23 12月23日、反天皇制運動連絡会は、千駄ヶ谷区民会館で「『生前退位』!? なにやっテンノー!!?? 12・23に天皇制の戦争・戦後責任を考える討論集会」が行われた。

 天皇明仁は、天皇制延命・強化に向けた憲法違反(憲法第4条〈天皇の権能の限
界、国事行為の委任〉、第7条〈国事行為〉)のビデオメッセージ「生前退位表明」(2016.8.8)強行によって与野党の天皇制翼賛国会を引きだし、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の成立(17.6)にこぎつけた。明仁は、12月23日の誕生日の記者会見で「この度、再来年4月末に期日が決定した私の譲位については、これまで多くの人々がおのおのの立場で考え、努力してきてくれたことを、心から感謝しています」と憲法違反を居直って自画自賛した。

 さらに明仁は、ビデオメッセージに対して違憲だとする批判を意識しているが
ゆえに、あえて「お言葉」の冒頭から「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」「憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていく」ことを強調せざをえなかった。

 安倍政権は、グローバル派兵国家建設の野望のために憲法九条改悪と連動させて天皇代替わり(19年)、東京五輪開催(20年)を通して国民統合を強化していくことをねらっている。すでに19年4月30日に退位、皇太子が5月1日に新天皇に即位するスケジュールを決め、しかも違憲隠しのために政府は、

①退位の儀式を現
天皇から新天皇へ皇位を直接譲り渡す形式にはしない。②内閣の助言と承認を必要とする国事行為と位置付けることによって「憲法との整合を徹底できる」などと強引にでっち上げる始末だ。連動してマスコミ等を動員しながら代替わり賛美キャンペーンを演出している。天皇制攻撃の流れに抗して天皇制廃止運動の前進に向けて奮闘していこうではないか。

 天皇制攻撃が強まれば強まるほど国家権力・公安政治警察と天皇主義右翼の暴
力は密集し、一体化した闘争破壊・弾圧を決行する。「天皇制戒厳体制」は、先行して天皇制暴力が吉祥寺「天皇制いらないデモ」(16年11月20日)に続いて立川自衛隊監視テント村宣伝カー破壊(17年11月23日)を行ったことに現れている。権力はアリバイ的に右翼実行犯を事後逮捕したが、これは犯行の事前共謀と黙認を覆い隠すための稚拙な工作でしかない。この日の集会も大量の公安政治警察と機動隊の配置、右翼らの妨害が行われている。権力と右翼が一体となった闘争破壊を跳ね返していこう。

 集会は、この1年間の天皇制攻撃と反撃の闘いの成果を確認し、来年の闘いに向けて4人から問題提起が行われた。

 北野誉さん(反天連)は、「反天連の問題意識」をテーマに次のように述べた。

「天皇『代替わり』の状況に突入しているが、89年の天皇代替わりと言論状況が大きく変わっている。天皇賛美の声が『リベラル』の中から大量に生み出されている。その中で天皇の『平和主義』と安倍首相の『戦争政策』を対立させ、天皇に期待するロジックも現れだした。私たちは、国家としての天皇制が果たす役割があり、戦争国家として天皇と安倍の役割分担・補完関係をなしていることを明らかにしてきた」。

 そのうえで「天皇の『平和主義』言説に対して『その本質は戦争だ』と言うだけでは不十分ではないか。それは戦後『平和と民主主義』体制の土俵のうえで明らかにしていくことも求められているのではないか」と今後の論議の方向性を示した。

 桜井大子さん(反天連)は、「問題提起 『良い王様』と『悪い政治家』?」と題して「多くの人びとの眼には、象徴天皇はどのように写っているのか。どのように認識し、どのような天皇を欲しているのか。なぜそうなるのか」と論点設定。また、タイ国王制と比較検討しながら「日本はどこに位置するのか? どこに位置すると観念されているのか?」とアプローチした。

 中間集約として「『国民』が君主を認識するのは、国内視察、王室外交、言論
活動、政治関与した場合その結果として、天皇・皇族は、政治関与を除けば君主と同じような振る舞いをしてきたし、社会もそれを認める。今、天皇の政治関与は強まり、そういう強力な君主としての天皇を、社会も望んでいるように見える」。

 第2論点として「象徴天皇を、象徴とみるのか、天皇=君主と見るのか。現実は
君主的な存在としての天皇があり続け、それが強化され、それが望まれているだろう社会にあるということを踏まえる必要があるのではないか。象徴天皇制の曖昧さが作り出す強さを再認識し、格闘していかなければならない」とまとめた。

 天野恵一さん(反天連)は、「老人・明仁が仕事を辞めたいと言っているのだからそれを認めてあげればいいではないかという人々に対してどのように語りかけるのか。明仁は、辞めればただの人間になるわけではなく、元天皇だ。膨大なカネも貰い続ける特権的な存在だ。ただ、この問題はもう少し深く考えたほうがいいと思っている」と論点を浮き彫りにした。

 この考察のヒントとして平井啓之の「自己欺瞞」・「近代天皇制と日本人意識」を取り上げ、天皇の「人間宣言」そのものを問題にしながら「自己欺瞞の民族」として批判していることを強調した。つまり、「『人間=象徴』天皇が、あらためてビデオ・メッセージ『人間宣言』を発したなどというのはマスコミの論理だ。高齢であるなま身の『人間』としてのみ見ようとする庶民の『自己欺瞞の意識』は、戦後主にマスコミによって作為的につくりだされ続けてきた。『神人天皇』から「象徴(人間)天皇」へと外見は変容しても、連続している『自己欺瞞』の意識、これが天皇制を支え続けている。代替わりした象徴天皇制も『言論抑圧マシーン』であり『タブーづくりの装置』であること、それが『偽善性=ペテン性』にみちみちたものである」と分析した。

 平井玄さん(批評家)は、「金持ちと貧乏人の間 安倍政権の岩盤破壊と左翼をオルグする皇后陛下」というタイトルで問題提起した。

 平井さんは①貧乏人は天皇をありがたがり、戦争国家を歓迎するのか?②戦後
の岩盤(無意識)を破壊するのか、防御するのか?と問いかけ、「さらなる債務の拡大と終わりなき先延ばしに向かう」国家財政の脆弱性を指摘し、安倍政権批判の突破口を提示した。

 また、「美智子のカルチュラルスタディーズ(文化攻勢)」の観点から「護憲平和天皇のイリュージョンは、リベラル左派までも文化イメージ戦略にますます溺れさせた。同時にフリマアプリによるネット中古品リユース・マーケットの急激な拡大、海外で移住フリーターになる日本人が増えていることなどから見えてくるのは、資本主義の収縮過程ということだ。新たな運動の方向性の一つとして、『生存原理としての経済』を考えるべきではないか」と呼びかけた。

 問質疑応答後、討論を集約し、あらためて来年の反天皇制運動に向けてスクラ
ムを強化していくことを確認した。

(Y)