配信:喜多幡講座講師:喜多幡佳秀さん(ATTAC関西グループ)

 10月16日、アジア連帯講座は、全水道会館で喜幡多佳秀さん(ATTAC関西グループ)を招き「11月大統領選挙 ~ 分裂するアメリカ BLM運動と社会運動、左派は今」をテーマに公開講座を行った。

 11月大統領選挙に関する米メディア各種世論調査では民主党のバイデン候補の優位が報じられている。トランプは、劣勢ばん回に向けてコロナウイルス対策による郵便投票に対して「大統領選で郵便投票が広範に導入されれば、歴史上、最も不正確で詐欺的な選挙になるだろう」「選挙で不正が行われれば辞めない」と言い出している。迷走・流動的な大統領選をいかに分析し、次の局面を見いだすのか。

 講師の喜多幡さんは、米国の労働者階級と左派の方向性を問題提起してきた。その柱は、MeToo、ブラック・ライブズ・マターなどの新たな運動、民主党内サンダース議員支持勢力と左派州議員などと連携しトランプの再選阻止の陣地をひろげていくことであり、この闘いは同時に資本主義の危機に対する対案を掲げる政治勢力の登場を戦略的に準備していくことであると強調してきた。

 講座では最新のトランプ派・極右グループの動向、米左派情報の紹介なども含めて問題提起した


喜多幡さんの講演 

(1)11月大統領選挙はどうなるのか?

 11月3日投票の大統領選挙を前に、米国では、どちらが勝つかよりも、バイデンが勝利した場合にトランプが結果を受け入れるかどうかが最大の関心事となっている。何が起こるかわからない。すでに異例の事態が起こっている。トランプは、大統領選挙の結果を受け入れない可能性を示唆し、武装した極右勢力の行動を容認し、メディアを動員している。

 トランプ政権の継続は何を意味するか? 次の四年間、アメリカ社会の分裂とファシズムへの動きに決定的に弾みがつく。大統領の権限の無制限の拡大、国際社会の分裂、国際機関や条約からの離脱が既成事実となる。その一方で米国とイスラエル、インド、英国、オーストラリアによる新たな枢軸(国連・国際機関の空洞化)が軍事的緊張と偶発的戦争の危険性を一層高める。「宇宙戦争」、サイバー戦争、小規模核兵器の実用化が現実の脅威となる。ただし後者は民主党政権の時代から始まっていたことに注意しておかなければならない。

 多くの人たちが懸念していることは気候危機、感染症対策への決定的打撃、白
人優位主義と移民・黒人への差別・抑圧・排除の拡大だ。ただし、この点でもは民主党政権が頼りになるわけではない。

特異な選挙制度と極右勢力の動き

 前回(2016年)の大統領選挙では、民主党のクリントン候補が300万票近くの差で多数の支持を獲得していたにもかかわらず、獲得した選挙人の数で上回るトランプの「圧勝」となった。2000年の大統領選挙では、激戦となった3つの州で双方が勝利を主張したため、開票作業のやり直しや裁判所での審理のため35日間にわたって空白が生じた。

 その背景には、独立戦争後の憲法制定時に、普通選挙導入にあたって南部の奴隷主への妥協として導入された選挙人制度が、「奴隷解放」の後も温存されてきたという事情がある。この制度の問題は常に指摘されてきているが、二大政党にとっては第三の政党を事実上排除するために都合のよい制度であり、憲法に規定された制度であるため、修正には手続き上のハードルも高い。

 有権者登録制度にも問題がある。全国的な有権者名簿というものが存在せず、
投票するには自分で選管に登録して有権者の資格を得なければならない。登録制度は不正を防止するために設けられたものだが、黒人や中南米出身者、貧困層の投票を抑制するために利用されている。

 今回の選挙では郵便投票が焦点になっている。2016年大統領選では郵便投票の
割合は20.9%だったが、今回はコロナ感染の影響もあり50%を超えると予想される。これがなぜ問題になっているのかは後で述べる。

 そのような背景の下で、今回の選挙がどうなるのかをめぐって、気になる動きが続いている。

 4月以降、テキサス、イリノイ、フロリダ、テネシー、インディアナ、アリゾナ、コロラド、モンタナ、ワシントンなどの州でロックダウン解除を求める集会が開かれ、その中で極右派の動きが目立ってきた。4月30日にはミシガン州ランシングで「自由のためのミシガン連合」などのグループが武装デモを行い、州議会前を一時的に占拠した。

