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暗闇の中で光明を探し尋ねる
大学生連合会から香港全市民に送る書


市民の皆さんへ

9月22日の同盟大休校から昨日の警察による強制排除までの長い道のりの中で、私たちは、全人代8・31決議の撤回、選挙制度改革に関する議論のやり直し、そして真の普通選挙の実現を、変わることなき目標としてきました。私たちは最も平和的な方法で当然の政治的権利の実現を粘り強く求めてきました。しかし大変残念なことに、政府は私たちの訴えを完全に無視し、この威風堂々たる民主化運動を暴力によって終わらせたのです。私たちは苦痛と怒りに包まれましたが、決して絶望はしていません。私たちは、香港というこの土地に民主主義の花が開くまで、私たちの世代が闘争を継続することを、ここに誓います。

私たちはこれまで政府高官、国家主席、総理に公開書簡を送ったことを、皆さんも覚えていると思います。これらの書簡で私たちは、事実を詳細に述べ、論拠をひとつひとつ示し、私たちが街頭に繰り出した理由を記し、香港が陥っている困難な局面の原因を分析し、選挙制度改革の必要性を力説してきました。しかし残念なことに、これらの書簡が送られましたがまるでなしのつぶてで、何の回答も得られませんでした。私たちは街頭を占拠し、政府との対話を行い、北京行きをも試みました。しかしそれによって得られたものは、軽視、恥辱、そして入国拒否という扱いだったのです。

そうです、時代は私たちを選択したのです。ここでいう「私たち」とは、世代を超えた、貧富の分け隔てなく、左右の違いのないものです。私たちはともにこの空間に生活しているのです。否応なしにこの大地に立ち、同じ空を仰ぎ見ており、同じ空気を吸っているのです。私たちの運命はつながっており、憂いや悲しみを共にしているのです。

そうです、私たちが形ある通りを封鎖したのは、すでに塞がれていた(民主化へつながる)形なき道を切り開くためだったのです。政府が民主主義を私たちに与えなかったので、自分たちでそれを実践したのです。オキュパイの期間中、私たちはコミュニティに落下傘で舞い降り、各地で民主化の理念を宣伝してきました。討論会を主催し、政治についてみんなで協議してきました。私たちはオキュパイ区域の日常的活動を、職業や貧富の分け隔てなく、いっしょに運営してきました。私たちは、政治とビジネスの共謀によって抑圧される日常が、オキュパイ区域においては創造性にあふれる発現となるようプロデュースしてきました。私たちは各々が運動の方向性について激しい議論を交わしながら、それぞれが責任を果たしながら尊重するよう努めてきました。私たちは民衆とともに、共同で責任ある活動を担ってきました。各方面からの善意あるアドバイスと批判に対して、私たちはすべての力を尽くして応え、引き受けてきました。まだまだ例を挙げればきりがありません。

政府はいまのところ民主の声に対して聞こえないふりをして、しばらくは傲慢な態度で、私たちの正当な要求をないがしろにできるでしょう。警察はデモ参加者に対して暴力的に対応し、オキュパイに反対していた人たちが別な課題で街頭に繰り出したときには、同じような対応に直面しないことを保証はできないでしょう。私たちの抵抗は、当初から香港人の共同の利益--自由と民主--を願ってのものであり、一切の私利私欲は存在しません。70日余りの中で、私たちは、様々な方法で道を切り開こうと努力してきました。しかしついに政府は警察の力で民主の訴えを排除してしまいました。

今日、太陽はいつもと同じように昇りましたが、テントの姿はなく、自習室テントはたおれ、中央分離帯にかけられた自作のステップは片づけられ、空中コンコースから掲げられていた横断幕や垂れ幕ははがされ、壁に貼られたシールは時が経つにつれて風雨に洗い流されて消えてしまうでしょう。色とりどりに飾られたレノン・ウォールの時間は終わり、すべては灰色に戻ってしまいました。

一見したところ、香港は「正常」に戻ったかのようです。そして私たちの訴えは全く目的を果たせず、今日で終わりを迎えたかのようです。しかし私たちは過度な悲観に陥る必要などないのです。なぜなら私たちが一歩一歩記した足跡、私たちが共に歩んだ道を、みなさんがしっかりと記憶しているからです。選挙制度にかんしてはしばらくは具体的な成果を勝ち取れてはいませんが、共に歩んだ道から見た風景や、ともに築いた美しいコミュニティはみなさんの心の中に刻まれているのですから。私たちの故郷の自由と民主を実現するという初心は、もはやすべてのオキュパイ参加者の生命に融合されたのです。

次の主戦場は、地域における市街戦となるでしょう。私たちはしっかりと鍛錬し、落下傘で地域に降り立ち、民主の理念を根付かせ、闘争の意識を張り巡らさなければなりません。次回の政府による選挙制度改革に関する諮問の際には、それぞれの段階で機会を利用して抵抗を継続するでしょう。闘争を堅持しさえすれば、レノン・ウォールに書かれた願いは必ず成就することを、私たちは信じてやみません。自由と平等を愛するすべての市民の皆さんは、自分たちに属するこの香港で、もっとも基本的な政治的権利を実践することが必ずできるようになります。このような願いを実現するために、一人一人がわずかの努力を惜しむことなく、ともに奮闘しなければなりません。

咲き開いた雨傘は、一つの世代を覚醒させました。民主理想の船は出航しました。その目的地に到着するまでに、香港を基盤とする互いの理解協力が私たちの願いです。雨傘運動の洗礼を受けたすべての香港人は、たとえ立場や戦術の違いがあるにせよ、いちどは同じ現場を共にした戦友です。民主化運動の嵐はこれからも巻き起こるでしょうが、すべての友人たちはそれぞれが以心伝心で、それぞれの道をともに進み、肩を並べて再び戦える日が来ることを願っています。

雨傘運動は、香港民主化運動の新たなスタートとなりました。これまでの70日余りのなかで、私たちは一緒に暗闇の中で光明を探し尋ね、現世から未来を想像してきました。私たちはつまずき、涙し、腹をすかし、傷を負ってきました。しかし私たちは一度たりとも絶望したことはありませんでした。私たちが正しい側にいることを知っているからです。どれだけ強固で高くそびえる壁でさえ、最後には崩れ落ちる時が来ることを、私たち信じてやまないからです。なぜなら時間は私たちのものであり、そして私たちは絶対にその壁を叩き続けることをやめることはないからです。

暗闇の中で光明を探し尋ね、刻下の中で未来と契りを交わしました。私たちが被ってきた一切の苦難は絶対に徒労などではありません。今日は新しい時代の序幕となる日です。私たちは必ず帰ってくるでしょう!

香港大学生連合会
2014年12月12日

原文
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