中核(襲撃した被害者の活動家の本名を掲載した当時の中核派の犯行声明のビラ。『前進』の声明では被害者の本名はおろか住所・職場まで暴露するという反階級的犯罪に手を染めた)

 中核派の「前進」(2017.10.9号)に「映画『三里塚のイカロス』批判」を「中石浩輔」の署名入りで掲載している。

 「三里塚の歴史と真実ゆがめ 虚偽で『闘争の終結』あおる」というタイトルで、「三里塚のイカロス」は「三里塚の歴史と真実をねじ曲げ、国家権力による闘争圧殺攻撃に手を貸す『作品』となっている」と規定する。

 「中核派への憎悪 岸宏一に語らせ」の項では「三里塚のイカロス」に登場する岸宏一(元中核派現地責任者)に対して「一語一語が真実をゆがめ、真実を隠し、自己の脱落・転向を正当化するための言葉だ」と断定する。だが中核派は岸を反革命だとレッテル張りすることによって、岸らの告発・批判を一切排除し、内ゲバ官僚主義組織の自己保身的な立場を露骨に現わしているにすぎないのだ。

 中石は、「『三・八分裂』は権力の同盟破壊」の項で映画が「国家権力中枢からの攻撃」である一坪共有地運動なのに、「反対同盟分裂を『セクト間の主導権争い』と描くのは歴史の偽造だ」と言う。

 ならば当時の中核派の現地責任者の岸が一坪再共有化運動についてなんて言っているのか。『革共同政治局の敗北1975~2014』で岸は(一坪共有地運動が)「『政府・公団に土地を売り飛ばす道を開くもの』と短絡的に批判することは誤りである。……この論点を苦し紛れにつくりあげた責任の多くは現地責任者の岸にあった。批判のための批判であるという自覚は当時からあった。今なおそれを繰り返しているのを見ると、悔恨の念ひとしおである」などと心情を吐露している。

 また、同書で「第四インターへのテロル」の理由として、「三里塚闘争で主流派になる」目的で「現地の劣勢」を挽回するために「全国運動で巻き返し、さらに熱田派の中心的支援党派である第四インターに軍事的せん滅戦を仕掛け、その党派的瓦解を策動したのである。この行為は、筆者らは今にしてはじめていえるようになったのだが、国家権力にたいしてともにたたかう左翼運動の原則を踏み外したものといわざるをえない」と述べている。

 これら岸の「証言と立場」表明こそが当時の中核派の「歴史的事実」であり、「歴史を偽造」しているのは現在の中核派であることを自ら証明している。

 さらに「脱落者を使った破壊策動許すな」の項では(一坪共有地運動が)「第四インターはこの攻撃の手先に成り果てていた」と述べ、第四インターへのテロ襲撃を正当化している。当時、中核派は、三里塚芝山連合反対同盟と一坪再共有化運動に対し土地売り渡しなどと悪罵を投げ、全国の一坪共有者を戸別訪問し、恫喝などの暴力を強行し、熱田派系の三里塚連帯集会に対しては集会破壊を繰り返し策動してきた。これに対して中石は「そこで疑問や反対を訴える参加者に凄惨な暴行を振るった」「現地と全国での暴力事件は数知れない」などと一坪共有化運動に敵対する集会破壊と暴力事件を正当化し、その延長に第四インターへのテロ襲撃を居直る始末だ。

 岸は、中核派の党派的利害を優先し、第四インターを「反革命」と規定し、その「殺人未遂、傷害、暴行、脅迫」事件が「正義の戦い」だと居直ることに対して「第四インターへのテロルの誤りを自己批判的にとらえ返し、襲撃を受けた第四インターの被害者の方たちに心から深く謝罪する。あわせて第四インターの皆さんとラディカル左翼を支援してきたすべての皆さんに謝罪する」と言わざるをえなかった。この「歴史的事実」を現在の中核派が岸の「自己の脱落・転向を正当化するための言葉だ」と短絡的に切り捨てるところに内ゲバ官僚主義組織のあり方を、さらに居直り強化していくことを中石映評は示したのである。


(Y)

 【参考論文】
◦「水谷 保孝/岸 宏一著「革共同政治局の敗北1975~2014」(白順社)
「第9章/第1節」に対する批判メモ/L・L(かけはし2015年6月22日号)
http://www.jrcl.net/frame150622d.html

◦革共同(中核派)再建協議会の自己批判は受け入れられない JRCL中央委員
会声明(『かけはし』(2009年2月23日号)
http://www.jrcl.net/frame090223b.html

◆声明 中核派のテロ行為を弾劾する!三里塚芝山連合空港反対同盟(代表・熱田一)
(84年1月13日)
http://www.jrcl.net/framege5.html

◆緊急アピール テロ襲撃に反対する358氏が共同声明
(84年1月10日)
http://www.jrcl.net/framege7.html

◆声明 中核派のテロ襲撃弾劾し反対同盟と三里塚闘争を防衛せよ
日本革命的共産主義者同盟(第四インターナショナル日本支部)中央委員会政治局
(「世界革命」84年1月16日第819号)
http://www.jrcl.net/framege4.html

◆許すなテロ襲撃 内ゲバ主義を一掃するために
(84年8月15日発行のパンフレットから)
http://www.jrcl.net/framege3.html

◆中核派は再共有運動への敵対とテロを自己批判せよ 反対同盟とともに木の根一坪共有地を守りぬこう
(「かけはし」98年4月27日)
http://www.jrcl.net/framege2.html

◆共同行動の原則と「内ゲバ」主義について
(「かけはし」1999.2.15号)
http://www.jrcl.net/framege1.html