IMG_0857全国の原発事故被害者はつながろう
福島原発事故から5年
被害者を切り捨てるな! の叫び


私たちは絶対負けられない

 三月二日午後二時から、「福島原発事故から5年 被害者を切り捨てるな!全国集会」が原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)主催で開催され、日比谷野外音楽堂に福島を中心とした全国各地の告訴団が集まった。参加者は約八〇〇人。

 最初に司会者が午前中に緊急要求を提出し政府と交渉してきたことを報告した。そして長谷川健一さん(ひだれん共同代表、飯舘村)が「全国に避難して裁判を起こしている。横のつながりが弱かった。東電、国に立ち向かう。子ども被災者支援法は今まで通りで何の進展もない。これに負けてはいけない。力を合わせていこう」とあいさつした。次に、ひだれんの統一要求、緊急要請を読み上げた
(別掲)。

各地から怒りの訴えが続く

 続いて参加した団体が次々と報告した。

 宇野さん(京都訴訟団)。「個別立証に入っている。国にあざむかれ、苦しい日々を送っている。高浜4号炉が再稼働した。おとな・こどもに健康異変が起きている。五年はほんの序章だ。政府は避難者の数さえ把握していない。避難の権利が認められない。そんなことがあってはたまらない。被ばくの強要を許さない。第三期の署名を始める。三月九日に政府交渉を行う」。

 豊村さん、菅野さん(関西訴訟団)。「公判は第八回。告訴人は八七世帯、二四〇人。半数は子どもたち。自分たちの未来のために闘っている。命より大切なものがあるのか。安心して暮らしていくためにも声をあげよう。二度と帰れない。二〇〇年耕した田畑が原野に戻っている。国を断固追及していく」。

 キビタキの会(双葉郡葛尾村)の小島さん。「福島県の子ども一六六人が甲状腺がんにかかっていることが分かった。国は因果関係を認めようとしない。これからも病気は出るだろう。復興、復興の声だけだ。被害救済法を作れ」。

 賠償フォーラム山形・福島。「山形には三千余人が避難している。来年三月いっぱいで住宅支援が打ち切られる。やっと慣れたところだ。実態を調査し施策しろ」。

 鴨下さん(避難生活を守る会、いわき市)。「避難住宅の期限を撤回すべきだ。コミュニティの破壊だ。打ち切り対象一万八〇〇〇人に対して充分な補償をしろ」。

 くまもとさん(東京訴訟団)。「訴訟団、八九世帯、二八〇人。一五回裁判やっている。一一月に証拠調べ、本人尋問に入る。自主避難者の住宅の無償提供をやめ、延長しないと言っている。セシウム137は半減期が三〇年もあるのにだ」。

 武藤さん、佐藤さん(子ども脱被ばくの会)。「五月二六日に第五回。外で満足に遊ぶことができない。子どもは福島の生活が恐いと言っている。子どもたちを被ばくから守らなければならない」。

厚労省・東電に向けてデモ行進

 南相馬二〇mSv撤回訴訟団。「二〇一四年、二〇mSvに下がって規制が解除された。全国的には年一mSvに設定している。土壌汚染では四万ベクレルの所もある。どこでも高い所がある。五年後東京オリンピックがある。参加国を減らさないためだし、あるいは原発輸出のためだ。全世界の原発をすべてなくすべきだ」。

 村田さん(神奈川訴訟団)。「避難者三〇〇〇人いる。六一家族、一七四人の訴訟団。一三回終わり六合目だ。南相馬小高区、四月に解除。誰一人納得していない。家の周り除染が九割しか終わっていなし、畑・田んぼの除染始まったばかり。汚染物質を詰めたフレコンバッグがいたる所にあり、黒い山に沈んでいる。富士山より高い苦しみの山だ」。

 赤石沢さん(飯舘村民救済申立団)。「三〇〇〇人で申し立てた。村の存続が大事として情報が出されず、初期被ばく者がたくさん出た。山林の近くでは放射線が高く、再除染せざるをえなくなっている。土壌は高いままだ。被害者はがまんの避難生活をしている。限界を感じている。絶対に許してはならない」。

 武藤類子さん(福島原告団)。「告訴してから四年。当時の東電社長ら三人が強制起訴された。当たり前のことだ。われわれはつぐなえと言っている。ひだんれんは闘う被害者だ」。

 宮城訴訟団も参加していることが紹介された。小宮山泰子衆院議員(民主党)、玉城デニー衆院議員(生活の党と山本太郎と仲間たち)が参加した。

 集会宣言を読み上げ、「原発事故被害者の声を聞け!」「原発事故被害者を切り捨てるな!」のプラカードを掲げ、「謝れ」「償え」「補償せよ」とシュプレヒコールをあげ、厚労省・東電に向けてデモを行った。        
(M)
 
