韓国医師すべての中国人を阻もう? 拡散する見当違い

ウ・ソッキュン人道主義実践医師協議会共同代表へのインタビュー


毎日新型コロナウイルス関連のニュースが更新され、国全体の耳目がこの感染症に注がれている。その中で広がっている不安心理をもとに「中国人入国を源泉封鎖しよう」という主張も広がった。漠然とした恐怖ではなく、科学的根拠に基づいて、事態の本当の原因を確かめてみる時だ。現職医師でもあるウ・ソッキュン人道主義実践医師協議会共同代表に会って、この事態の原因からムン・ジェイン政府と中国政府の問題点まで話を聞いた。



Q 新型コロナウイルス事態が続いているが、「中国人入国を食い止めろ」とい
う感情が広がるなど、中国人に対する反対や嫌悪も大きくなっている。現職医師でもある立場から、科学的根拠に基づいて見ると、今拡散している「中国人拒否」の動きについてどう考えていますか。


毎日状態が変化しているが、現在の中国の資料を見ると、ウイルスが他の地域に伝播しているのは、主に武漢の人々の移動によるものである。湖北省を除けば、地域社会の感染は限定的であり、入国禁止を、中国の他の地域にまで拡大するのは、科学的根拠がないと思う。また、現在、日本やタイ、シンガポールに行ってきた後、感染された人がいるが、それでは、このすべての国にも入国禁止措置をとるだろうか?

そして、今回の事態について、中国人の食習慣への批判も多く出ているが、このウイルスがコウモリから直接移るわけではない。コウモリを食べて生じたものではない。SARSやMERSのような中間の媒介の役割をした何かがある。例えば、ヘビの話もあるが食べるために飼われているヘビや生きている山の熊の胆汁を飲むように、一部の韓国人もしていることだ。食習慣に原因を求めるのは科学的ではない。

このような主張はむしろ真の原因を覆い隠すことになる。真の原因は、中国の貧富の格差と公衆衛生の問題である。現在、中国は米国との覇権競争でものすごいお金を空母など軍備に注いているが、それに反して、公共医療や公衆防疫、健康保険システムは、非常に脆弱である。例えば、韓国の医療民営化論者が中国には営利病院が多いとうらやむほどだ。今回の事態は、市場化‧営利化された医療システムがどのように大きな災害をもたらすことになったのかを示すものである。批判の焦点は、普通の中国人民にではなく、中国政府に向けなければならない。

Q ムン・ジェイン政府が武漢に住んでいた韓国人を輸送してシンチョンとアサンにしばらく隔離措置することで、地域政界の反発などもあった。同胞たちの受け入れを「感染拡散」と規定して非難する一部の政治家の行動はむしろ不安と恐怖、さらに嫌悪と排除を助長することになるのでは。

今回の事態について、北朝鮮が国境を閉じたが、北朝鮮がそのような措置をとるしかないのは、病院や陰圧設備のような医療インフラが非常に不足しているからだ。北朝鮮は、SARSの時も、国境を封鎖した。

事実、武漢から入国する場合であっても、感染の症状がなければ隔離対象ではな
く、監視対象であるだけだ。ところが、あまりにも不安感が激しくて政治的理由などを考慮して隔離される。

もちろん地域住民の反対を利己主義だと批判だけすることは難しい。現代感染症への対処で非常に重要なのが「危険疎通と地域社会の参加」だ。危険疎通の最初がまさに地域社会の恐怖や不安を尊重することだ。地域住民に対して「あなたがたは無知だ」という態度ではだめだ。不安を尊重しながら説得する過程が必要で、政府が地域住民を決定過程に参加させ、しっかりと説得しようとする過程を踏まなければならない。一方、地域社会の経済的損失も発生することがあるが、住民が一緒に参加して例えば政府に補償を求めることができる経路などを用意しなければならない。「無条件でだめだ」態度は、科学的根拠はないが、だからといって「無条件で行え」とすることも困難である。住民の不安を解消することができるように十分に説得しなければならない。

Q 公共医療の観点から見て、感染症への対処で、過去のウイルス事態以後良くなった点はありますか。

現在、韓国で国家指定の陰圧病床が198病床ある。ところが、この程度では感染症に適切に対処することは困難だ。伝染病が発生した場合、患者のほか、密接接触者や感染者ではないが、感染が疑われる患者が多く生じるが、これらを陰圧病床に移して検査しなければならない。

この陰圧病床を増やしたのがMERS事態以後のパク・クネ政府の時だった。ところが、その後は増やさなかった。パク・クネ政府の時、医療法施行規則を改正し、2018年までに300病床相当の陰圧病床を備えるとして、100病床相当の陰圧病床を一つずつ設置することにした。ところが、陰圧病床を新たに建てるのではなく、移動型にすることもできるようにしたが、実質的に使えない陰圧病床も多い。市道の指定陰圧病床の現況が数百と出ているが、そのうちのどれだけ正しく使うことができるのかを明確に知ることはできない。

