ref_l治安弾圧・民衆管理監視強化のためのマイナンバー(共通番号)と個人情報保護法の改悪案反対


マイナンバーカードがなくても困らない

安倍政権は、3月10日、グローバル派兵国家建設にとって必須のシステムであり、治安弾圧・民衆管理監視強化のためのマイナンバー(共通番号)と個人情報保護法の改悪案を国会に提出した。

 

改悪法案の名称は、「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」と長たらしい文言となっている。マイナンバー導入スケジュールが決まっているため、性格が違う2法案を強引に一本化し早期成立を目指している。

 

改悪法案の目的は、15年10月から市区町村による民衆一人一人に12桁の個人番号と13桁の法人番号を通知し、16年1月に制度を強行することを前提に、18年から「金融分野、医療等分野等における利用範囲の拡充」と称して、「預貯金口座への付番、特定健診・保健指導に関する事務における利用、予防接種に関する事務における接種履歴の連携等」へつなげ適用拡大を狙っていることだ。まさに官民分野共通番号導入による監視社会へのさらなる踏み込みだ。


安倍政権のねらい

 

政府は、改悪の意図を「個人情報の保護を図りつつ、パーソナルデータの利活用を促進することによる、新産業・新サービスの創出と国民の安全・安心の向上の実現及びマイナンバーの利用事務拡充のために所要の改正を行うもの」と位置づけているが、その本音は麻生太郎財務相が「(税の)徴収にも利用できて公平適正な納税につながる」として、21年をめどに義務化の強行だ。

 

つまり、社会保障の給付抑制路線を背景にした税・社会保険料の徴収強化にある。税務署や年金事務所などが、マイナンバーで照会し税務調査、資力調査が可能となる。だから金融機関へのマイナンバー登録は任意で強制力はないにもかかわらず、新規に銀行口座を開設時にマイナンバーを記入させたり、すでに口座がある場合は登録を促したりしていくことになる。

 

医療分野でも自治体や健康保険組合が乳幼児の予防接種記録、特定健康診査(メタボ健診記録)などを管理しチェックしやすいようにしていく。 すでに厚労省は、医療等分野での番号による情報連携が想定される利用場面として①医療保険のオンライン資格確認②保険者間の健診データの連携③医療機関・介護事業者等の連携④健康・医療の研究分野⑤健康医療分野のポータブルサービス(医療健康履歴の確認、予防接種の案内)⑥全国がん登録を打ち出している。将来的には、健康保険証の役割も担わせ病院での診療記録を管理し、二重診療の防止などで医療費の削減につなげようとしている。

 

ところが厚労省は、医療情報等の漏えい・悪用の危険性について触れることはしていない。だから日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会は、「医療等IDに係る法制度整備等に関する三師会声明」を出しているほどだ(2014年11月)。

 

声明は、「患者の病歴という極めてプライバシー性の高い情報が個人番号と紐付く危険性が高くなる」から医療の現場で利用すべきではないと主張している。また、「過去から現在治療中の病気、死後にいたるまで紐付けできる」から漏洩した場合を想定して、医療IDは必要な場合に「忘れられる権利」「病歴の消去」「管理番号の変更」「複数管理番号の使い分け」などが担保されていない欠点を指摘した。

 

マイナンバー制度(2013年5月成立・公布)は、税務署や自治体などが別々に把握している所得や納税、社会保障サービスなどの状況を管理し、年金、医療、介護保険、生活保護、労働保険、税務の6分野で活用するとしており、さらにIC(登録証)カード(氏名、生年月日、性別、住所を記載し、ICチップに番号を記録する)を持たせ、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の住民票コードによって住民登録・戸籍・収入・税・健康保険・医療・福祉給付・介護保険・年金・免許・旅券・犯歴などの個人情報を一元化することにある。警察庁は、マイナンバー制度が省庁自治体間のデータ連携を認めているから治安弾圧のために個人情報の使い放題へと広げていくことは必至だ。

 

