d_09844704 安倍政権は、2月28日、グローバル派兵国家建設の一環である対テロ治安弾圧体制にむけ、「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪の遂行」罪(共謀罪)を新設する組織犯罪処罰法改正案の原案をまとめ、自民党、公明党に提示した。

 3月10日に閣議決定し、法案制定に向けて加速させようとしている。法案の名称を変えたとしても近代法の既遂処罰が原則という法体系を国家権力の恣意的判断で、未遂でも罰することをねらい、言論の自由、結社の自由、通信の秘密、基本的人権の破壊、サイバー弾圧など民衆の日常生活まで処罰対象を広げようとする現代版・治安維持法だ。警察権力・公安政治警察の権限拡大に向かう共謀罪の上程阻止・廃案に追い込んでいこう。

共謀罪のねらい

 法案は、共謀罪の対象を277罪(テロ犯罪110罪、薬物関連29罪、「人身に関す
る搾取」28罪、「その他資金源」101罪、「司法妨害」九罪)とし、法定刑が長期10年を超える懲役・禁錮が定められているものは5年以下の懲役・禁錮、長期四年以上10年以下の懲役・禁錮が定められているものは2年以下の懲役・禁錮としている。

 適用対象となる「組織的犯罪集団」(第6条の2)に対して、「団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行なわれるものの遂行を2人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行なわれたときは、当該各号に定める刑に処する」と明記している。条文には、「組織的犯罪者集団」の定義、政府が共謀罪の呼称として「テロ等準備罪」と使っているテロの定義もなく表記そのものがない。

 この意図は明白だ。権力のデッチ上げストーリーに基づいて2人以上のグループを、例えば、市民団体、労働組合、サークル、2人のグループなどに適用すれば弾圧が可能だからだ。例えば、「実行犯」とデッチ上げて適応する罪として以下のような弾圧が可能となってしまう。

 いわゆる「万引き」「自転車泥棒」(占有離脱物横領罪)に対して「窃盗」罪を適用する。弾圧対象はかなり広範囲となり、事前の盗聴・行動確認のやりたい放題でいつでも誰でも不当逮捕を強行してくる。

 現地闘争団結小屋、テント村、ピケット破壊にむけて「組織的な封印等破棄」「組織的な強制執行妨害目的財産損壊等」「組織的な強制執行行為妨害等」を適用し、闘う仲間たちの撤去・破壊阻止集会準備段階から弾圧が可能だ。

 これまで労働争議弾圧として強行してきたが、共謀罪によって組合会議以前の執行部の個別討論の段階から弾圧が可能となる。労働組合と資本との団体交渉で雇用主を長時間監禁の準備を計画したなどとデッチ上げ、「組織的な逮捕監禁」「組織的な強要」罪を適用してくるだろう。さらに争議組合、地域ユニオンなどによる資本や金融機関への抗議行動、ビラ撒き・街頭宣伝が「組織的な威力業務妨害」罪と「組織的な恐喝」罪を適用し計画段階から複数の組合員が行なったとして弾圧してくる。

 いずれも事前調査として盗聴法(通信傍受法―盗聴の対象犯罪が①銃器犯罪②薬物犯罪③集団密航④組織的殺人の四類型から傷害、詐欺、恐喝、窃盗などを含む一般犯罪にまで改悪)を拡大した改悪刑訴法を駆使して、電話・メール・フェイスブック・ライン・盗撮にいたるまでプライバシー侵害の違法行為を膨大な警察官とカネを投入して追跡し、「犯罪」をデッチ上げるための材料をかき集め、共謀罪違反ストーリーを練り上げ、共謀罪違反として家宅捜索令状、逮捕令状を一体である裁判所に令状発布させ不当な家宅捜索、逮捕強行をねらっているのだ。

 それだけではない。不当な家宅捜索によって押収した現金・貯金通帳、日曜大工道具を「組織犯罪準備」のための証拠とし作り上げる。「日曜大工」のための電動工具、大工道具、修繕のための工具類のたぐいも「爆弾製造」関連機材としてこじつけようとすることも可能となってしまう。