そもそも民主党の公約では中央感染症専門病院と圏域別の感染症専門病院、地域拠点公共病院を立てるということであった。しかし、この約束芽忘れられた。この政権に入ってから公共病院は一つも建てられていない。この政権が前政権よりもそれでも良いのは感染者の移動経路などの情報をすべて明らかにするということだ。しかし、公共医療インフラを一つも増やしていない。振り返ってみると、政権毎に伝染病が一つずつ切迫しているが、ノ・ムヒョン政権時のSARS、イ・ミョンバク政権時の新型インフルエンザ、パク・クネ政権時のMERSは、今のコロナウイルスまできた。このような状況なのにどうして公共医療インフラを増やさないのか分からない。

公共医療インフラを増やすお金がないというのは嘘だ。たとえばウイルス事態でGDPが約0・25%減少した。これだけでも数兆ウォンに達する。そのお金を公共医療インフラに使えば、1年に1兆ウォン当てても公共病院をいくつかずつ建てることができる。公共病院拡充や新設の問題が出てくれば、常に病床が残らないかは、問題が提起される。それでは、逆に聞きたい。病床が残ると言うならば私立民間病院病床はなぜずっとやりたいように黙って置いておくか? 公共病院を建てるときにのみ「病床が残るのに、なぜ作るのか」という話をする。

何よりも、この政権は、保健医療分野をさらに市場に任せる政策を展開している。
あらゆる規制緩和と遠隔医療そして、大学病院の営利技術持株会社設立を通じた事実上の大学病院営利化まで推進する。さらに、データ3法を通過させて、健康関連の個人情報を、民間の保険企業に渡して健康管理サービスを民営化するガイドラインを作るなど、民営化一色である。公共医療に投資する考えはまったくないし、自分の公約も無視している。パク・クネ政府の時の医療民営化政策を創造経済という名前で革新経済だと名付けて、バイオヘルス3台を投資分野としながら、より洗練させて進めている。


ムン・ジェイン政府も人種主義的政策から自由ではないようで中国人留学生登校停止措置や大学開講1カ月延期勧告措置がそれだ。これは、他の中国人入国者に比べて同等でもなく、医学的、科学的根拠もない措置だ。寄宿舎の別途使用や寄宿舎の使用禁止のような大学当局の措置は言うまでもない。人種差別的偏見に対する政府の屈服であり、それ自体が、中国人に対する偏見を煽る。人種的嫌悪自体も問題だが、これはまた、市場化された医療システムや私たちの社会の公共医療の不十分さのような本当の問題を覆って、まるで中国人が新型コロナ感染症(コロナ-19)の社会的原因であるかのように見せる効果を生む。

Q 政府と専門家は、共通してマスクの着用や手の洗浄など、主に個人衛生に気を使ってもらいたいと強調している。ところが先日、公共運輸労組が声明を通して提起したように、いざ人が集まる交通機関や公共施設で働く労働者の健康と安全のための措置は、適切に講じられていないようだ。
ある労働者が主に危険に多くさらされているかどうか、この労働者の安全のために必要な措置と国家に対する要求は何でなければならないのでしょうか。


病院では非正規職が非常に多い。一部の国立大学病院では、正規職化がされたが、まだ残っている非正規職にも正社員と同じように保護具を支給しなければならない。もう一つ、正規職と非正規職の差別をなくし有給病気休暇を保障しなければならない。

公共施設や社会サービスに従事している労働者も同じだ。正規職でも非正規職でも関係なく、自分を防護するために手洗いが正しくできるようにスペースを用意しなければなければならない。マスクの場合、医学的効用性については議論があるが、労働者がマスクを必要に応じて使えるように供給しなければならない。

何よりも、病院をはじめとするでんな所でも、感染症の対処で非正規職労働者への差別があってはならない。先に有給病気休暇を保障しなければならないと言ったが、特に公共でも民間でも人を相手にするサービス分野の従事者にはとても重要な問題だ。多くの人に会って接触せざるを得ない、労働者が感染源になれば手に負えなくなる。この労働者に咳のような症状が出た場合は、病院に行くことができるように有給病気休暇がとれなければならない。また、学校休校や休園など家族の面倒が必要な場合、有給休暇が必要である。有給病気休暇保障が重要なのだ。


病院の場合には、人材不足も深刻だ。特に陰圧病室の場合、熟練人材が必要だが、あまりにも不足している状態だ。感染病室に勤務する人々は、ほとんどが過労死することになる。この点でも、公共医療人材が非常に不足している点を必ず指摘しなければならない。かりに地域に公共医療施設を建てる場合でも、今は行くべき人材がいない。すべてがソウルに集まるからだ。


公共医療人材を拡充するには、少なくとも国立公共保健医科大学はもちろんのこと国立医大や医療系列大学に公共人材育成のために定員を30%は増員しなければならない。そして、これらに無償教育を提供しながら、地域の公共医療機関に10年以上勤務するように義務付ける方法も考えられる。このように人材も拡充が求められている。現在例えば予防医学とか感染内科のようなものは開業も難しくお金もかかるので志願者が多くない状況だ。私立(民間)病院では、お金がないので募集もせず訓練もさせない。

