61SkvdaQ-7Lスノーデン・リークの衝撃

 スノーデン(CIA〈中央情報局〉、NSA〈米国家安全保障局〉、DIA〈米国防情報局〉元情報局員/「報道の自由財団」理事/ロシア・モスクワ在住)は、2013年6月、米政府が米同時多発テロ事件を契機に対テロ対策と称して違法な情報収集を行っていることを暴露した。情報は国内だけではなく世界中の人々のメール、通話を集め、テロ関連情報として分析していたことを明らかにした。いわゆるスノーデン・リークだ。本書は、『スノーデン 日本への警告』(2017年4月/集英社新書)に続くスノーデン・リークの第二弾である。

 本書を把握するための前提認識を土台とするために『日本への警告』を若干紹
介しておこう。スノーデンは、米政府がNSAの監視プログラムを通して光ファイバーに直接アクセスして膨大なインターネット通信を取得していただけではなく、グーグルやフェイスブックなどのネット会社に顧客の個人情報を提供させていたことや、裁判所の監督が実質的に骨抜きとなっていた現実を明らかにし、世界の民衆の人権とプライバシーが侵害され続けていることに自戒をこめて告発した。

 とりわけ自らが2009年にデルの従業員として横田基地で監視活動を行っていた経験、ハワイでNSAに勤務していた時はXキースコア(XKEYSCORE)という大量監視ツールを扱っていた経験から特定の調査対象の通信をすべて掌握していたという告発は説得力があったため、日本の社会に大きな衝撃を与えた。

 さらに日本は国際的な光ファイバーを米国と共有しており、米国の通信会社は米国を経由する通信を傍受しNSAに提供しているから、情報を共有しているのだと強調する。スノーデンは、「NSAが保管する通信の中には、日本のフラグがつけられたものが多数ありました」と述べ、「ただ横田基地という、アメリカと日本の情報機関の橋渡しをする施設で働いていた経験から申し上げると、アメリカの情報機関は、常時、日本の情報機関とアメリカにおける情報を交換していますし、日本もしばしばアメリカに対して日本に関する情報を交換しています」と浮き彫りにする。

 安倍政権は、日米安保体制下、グローバル派兵国家建設の一環として特定秘密
保護法の制定にみられるように対テロ治安弾圧態勢を日米の連携プレーでレベルを引き上げてきた。

Xキースコアとは

 スノーデン・リークの警告から五年。刑訴法改悪と共謀罪制定によって警察権力・公安政治警察による電話の盗聴やネットデータの強奪、市民運動に対する監視・不当弾圧が拡大している。なんとしてでも権力の暴走を阻止するためにあらためてスノーデン・リークの意義を再確認したい。

 本書の冒頭では、「日本への警告」で紹介したXキースコアを取り上げている。
NHKとインターセプトは、共同スクープとしてスノーデンがリークした機密文書の中に日本に関する文書があり、米政府が日本政府にXキースコアデータを提供していたことが明記されていたと報道した(2017年4月)。

 スノーデンは言う。Xキースコアとは、コードネームで「膨大なソフトで構成
された非常に複雑な技術システムであり、多様な方法で集められた電子的通信を集約することです」。「これまでは時間や予算の制約上、監視の対象は犯罪者だけでした。今では、技術によって誰でもどこでも監視することができます。これは際立って大きな違いです」と述べ、政府は日々、人知れず何千億ものプライバシーを侵害していると注意喚起する。

 さらに本書では、NHKが継続取材しその集約としてNHKスペシャル「日本の諜報 スクープ最高機密ファイル」(2018年5月)を放映した、スノーデン・リーク機密文書の新たな事実を明らかにしている。番組を観た方もいると思うが、日本政府が米政府と共謀して秘密裏に行っていたことに対する批判と警戒を強め共有化するために、以下に列挙しておこう。

 ①日本の組織とは、防衛省情報本部電波部のことであり、NSAの日本側パー
トナーとなっている。同様に内閣情報調査室もその役割を担い、日本のネット諜報導入を推進していると明記。

 ②米軍横田基地内通信機器製造工場が日本政府の思いやり予算によって年間
37万5000ドルを計上。

 ③1990年代から2000年代のはじめにかけて、クロスヘア作戦(内容不明)と呼
ばれる諜報作戦に日本も参加。

 ④防衛省情報本部電波部の傍受施設は全国に六カ所ある。

 ⑤2012年以降、コードネームがマラードと呼ばれる衛星傍受システムにより、
日本は、民間衛星を経由しているインターネットから大量の情報を収集している。

 これらで機密文書のすべてが明らかになっているわけではないが、例えば、安倍政権が掲げる成長戦略の中の宇宙開発が諜報活動とセットであること、5兆円を超える軍事予算が米軍と一体となって支え、諜報機関とそのための高額なコンピューターシステム・ネットワーク実態の一端が見える。

 ところが機密文書について安倍政権は、「証拠となる文書に信憑性がない」と
切り捨てた。スノーデンは、日本政府の姿勢を批判し、「(リーク元である)アメリカ政府ですら、この文書が偽ものであるとは述べていません。説明責任をまったく果たそうとしない日本政府の態度は、国民を侮辱するものであるばかりか、国民を欺くものです」と糾弾している。

 本書を通して、携帯電話・メールなどの個人情報が権力に筒抜け状態であることに対して、あらためて警戒を強め、闘う側の防衛システム、法的規制強化の実現なども含めて反撃していかなければならないと痛感せざるをえない。

(Y)