 5月下旬からブラックライブズマター(BLM)の運動が全国に広がる中で、トランプは、オレゴン州ポートランド、ウィスコンシン州ミルウォーキーなどのBLMのデモ鎮圧に連邦の治安部隊を派遣し、弾圧をエスカレートしている。それに呼応して「第二の南北戦争」を呼びかける「ブーガルー運動」などの武装勢力が活動を活発化させる。このグループは6月に、北部カリフォルニアでデモ警備中の二人の警察官を襲撃・殺害した。これは暴力事件によって騒乱状態を作り出すことを目的とした挑発行為だったと考えられる。

 決定的な転機となったのはトランプが7月19日放送のFOXニュースのインタビューで、選挙に敗れた場合に選挙結果を受け入れるかという問いに対し、「単純にイエスとは言えない」、「選挙で不正行われれば辞めない」と言明したことだ。その後もトランプは同じ趣旨の発言を繰り返している。民主党が郵便投票を通じて大がかりな不正を行うという根拠のない情報を拡散して、とくに激戦区での投開票の「監視」、つまり妨害と有権者への威圧を扇動している。

 さらに、郵便投票の業務を委託されている郵政公社が7月末に各州の選挙管理委員会に「投函された票が期限までに届かない恐れもある」と警告する書簡を出した。6月に公社総裁に就任したルイス・デジョイはトランプへの巨額献金者だ。彼は郵便投票期間中の人員の配置や業務時間の延長の措置を拒否して、意図的に郵便投票の妨害をはかってきた。

 8月19日、トランプがテレビインタビューで極右グループQアノン(謀略論者で、トランプを救世主として崇拝)を擁護する発言をした。

 8月25日、ウィスコンシン州のBLMのデモ(同23日に起こった警察官による黒人の殺害への抗議)で、白人のティーンエージャー(武装グループのメンバー)が発砲、デモ参加者2人を殺害、1人に重傷する事件が発生している。

 9月29日、FBIが「今から1月20日(大統領就任式)までの間、白人優位主義グループによる暴力の脅威がある」とする報告書を発表。同日、トランプは「プラウドボーイズ」などの武装グループを擁護する発言をした。

 10月8日、FBIがミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致計画を阻止し、13人を逮捕したと発表した。トランプは「ウィトマー知事打倒、ミシガン州の奪回」を呼びかけていた。

 逮捕されたクロフトは「愛国運動」のリーダー。ソーシャル・メディアを通じて扇動していた。同州ではミシガン民兵隊 (MMC、一九九四年に元空軍幹部のノーマン・オルソンが創設)、ボランティアを組織し、軍事訓練を行っている。ピーク時は一万人以上、現在は数百人だと言われている。

 「空位の79日間」

 大統領選投票日の11月3日から1月20日にワシントンで大統領就任式が行われるまでの79日間は何が起こるかわからない。次の大統領が決まらない「空位の79日間」となるかもしれない。

 トランプ陣営は「不正防止」のために激戦区に五千人のボランティアを派遣すると威嚇している。開票結果に不服を申し立てるために弁護士の集団が準備を整えている。

 郵便投票は開票に時間がかかることから、即日開票分は激戦区を除く州の開票結果が先に発表されることになる。この時点では共和党が先行することが多い。激戦区の開票結果はまだ確定しない。だからこの時点で、つまり投票日の深夜にトランプが「勝利宣言」を出し、翌日から支持者たちが街頭で祝勝のパレードを繰り広げ、それを背景に残った州の開票あるいは開票結果の発表を妨害する可能性、その際に何らかの暴力的衝突を引き起こし、それを口実として強権的な措置を発動する可能性、バイデンがそのような事態を回避するために何らかの交換条件を付けて「敗北宣言」を出す可能性。さらに、選挙の結果に関わりなくトランプの任期は1月20日までであり、その間に権力を悪用することは間違いない。

 トランプ再選を阻止するには、①大差で敗北させることと、②街頭での闘争、非暴力の抵抗が必要だ。後で述べるように、米国の左派や社会運動は、あらゆる可能性に備えて、さまざまな方法で広範な大衆を動員しようとしている