ところが、韓国の公共医療病床は10%余りしかない。OECD平均の73・5%
(2018年公共医療資料集)の7分の1にもならない。このように、公共医療施設と人材を増やすことを考えていないから、残るのは労働時間を増やし延長勤労をさせることだけである。今、労働部は防疫と治療関連業務の特別延長勤労申請が入ってくるとすぐにそれを措置しようとするが、既にこの労働者たちは延長勤労をするしかない。前述したよう政権毎に伝染病が突発しているが、事前に備えながら、公共医療‧防疫‧検疫の人員を増やさなければならない。今人材が足りず、軍の人員を投入しているが、それでは軍の医療は誰が責任をとるのか? これは上手なやり方ではない。

Q 過去にも多くの人命を奪った伝染病があったが、2000年代以降だけでも、SARS・鳥インフルエンザ・MERS・エボラ、そして今の新型コロナウイルスまで、短い期間に強力な伝染病が相次いで発生しているようだ。最近の伝染病の発生とその対処における利益中心のこの資本主義システムがどのような影響を及ぼしているか話してください。

韓国から武漢まで通常3〜4時間程度で行くことができる。それほど資本主義はグローバル化を通して、地球を、単一の生活圏のように作った。問題は、それにふさわしい防疫体系や公衆保健システムが備わっていないことだ。今回の事態も中国の不十分な公衆保健システムの結果が韓国にいる私たちにも影響を及ぼしているのではないか。国家間の格差もあり、中国の次元で見ても、その内部の格差も深刻だ。農民工は最初から健康保険から排除されたり、中国政府は、公衆衛生に投資していない中で、営利病院が雨後の竹の子のように生じている。中国の資本主義の問題が結局、韓国にまで直接影響を与えているのだ。

特に中国が公衆衛生には背を向けて、空母、あるいは宇宙戦争のような軍備に莫大な資源を注ぎ込む米国との覇権競争が重要な要因として作用している。それらによる軍事的緊張が世界的にとても多くの資源を浪費することになる。その過程で、公共医療や社会保障は、簡単に無視され、結局この世界資本主義の問題が継続的な新型感染症に脆弱な世界を作り出している。

また、環境破壊で人間が野生動物と接触する機会が多くなって、資本主義的工場式畜産業で豚や鶏などの遺伝的多様性が排除された動物でのウイルス変異が容易に起こり、急速に広がる異常な条件が揃っている。ここに移動手段の発展とでたらめな公衆防疫システムの問題が重なったことがパンデミック発生の真の原因である。

一方、製薬会社も資本主義体制の問題を露出する。例えば今、新型コロナウイルスに対応するため、既存の開発された抗ウイルス剤を投与しているが、この薬がかなり高い。製薬会社は、この特許を握って莫大な利益を享受する。すぐに人を治療するために薬を使わなければならが、特許があるために政府が勝手に作ることもできない。今回も韓国政府は、コロナウイルスに経験的に使用する抗ウイルス薬(エイズ治療薬として知られている)カルレトゥラを生産する多国籍製薬会社アボットなどに会ったことが分かっている。


Q 最後に、今回の新型コロナウイルスの事態と関連して強調したい点があれば一言お願いします。


中国人を憎むのではなく、中国での民衆の苦痛を見なければならない。今回の事態で、中国資本主義の素顔が明らかになった。米国とともに「G2」と呼ばれるが、実際にはその内部では、医療システムも公衆防疫も目茶苦茶だったし、民主主義も機能していなくて、中国政府は、事態初期に隠すのに汲々となってこれだけ拡大させてしまった。中国が自ら主張するように、社会主義であれば、最も民主的でなければならないが、むしろ非常に閉鎖的ではないか。中国の民衆の苦痛をどのように等しく解決するのか心配する時ではないかと思う。

キリスト教の黙示録を見ると、世界の終末の時期に災いを呼び起こす4人の奇士が登場する。まさに疫病、戦争、飢饉、死である。今日を見ると、気候の危機がドック打ち、今すぐ見られるように、病気の危機もある。気候危機は、食糧危機につながるものであり、戦争の危機はいたるところに存在する。そのためローザルクセンブルクが投げかけた問い、すなわち「前近代主義か社会主義か」という問いが浮かび上がる。私たちは、資本主義を超えて変革を苦悶しなければ、人類文明が危機に処するのがますます現実化されるのではないか。今のような伝染病の症状について、自然科学的にだけで眺めるのではなく、資本主義で、なぜこのようなことが度々発生するのか問われなければならない。この資本主義システムが果たして持続可能なのかという問いを投げ続けている。

*インタビューまとめ:イ・ジュヨン(機関紙委員長)

(社会変革労働者党「変革と政治」100号より)