配信:TPPシンポ写真 1月30日、TPPに反対する人々の運動は、田町交通ビルで「つながれアジア!葬れTPP!1・30国際シンポジウム」を行い、約100人が参加した。

 安倍政権は、食料主権と生活破壊、グローバル資本のための環太平洋経済連携協定(TPP)を昨年、強引に「大筋合意」を進め(10月5日)、既成事実化のキャンペーンを広げている。2月4日に12カ国政府による署名式がニュージーランドで行われる。TPPは農産品関税、食の安全基準や食品表示、投資や金融、サービス貿易全般なども含まれており、民衆の生活破壊へと直結する協定だ。だからこそ十分な情報公開が求められている。

 ところが「大筋合意の概要」(日本語訳/2月5日)を公表したが、協定文は5500ページと膨大であり、関連文書すべてが公開・翻訳されているわけではない。安倍政権は、今国会でTPP協定について審議を押し進め、なんとしてでも批准し、その延長で関連法案なども成立させようとしている。TPP交渉を行ってきた甘利明経済再生相(TPP担当相)が金銭授受疑惑で辞任に追い込まれ、政権を直撃したが、後任に石原伸晃衆院議員(自民党)を就かせた。石原は、TPPの全貌を知らないため官僚の指示通りに発言するのみだ。

 世界の人々の間にはTPPによる貧困の拡大、農業と環境の破壊、食の安全軽視への不安が広がっている。TPPに反対する人々の運動は、海外ゲストを迎え、国際的な反対運動の連携を強めていく一環としてシンポジウム(東京・山形・大阪)を開催した。

 主催者あいさつが山浦康明さん(TPPに反対する人々の運動共同代表)から行われ、「2015年10月5日に合意したTPPは、2月4日には12カ国の署名式が予定されている。その後、各国の国会で承認の手続きに入る。日本は、TPPの既成事実化が始まっている。国会ではTPPが成立していないにもかかわらず、対策の法律や予算が先行して行われるという異常な事態を迎えている。協定文を分析したが、政府が説明しているような内容ではなく、問題点がたくさんある。グロバル企業にとって有利なルールであり、農民、労働者、農民、消費者、市民にとってはとても問題が多い協定だ。TPP担当相の甘利が金銭授受問題で辞任した。政府はガタガタだ。米国においても大統領選がスタートし、TPPどころではない。TPPを葬りさろう」と訴えた。

 三人の海外ゲストから以下のような問題提起が行われた。

 ファウワズ・アブドゥル・アズィズさん(マレーシア/第三世界ネットワーク)は「TPP、マレーシア、市民社会運動―日本での議論に向けて」について報告した。

 「2013年、52の市民団体がTPPに反対する運動(BANTAH)を立ち上げ、TPPに関する市民への啓発、政府の署名決定を覆すことができない場合でも、マレーシアにとっての費用と効果を精査するよう働きかける取り組みを行った。主に①投資とISDS(投資家国家間紛争解決)②政府調達と国有企業に関して
述べる」。 「投資の条文は、広範かつ曖昧な適用範囲であり、外国人投資家の『資本』と『投資』に与えられる一方的かつ過度な保護体制になっている。開発の努力に反する偏った条項だ。公益に反する外国企業や投資家の利益追求に対して支持者は、安全策や除外措置あるから保健衛生、環境、社会的弱者の優遇政策などで政府の権利は維持されると主張するが、公益を守るための適切な措置とはなっていない」。

 「TPPによって政府調達の際、国内企業と同じ待遇と市場参入の機会を外国企業に与えなければならなくなる。外国企業が受注した場合、国内経済への『波及効果』がかなり小さくなり、利益は大方国外へ『漏れ』出るため、成長をけん引する手段としての政府支出の効果が限定される。入札が国内企業にのみ開かれている現在の政策を変更し、基準値レベル以下の小さな案件を除いて同等かそれ以上の優遇された条件を外国企業に与えなければならなくなる。米国や他のTPP加盟国により相当額の調達案件が公開されるかもしれないが、どの程度マレーシア企業は参入できるだろうか?」。

 アズィズさんは、反TPP運動の教訓と課題について、「人権問題や持続的開発の分野で活動する市民団体に、海外での貿易や投資に関する協定と関係があることを理解してもらうことは難しく、また非ブミプラトラ(地元民)の経済団体にブミプトラ支持にみえる政策に納得してもらうことも簡単ではなかった。BANTAHはすべての民族に影響があることを指摘してきたものの、TPPがブミプラトラ寄りの優遇政策に打撃となる可能性があることが、優遇政策に反対する人々の注目を集めることになった」と指摘した。

 チョン・テインさん(韓国/韓米FTA阻止汎国民運動本部に参加)は「世界金融危機とFTA―TPPと韓米FTA」というテーマで報告。

 「現在、世界金融危機から長期停滞に向かいパワーシフト(力の移行)という危機が進行している。アジアへの軸足移行だ。その中でTPP(韓米FTA)は、市場原理主義の頂点であり、国際的な合意による民営化と規制緩和だ。オバマ米国大統領は、『TPPがあれば中国は地域のルールを設定できない。米国はそれをする』と言っているように、米国にとってアジア重視の一つで軍事的手段による中国封じ込めだ」。

 「TPPが狙う分野は、サービス、知的財産権、投資などであり、公的部門の破滅だ。とりわけこれまでの金融機関、新金融サービスに対して規制する可能性が強くし、自由貿易と逆行する構想だ。TPPの批准に対抗し、新しい公正な貿易協定を求めるために①サービスの自由化はネガティブリストではなくポジティブリストへ②不適合措置についてサービス分野からラチェットの仕組みを削除③未来最恵国待遇④ISDSの抜本的な見直しまたは削除⑤保険医療に関する章の見直しが必要だ。今後の対策として、例えば、アジアと世界の平和と繁栄に向けて、米国と中国との間で中立的な地域協定を構築することは可能か?アジアに第三の地域?は可能かなどを構想していくことが大事だろう」と強調した。


 モアナ・マニアポトさん(ニュージーランド/先住民族マオリの芸術家)は、TPPによって「政府は知的財産権に関する提訴によって生じる事柄をどのように解決するのか。投資家の権利保護として、特に鉱物や水などの天然資源をめぐる投資家対政府家の紛争解決(ISDS)による影響はどうなるのか。マオリの健康に関する権利はどうなるのか。手頃な価格で薬剤を入手できる権利はどのように保証されるのか。どれも紛争を誘発し、TPP参加国と投資企業は、自ら保護するための法的権利を手に入れることでしょう」と糾弾した。

 さらに「交渉は終結したものの、未だに条文が発表されない時に、政府は条約を受け入れるための必要条件とした『最高水準』には十分達しない状態にあるということを認めた。TPPは単なる新たな自由貿易協定などではない。すべてのものの商品化が急速に進む世界の中で、マオリは今まで以上に、未来世代に対する守護者として、私たちの祖先から受け継いだ責任というものを痛感しています」と発言した。

 最後にシンポジウムアピールが提起され、「いま地球の隅々まで広がる新自由主義的グローバリゼーションは、世界の何重もの格差と抑圧、差別を生み出し、貧困と飢えの連鎖をつくりだしています。その最先端の動きがTPPなのです」と批判し、批准阻止にむけた国際的包囲網を作り出していくことを参加者一同で
確認した。

(Y)