配信:寺本講座講師:寺本 勉さん (どないする大阪の未来ネット 〈 どないネット〉運営委員)

 8月9日、アジア連帯講座は、寺本 勉さん (どないする大阪の未来ネット 〈どないネット〉運営委員)を講師に招き、「参院選・統一地方選の結果をどう見るか? ~大阪からの視点~」をテーマに文京区民センターで公開講座を行った。

 大阪で活動される寺本さんは、「どないネット」の活動を通して、「大阪都構想」、地下鉄・水道など の民営化、夢洲へのカジノ(IR)・万博誘致などに反対する運動にとりくみ、情報交流・共有のネットワー クを広げてきた。この間の経験から大阪府知事・市長選挙、参院選の結果分析を通して大阪および日本の政
治動向を浮き彫りにした。

 とりわけ参院選挙について2012~2019の国政選挙の得票数の推移を分析し、戦後二番目に低い投票率(48・8%)について寺本さんは、「安倍政権は低い投票率の中で、政権を維持していることがわかる。『無関心の組織化』『政治的諦めの組織化』ともいうべき政治戦略だ。その中でも18~19歳の投票率は31.33%と低かった。森友・加計問題に典型的な徹底した責任回避、ごまかし、まともな論議をしない、臭い物に蓋をする(原発で顕著)など、政治不信をかきたてる姿勢(意図的と思える)の結果だ」と述べた。また、「共産党・公明党・社民党の緩やかな衰退」傾向なども明らかにした。

 そのうえで①左右のポピュリズム政党の台頭 ②維新とはどういう政治勢力か?なぜ大阪で強いのか? ③グローバルな視点でローカルな問題を考える―について提起した(①~③報告要旨別掲)。

 最後に寺本さんは、「新しい局面の可能性を現実化させるにはグローバルな視点が重要だ。そして、オルタナティブな社会とはどういうものか、そこに至る道筋とは何かについての議論を積み重ね、民衆の共同実践を目的意識的に形にしていく努力が求められている」と強調した。

(Y)


寺本さん①~③報告要旨

 ①左右のポピュリズム政党の台頭

 「れいわ新選組」の特徴は、①徹底的に反緊縮政策②多様性を実際に体現した候補者選び③SNSを活用した。街頭から支持を拡大させ、連動して草の根カンパで四億円を集めた。それは米のサンダース旋風を想起するような状態だった。

 朝日新聞出口調査では5%が比例区の投票先に「れいわ」を挙げた。無党派層に
限ると、10%がれいわ(公明、国民、共産、社民を上回る)だった。無党派層の自民と公明への支持は前回の参院選から大きく変わらず、ほかの野党支持層の流入があったとみられる。

 つまり、今回は、新たな層を投票行動に引き入れたというよりは、従来の立憲
民主・共産・社民の支持層からの流出が主だった。

 NHKから国民を守る党(N国党)は、表向きは「NHKスクランブル放送の実現」というワン・イシュー政党であり、立花代表のワンマン政党とも言える。本人は、右翼的主張を一切表に出さない。

 政治性格においても、例えば候補者41人中、九条改憲賛成19人、反対6人、無回答16人(毎日新聞の候補者アンケートによる)で統一性がない。だが、統一地方選立候補者には、極右レイシストが相当数入り込み、何人かは当選している。

 真鍋博さんは、「N国『躍進』の背景にあるものは何か」と問いながら、次の
ように問題提起している。

 「『NHK』という事業体そのものの改革の是非というよりは、NHKは分かりやすい〝的(まと)〟にされているに過ぎない。『NHK』に象徴される『巨大な既得権益』への反発であり、自分たちのお金を強制的に吸い上げる一方で、自分たちの生き死にに対しては一切関心を示さない、目には見えない力に対する拒絶のサインである」。

 「もしこれらの階層に潜在している怨嗟(えんさ)を上手く手当てすることができなければ、『N国党』でなくとも別の新興勢力のようなものが、数百万人は存在するであろう『怨嗟の票田』を得て急伸するだけである。想定外の事態へと突き進むポテンシャルがあることに、果たしてどれだけの人々が気付いているだろうか」と政治性格をまとめている。今後も注意し、監視していかなければならない。

 ②維新とはどういう政治勢力か?なぜ大阪で強いのか?

 日本維新の会は、右派ポピュリスト政党のはしり的存在だと言える。大阪では、10年以上にわたって、実際の行政の経験を積み、持続的な支持を得ている。しっかりした支持者名簿を持ってドブ板的選挙を展開し、きっちりした票割りを行っている。しかも参院選では、地域政党(名古屋の減税日本、北海道の新党大地、東京の「あたらしい党」など)との連携で全国展開を図った。基本的には「大阪のような改革=身を切る改革を全国で」という立場だ。

 2012年総選挙から2019年参院選での維新の比例区得票数の推移、知事・市長選の得票数の推移(略)を通して、橋下徹と維新登場の背景が見えてくる。それは大阪における「オール与党」体制という閉塞した政治状況への反発だ。つまり、東京一極集中による大阪経済の地盤沈下への不安を根拠にした一点突破型のリーダーシップへの期待へと流れていった。維新は、橋下知事(当時)によって仕掛けられた大阪自民党の大分裂によって生まれた。