 
 ひだんれん統一要求
 
 基本要求


I、責任の明確化と謝罪


1.日本政府
 日本政府は、福島第一原発事故による原子力災害の法的・政治的責任を認め、被害者に謝罪をし、以下の要求について実行せよ

 (1)エネルギー政策を転換し、原子力発電から撤退すること

 (2)事故原因や事故対応の経緯、被害の調査を行い、原因の特定、責任の所在、被害の全容を究明し、速やかに公表すること

 (3)全ての被害者の詳細な健康調査、土壌を含む詳細な汚染調査を行い、速やかに公表すること

2.東京電力

 東京電力は、福島第一原発事故による原子力災害の法的・社会的責任を認め、被害者に対し明確に謝罪をし、以下の要求について実行すること。

 (1)情報開示を徹底し、刑事・民事訴訟等においても関係資料や情報を進んで提供すること

 (2)自死遺族らの訴訟等において求められた謝罪に応じること

 (3)損害賠償訴訟等においては原告の要求に従い、判決に対して被告側から控訴・上告は行わないこと

 (4)ADRにおいて、原子力損害賠償紛争解決センターの和解案等を拒否しないこと

Ⅱ.賠償

 日本政府及び東京電力は、連帯して、福島第一原発事故による原子力災害で発生した全ての被害及び今後発生する全ての被害について、被害者全員に、完全に賠償せよ。政府は、賠償が完了するまでの間に生じる被害及び完了後に生じた被害について、必要な立法を含む万全の措置を講じ、憲法11条・13条及び25条に定める全被害者の人格権、生存権を保障せよ

1.福島第一原発事故による原子力災害発生時に生じた被害への賠償

 (1)避難、退避、帰還、往来などによって生じた損害の全額を賠償すること

 (2)生活破壊による経済的負担の増加、医療費の発生・増加、営業損害、地域社会の破壊による損害などの全額を賠償すること

 (3)家屋、家財、土地、生産物などの被害に対し、事故発生前と同水準への回復を可能とする賠償をすること

2.福島第一原発事故による原子力災害発生後に生した被害への賠償

 (1)「生活破壊」「ふる言と破壊_等に関して生じた精神的苦痛に対して、全ての被害者に相当の慰謝料を支払うこと

 (2)事故発生後の不作為等によって拡大した被害及び精神的苦痛に対して、全ての被害者に相当の賠償及び慰謝料を支払うこと

 (3)情報隠匿・歪曲・意図的情報の流布などにより与えた精神的苦痛に対して、全ての被害者に相当の懲罰的慰謝料を支払うこと

3.今後発生する被害への賠償

 (1)今後発生する健康被害に対し万全の賠償を確約すること

 (2)今後発生する地域社会、地域産業の衰退・消滅に伴う被害に対する万全の賠償を確約すること

 (3)自然・生態系に生じた被害に対する万全の賠償を確約すること

Ⅲ.保障

1.被ばく防止
 (1)〈汚染調査〉政府は、詳細な空間線量及び土壌汚染濃度の測定を早急に実施し、結果を速やかに公表すること

 (2)〈原状回復〉政府は、前項調査に基づき、空間線量、土壌汚染濃度とも事故以前に復する措置を行うこと

 (3)〈被ばく回避〉前項原状回復がなされるまでの間、政府は、住民に避難、居住、帰還の選択の自由を保障し、いずれの場合も憲法25条に保障される生活を維持するに必要な支援を行うこと

 (4)〈子どもの転地保養〉特に子供の生活、教育環境における被ばく回避を徹底し、年間空間線量が1乱ジーベルトを下回ったことが科学的に立証されていない地域に住む18歳以下の子どもに対し、年間30日以上の転地保養を保障すること

2.健康調査・健康手帳

 (1)〈健康診断の拡充と疫学調査の実施〉少なくとも福島県内全域と「汚染状況重点調査地域」に指定されている全市町村を対象に、子どもの甲状腺に限らず、全ての年齢層のあらゆる疾患に対する健康診断と疫学調査を政府の責任で実施し、予防と治療体制を確立すること

 (2)〈健康手帳の交付〉少なくとも前項の住民(事故後の移動を含む)に対し、「健康手帳」を交付して事故後の健康状態を把握するとともに、一定線量以上の地域に居住して健康を阻害された住民については、少なくとも原爆被爆者と同等の援護を行うこと

3.事故収束作業の確実な促進と作業員の安全確保

 (1)現行の「廃炉行程表」を見直し、「確実な事故収束」を第一とする工程を示すこと

 (2)徹底した情報開示の下で、住民の安全を確保するとともに、政府が責任をもって作業員の労働環境と健康維持・管理にあたる体制を早急に確立すること

 (3)作業員に健康被害が生じた場合は、治療、生活維持のための万全な保障策を講じること
 
 緊急要求
 

 以上の基本要求を踏まえ、日本政府と福島県の政策提示によって生じている当面の問題について、以下の点を要求する

1.住宅無償提供に関して

 (1)福島県が2015年6月15日に発表した「避難指示区域外避難者に対する住宅無償提供2017年3月打ち切り」の方針を撤回し被害者への完全賠償が完了するか、または新たな法的保障措置が発効するまで従来通り無償提供を継続するよう、福島県に働きかけること

 (2)仮設住宅からみなし仮設住宅への転居、生活条件の変化に応じた転居など、住み替えを柔軟に認めること

 (3)放射能汚染地域からの新たな避難者への無償提供を再開すること

2.避難指示区域の解除・賠償打ち切りに関して

 (1)政府が2015年6月12日に閣議決定した「福島復美加道化指針・改訂版」で示した居住制限区域と避難指示解除準備区域の「2017年3月までの避難指示解除及び1年後の賠償打ち切り」の方針を撤回すること

 (2)年間追加被ばく線量が1 mSVを下回ったことが科学的に実証され、原発サイトにおける事故再発の危険性が完全に除去されるまでは現行の避難指示を維持レ帰還を強要しないこと

3.「原発事故子ども・被災者支援法」(支援法)に関して

 (1)政府が2015年8月25日に閣議決定した「支援法・基本方針改定」を撤回すること

 (2)支援法に定める避難・帰還・居住の選択の自由を認め、「被ばくを避けて生きる権利」を保障する施策を早急に確立すること