自衛隊の南西シフト_「自衛隊の南西シフト━戦慄の対中国・日米共同作戦の実態」
 
小西誠著 社会批評社 1800円+税


 安倍政権は、グローバル派兵国家建設の一環として新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(中期防)〈2018・12〉を決定した。防衛大綱は、「前大綱に基づく統合機動防衛力の方向性を深化させつつ、宇宙・サイバー・電磁波を含むすべての領域における能力を有機的に融合し、平時から有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な活動の常時継続的な実施」にむけて「多次元統合防衛力」を構築していくことを強調している。つまり、米国から「F35B」戦闘機の購入、護衛艦「いずも」型2隻を「空母」に改装、対電子戦などを明記した軍拡宣言である。

 とりわけ対中国シフトについて「弾道ミサイル等の飛来」攻撃を煽りながら、南西諸島の常時持続的な防護の一環として「島嶼部を含む我が国への攻撃に対しては、必要な部隊を迅速に機動・展開させ、海上優勢・航空優勢を確保しつつ、
侵攻部隊の接近・上陸を阻止する。海上優勢・航空優勢の確保が困難な状況になった場合でも、侵攻部隊の脅威圏の外から、その接近・上陸を阻止する。万が一占拠された場合には、あらゆる措置を講じて奪回する」(防衛大綱)などと米軍の下請けで実戦能力が不十分にもかわらず、あいかわらずの決意主義だ。もちろん自民党国防族、軍事産業の利権拡大とセットのコマーシャルであることは言うまでもない。

 こんな軍事のもてあそび姿勢を前面に出しながら、すでに戦略的な南西諸島の島嶼防衛段階から出撃基地および要塞化を着手してきた。宮古島レーダーサイト配備(2009年)、奄美大島駐屯地造成工事開始(2016年6月)、与那国島に与那国沿岸監視隊開設(2016年3月)などを突破口に、ついに宮古島駐屯地建設強行(2017年10月)、石垣島に陸上自衛隊の駐屯地を建設し、地対空、地対艦両ミサイル部隊、警備部隊などを配備(500~600人)する。沖縄本島にも陸自の地対艦ミサイル配備する方針だ。

 本書は、南西諸島の要塞化―島嶼防衛戦=東シナ海戦争の全貌と安倍政権の野望を徹底批判している。著者である小西は、元反戦自衛官(航空自衛隊生徒隊第10期生)と長年の軍事ジャーナリストの経験を土台にして与那国島、石垣島、宮古島、奄美大島、沖縄本島で急ピッチで進む自衛隊強化の現地取材(2016夏~2017)や基地建設反対派住民との交流、防衛省諸文書の狙いの解明など多岐にわたるアプローチを試みながらまとめあげた。

 小西は、自衛隊の「島嶼防衛戦」について、米の軍事戦略の転換に注目する。

小西分析はこうだ。

 「米トランプ政権は、「国家安全保障戦略」(2017年12月)、「国家防衛戦略」(2017年1月)を明らかにし、「『対テロ戦の終了』を宣言するとともに、中国を米国の覇権に挑戦する最大の脅威とみなし、そして、中国とロシアとの『長期的な戦略的競争』に備える体制に転換するという方針を打ち出した」。つまり、「新しい中国・ロシア脅威論、対中抑止戦略が発動され、『新冷戦』の始まりと言っていいだろう」と浮き彫りにした。この米新軍事戦略下のうえで安倍政権の「インド太平洋戦略」が設計され、対中抑止戦略を米と共同して、その先兵を担うことなのである。

 そもそも「島嶼防衛戦」について自衛隊が初めて策定したのは、陸自教範「野外令」の改定(2000年1月)であり、「上陸作戦」も定められた。小西はこの時期の情勢に着目しながら、「1989~91年のソ連・東欧の崩壊」によって「ソ連脅威論」による日米の対ソ抑止戦略は終わったにもかかわらず、米国は米ソ冷戦体制に代わる軍事力の維持のために「地域紛争対処論」(1991年湾岸戦争)、朝鮮危機(1993年~94年)、台湾海峡危機(1996年)に踏み込んでいった。この延長に日米安保共同宣言(1996年)、日米防衛協力のための指針改定(1997年)から新ガイドライン、中国封じ込め政策を軸にした日米安保再編に向かう。このプロセスの中で米軍が中東作戦に比重を置き、その東アジア手薄状態を自衛隊を動員しながら「島嶼防衛戦」の位置づけが重視されていくことになった。

