_20191101_192004(画像はロジャヴァ・ダークでのクルド民衆の抗議デモ。スローガンは「"トルコISIS"による占領反対」。10月24日)

クルドへの裏切り トランプのデタラメさ際立つ

デイヴィッド・フィンケル




帝国主義者をも 困らせる裏切り

シリアのクルドの人々に対するドナルド・トランプの不実な裏切りは、帝国主義には「長続きする友など一人もいず、利益への永遠の関心しかない」との昔からの格言に新たな命を与えている。確かに、クルドへの最終的な裏切りはほとんど不可避だった――それ以前に何度も起きたように――。しかし、トランプがそれを行った特別なやり方は、本当に人を驚かせるものだった。彼はそれを、ペンタゴン、国務省、「国家安全保障」スタッフ、主要な同盟者、あるいは彼自身の偉大かつ無比の知恵を除く他の誰にも相談することなく、トルコの独裁者で彼の相棒であるエルドアンとの電話会談直後にやったのだ。そしてもちろんそれは、今も展開するいくつもの形で、米国の国内的紛糾へと流れ込んでいる。

 私は次のように考えている。つまりわれわれは、トランプ―エルドアン電話会談の複製記録が「機密扱い」サーバーに保存されてきた、と相当程度疑うことができる、そしてその同じサーバーには、ウクライナ大統領のゼレンスキーに対する「見返り」の電話、また(われわれがこれまで学び取ったように)他の外国の指導者に対する同じようなものが、不正告発者や議会で調査に臨む者たちが知ることのできない形で安全にとどまるよう隠されている、ということだ。エルドアンが長く温めていたシリア北部への侵攻計画に危険はない、と彼が分かるようにトランプが手配を整えた、と明らかにすることは、不都合なことになるかもしれない。

気まぐれからたわごとへ

現在の件では、撤退し、クルドの諸部隊と非武装の住民を干からびるまで吊して放置することに、帝国主義的な物質的利益すらなかった。それはまさにトランプの気まぐれだった。

シリア北部の米軍は大きな打撃力とはほとんど言えなかった、ということを心にとどめよう。それは、トルコの進入を止めるワナの針金、そして「イスラム国」(ISIS)と戦っているクルド諸部隊に対する兵站/情報 支援としての、小さな存在だ(だった)。その撤退は、大口ツイートが自慢するような、米国の「終わりなき中東戦争」からの撤退、を意味するものではない。それらの部隊は故国に向かおうとはしていず、イラクや近くのどこかに再配置されるだろう。

事実が突きつけられるとトランプは、その侵攻がいくつかの明示のない「限界」を超えるならば「トルコ経済を破壊する」だろう、とわめいた。そのたわごとをまじめにとるものは誰もいない。

エルドアンであろうが、逃げまどっている何万人という市民であろうが、米国の欧州の同盟者であろうが、またその真空にどう動く可能性があるかを今じっくりと考えているシリアの政権やイランやロシアであろうが、さらにその復活の潜在的可能性が世界の首都で当然にも恐れられているISISであろうが、そうだ。

人間的犠牲があまりに大きい

トランプは彼のポストファクトのたわごとの中で、クルドはシリアの中でISISに対する戦闘を行ったということを認めたが、しかし彼らは「彼ら自身の土地」を守るためにそうした(もちろんだ!)のであり、「彼らはノルマンディーでわれわれを助けなかった」(一体何をいっているのか??)、と語った。

悲劇であることは、クルドの諸部隊に、また自由と自己決定を求めるその熱望とシリアの修羅場のど真ん中で彼らが築き上げた進歩的なロジャヴァ構想が今潰されようとしているその民衆に、物質的な援助と武器を提供する能力が世界の左翼にまったくないことだ。われわれがもっているすべては、米国と欧州がトルコ政権に緊急の懲罰的制裁を加えるよう求めるわれわれの声だ。

極短期的な見通しは、多くの反革命的な諸勢力――トルコ、イラン、ロシア、アサド政権、ISIS――間の残忍な対立だ。われわれは、その結果や諸々の死の大きさ、あるいは新たな難民危機を予想することはできない。一つの結果は、米国とその約束が再び信用されることは決してない、ということかもしれない。それはそれ自身一つの良い教訓であろうが、しかしその人間的犠牲はあまりに大きすぎるのだ。

▼筆者は、米国の社会主義組織、ソリダリティ発行の「アゲンスト・ザ・カレント」の編集者。(「インターナショナルビューポイント」2019年10月号)