配信用:被ばく労働分科会 3月27日、「核と被ばくをなくす世界社会フォーラム」(主催:実行委)の分科会6「被曝労働問題の現状~フランス・ウクライナ・韓国・日本」( 主催:被ばく労働を考えるネットワーク)が韓国YMCAスペースYで行われた。以下の5人は被曝労働の実態と問題点について報告した。

 フィリップ・ビヤールさん(フランス、原発下請労働者)―1985―2006年、仏電力公社の下請け労働者として保全作業に関わり、複数の原発で働く。

 「原発ロビー、仏政府によって制度化されている犯罪的組織と言える原発の中で働く見えない労働者の1人であり、同じような境遇の仲間たちは仏で3万人以上いる。原発ロビーによってまるで私たち自身が放射性物質の塊であるかのように扱われている。私は22年間、原発で働いてきた。2006年までの間に250ミリシーベルトの放射能を浴びてきた。ある同僚は、仕事を辞めるまで一シーベルトの放射線を浴びてきた人もいる」。

 「私は、CGTというナショナルセンターの組合員です。原発下請け労働者の組合の代表をしている。組合を立ち上げたのは、原発で働く労働者が病気となり、彼等の権利を訴えていくために作った。多くの労働者は亡くなったり、様々なガンや病気で苦しんでいる。仏電力が下請けに労働させる理由は、病気自体を下請けに出し、責任逃れが目的だ。さらに放射線にさらされるプロセスを見えなくさせ、健康診断を的確に受けさせていない。労働組合活動をさせないことも目的に入っている。原発労働者の給料を少なくすることも狙いだ。原発労働者を次ぎ次ぐと変えて、多くの放射線を浴びせている。今後も闘っていくために繋がりを強めていきたい」。

 ムィコラ・ヴォズニュークさん(ウクライナ、チェルノブイリ原発事故処理作業者)―チェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)。原発から約1キロに仕事場(資材保管部門長)。関連作業で被曝。チェルノブイリ被災者認定(1992年)。

 「チェルノブイリのショックは、ある程度過ぎ去っている。事故の原因は、事故以来、統一の見解はないが、そもそも原発の構造自体に問題があった。事故時、運転員の対策が不適切であった。4号炉では実験のために安全装置のスイッチが切られていた。実験そのものが事故の原因の一つだ。事故で炉心が破壊され、大量の放射性物質が大気中に放出された」。

 「1986年から89年の間、事故処理作業費用は、100億ドル以上。間接費用が250億ドルと言われている。ウクライナは、事故後の問題を解決するために8億~9億ドルも支出しなければならなかった。10万人以上の人々が避難させられた。チェルノブイリ事故があったにもかかわらず福島原発事故が起きてしまった。人類
は原発を拒否しなければならない」。

 ヴァレンティン・ヘルマンチュクさん(チェルノブイリ原発事故処理作業者)―1985年より原発職員。チェルノブイリ原発事故当日、防衛隊に参加し被曝。キエフ放射能医療研究所から全ての臓器に問題があると言われた。高血圧で心臓に負担過重。

 「原発の運転は慎重でなければならない。原発事故の原因は色々存在している。スリーマイル島事故、チェルノブイリ事故、福島事故を見れば、明らかなように数万人の人々が心も含めて犠牲になった。今後の提案として、原子力発電の構造的欠陥、安全システムの不備について情報交換をすること、原発労働者の採用、訓練をよりよいものにする。末期的な状況でも方策がとれるような訓練が必要だ。人口が密集しているところの原発建設は廃止しなければならない」。

 「世界的な医療プログラムを被災者のために創設することが必要だ。予防的な措置もしなければならない。原発被災者のために訓練センターの設立も必要だ。放射線廃棄物の解決なくして新規に原発建設してはならない。国際的な情報交換を深めていくことは重要だ。だが国の主権の主張によって阻害されている。核兵器の輸出の可能性が存在し続けるかぎり、核を輸出してはならない。太陽光エネルギーにより関心を払うべきだ。核開発のために資金を使うのではなく太陽光エネルギーに使うべきだ。さらに労働者の労働条件改善、事故、病気対策は優先されなければならない」。

 ギム・ヅチョンさん(公共非正規職蔚珍支会水処理分会長&全国の原発水処理連合会長)―2002年8月~2014年10月/ハンウル原子力韓国の整数工業勤務、2014年10月から蔚珍原子力水産インダストリーハンウル推処理事業所。

 「2014年6月、韓国の4箇所〈ハンウル、ウォルソン、コリ、ヨングゥアン〉の原発で労働組合を結成し、私はハンウル原発で働き、全国水処理労働組合連盟の会長をしている。2016年で25基の原発が稼働している。電力生産の30%が原発電力だ。原則的には、国民の安全と核の安全管理のためにすべての従事者は直接雇用とすべきだ。しかし、整備や放射線官吏業務などは、協力業者(下請負)による間接雇用だ。協力業者は入札により、1年から3年単位で韓国水原子力と契約するので、労働者は本人の意志とは無関係で間接雇用の非正規労働者となってしまう。すでに約30%が間接雇用・非正規労働者、新たに稼働する原発では約40%が
非正規だ」。

 「組合は、韓国水力原子力を相手に、間接雇用・非正規労働者の正規・直接雇用などの問題で対政府闘争を開始した。2016年3月11日、世宗市の政府総合庁舎で集会をスタートさせ、核労働者の正当な権利を獲得するために努力している。雇用と賃金の格差は、原子力発電所の安全問題と直結している。世界原子力協会や米国原子力規制委員会などに間接雇用禁止について厳格に規制し、持続的に管理基準を策定していくことが必要だ」。

 池田実さん(元収束作業員〈東電福島第一原発〉、元除染作業員〈浪江町〉)―2014年2月~5月まで福島の帰還困難区域の浪江町で除染作業に従事。14年8月~15年4月末まで東電福島第一原発構内で廃炉に向けた事故収束作業に従事。

 「除染と第一原発で約1年3カ月働き、積算被ばく線量は7・25ミリシーベルトでした。法律では1年50ミリ、5年で100ミリシーベルトが上限と定められ、東電は年20ミリシーベルトを越えないように管理している。それから見れば十分低い値かもしれないが、厚生労働省が原発作業での白血病の労災基準としてあげている年五ミリシーベルトを越えている。昨年初めて福島第一原発で作業し白血病に罹病した労働者の労災が認定されたが、原発作業員の労災認定は狭き門だ」。

 「私のように一度離職したら、その後の保証は全くありません。もし罹病したとしても自費で受診、治療するしかなく、労災申請するには多くのリスクを伴います。劣悪な労働環境の下で保障もなく使い捨てられているのが福島原発作業の実態だ。今後、果てしなく続く廃炉収束作業、東電任せ、下請け任せの組織体制を改め、国が前面に出て、原発作業員の雇用、労働条件、福利厚生の改善、そして被ばく保障にあたるよう望む」。

 各報告者に対して若干の質疑応答が行われた。最後に論議の掘り下げは、翌28日の「被曝労働者の権利を求める 国際連帯シンポジウム」で行っていくことが提案された。(Y)