配信:池田さん講座アジア連帯講座
反自衛隊連続講座①
「反基地運動から見えてきた自衛隊の今」

報告:池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)


 アジア連帯講座は、1月18日、文京区民センターで反自衛隊連続講座①「反基地運動から見えてきた自衛隊の今」をテーマに池田五律さん(戦争に協力しない!させない!練馬アクション)を講師に公開講座を行った。

 日米安保体制下、グローバル派兵に向けて自衛隊と基地が大きく変貌しつつある。安倍政権は、2013年に決定した防衛計画の大綱(防衛大綱)を2018年12月に改定した。大綱は、対中国シフトを強め、地上配備型迎撃システム「イージスアショア」やステルス戦闘機F35など高額な武器を米国から購入、さらに宇宙やインターネット空間での能力の強化、離島防衛として長射程の巡航ミサイルの導入などを明記し、自衛隊の敵基地攻撃能力を持つことを軸に再編しようとしている。

 池田五律さんは、自衛隊再編について①朝霞駐屯地と練馬駐屯地について②自
衛隊観閲式から見えてくるもの③東京都防災訓練と自衛隊④地域に溶け込む自衛隊を柱に報告した(発言要旨別掲)。

 さらに新防衛大綱分析、安倍政権の憲法九条改悪の性格と批判を行い、ともに反基地運動の取り組みの強化を呼びかけた。(Y)

 池田五律さん報告(要旨)

 東京北部の反基地運動から見えてきた自衛隊をお話したいと思います。

 朝霞駐屯地は、埼玉県朝霞市、和光市、志木市、東京都練馬、西東京市にまたがる九九七〇〇平方㍍の広大な敷地を持っている。

 朝霞駐屯地では日米合同指揮所演習「ヤマサクラ」が、各方面隊の持ち回りなので五年に一回行われている。日米地位協定の第2条第4項Bで自衛隊施設は、自動的に米軍が使いたい時は、使えるようになっている。朝霞駐屯地の機能が本格的に強化されたのは、東部方面総監部が市ヶ谷から朝霞に移転した1993年以降になる。

 大きな変化としては、去年3月末に陸自総隊司令部が朝霞駐屯地に発足した。自衛隊には、北部(北海道、東北)、東部(関東、甲信越、静岡)、中部(東海三県、北陸、近畿、中四国)、西部(九州・沖縄)方面隊がある。陸上自衛隊の場合は、各方面隊を越えた統一司令部はなかった。それは戦前の陸軍参謀本部の暴走の教訓から陸上自衛隊全体を一元的に動かせるような司令部をつくるのはまずいという判断があった。ところがそれが作られ、一元的に陸上自衛隊を動かせることになった。さらに総隊司令部の下に各方面隊があるだけではなく、総隊直轄部隊がある。宇都宮駐屯地にある中央即応連隊(海外派兵専門部隊)、習志野駐屯地の空挺団、覆面部隊の特殊作戦軍がある。

 木更津駐屯地には、水陸機動団、自衛隊版の海兵隊がある。朝霞駐屯地は、こういう部隊の要の司令部機能を持っている。

 もう一つの朝霞駐屯地の役割は、広報機能。陸上自衛隊広報センターがあり、
「りっくんランド」という無料で遊べる「戦争」ゲームセンターがある。体感できる3Dシアター、ヘリコプターの模型に乗れたりするので子ども連れの人たちがたくん来ている。修学旅行のコース、はとバスのコースにもなっている。

 さらに自衛隊体育学校があり、メダリストをはじめとするアスリートがたくさ
んいる。「アスリートと交流しませんか」とかで、大きな広報の役割をしている。一番すごいのが、戦争賛美の振武館といって付属記念館があります。敗戦を認めないという陸軍予科士官の「血判状」とかの資料が展示されている。

 練馬駐屯地は、2万2419平方メートルの敷地があり、川越街道で朝霞駐屯地と繋がっている。東部方面隊は、南関東を管轄している第1師団で練馬駐屯地に司令部がある。第一師団は、政経中枢を守る役割をになっている。第12旅団は、群馬に拠点を置き、空中機動展開旅団と呼ぶ。ヘリコプター部隊とかと連携しながら首都圏でなにかあった場合、緊急展開する。

●観閲式から見えてくるもの

 観閲式とは、自衛隊の戦力を誇示する大々的な軍事パレードだ。

 米軍などの駐在武官とかが見にくる。同時に米軍が友情参加しており、日米安保の威力を見せつける役割を果たしている。

 観閲式の一週間前、予行演習が行われるが、目撃情報では夜中にゴミ出しに行
ったら、自衛隊の制服部隊がウロウロしていたと報告されている。イラク派兵の時は、東武練馬と平和台の間に練馬駐屯地があるが、駅周辺はもちろんのこと、春日町あたりまで自衛隊員がうろついていたり、学校の屋上にも来たという情報もある。

 練馬駐屯地に対し、4月の第2土曜日に駐屯地祭があって、毎年ビラを撒いている。6月の第1か、第2日曜日にデモをしているが、警察・公安だけではなく、駐屯地の中から自衛隊警務隊が写真を撮りまくっている。

 ビックレスキュー東京2000では石原慎太郎が「三国人の騒擾が予想されるから頑張れ」という差別排外主義発言があり、銀座では自衛隊装甲車を出した。まだ開通していなかった大江戸線の都庁から北回りで自衛隊の部隊進出も行った。ビッグレスキューのスローガンは、「首都を守れ」であり、「都民を守れ」ではなかった。

