6日比谷 4月6日、日比谷野外音楽堂で「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会」(共催:共謀罪NO!実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)が行われ、3700人が参加した。

 安倍政権と与党は、4月6日、民衆監視と対テロ治安弾圧体制強化に向けた共謀罪(「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画」を処罰する罪)を新設する組織犯罪処罰法改正案の衆議院審議入りを強行した。言論の自由、結社の自由、通信の秘密、基本的人権破壊の共謀罪法案衆院審議入りを糾弾する。

 自民党と公明党は、11日の衆院法務委員会審議入りを策動している。すでに委員会には性犯罪を厳罰化する刑法改正案、債権関係の規定を改める民法改正案が提出されており、法案提出順に審議すべきところを共謀罪法案を優先して審議することを決めてしまった。衆院(週3日審議)通過を4月中、参院(週2日審議)法務委員会を国会会期末6月18日までの成立をねらっている。

 公明党は、当初、人権侵害に満ちた共謀罪法案に対して党内と創価学会の慎重派、東京都議選(6月23日告示)対策などの事情で自民党の早期の法案審議入りに対して公明党の山口那津男代表が「後から出した法案を、なぜ先に議論しなければならないのか」「慎重審議」などと常套手段の抵抗ポーズを演じた。これまで秘密保護法、戦争法、TPP法で「慎重審議」ポーズをとりながら法案成立に向けてバックアップしてきた役割を今回も貫徹した。6日の衆院本会議で安倍晋三首相は共謀罪法案が「一般の人が処罰の対象にならないことをより明確にし、これまでに示された不安や懸念を払拭できる成案がまとまった」「適用対象をテロリズム集団や暴力団などの組織的犯罪集団に限定している。正当な活動をしている団体が対象になることはない」などといつも通りのウソ答弁を行い、グローバル派兵国家建設に向けて、これまでの既遂処罰が原則の法体系を破壊し、未遂でも罰することを可能にする反動的転換に踏み出していくことを宣言した。しかも法案には「テロリズム集団その他の組織的犯罪者集団」の定義・範囲を明記せず、とりわけ「その他」の文言によって警察権力・公安政治警察の恣意的判断で277罪を適応していくことを前提に、すべての民衆を監視・犯罪者対象とし、いつでもどこでも弾圧することが可能となってしまうことも触れなかった。

 さらに安倍は、「「国際組織犯罪防止条約を締結していないのは世界で11か国、G7では日本だけで、日本が国際社会における法の抜け穴となるわけにはいかない」「条約の締結に必要な国内法整備、すなわちテロ等準備罪処罰法を成立させ、条約を早期に締結することが必要不可欠だ」と従来の答弁を繰り返した。しかし組織犯罪条約はテロ対策の条約ではなくマフィアなどの越境的犯罪集団の犯罪を防止するための条約だ。国連立法ガイドの「第5 目的」には「国の法的伝統を生かしていけばいい」と明記している。しかも日本政府は国連のテロ関係主要13条約をすべて批准しており、共謀罪を新たに立法する根拠は消滅しているのだ。

 これまでの国会審議で金田勝年法相は「(共謀罪の)成案が得られたらきちんと答弁する」などと答弁拒否してきたが、強行開催される委員会でも二転三転し、答弁いきずまりが予想される。だから政府・与党は、法務省刑事局長らの答弁を増やすことで審議を加速させようとしている。こんな審議の不誠実対応を許さず、政府・与党の法案ウソキャンペーンを次々と暴露し、全国に発信していく必要がある。

 共謀罪法案に対する各社世論調査は、共同通信社(3月11~12日)は反対が45・5%、賛成が33%、毎日新聞は(3月11~12日)反対が41%、賛成が30%だが、NHK(3月10~12日)は法整備が必要45%、必要でない11%、産経新聞とFNN(3月18~19日)合同世論調査は賛成57・6%、反対31・2%という結果だった。法案賛成派を反対派に獲得するアプローチを強めつつ、国会を包囲していく全国運動の拡大を作り出していかなければならない。4・6集会をスタートに国会審議を厳しく監視し、いいかげんな政府・与党答弁を批判しぬき、各地で反対集会を継続して取り組んでいこう。

廃案に向けて全国運動を

 集会は「共謀罪は絶対廃案!テロ対策とウソつくな!思想弾圧許さない!共謀罪は憲法違反!治安維持法絶対反対!金田法相ただちに辞任!」のシュプレヒコールで始まった。

 海渡雄一さん(共謀罪NO!実行委員会)が開会のあいさつを行い、「共謀罪法案の本質は、まだ危険な行為がなにもなされていない段階で政府に異議を申し立てる様々な市民の活動を全面的に封じ込められるところにある。今日、与党は職権で共謀罪の審議入りを強行した。この暴挙に強く抗議する。政府が平気で国会でウソをつくような社会は、戦争を避けることはできないのではないか。共謀罪制定後、さらなる盗聴捜査の拡大を求めてくる。歴史に学び、現代の治安維持法である共謀罪制定の野望の挫き、廃案を誓う」とアピールした。

 有田芳生参議院議員(民進党)は、「戦後最悪の治安立法、共謀罪が審議入りしたことに強い憤りを持って批判しなければならない。法案廃止をめざして対策本部を立ち上げ、全国キャンペーンを取り組む」と報告。

 また、「法務省に法案にテロリズム集団の定義はあるのかと聞いたら、『ありません』と答えた。法案はいいかげんだ。安倍首相は、『普通の団体が一変して組織的犯罪者集団になることがある』の例として、オウム真理教をあげた。安倍首相は『普通の宗教団体がオウム真理教のように一変して組織的犯罪者集団になるならば一網打尽だ』と言った。1995年オウム真理教の出家信者は約1000人、在家信者は1万人。まったく事件に関係ない人を一網打尽にするというのが共謀罪の本質だ」と批判した。

 続いて、田村智子参議院議員(共産党)、福島みずほ参議院議員(社民党)、山本太郎参議院議員(自由党)、伊波洋一参議院議員(沖縄の風)が国会報告と共謀罪廃案に向けて決意表明を行った。

 さらに発言は、吉岡忍さん(ノンフィクション作家/日本ペンクラブ専務理事)、青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)、佐藤学さん(安全保障関連法に反対する学者の会)、山口二郎さん(立憲デモクラシーの会)、高山佳奈子さん(京都大学教授・刑法)から行われ、共謀罪廃案運動の報告と今後の方向性を提起した。

 最後に福山真劫さん(総がかり行動実行委)から行動提起後、共謀罪廃案に向けた国会請願デモに移った。衆参議面前ではデモ隊と国会議員がエールを交換し、共に闘う決意を打ち固めた。

(Y)