今回の改悪法案の「金融分野、医療等分野等における利用範囲の拡充」は、営利主義のために個人情報を大いに使うための突破口となる。すでに民間レベルの個人情報流出事故は限りなく続出している。各省庁・行政においても公務員の守秘義務があっても、個人情報漏洩事件・秘密データ漏洩、犯罪歴・病歴の漏洩など数多く発生している。ハッカーによる不正アクセスやサイバー犯罪、サイバー攻撃も多発している。要するに現段階の「技術水準」では個人情報流出事故は、阻止できないことを証明しているのだ。個人情報を国家が一元的に集中するのではく、分散型によってできるかぎり情報漏洩を防止していく前提条件の整備が必要なのだ。

 

ところが政府はさかんにマイナンバーのコマーシャルを個人情報漏洩の危険性とセキュリティーの脆弱性をひた隠しながら、なにがなんでも導入強行にむけてばらまいている。個人情報をつかみきるシステム構築は、ICカードによる身分証明書機能や個人情報の統合的なデータベース化によって国家権力の統治力を強化していく装置となるからだ。


個人番号カードの申請やめよう

16年1月からマイナンバーの利用と個人カードの交付(任意)が開始される。行政、金融機関、医療機関等、会社等の関係書類で番号の記載が求められ、強制ではないが本人確認のためにマイナンバーカードの提示が求められる。カードは、顔写真を添付して申請しなければ届かない。当面は任意だが、今回の改悪を通して個人番号カードに医療分野利用を拡大し、保険証へとつなげることによってカード義務化の下地を積み上げていこうとしている。

 

しかしこのカードがとんでもない「なりすまし」を増やすツールとなってしまうのだ。政府は、「顔写真付きだからなりすましがしにくい」と居直っているが、カード表面の顔写真を取り替える偽造が可能なのだ。本人確認の場合、内蔵されたICチップの顔写真デートをかならずチェックしなければならない規定と罰則がないのだ。偽造カードによって別人になりすました犯罪が横行することは間違いない。

 

政府はカード義務化の材料としてカード普及率を根拠にするだろう。だから個人番号カードを申請せず、通知カードのままでいいのだ。「マイナンバーカードがなくても困らない」を合い言葉に民衆管理監視強化に有効な痛打を与えていかなければならない。

 


自己の個人情報をコントロールする権利を否定

個人情報保護法改悪案は、匿名加工情報を特定できないようにすれば本人の同意なしで企業利益のために活用できることを目的にしている。いわゆる「ビッグデータ」と称する商品価値が高い個人情報を金儲けのためのマーケッティング調査などに有効活用していくことだ。内閣府の外局として個人情報の取扱いの監視監督権限を有する第三者機関(個人情報保護委員会)を特定個人情報保護委員会を改組して設置して個人情報の目的外利用ができないように監視を強化するとしている。

 

だがここではプライバシー保護のための情報主体の「事前の同意」による「自己の個人情報をコントロールする権利」と「個人情報の開示請求権」、「違法な情報利用の中止請求権」、「不服申し立て制度」の確立が無視されたままだ。しかも自己コントロール権とプライバシー権の防衛に比重をおき、情報公開され、公正な「第三者機関」の設置にはほど遠い代物だ。

 


政府は、いまだにマイナンバー導入費・維持費等の総額を明らかにしていない。「社会保障と税の共通番号制度に関する検討会」(10年6月)では導入コストは最大6100億円程度と試算し、利用範囲の拡大によっては最低2000億円以上膨らむとしていた。現在の財政破綻状況のなかでこんな巨額な費用を支出すべきではない。

 

すでにマイナンバー関連の「情報提供ネットワークシステム」の設計・開発を共同事業体(NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所)が123億1200万円、「番号生成システム」が68億9580万円で落札した(14年3月)。システム準備段階でこの勢いだから軽く「想定」予算を突破してしまう。「金食い虫のマイナンバーはいらない」とアピールしていこう。

 

マイナンバー改悪法案の反動性を暴露し、共通番号いらないネットの「『内国人登録証/国内パスポート』として私たちを識別し追跡監視するICカード=個人番号カードを申請しないよう呼びかける」運動を広げていこう。

 

(Y)

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