 連動して防衛省・自衛隊は、は、「統合幕僚監部『日米の[動的防衛協力]』について」(2012年)を策定した。「対中防衛」を軸にした南西シフト態勢を初めて明記する。小西は 「第8章 沖縄本島への水陸機動団一個連隊の配備 在沖米軍基地の全てが自衛隊基地に」という衝撃的なタイトルだが、この統合幕僚監部文書の重要性を強調して言う。

 「『島嶼奪還』の日本型海兵隊という新たな沖縄本島に配備するという、とんでもない計画が、この統合幕僚監部文書には明記されているのだ」「在沖海兵隊の司令部、戦闘部隊のほとんどは、グアムなどへの移駐が決定しているが、この米海兵隊の穴埋めを狙っているのが、水陸機動団なのだ」。

 「したがって、現在、埋め立て工事が進む辺野古新基地もまた、この自衛隊部隊の拠点基地となることは明らかだ。政府が南西シフト態勢作りと合わせて、辺野古新基地造りを急ぐのも、このような自衛隊基地の確保が最大の目的である」。

 さらに小西は、読者に問いかけながら、「自衛隊制服組は『島嶼防衛戦』を海
洋限定戦として位置づけているが、いずれ『西太平洋戦争』への拡大は不可避だ。……日米中の衝突は、金融危機を含む世界経済への深刻な打撃を与えることは不可避である」と指摘し、過小評価する防衛省・自衛隊の軍事戦略の根本欠陥を突きつけている。
 
 南西諸島への自衛隊基地配備は自動的に進行しなかった。米の軍事戦略の転換に基づく南西諸島への自衛隊配備からミサイル配備決定の遅れに現れたように「悲惨な戦を体験した沖縄━先島諸島」などの抵抗は当然であった。このことを「防衛省・自衛隊」自身が、厳しく認識していた。(小西)。

 そこで防衛省・自衛隊は基地建設推進のための手法として、「地元の基地建設の誘致・要望」を「推進根拠」にしたのだ。与那国島、奄美大島、石垣島では「賛成派づくりと誘致」工作を強化していった。

 本書では「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」、「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」などの住民の反対運動を紹介している。小西は、現地での交流も深め、基地建設レポートを全国配信している。さらに奄美で講演会(2017年11月)を行い、「自衛隊の島しょ防衛戦は戦闘が最優先。全島防衛は事実上不可能と考えているからこそ、離島の奪還作戦を行っている。中国を仮想敵国とする冷戦時代の焼き直しだ」(奄美新聞)と批判した。

 さらに「軍拡競争の抑止を目的に①あらゆる武装・軍備の撤去②敵対行為の排除③軍事支援の禁止などを推し進め、アジア太平洋地域の諸国で実施した『無防備地帯』の実現を呼びかけた」(同紙)。

 なお小西は、本書の冒頭から繰り返し、自衛隊の「島嶼防衛戦」の実態と危険性、住民無視のあり方を取り上げないマスメディアを批判している。それだけではない。「従来、このような日本の軍拡や平和問題で発言してきた知識人らも、驚くべきほどの沈黙を守っている」状況に怒っている。最後にあらためて「反対している住民たちを孤立させてはならない。戦慄する実態を全国に知らせ、反対運動をともに取り組もう」と訴えている。

(Y)


■3.22アジア連帯講座:反自衛隊連続講座②
「自衛隊の南西シフト 戦慄の対中国・日米共同作戦の実態」
報告:小西 誠さん
(軍事ジャーナリスト)

日時:3月22日(金)/午後6時30分
会場:文京区民センター3C会議室(地下鉄春日駅)
        資料代:500円
主催:アジア連帯講座