日弁連 11月21日、日本弁護士連合会は、弁護士会館で「通信の秘密と通信傍受法を考える市民学習会」を行い、150人が参加した。

 


9月18日、法相の諮問機関の法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(2011年6月設置)は、「新たな刑事司法制度の構築についての調査審議の結果」を答申した。答申は、取調べの全面可視化(録音・録画)の否定、盗聴法対象範囲拡大、司法取引の導入など法務省、警察官僚の治安弾圧体制強化を代弁するものとなった。来年の通常国会に、刑法・刑事訴訟法等改正案と通信傍受法改正案を上程する。

 

盗聴法の改悪は、現行法が薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航、及び、組織的に行なわれた殺人だが、さらに現住建造物等放火/殺人/傷害・傷害致死/逮捕監禁/誘拐・人身売買/窃盗・強盗・強盗致死傷/詐欺・恐喝/爆発物使用/高金利の貸し付け/児童ポルノの製造・提供を追加した。また、これまではNTTなど通信事業者施設内で立ち会いのもとに盗聴を行ってきたが、通信事業者から警察施設へのデータ伝送を可能にした。対象犯罪の拡大と立会人なしの盗聴法改悪は、権力の恣意的判断でいつでもどこでも無制限に盗聴態勢を敷くこが可能になってしまう。通信の秘密、個人のプライバシーを否定した人権侵害の違法捜査法は廃止しなければならない。


盗聴法改悪のねらい

開会あいさつが神洋明さん(日弁連副会長)から行われ、「エドワード・スノーデンのアメリカ国家安全保障局(NSA)による盗聴・情報収集活動への告発によって、米国で大騒ぎになった。日本も国が個人の情報を盗むために通信傍受法(1999年)を制定し、今回、対象範囲を拡大しようとしている。多くの懸念を持っている」と述べた。

 

青木理さん(ジャーナリスト)は、「盗聴権限の拡大と警察・検察」というテーマで講演した。

 

日本共産党の緒方靖夫国際部長宅盗聴事件(1985年)を取り上げ、「この事件は警察庁警備局、いわゆる公安政治警察の裏組織の『サクラ』の下に行っていたことが明らかになっている。だが不起訴となり、警察幹部が処分されるだけだった。当時の警察庁長官山田英雄が『警察におきましては、過去においても現在においても電話盗聴ということは行っておりません』(1987年5月)と国会答弁し、逃げ切ってしまった。後に伊藤 栄樹元検事総長は回顧録『秋霜烈日』(1988年)で緒方盗聴事件に関連して盗聴を合法化すればいいと提言していたが、現実に盗聴法を1999年に制定してしまった」。

 

「だが、警察にとって現行盗聴法は薬物関連犯罪、銃器関連犯罪、集団密航、及び、組織的に行われた殺人の四類型に限定され、通信事業者の立会いが必要なため使い勝手が非常に悪いと感じていた。だから今回、一般的犯罪も含めて対象範囲を拡大し、盗聴やり放題を合法化しようとしている。公安警察のこれまでの違法な情報収集活動を合法化することだ。非常に危機感を持っている」と批判した。

 

パネルディスカッションが行われ、コーディネーターが山下幸夫さん(日弁連刑事法制委員会事務局長)。パネリスト が青木理さん(ジャーナリスト)、足立昌勝さん(関東学院大名誉教授)、岩村智文さん(日弁連刑事法制委員会)から「新時代の刑事司法制度特別部会」答申、改悪盗聴法の批判が行われた。

 

なかでも足立さんは、日弁連の答申に対する「あいまいな態度」について取り上げた。

 


「日弁連意見書(13年1月17日)では、『通信傍受は、通信の秘密を侵害し、個人のプライバシーを侵害する捜査手法であることを踏まえ、その対象を安易に拡大するべきではない』と表明していた。しかし日弁連は答申に賛成し、盗聴法改悪の『●通信傍受の対象を拡大し、振り込め詐欺や組織窃盗を含め、通信傍受が必要かつ有用な犯罪において活用できるものとする。●暗号等の技術的措置を活用することにより、立会いや封印等の手続きを合理化する。●該当性判断のための傍受の方法として、全ての通信を一旦記録しておき、事後的にスポット傍受(最小化)の方法による必要最小限度の範囲の聴取を行うことも可能な仕組みとする』ことを認めてしまった」と批判した。

 

「会話傍受」についても「①振り込め詐欺の拠点となっている事務所等②対立抗争等の場合における暴力団事務所や暴力団幹部の使用車両③コントロールド・デリバリーが実施される場合における配送物の三つの場面を念頭に置き、指摘される懸念をも含めて、その採否も含めた具体的な検討を行うことまで合意した。『懸念』に配慮するポーズをとりながら次々と違法盗聴を合法化していくことをねらっている」と指摘した。

 

(Y)

これより先はプライベートモードに設定されています。閲覧するには許可ユーザーでログインが必要です。