 条文の最後に「ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減刑し、又は免除する」と明記しているように、スパイの潜入捜査を前提とし、協力者を育成し、または「司法取引」によって転向・裏切り・売り渡しを行わせることも想定しているのだ。安倍首相は、共謀罪の対象が「一般の人は対象にならない」などと国会答弁してきたが、「共謀罪成立なしで五輪開けない」「通常の団体であっても、犯罪行為を反復・継続するなど活動が一変した場合には、処罰対象になり得る」と居直り、本性をむき出しにしてきた。このような現代版治安維持法である共謀罪制定を絶対に許してはならない。

国連国際犯罪防止条約について

 政府は、共謀罪制定の「根拠」として「国連国際犯罪防止条約の締結に伴う法整備」「犯罪防止条約は、昨年11月現在で約180カ国・地域が締結。主要7カ国(G7)で未締結は日本だけだが、これの締結には共謀罪の整備が不可欠だ」などと言っている。しかしこれはとんでもないウソなのだ。

 「共謀罪」は、2000年の国際総会で採択された「国連国際組織犯罪防止条約」に日本政府が12月に署名し、03年5月、国会で批准を承認したことにより、国内法整備のためとして組織犯罪処罰法の中に共謀罪新設を打ち出した。しかし、そもそも組織犯罪条約はテロ対策の条約ではなくマフィアなどの越境的犯罪集団の犯罪を防止するための条約なのだ。

 国連立法ガイドの「第5 目的」では、「締約国は、この条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置)をとる」と明記している。つまり、その国の法的伝統を生かしていけばいいのであり、共謀罪が国家権力の恣意的判断で未遂でも罰することを可能とすれば、これまでの既遂処罰が原則の日本の法体系の破壊なのだ。

 しかも「目標が純粋に非物質的利益にあるテロリストグループや暴動グループは原則として組織的な犯罪集団に含まれない」とまで明記している。法務省、外務省官僚たちは、この文言を十分に承知し、条約に違反しているからこそ後景化させ、対テロ治安弾圧体制構築にむけて共謀罪を組み込んだのである。

 あえて言えばすでに日本の法律には、「未遂」以前の「予備」、「陰謀」、「準備」段階の処罰法(「内乱」「外患誘致、外患援助」「私戦予備及び陰謀」「自衛隊法」「特定秘密保護法」)が存在し、また、未遂前の処罰を可能とする法律として、銃砲刀剣類やピッキング器具の所持等を処罰する銃砲刀剣類等取締法、特殊開錠用具所持禁止法、凶器準備集合罪などがある。しかも日本政府は国連のテロ関係主要13条約をすべて批准しており、共謀罪を新たに立法する必要はない。
 
共謀罪廃案に向けた方向性 
 
 政府は、共謀罪(「実行準備行為を伴う組織的犯罪集団による重大犯罪の遂行」罪)を与党に提示したが、「テロの表記を入れた方がいい」「テロ以外の組織的犯罪も含まれることからテロの明記は必要はない」(自民党)、河野太郎衆院議員にいたっては「共謀罪対象罪が676から277に減った。削れないと言っていたのは、やる気がなかったからか、国民に嘘をついたのかをはっきりさせないと議論は進まない」の意見が出たり、公明党は「テロという文言を入れた方が国民に分かりやすいのであれば、入れるのはやぶさかではない」などと、いずれも人権侵害に満ちた共謀罪を推進していく姿勢を確認している。法務省官僚は「検討する」としたが、若干の修正があろうが、ほぼ原案通りで政府は今国会に上程する。

 朝日新聞社(2月18、19日)が「テロ等準備罪」を設ける法案について全国世論調査(電話)を行ったが、「賛成」44%、「反対」25%、「その他・答えない」31%だった。ところが「一般の人まで取り締まられる不安をどの程度感じるか」という問いに対して「大いに」と「ある程度」を合わせた「感じる」が55%、「あまり」と「まったく」を合わせた「感じない」が38%だった。安倍政権のテロ対策と危機キャンペーンとセットで共謀罪制定の策動の「成果」の現れだが、多くの人々が「不安」に感じていることも示した。今後の共謀罪反対運動は、人権侵害に満ちた共謀罪の本質を暴き出しながら「賛成」層にも食い込み「不安」層の人々を反対へと獲得していく闘いでもある。共謀罪に反対する野党と連携し、国会を包囲し、上程阻止・廃案に向けて運動を拡大していこう。

(Y)