 自衛隊員とか、その家族にとっては、観閲式は「晴れ」の舞台だ。以前、大泉学園で観閲式反対のビラを撒いていたら、若い女の子がビラを受け取ってくれたが「兄が出るンです」と言っていた。大泉学園は、高級住宅地であり、そこは自衛隊幹部の高級住宅地になる。

 観閲式の前日に、防衛省本庁舎のメモリアルパークで、1年間に亡くなった自衛官の追悼「慰霊」式典が行われる。自衛隊版靖国が市ヶ谷にある。

 警察にとっても観閲式は、テロ対処訓練だ。埼玉県の予算要求書には、観閲式
は東京オリンピックテロ対処訓練という位置づけで要求されている。テロ対処で自衛隊と警察は連携している。

●防災訓練から見えてくるもの

 9月の第1日曜日に東京都総合防災訓練が行われ、環状7号線封鎖訓練をやっている。環7は、政経中枢を維持するうえでの一つの柱だ。防災車輌を優先的に動かす。だから道路を一般車両に使用させない。

 大規模震災、緊急事態が起きたら内側から出てくる人たちを誘導して、検問する。それに紛れてテロリストが逃げたり、攪乱するようなやつは中に入れない。

 防災訓練の時も自衛隊が航空管制を握る。2002年、練馬区の東京都総合防災訓
練ではじめて自衛隊が航空管制を行った。

 ビックレスキューの時は、警察は自衛隊アレルギーを持っていたが、その後、国家安全保障局が設立され、自衛隊、警察が出向し、防災訓練、テロ対処訓練を通して警察と自衛隊の連携が深まっていった。治安出動の時も、自衛隊と警察の協定というものが、2002年ぐらいに新協定が結ばれている。洞爺湖サミットで警察と自衛隊の連携が完成化された。北海道自衛隊駐屯地で機動隊が訓練していた。

 最近の防災訓練では自衛隊は前面に出てこない。2~3年前、上野音楽堂でやったテロ対処訓練でも、化学物質が撒かれたという想定だが、消防とかが中心だった。実践の場で自衛隊は来ないよということを想定した訓練になっている。防災訓練は自衛隊をデモンストレーションする役割がなくなってきている。

 私たちは、去年の東京都防災訓練の前、8月に都に対して質問書を出し、交渉した。それでわかったことだが、都が自衛隊に対してこういう施設で、こういう時間帯で訓練をやりますけど、やりたいことがあったら企画をたててくださいということだった。だから自衛隊は、どこどこの会場だったらこんな訓練ができそうだ、自分たちの都合がいい訓練を企画していたことがわかった。

 この間の防災訓練は、参加している高校生に対する自衛隊へのリクルート活動が中心だ。東京都防災訓練では、とくに中高一貫校が狙われ、動員を要請している。総合学習、ボランティア授業の一環として防災訓練に参加させている。

 ほとんどが見学だが、何人かは自衛隊と一緒に、自衛隊が作った給食を配布したり、その間に「自衛隊に入らない」とかのリクルート、声かけをやりまくっている。

 高校の中には、生徒会活動の一環として防災支援隊が作られたり、大学でも防災ボランティアクラブというサークルができている。田無工業高校では、防災訓練だとして朝霞駐屯地で訓練させている。自衛隊には、防災訓練のプログラムはない。送り込む学校が勝手に位置づけている。防災教育指定校もあり、自衛隊が呼ばれて講演をしたりしている。

 訓練場では、防災と関係ない「PKOで活躍しています」とかの展示をやっている。子どもに自衛隊制服を着せて記念写真とかもやる。抗議したら一時期、後景にしりぞいたが、ほっとくとまたやりだした。

 最近は、自衛隊独自の防災訓練をやっている。2012年に夜間徒歩訓練があった。練馬駐屯地から夜中二人~三人一組で徒歩で偵察で動き、区庁の危機管理室に宿泊したりしながら、進出拠点に行く。次に来るのが通信部隊で通信網を作る。

 板橋区は、危機管理室は自衛隊出身者だ。阪神大震災以降、自衛隊は「危機管
理のエキスパートを自治体に入れませんか」とセールスし、民間企業に対しても同様の手法で自衛隊を送りこんでいる。

 自衛隊が大きな訓練を実施するときは、かつては自治体に事前連絡がきていたが、最近は連絡もない。「騒音がすごい」という苦情が練馬区に入り、あわてて自衛隊に問い合わせて、初めて知るという事態になっている。この自衛隊の姿勢は、小学校、高校などに「基地見学にきませんか」とダイレクトにアプローチしたりもしている。

 少子高齢化で小学校は、自衛隊員の子どもが多い。練馬駐屯地内に居酒屋「はなの舞」がある。隊員を町の飲み屋に行かせないためだ。自衛隊で町起こしはありえない。

 自衛隊友の会などが網の目で作られ、自衛隊出身の議員が増えている。地域一体になっている。選挙では、自衛隊とOBは自民党の集票マシーンにもなっている。

 こういった地域一体構造は、自衛隊イベントとしてのオリンピックを通して強まっていかざるをえない。これら全体構造とどのように構えていくのか、沖縄連帯とともに粘り強く反戦反基地運動を強化していこう。