CQt_1ySUcAAZWjU 翁長沖縄県知事は、九月一四日、沖縄県庁で記者会見を行い、名護市辺野古の米軍新基地建設に向けた埋め立て工事を承認した仲井真前知事の措置を取り消すと発表した。八月一〇日から一カ月間埋め立て工事を中断して沖縄県側と「集中協議」に入るという菅官房長官の発表を受けて、翁長知事は協議期間中の「埋立承認取り消し」は行わないと言明したが、協議期間中、安倍政権の側はまったくこれまでの態度を変更することはなかった。

 九月一二日、まさに東京で辺野古新基地建設の断念を求める国会ヒューマンチェーンが二万二〇〇〇人の大結集で成功したその日、沖縄防衛局は基地建設に向けた海上作業を強行した。それは安倍政権の「力づく」の「聞く耳を持たぬ」本性を改めてむきだしにしたものであり、戦争法案成立強行と同質の攻撃だった。翁長知事のこの声明は、安倍政権に対して屈せず、沖縄の「島ぐるみ」の意思で、辺野古基地建設に立ち向かうことを表明するものだった。

 この「承認取り消し」表明を受けて、一連の手続きの後に一〇月一三日か一四日にも翁長知事は「承認取り消し」命令を出すと言われている。

 

 抜き差しならぬ重大局面



 ここで「琉球新報」の九月一五日「社説」を紹介しよう。

 「沖縄は抜き差しならない重大な局面に入った。/翁長雄志知事は辺野古新基地建設をめぐり、前知事の埋め立て承認の取り消しに向け手続きを始めた。就任後最大の行政権行使だ。政府が対抗措置を取るのは確実で、法廷闘争に突入する」。

 「これは単なる基地の問題ではない。沖縄が、ひたすら政府の命ずるままの奴隷のごとき存在になのか、自己決定権と人権を持つ存在なのかを決める、尊厳を懸けた闘いなのである。知事はもちろん、われわれ沖縄全体が今、近代以来の歴史の分岐点に立っている」。

 「琉球新報」のこの社説は、仲井真前知事が二〇一三年末に入院していた都内の病院から抜け出し、菅官房長官と密会して自らの公約を翻して、辺野古新基地建設のための埋め立てを承認したことの不当性を、あらためて怒りをこめて糾弾している。

 翁長沖縄県知事は、沖縄防衛局からの「聴聞」を一〇月七日に設定した。しかし防衛省も沖縄防衛局もこの「聴聞」を拒否し、「埋め立て工事」をあくまで強行するという態度をあらためて沖縄県に突きつけた。

 この間、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前では、九月一七日、一八日、二二日と連続して警察による暴力的排除・不当弾圧で逮捕者が出ている、二二日の逮捕者は秋の連休の最中に辺野古で開かれていた「国際平和キャンプ」に参加していた韓国人青年だった。

 この国際平和キャンプは、韓国の済州島、台湾、沖縄を結ぶ「東アジアの平和の海」の実現のために行われている企画で、韓国、台湾だけでなくハワイ、オーストラリア、ニュージーランドなどから六〇人以上が参加していた。

 逮捕された韓国人の青年は身重の妻が警官によって脇を抱えられたたためにとっさに妻をかばおうとしたことが「公務執行妨害」だとして逮捕され、一〇日間の拘留まで付けられたのだ。

 こうした「島ぐるみ」の闘いへの弾圧の強化を、絶対に許してはならない。



 安倍政権はどう動くか



 今後安倍政権の出方として、知事の「埋め立て承認取り消し」命令に対して、行政不服審査法による審査請求を国交相に対して行い「承認取り消し」違法採決を求める場合、あるいは地方自治法に基づき国交相に「承認取り消し」の是正を指示させ、県が従わない場合には高等裁判所に代執行を求める場合、が考えられるという。

 いずれにせよ辺野古の現場での闘い、安倍政権の強権的・差別的な「沖縄つぶし」に対決する「ヤマト」での闘い、そして法廷闘争という何重もの闘いが必要とされる。そして「戦争立法」の廃止・安倍政権の打倒を求める広範な運動を築き上げる闘いの中に、この沖縄辺野古新基地建設阻止をしっかりと組み込んだ闘いを作り上げることが問われている。

 一〇月五日、辺野古への新基地建設を許さない実行委(辺野古実)は防衛省前で、月例行動を行った。

 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの大仲尊さんが、知事の埋め立て取り消し命令が出て以後、いよいよ本格的な闘いの局面に突入すると檄を発した。現地から電話で訴えた安次富浩さん(ヘリ基地反対協共同代表)は、「承認取り消し」命令が出れば、国のやっていることは違法だという前提でゲート前行動、海上阻止行動を行う、と語った。

 神奈川の仲間からは米原子力空母ロナルド・レーガンが新たに横須賀を母港として配備されたことに抗議した行動を報告した。沖縄・一坪反戦関東の仲間からは、この間のゲート前での相次ぐ弾圧・逮捕に抗議する呼びかけが発せられた。

 なお翁長県知事が「埋め立て承認取り消し」命令を発した翌日の午後六時半から、首相官邸前で、安倍政権に対して「工事中止」「辺野古新基地建設断念」を求める行動を行うことが呼びかけられた。

(K)