
化を推進している。
 
 三井マリ子さんは一九七〇年代から二〇二〇年までの年表によって、ノルウェーの買春禁止法の動きを説明した。

 一九七〇年代に、「女は売り物ではない」、「ポルノは理論で強姦は実行」と大きな運動が起きる。一九七八年、人口五〇〇万人の国で二万人が国際女性デーに参加。一九八六年首相、内閣四〇%が女性に(世界で初めて)。

 二〇〇八年 左派中道連立政権(労働党、中央党、左派社会党)が「Sex 
Buyer Law」可決。①性的サービスを売ることを罰するのではなく保護する②ノルウェー国内外で、性的サービスを買うことは違法③直接・間接にかかわらず性的サービスを売る人から利益を得、場所を提供することは違法④性的サービスの宣伝は違法など。二〇一七年中道右派政権は共犯罪化モデル(新しい合法主義)にしようとしているが議会で少数のため改正されていない。
  
 
 次に、キャロライン・ノーマさんが合法化されたオーストラリア社会がどのよ\うに変化したのかを明らかにした。

 売買春が合法化されたり非犯罪化されたりすると、売春は単なる仕事になる。

国全体、その政府の中心部にまでそういう考えが浸透している。政府は買春によって受ける精神的被害・身体的暴力・孤立化・麻薬とアルコール依存などに取り組む施設や福祉計画を作らなくなり、予算負担が軽くなる。

  性産業の看板・広告があちこちに掲示されるようになり治安が悪化した。性犯罪にかかわる殺人事件などが増大した。国内性産業従事者の三〇~五〇%はアジア系の女性だ。彼女たちは人身売買被害者ではなく「移民労働者」として政府には認められている。欧州議会が北欧モデル政策を正式にとったことは、ヨーロッパ全体の変化を推し進めることになる。歴史上初めてヨーロッパで買春者が性差別の暴力加害者であるという提言がされた。これは本当に歴史的出来事だ。
 
 この提起の後、参加者での意見交換が行われた。

 「森田さんの提起で、いかに性産業の合法化が社会の根源まで変えてしまっているか、一大成長産業となり、女性を食い物とする非道な社会が形成されているかが分かりショックだった。こうした流れとどう立ち向かうか。性産業の規模では一位中国七兆円、二位スペイン二兆六千億円、三位日本二兆四千億円だ」。

「どうしたら、男性による女性への差別をなくせるか、何をしたらいいのか」という問いに対して、北欧モデルをとったスウェーデンは買春率が一%に減り、合法化したドイツは男性の四人に三人が買春するように劇的に増えた。日本でも北欧モデルを導入することの重要性が提起された。

 また、日本においても、困難な問題を抱える女性の支援のため法案が中間まとめとなって論議されていることが紹介され、今後その中身を勉強会のテーマとすることが話し合われた。次回学習会一二月一九日土曜日、午後一時半、渋谷勤労福祉会館予定。

(M)