トランプの4年間

 トランプ政権の下での政策上の変化を見ておこう。

そのポイントは、①金融、軍事産業、エネルギー産業の影響力が圧倒的優位にあることは変わらない ②米国経済の衰退、国際的地位の後退は加速 ③中東政策はオスロ合意の事実上の廃棄。イスラエルによる併合とアラブ諸国との関係の「正常化」(パレスチナ問題を否認する「最終解決」への動き)、イランとの核合意の破棄・封じ込め ④「新冷戦」・・・中国との対決路線:双方に相手の出方を見ながら「レッドゾーン」の見極め/確定へ(ギリギリまで挑発)。 ⑤対ロシア宥和政策と対北朝鮮政策は、民主党および共和党内での抵抗によって挫折 ⑥NATOなどの同盟関係の変調などが上げることができる。

 トランプ政権の下での社会の変化については、次のことが特徴である。「フェイク」が広範に受け入れられ、トランプの強力な支持基盤となっている。トランプは社会を分断し、自らの支持基盤にだけ訴えかけるという政治手法を使いながら、大衆の中に「強いリーダーシップ」への期待を引き出していった。

 トランプ政権の政策に対抗して気候危機、移民問題、コロナ感染等では州政府が独自の政策を打ち出してきた。

 注意しなければならないのは、これらの事態が起こっているのはトランプ政権の特異性ではなく、一過性のことでもなく、米国社会の変化に根拠があるということである。それは世界的な現象でもある(ドテルテ、モディ、ボルソナロ、ネタニヤフ、ジョンソンなど)。ファシズムが現実の問題となっている。

 しかし、このようにファシズムが台頭する条件は、民主・共和両党の新自由主義政策や移民規制、人種差別的な警察活動の容認等によってもたらされ、トランプ政権の下で加速したのであると言える。バイデンが勝っても、この条件が解消するわけではない。

 それではこの4年間、社会運動にはどのような変化があったのか。そのポイントを簡単に列挙しておく。

①  2017年1月の女性マーチがあった。全国で4~500万人が参加。その後は運動内部の論争(中絶の選択権をめぐって、イスラム系グループの「反ユダヤ主義」的発言をめぐってなど)があり、後退。

  だが2020年1月は移民の権利、クライメートジャスティス、生殖に関わる権利をテーマに開催した。10月17日には最高裁判事の任命に反対を掲げたマーチを計画している。Me Too運動は持続的に取り組まれている。

 ②移民の権利をめぐって、地域レベルでの運動へと発展した。 

 ③労働運動は、教員、物流・倉庫(アマゾンなど)、医療、清掃、小売り店など、とりわけ女性、マイノリティーが多い、組合員数は回復の兆しがみえる。

 ④若者の運動は、移民、奨学金、気候危機などをテーマに諸グループが登場している。
 
ブラックライブズマター運動の歴史的意味

 ブラックライブズマター運動の背景としては、警察官による暴力、日常的な監視と不審尋問や冤罪、閉塞感などがある。「黒人の命だって大事なんだ!」という叫び・・・広く共有されている。

 ここでブラックライブズマターの訳語について、私の意見を述べておきたい。このスローガンを黒人が叫ぶ場合は「黒人の命も大事」と訳しても特に問題はない。非黒人が叫ぶ場合、「も」には抵抗があるが「黒人の命は大事」では意味不明。被差別の当事者の叫びであることにメッセージの強さがあり、当事者性を弱めて一般論的な議論に回収してしまうような訳語は避けるべきだろう。そういう観点から、私はとりあえずは「ブラックライブズマター(黒人の命を守る運動)」と表記しているが、脈絡によって、使われている脈絡に想像を馳せることが大事だと思う。

 現在のブラックライブズマターの叫びは、公民権運動以降も変わらない人種差別に対する怒りの爆発であり、新たな歴史の開始である。警官の暴力によって命を奪われた青年への同情、映像を目にした時の衝撃、警察官への怒りから、事件を隠蔽しようとする警察そのものへの怒りへ発展している。「警察の解体、警察予算の削減」の要求は、改良ではなく革命!を意味している。

