436b63fa 安倍政権は、8月26日、グローバル派兵国家建設の一環である対テロ治安弾圧体制にむけ、2020年東京五輪に向けたテロ対策と称して組織犯罪処罰法の中にあった共謀罪の名称を「テロ等組織犯罪準備罪」に変えた法案を9月26日に召集される臨時国会に提出することを検討していると明らかにした。刑訴法改悪の制定のうえで共謀罪の制定の政治的タイミングをねらっていたが、本格的な着手に入った。

 「共謀罪」は、これまで4回にわたって国会に提出してきたが、言論の自由、結社の自由、通信の秘密、基本的人権の破壊、サイバー弾圧など日常生活まで処罰対象(刑事法、商法、消費税法、道路交通法など六一五種類)を広げようとする現代版・治安維持法としての超反動法案であるがゆえに民衆の反対によって廃案に追い込まれてきた。

 たとえ法案の名称を変えたとしても近代法の既遂処罰が原則という法体系を国家権力の恣意的判断を前提とし、未遂でも罰することをねらっているのであり、従来の「共謀罪」の基本性格を踏襲している。犯罪の「構成要件を厳しくした」などと言っているが、まったくのウソだ。

 法務省は、これまでの「共謀罪」では適用対象を「団体」としていたが、法案では「組織的犯罪集団」に変えると言っている。だが「組織的犯罪集団」の定義はあいまいであり、具体的にどんな「集団」なのかを明記していないところにとんでもないトリックが隠されている。つまり、権力のデッチ上げストーリーに基づいて二人以上のグループを、例えば、市民団体、労働組合、サークルなどに適用すれば弾圧対象となってしまうのだ。

 極論ではない! 労働組合を「組織的犯罪集団」と規定したうえで団体交渉を逮捕監禁罪、金融機関への要請行動が強要罪、ビラ撒き・街頭宣伝が信用毀損や業務妨害罪として適用する危険性もありうる。現実として公安政治警察は、過去・現在において強引に「構成要件が成立」しているとして「犯罪」をデッチ上げ、不当な家宅捜索、逮捕を行ってきた。法案には、権力の恣意的判断を制限する規定もないから、従来通りやりたい放題の弾圧が可能なのである。

 「共謀」の定義も明らかにしていない。自民党は、2006年、「共謀罪」修正試案において「『共謀』の定義をさらに明確にするために『具体的な謀議を行い共謀した者』と改める。『目配せ』だけでは、条文上も共謀にあたらないことを明確にする」などと言っていた。だが法案は、さらに悪質化させ、「犯罪実行のための『資金や物品の取得、その他』を『準備行為』として構成要件に加える」としている。公安政治警察は、不当な家宅捜索によって押収した現金・貯金通帳、日曜大工道具を「組織犯罪準備」のための証拠として構成要件の成立として作り上げる。冗談ではなく「日曜大工」のための電動工具、大工道具、修繕のための工具類のたぐいも「爆弾製造」関連機材としてこじつけようとすることも可能となってしまう。

 この「謀議」の中身を立証するために「活躍」するのが、盗聴法(通信傍受法)だ。盗聴の対象犯罪が①銃器犯罪②薬物犯罪③集団密航④組織的殺人の四類型から傷害、詐欺、恐喝、窃盗などを含む一般犯罪にまで大幅に拡大してしまった。さらに通信事業者の常時立会制度を撤廃し、傍受対象通信を通信事業者等の施設において暗号化したデータを警察施設に送信し自動記録ができることになっている。

 盗聴の全データを記録するからプライバシー侵害が成立しているにもかかわらず、しかも権力の犯罪内容は全て秘密だ。盗聴法の改悪として住居不法侵入を合法化させる室内会話盗聴法の制定もねらっている。やりたい放題の盗聴の犯罪を暴き出し、セットである「テロ等組織犯罪準備罪」制定を許してはならない。

 菅義偉官房長官は、テロ等組織犯罪準備罪」法案の提出について「国民の安全、安心を確保することは政府の重要な責務だ。国際犯罪防止条約の締結に伴う法整備についてはこれを進めていく必要がある」と強調した(8月26日)。金田勝年法相も「国際社会と協調し組織犯罪と戦うことは重要な問題。必要な法整備を進めていきたい。国会審議の場などで示された不安や懸念があり、慎重に検討していく必要がある」と成立を押し進めていくことを宣言した(8月31日)。推進派(産経新聞など)は、「4年後に迫った東京五輪に向けたテロ対策の要の法案となる」、「犯罪防止条約は、昨年11月現在で約180カ国・地域が締結。主要7カ国(G7)で未締結は日本だけだが、これの締結には共謀罪の整備が不可欠だ」と煽っている。

 「共謀罪」は、2000年の国際総会で採択された「国連国際組織犯罪防止条約」に日本政府が12月に署名し、03年5月、国会で批准を承認したことにより、国内法整備のためとして組織犯罪処罰法の中に共謀罪新設を打ち出した。しかし共謀罪法案は03年、04年、05年、06年に国会提出したが、いずれも廃案に追い込まれてきた。今回は、従来の「共謀罪」の性格を引き継ぎながら「テロ等組織犯罪準備罪」として提出する。政府の法案制定の根拠も従来通り薄弱であり、詭弁の繰り返しだ。

 政府は、「必要な法整備が必要」などと言うが、ならばなぜ自由権規約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、社会権規約を批准しているにもかかわらず国内法制定をサボタージュし続けているのか。「共謀罪」制定は国際条約で承認しているから急ぐというのは、典型的なダブルスタンダードだ。そもそも法律の解釈・運用の指針となる国連立法ガイドや条約の「第5 目的」では、共謀罪の創設を求めているわけではない。しかも条約の意味と精神を生かし、その国の法的伝統を生かしていけばいいと明記しているほどだ。

 だから法務省、外務省官僚たちは、この文言を十分に知っているから人権条約関連法整備のサボタージュを平気で続けていることができるのだ。この怠慢を隠ぺいしながら、対テロ治安弾圧体制強化を押し出し、与党多数派を背景にして一挙に法案の制定を強行しようとしている。

 民衆に真っ向から敵対する「テロ等組織犯罪準備罪」法案を阻止していこう。

(Y)