SR_Front-2-page-0-e1461055645917「ブレグジット(英国のEUからの離脱)投票」は惨事だ。しかし闘いは続く
――EU国民投票結果に関する「ソーシャリスト レジスタンス」(第四インターナショナル・イギリス支部)の声明




 2016年6月24日



 EUから離脱するという「ブレグジット」投票は、右翼のゼノフォビア(外国人排斥)の勝利であり、英国の緊縮政策に対する闘いにとっては惨事である。これはレイシズムならびに移民への国境管理を強化する政策への白紙委任的勝利なのだ。

 われわれがこの結果を惨事だと述べるのは、ほんのわずかでもEU、あるいはその諸制度に幻想を持っているからではない。われわれはEUを新自由主義の資本家クラブだと見なしている。またわれわれが、キャメロン英首相が主導する、公式の反動的な、何がなんでも「EU残留」キャンペーンなるものに幻想を持っているからでもない。彼のいわゆる再交渉とは、移民労働者をふくむこの国の労働者の諸条件を悪化させるために開始されたものである。今回の、こうした形でのEU離脱は、英国の政治情勢を右の方向に鋭く押しやるものであり、緊縮政策に反対する闘いを弱めるものであるため、われわれはこの結果に反対しているのだ。それはこの国の個々の移民、難民、そしてマイノリティーにとっても惨事となるだろう。

 興味深いのは、キャメロンが退陣演説の中で、この国のEU市民の地位については、「今のところ」変化はないだろうと述べていることだ。

 幾百万人もの人びとが「ブレグジット(EU利脱)」に賛成投票したのは、「生活水準や公共サービスの悪化は移民によって引き起こされたものであり、西側諸政府が押し付けた緊縮政策によってではない」、という主張を受け入れたからである。また「EU残留」陣営は、2008年の経済危機について英国の銀行や金融制度を非難することもなかった。

 

「レフト・ユニティー(左翼統一)」(訳注:映画監督のケン・ローチなどが呼びかけ、2013年11月に結成された左翼グループ)の声明は次のように述べている。「今回の国民投票は、反移民感情に突き動かされ、レイシズムが焚きつけた極右からの圧力がもたらしたものだ。これは英国の政治史の中で最も反動的な全国運動であり、極右の公然たる登場に結果してしまった」。

 この主張は完全にその通りだ。全体の気運は毒に満ちたものであり、憎悪の感情がかきたてられ、ファシストの「英国が一番」――それは主流の「EU離脱」キャンペーンのトップテーマだった――という叫びによって、下院議員が暗殺された。

 ジョー(ジョアンナ)・コックス(英労働党の下院議員)の暗殺は、深く悲しい出来事だったが、それは国民投票キャンペーンが引き起こした大騒ぎの直接的結果だった。ジョー・コックスは難民を防衛してきた活動家であり、「残留」運動の支持者だった。多くのメディアや極右の政治家たちが支援した主流の「離脱」運動によって動かされた怒りと憎悪の感情は、イギリスのレイシズムや外国人嫌悪を数十年も前に引き戻しただけではなく、白人至上主義とつながったファナティックな極右登場の諸条件を作り出し、街頭での彼女の射殺まで引き起こしてしまった。

 今回の国民投票は、今までは決してなかったレイシズムとゼノフォビア(外国人憎悪)の正統化をもたらした。保守党のレイシスト下院議員だったイノック・パウエル(訳注:移民排斥を訴えた1968年の「血の川」演説で失脚)のこだまのような不快の極みとも言うべき声明が、なんの罪にも問われることなく垂れ流され、ある種の「公平」なコメント付きでメディアに受け入れられた。1968年に行われたパウエルの悪名高い「血の川」演説は、保守党の指導者テッド・ヒースからの除名処分に帰結し、パウエルは政治の世界から追放されたが、ファラージ(訳注;移民排斥・EU離脱を訴える英国独立党党首)の「忍耐の限度」というレイシスト的ポスターは、ある種の温和な親近感をにおわせた批判を引き起こしただけであり、それらは全体としてジョー・コックス暗殺へと導いた。

同様のイメージは、コメントや批判抜きで繰り返し新聞に掲載された。17日間連続で移民の問題を一面で取り上げたという理由で「デイリー・エクスプレス」紙には不満が寄せられた。



左翼と労働運動の一部はこうした危険について認識していた。「もう一つの欧州は可能だ」の発足は、重要なステップだった。コービン(労働党党首)とマクドネル、「モメンタム」、「レフト・ユニティー」、ケン・ローチ、緑の党のほとんど、とりわけキャロライン。ルーカスは、レイシストの妄言を食い止めるために全力を上げた。労働組合指導部の多くは正しい見解を表明し、UNITEとUNISONはレイシズムに反対し、移民労働者を擁護する重要な文書を発行した。FBU(消防士組合)のマット・ラックとTSSA(運輸事務職労組)のマニュエル・コルテスはとりわけ重要な役割を果たした。これはかれらへの重要な信用となった。

しかしラディカル左派のほとんどは、「離脱」投票を支持し、いわゆる「左派のEU離脱(レグジット)」キャンペーンを行ったが、それが国民投票全体に与えた影響はゼロだった。この運動は、左翼からの「EU離脱」という道がない時に、それが提起されているという幻想をふれまわり、キャメロンが失脚に追い込まれれば左翼にとってのチャンスが開かれるという虚言を主張した。ファラージ(英国独立党党首)と保守党右派が勝利した今でも、SWP(訳注:社会主義労働者党、ソ連=「国家資本主義」論だったトニー・クリフの系譜を継承する左翼グループ)は、「離脱」票の勝利を「金持ちや力ある者への反乱」と述べ、レイシズムの危険は「不可避とは言えない」と語っている。