 BLMは非暴力を掲げている。一部には商店の襲撃・略奪などの暴力的行動があったことが報じられている。その一部は挑発分子によるものだが、多くは自然発生的なものだ。活動家たちが必死で防ごうとしても防げないほど、人々の怒りが蓄積されてきているのだ。襲撃されたのは警察署や警察車両以外では多くの場合、警察と連携して黒人を差別し、監視してきたスーパーなどであり、コミュニティーを侵略し、破壊してきたことへの正当な怒りである。

 BLMを支持している人たちは、警察で取り締まるよりも、学校や住宅に予算を出せば犯罪や麻薬は減ると主張してきた。治安や財産よりも命と尊厳が大事なのである。

 当初は、「警察の解体」はともかく、警察官の行動への規制や予算削減は多くの民主党市長も受け入れる事態へとなっている。さらにミネアポリスやシアトルでは一時的に警察官がデモ隊との衝突を避けるために州庁舎前から退去するほどだ。

 このようなプロセスを経て、白人優位主義者への反発抗議運動が一連の白人優位主義のモニュメントの破壊に向かったとき、「反革命」が始まった。トランプは「アンチファ」との「テロとの戦争」を呼びかけ、連邦の治安部隊(国境警備隊など)を動員し、民主党市長によって事態の収拾へと至った。その後は武装した白人優位主義者たちが街頭を跋扈する局面に入っている。これはアメリカの建国以来の歴史を問い直し、根本からの変革を迫る新しい局面の始まりである。

 「民衆のアメリカ史」の著者で政治学者のハワード・ジンは、白人優位主義の観点から語られてきた米国の歴史、特に建国や奴隷制廃止に関連して称揚されてきた「自由と平等」や民主主義が、黒人への差別と支配を組み込んだ階級支配を覆い隠すものであることを容赦なく暴き出した。彼は「・・・上流階級としては、中産階級に忠誠を誓わせなければならない。そのためには、中産階級を引きつけるようなものを差し出す必要があるのだが、自分たちの富や権力をそこなうことなく、そうする方法はあるだろうか。1760年代から70年代にかけて、支配者たちはまさにぴったりな道具を見つけ出した。それは<自由と平等>という合言葉だった。この言葉が、イギリスに反旗をひるがえすのに充分なだけの、上流階級と中産階級の白人を団結させていくことになる――しかも奴隷制も社会的不平等も終わせることなく」と述べている(ハワード・ジン「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年)。

 トランプは九月中旬に、「ホワイトハウス・アメリカの歴史会議」で、「左翼はアメリカの歴史を嘘とデタラメで歪め、否定してきた」として、ハワード・ジン(「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年))と「ニューヨーク・タイムズ」の「1619プロジェクト」を名指しで攻撃した。学校での「愛国教育」の必要を強調した。(「アトランティック」紙、9月24日付)

 米国の建国(独立革命)の歴史と「建国の父」たちの物語は「神話」となったが、BLM運動は白人優位主義との闘いの中で、この神話の解体に手を付けた。しかも白人優位主義者たちが疎外感や将来への不安を強め、ナショナリズムを拠り所にしようとしている時にである。

 ハワード・ジンが語っているように、黒人への差別は建国以来の階級支配の柱に据えられていた、したがってBLM運動はそのような階級支配を暴き出し、打倒する闘いを目指しているという点で、公民権運動の限界を超え、未完のアメリカ革命(民主主義革命)の完遂に向けての歴史的な一歩を踏み出した。支配階級には「黒人奴隷と貧困白人とが結束して、第二のベーコンの反乱を起こす」(同書)という恐怖が蘇ったに違いない。

 もし2020年大統領選挙におけるトランプが勝利するならば、そのような闘いに対する手痛い反革命となるだろう。

 11月大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の状況

 大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の立場について、主な特徴を簡潔に列挙しておく。

 ①民主党内の左派とサンダースの支持者たちは、バイデン支持だ。バイデンを通じて国民皆保険制度、グリーンニューディールなどの要求の実現を目指している。

 ②DSA(アメリカ民主社会主義者党)は、基本的には(多数は)バイデン支持だ。戦術的に「まずトランプを阻止し、それからバイデンと対決する」と設定し、民主党内左派にとどまる。