 一連の維新圧勝をもたらしたのは大阪の社会的状況がある。それは①深刻な格
差と貧困②府下一斉テスト(チャレンジテスト)による内申書評価の「修正」などによる教育差別・分断の強化③公務員労働者への攻撃を集中。大阪を新自由主義の実験場とするためには不可欠だった。

 しかも維新のコアな支持層は、大阪の住民の深刻な分断状況の中で、いわゆる「勝ち組」(と思っている人々)が維新・都構想を支持した。30代から50代にかけての男性で、一定の所得がある階層だと言われている。自分たちの税金が、公務員や「負け組」のために使われることへの嫌悪感がある。そのことを2019ダブル選挙のスローガン「大阪の成長を止めるな!」に現われている。

 吉富有治さん(フェイスブック「ヨシトミの毎日、ときどき隔日の随感」から)は、次のように分析している。

 「維新は『改革』を訴えるから新しいタイプの革新政党のように見えますが、わたしの考えは違います。公立高校の廃止や統廃合、文化事業への突き放した態度を見ると公明党の福祉重視か共産党のような左派とも似ていない。それどころか、万博やIR・カジノの誘致といった公共事業型の景気対策を推し進めるあたりは自民党の体質に近いのです。維新とはつまり、自民党が変異した『ネオ自民党』ではないかと思うのです」。

 「大阪で維新に人気があるのも改革政党だからというより、安倍政権や国政自民党に人気があるのに通じるものがあるのでしょう。安倍政権のめざす新自由主義的『改革』の露払いの役割を持っており、その意味では、安倍政権の「突撃隊」的な性格を持っている」。

 ③グローバルな視点でローカルな問題を考える

 ウォルデン・ベロさん(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス元代表)は、ヨーロッパにおける右派ポピュリズム政治勢力台頭の背景(2017年2月講演より)について次のように分析している。

 「ヨーロッパの極右政党は、階層格差の拡大にともなってグローバリズム批判を展開するようになった。イアン・ブルーマが『右翼は新しい左翼である』と指摘したように、社会主義勢力が放棄した政策を極右が横領した形になっている。たとえば、フランス国民戦線は、当初アルジェリアからの引き揚げ者を支持基盤として、ルペン父はウルトラ自由主義を信奉していた。しかし、娘のマリーヌ・ルペンは、反資本主義、反グローバリズムを掲げ、保護主義による国民経済擁護、ユーロ離脱、社会保障制度再建という国家社会主義路線をとっている。しかし、彼女の言う社会保障制度再建は、福祉排外主義であり、福祉共同体からの外国人の排除を意味する」。

 ここでのポイントは、「オルタ・グローバリゼーション運動は極右に主張を横領された」と結論づけていることだ。

 それでは日本におけるヨーロッパ型の極右政党が台頭する可能性はあるのか。例えば、入管法改悪による「移民労働者」の急増を一つの契機にして高まるかもしれない。そもそも安倍政権は、極右ポピュリズム的性格を持つ形になっていると言ってもいいだろう。バーチャルな「改革」への幻想を自己の基盤とする点では、ヨーロッパと共通するところがある。

 一方、2011年以降、左派ポピュリズムも台頭してきた。それはギリシャのシリザ、スペインのポデモス、アメリカのサンダース、イギリスのコービン、フランスの「不服従のフランス」(メランション)などだ。

 実践的には、広場占拠を軸とする社会運動の拡大、ヨーロッパにおける若い世代を中心にした社会運動の継続などがあげられる。具体的には、ドイツの反ヘイト運動、フランスの「黄色いベスト」運動、各地での「森を守る」闘い、高校生を軸にした「フライデー・フォー・フューチャー」運動、イギリスの「絶滅への反逆」運動などをあげることができる。

 しかし、ヨーロッパの左派ポピュリズムは、すでにその限界を示しつつあるのではないか? 例えば、①2017シリザによるトロイカ(EU、欧州中央銀行、国際通貨基金)への屈服②スペイン・ポデモスの内部対立と「混乱」 ③連続する社会運動と左派ポピュリズム政党との断絶―などを上げることができる。

 今後の課題として、れいわ新選組とN国党の台頭から何を読み取るのか、読み取れるのかという問題についてともに継続して分析していこう。

 れいわ新選組は日本における左派ポピュリズムの可能性を示すのか? れいわ新選組「現象」は、新しい局面を予兆させるものが確かに存在している。山本太郎さんの街頭演説への結集とヨーロッパの「広場占拠」とは違うと思うがどうだろうか。人々の感覚を「山本太郎」という個人に集中させたもので、運動化されていないまま、「漂流」する可能性をも含んでいる。ある意味、より危機的なのかもしれない。「左」右のポピュリズムが合流してしまう可能性もあるのではないか。

 先に述べた N国党に投票した人々の感覚は、フランスの「黄色いベスト運動」の参加者に近いと思われるが、どうだろうか?

 N国党に現われた民衆の意識は、ヨーロッパの極右レイシスト政党に流れてい
った傾向と共通点はあるのかなどを追跡調査していかなければならない。いずれにしても状況としては、遅ればせながらヨーロッパに近づきつつあるのではないか。