かれらは、「離脱」運動の主流に代表される右翼の人種差別主義者の危険を認識することができない。かれらから生み出されるレイシズムと憎悪、政治情勢と力関係に与える反動的影響、いずれにせよそれらと結びついた危険は明らかである。とりわけ「離脱」投票の場合はそうなのである。

かれらは「離脱」票がこの国に住み、その地位が選挙の直接的結果として脅かされている220万人のEU市民に与える破滅的結果を無視する(それが脅威にさらされている時でも)選択を行ったのだ。しかしかれらは結成以来、レイシズムと外国人嫌悪に反対してきた組織である。1970年代に「ロック・アゲンスト・レイシズム」はレイシズムに大きな打撃を与えたが、そこでSWPは大きな信用を得ることができたのである。

投票結果が明らかになった直後、英国独立党のファラージは、英国の解放にとっての歴史的勝利についてメディアに誇り、新しい英国にとっての彼の反動的ビジョンの大枠を説明した。彼は勝者の側の指導者として扱われた。キャメロンは直ちに去らなければならないと語り――数時間後にキャメロンは辞任表明したのだが――新しい保守党の首相は、国民投票の委託を遂行するために「EU離脱派」でなければならないと述べた。



保守党大会に先だって。保守党内での準備を完了させるために指導部選挙の引き金が引かれるだろう。したがって、国民投票で委任された課題――移民の取締り、国境管理の強化、そしてわが国に住むEU市民の地位を制限することをテーマにした宣言を実施に移す宣言の後に、総選挙が当然にも行われると考えられる。

政治情勢が右に移行しているという状況で、年末に行われる総選挙はきわめて危険だ。左翼は、そして労働党も、そのために急速にギアを上げる必要がある。

労働党党首のジェレミー・コービンは、国民投票の期間中、原則的な役割――残留への投票を呼びかけるがEUとその機関には幻想を持たない――を果たした。例えば、最後の週のスカイTVニュースのインタビューでは。多くは若者で、熱心な雰囲気の人びとで占められている聴衆を前にして、外国人嫌悪、民営化、緊縮政策への批判で満たされたものだった。「影の内閣」閣僚のジョン・マクドネルは、FBU(消防士組合)のマット・ラック、キャロライン・ルーカス、ヤニス・ヴァロウファキスとともにロンドンで開催された大規模な「もう一つの欧州は可能だ」集会に参加し、緊縮政策とレイシズムに対決するラディカルな呼びかけを行った。

しかし主流メディアは数カ月間にわたって、この国民投票をおもに保守党内の二つの翼の間の闘いとして報じた。コービンに敵対的な多くの労働党議員は、こうした流れに沿って動き、保守党に従属した政綱を掲げて現れた。13年間にわたるトニー・ブレアとゴードン・ブラウンによる緊縮支持の労働党政権、そして五年間にわたるエド・ミリバンドの下での無力な野党というあり方は、労働党支持者の幻滅をもたらすことになった。



数十年間にわたって労働党が権力の座を占めてきた地方自治体では、攻撃にさらされている住民の支持を得ることができなかった。安価な住宅の不足、地方の医療サービスの劣化、学校予算のカットなどによって、移民に対する右翼の差別キャンペーンへの傾斜を許すことになってしまったのである。

 一部の地域――労働党や左翼が最もよく組織された地域であることが多い――では、労働党への投票は、残留に大きく揺り戻した。図書館切り捨てをめぐる最近の目立った闘いの舞台となったロンドン・ランベス(ロンドン南部の自治区)では79%が残留を支持し、コービンの支持者がほんの七週間前に市長職を奪取したブリストルでは残留が多数となった。北部の最大都市の一部――マンチェスター、リバプール、ニューキャッスル――では残留が多数だった。しかしイングランドとウエールズの労働党の圧倒的多数地域では――そこでは労働党の地域支部は数十年間にわたって消滅寸前であり、党機構は党の右派によって堅固に掌握されている――労働党支持者は、かれらの置かれている状況への抗議を込めて離脱票を投じたのである。

労働党のかつての拠点地域で、労働党の「分離反対」の立場に抗議してきたスコットランドでは、より左翼的な主張を行っているスコットランド民族党に投票が移行し、スコットランドの三二の小選挙区すべてが残留に投票し、二度目の独立住民投票に向かいかねない制度的危機が作り出されている。

いまやコービンは、有効に投票を動員することに失敗したとして労働党議員団の多くからの敵意に直面している。しかし労働党からの投票が緊縮政策と外国人嫌悪症に反対する残留投票の必要性を活性化させることに失敗したとしても、それが右派がコントロールしている領域の話である。労働党の一般党員と労働組合は、党の議員団とコービンを罷免しようというあらゆる動きに対して、コービンを防衛するために強く闘う必要がある。

おそらく今年の年末になるだろうが、刷新された右派のボリス・ジョンソン――マイケル・ゴーブ指導部の率いる保守党――そのマニフェストは、移民の抑制と、国民投票の正統性の主張――に対して労働党が総選挙で勝利するならば、それはあらゆる形態の緊縮政策に反対し、移民とすべての労働者の権利を支持するラディカル左派の綱領によってのみ可能となる。

もしコービンがそのような選挙綱領に基づいて闘う準備をするのであれば――われわれは彼がそうすることを望むが――、それはわれわれの期待するところであり、左翼は彼を支持して、全面的に結集すべきである。

(「インターナショナルビューポイント」2016年6月号)