 ③緑の党は、H・ホーキンスが立候補した。H・ホーキンスは、「トランプを追い出さなければならないが、バイデンに任せておいては気候変動も人種差別も期待する進歩は実現しない。つまり、バイデンは気候変動否定論者と同じような行動をしてきたし、国民皆保険制度に関する政策を受け入れなかった。われわれがバイデンの政策を受け入れれば、バイデンが当選した場合にも彼に政策を受け入れさせるのは難しい。

 前回、緑の党が立候補をやめていたらクリントンが勝っていたという根拠はない。緑の党がメディアから無視されているのは不当。緑の党への票は反トランプの票であって、トランプを利するものではない。有権者にとって環境問題はもっとも重要な問題のはずだ。」と語っている。(「ニューズウィーク」とのインタビュー、2020年9月11日)

 左派の間での議論は、常に二つの議論が繰り返されてきた。

 一つは「より少ない悪」(民主党への投票を呼びかける)という考え方への批判であり、「第三の候補」の挑戦という主張もあった。この点ではSWP(社会主義労働者党)の独自の闘いや、2000年の消費者運動家ラルフ・ネーダー氏(288万2955票、2・74%)の取り組みがあった。緑の党は2004年以降、一貫して独自候補を立てて健闘している。

 共和党と民主党はどちらもブルジョワ政党であって、政策も変わらないし、ど
っちが政権を取っても何も変わらないというのは確かに現実である。しかし、この間の大統領選挙、特に2004年以降の選挙では、政策上の違いよりも、アイデンティティー・価値観・「雰囲気」の違いなどに着目すべきだと思う。「トランプに勝たせてはならない」という意識は重要である。

 同時に実施される両院の選挙、とくに下院選挙での左派議員(民主党)の勝利との連動や、独立的政党(ワーキングファミリー党など)、ローカル政党との連動は一定の成果を上げている。

 もう一つの議論は「労働者の党」あるいは「社会主義を掲げる党」の建設をどう展望するのかである。この点ではこれまで多くの挑戦と失敗があった。労働者階級や労働組合の受動性(保守性)があり、一方で黒人運動やフェミニズム運動からの急進的な要求に応えられていないという問題があった。

 そのような状況の中でサンダース・ブームとDSAの登場は、新たな可能性と
評価していいのではないか。

 連動して若者の間での社会主義への関心が高まっていることも、その現われだ。ただし、その内容は「グリーン・ニューディール」(資本主義の改良)であって、資本主義の廃絶がイメージされているわけではない。社会運動との結びつきが重要であり、DSA内の「分岐」も試行錯誤の一つの段階として考えるべきだろう。古い議論を繰り返すのではなく、ここから始まるということが重要であり、「何
が始まっているのか」を理解することから始めるべきだろう。

 最後に若者のグループについて紹介したい。ウエイブ配信されている主なグループをピックアップした。各グループの主張等の詳細は省略するが、直接、ブログをチェックしていただきたい。

①  Dream Defenders(警察官の暴力と人種差別に抗議、2012年) 

②  March for our lives (銃規制、2018年) 

③  Sunrise Movement (気候変動対策・再生エネルギー、2017年) 

④  United We Dream Political Action Committee(移民の青年のグループ、28州に100のグループ、40万人)など100以上のグループがProtect the Result Coalitionを結成(9月25日)。投票の権利を守るための行動を呼びかけ、投票日の動員などをブログ#COUNT ON USで発信している。

 参考までに「#COUNT ON USのよびかけ文」〈https://wecountonus.org/〉 を紹介しておく。

 「今秋、私たちの世代はトランプを打ち負かし、この国の変革を始める力を持っている。私たちには私たちの力が頼りだ。私たちは移住者の保護を勝ち取ったドリーマー(夢見る者)だ。私たちはNRA(ライフル協会)に挑戦した子どもたちだ。私たちの世代はブラックライブズマターを全米の鬨の声にしたし、グリーンニューディールを優先的な政治課題にしてきた。ドナルド・トランプと彼の大金持ちの仲間たちは自分たちが負けることを知っている。だから彼らはわざと私たちを引き裂き、私たちの声なんか関係ないと思いこませ、選挙結果を盗もうとする企みから私たちの目をそらせようとしているのだ。私たちは彼らを止めるために結集しようとしている」。


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