配信:大垣事件 2月16日、衆議院第2議員会館で「大垣警察市民監視違憲訴訟 共謀罪はやっぱり廃止! 警察による市民運動潰しの監視・介入・干渉を許さない」院内集会が大垣警察市民監視違憲訴訟の勝利をめざす「もの言う」自由を守る会の主催、共謀罪NO!実行委員会の協賛で行われた。

 共謀罪の先取りというべき大垣警察市民監視事件とは何か。

 2005年頃から中部電力の子会社であるシーテック社が岐阜県大垣市に風力発電施設計画を進めていたが、風力発電による低周波被害などの不安を感じて地元市民が勉強会を開始し、それを大垣警察署警備課の公安政治警察が監視し、運動つぶしのためにシーテック社に情報提供と「指導」していた事件だ。

 朝日新聞(名古屋本社版/2014年7月24日)は、シーテック社の内部文書を入手し、「岐阜県警が個人情報漏洩 風力発電反対派らの学歴・病歴」という見出しでスクープ報道した。議事録は、風力発電反対運動つぶしのために公安がシーテック社を「指導」しているやりとりが明記されていた。さらに勉強会を開いた地元住民2人と脱原発運動活動や平和運動をしていた大垣市民2人の「氏名」「学歴」「病歴」などの個人情報、地域の様々な運動の中心的役割を担っている法律事務所に関する情報をシーテック社に提供していた。

 住民は、16年2月4日、名古屋地裁に対して公安とシーテック社の意見交換記録「議事録」の証拠保全を申し立て4議事録(第1回/13年8月7日)(第2回/14年2月4日)(第3回/14年5月26日)(第4回/6月30日)を入手し、全容が明らかとなった。大垣警察署にシーテック社を呼びつけた公安は、「勉強会の主催者であるA氏やB氏が風力発電に拘わらず、自然に手を入れる行為自体に反対する人物であることを御存じか」などと環境破壊反対運動に対する露骨な敵対心を露わにし、わざわざ「今後、過激なメンバーが岐阜に応援に入ることが考えられる。身に危険を感じた場合は、すぐ110番して下さい」と事件作り(仕事作り)のために「指導」するありさまだ。

 住民は、その後、岐阜県個人情報保護条例に基づく本人開示請求、岐阜県警本
部長や岐阜県公安委員会への抗議・要求書の提出、警察法第79条(苦情の申出等)に基づく苦情申出、地方公務員法違反の刑事告発を行ったが、14年11月に「通常の警察業務の一環だ」と居直り回答を行ってきた。

 同様に、参議院内閣委員会(2015年)でこの事件が取りあげられたが、警察庁
警備局長は、「公共の安全と秩序の維持の観点から関心を有し、必要に応じて関係事業者と意見交換を行っております。そういうことが通常行っている警察の業務の一環だということでございます」と答弁し、公安政治警察による日常的な住民監視は合法だと強調したのである。

 このような公安警察の人権侵害のやりたい放題に対して住民と弁護団は、16年12月、岐阜県を被告として国家賠償請求訴訟を名古屋地裁に提訴した。訴訟は、①公権力の行使の違法性②プライバシー侵害③個人に関する情報を承諾なくみだりに収集・管理・提供されない自由(憲法13条)の侵害③表現行為人格権(憲法21条1項、13条)の侵害④表現の自由(憲法21条)の侵害などを争う。被告県は、ことごとく「認否しない」と反論している。

 さらに住民は、県警に個人情報の開示請求をしたが、「存在の有無も答えない」とする非開示の不当決定に対して「警察庁及び岐阜県警の保有する原告四人の個人情報を抹消せよ」という個人情報抹消請求を追加提訴(18年1月)した。

 共謀罪制定以前から公安政治警察は、市民監視を日常的に行い、微罪弾圧も含
めて罪名をこじつけて事件をデッチ上げ、不当逮捕・家宅捜索、長期拘留を行い市民運動を弾圧してきた。大垣事件はその氷山の一角であるが、公安が運動潰しのための「意見交換」を行ってきた証拠が「議事録」として明らかになったことは、公安の暴走を止め、共謀罪を使った新たな弾圧を許さない重要な反撃戦だ。大垣警察市民監視意見訴訟を支援・連帯していこう。

 院内集会は、海渡雄一弁護士(共謀罪NO!実行委員会)のあいさつから始まり、「戦前の戦争体制の要は、治安維持法、軍機保護法、国防保安法だった。現在、軍機保護法、国防保安法に匹敵するのが特定秘密保護法であり、治安維持法の団体規制として復活したのが共謀罪だ。特高警察は、戦前の三法にもとづいて動いていた。同じように公安警察も同様の動きをしており、クローズアップして
いかなければならない。その最前線として闘われているのが大垣事件だ。秘密保護法、共謀罪廃止の闘いは公安警察の監視であり、暴走を止めていかなければならない」と発言。

 山尾志桜里衆院議員(立憲民主党)は、「先の国会の法務委員会で上川陽子法相は、『共謀罪で捜査している事件はゼロである』と答弁した。しかし、大垣事件のように公共の安全と秩序の維持のために通常業務として行っているはずだ。警察が共謀罪で捜査をしたら徹底的にチェックし、みんなで戦闘体制を維持していこう」と訴えた。

 続いて共産党の藤野保史、穀田恵二両衆院議員、福島瑞穂参院議員(社民党)も
発言し、支援連帯を表明した。

 弁護団長の山田秀樹弁護士は、違憲訴訟の概要を報告し、「新聞の見出しは
『個人情報漏洩』となっているが、誰かが間違って情報を流した事件ではない。警察が積極的に運動つぶしの目的に従って情報を事業者に提供している。警察の行為が明確に違憲であると裁判所に言わせなければならない」と強調している。

 清水勉弁護士は、個人情報抹消請求について報告し、「公安警察の情報収集の法的根拠はそもそもない。『公共の安全と秩序の維持』のためと称してやりたい放題だ。公安は情報交換によっていろんなデータを蓄積している。個人情報は抹消廃棄せよと規制しなければならない」と発言した。

 原告の松島勢至さん、船田伸子さん、近藤ゆり子さんは、警察の住民監視の不
当性を糾弾し、「生きづらい社会はいやだ。憲法によって人間の尊厳を実現していきたい。訴訟に勝利しよう」と訴えた。

(Y)