Iraq_0(画像は8月のコペンハーゲンでのISISによる虐殺への抗議行動)

以下は、デンマークの「赤と緑の同盟」(RGA)が、「イスラム国」(ISIS)との闘いのために軍用機を派遣する決議に賛成したことについての文書。私たちは、このRGAの立場に総体として批判的な立場を取るものですが、ISISの暴虐・ジェノサイドを国際反戦運動が止めることができていない状況で、左翼がどのような方針を採るべきか、議論の一助として掲載します。

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デンマークの左翼は、武器・弾薬を積んだ軍用機をイラクに送る議会の決議になぜ賛成したのか

ボス・マイケル


2014年9月14日

 米国の指揮下でイラクに軍用機を派遣する国会決議にデンマークの社会主義者が賛成票を投じたのは、異例のことである。もっと異例のことは、革命的マルクス主義者を自認する私自身がこの決議に賛成票を投じたことだ。しかしこれはほんの数週間前に起きたことなのだ。

 「赤と緑の同盟」(RGA)の議会グループは他の政党とともに、イラク政府の要求に応えてイラクにハーキュリーズ機を派遣することに賛成投票した。この飛行機はISIS(イラクとシリアのイスラム国)と闘っているクルド人民兵に武器・弾薬を届けることになる。

 RGAの規約によれば、議会でのこうした投票には党指導部の承認が必要である。議会での投票の数日前に全面的な討論が行われた。それはまた、議会への提案の正確な文言が明らかになる前のことだった。

 全国指導部は決議ではなく、議員グループに対して一定の条件付きで賛成投票を認めることに賛成した。投票以前は、ほぼすべての全国指導部メンバーはある種の疑いを持っていたが、最終的にこの文書は賛成一四(私も含めて)、反対六、棄権・欠席五で採択された。

 この決定に対しては、多くの妥当な反対意見が提出された。最も基本的なものは、米国の指揮下での軍事行動を支持するという問題だった。

 米国政府と軍部は、米国の大企業と帝国主義の利益を防衛しているのであり、その両者とも狭い意味では資源、市場、利潤へのアクセスを手に入れようとしており、より一般的には地政学的支配を求めている。

 アメリカ帝国主義こそ、この地域の宗派的戦闘を引きおこした基本的原因である――それはかつてのイラク戦争がそうであり、特殊的にはアメリカ帝国主義こそ、ISISが存在していることへの責任の大きな部分を有しているのだ。米国の同盟国の一部はISISに資金提供しており、トルコは――ワシントンからのいかなる異議もなく――ISISがトルコの国境を行き来して作戦を行うのを許容している。

 そしてデンマークは、米国主導のアフガニスタン、イラク、リビアでの作戦に参加したという極めて苦い経験を、この地域で有している。

 RGA指導部と国会議員グループの誰もが、このことに留意している。しかし今回の軍用機派遣を認める決定は地域の情勢の具体的な分析に基づいたものだった。米帝国主義はISISを創り出し、かれらが一定の段階にまで成長するのを許容した。しかしかれらは大きく成長しすぎ、軍事的にあまりにも強大化し、米国の利害にとって危険な存在になった――まさにタリバンがそうであったように。したがって当面のところ米帝国主義は、ISISを止めようと望んでいる。

 革命的左翼もまた、人殺しで、宗派的で、きわめて反動的な勢力であるISISと闘い、それを阻止することを望んでいるという事実を補強するために、多くの議論が必要だと私は考えない。ISISの勝利は、シリアとイラクの一部で起こりえた社会的・民主的で女性の権利を促進する発展、あるいは反帝国主義的な発展を後退させることになるだろう。

 こうして、ISISと闘うという単純な課題において、帝国主義と社会主義者の間に一時的な利害の一致が現れる。われわれはクルド人への武器の提供を望んでおり、米帝国主義も、当面のところ、クルド人への武器提供を望んでいる。米国が指揮しているというたったそれだけの理由で武器提供を支持しないのは、ドイツ帝国主義が提供した封印列車でドイツ帝国を通ってロシア革命のただ中にあるロシアに行く旅路をレーニンが拒否したようなものだ――ある全国指導部メンバーはそのように語った。

 しかしわれわれとは全く違った意図を持った、そして地域の民衆に大きな害を与える、より広範な帝国主義の軍事作戦の一部となるというリスクを、われわれは冒してはいないのか。これは決定に反対する別の主張なのか。

デンマーク政府の方針への追認という事態を伴って、こうしたことが起こり得ることを誰も否定しない。しかし全国指導部の決議と一致した形で、わが国会議員団は以下のことを明らかにしている。

●デンマークのハーキュリーズ機は、ISISと闘う勢力に武器を届けるという目的以外に使用しない。

●この決議は、当該地域におけるデンマーク軍の別の活動を許容するものではない。

●何が起ころうとも、政府が二〇一五年一月以後も航空機の活動を延長しようとする時には新しい議会決議が必要である。

 この決議に反対する論議を考えれば、いったい誰がその武器を受け取ることになるのか、という疑いがある。少なくともRGAの誰も、この政府に武器を提供したいとは考えていない。しかし議会決議の公式文言では、イラク政府ならびにISISと闘っている他の勢力への行動を呼びかけている。

 全国指導部は、これが国際法と一致した決定であることが必要であると保証し、確認している――他の政府からの軍事的支援を受け取れるのは政府だけである。第二に、イラク政府は武器に欠乏しているわけではなく、東欧製の武器はかれらの役に立たない。第三に、イラク軍は実際のところISISとは全く闘っていない。

 さらに別の問題が残されている、最も進歩的なクルド人勢力であるトルコのPKK(クルド労働者党)とそのイラクでの仲間であるYPGが本当に武器を受け取るのか、あるいは地域のクルド人政府が武器を独占するのではないか、という疑問である。このクルド人政府は伝統的にPKK/YPGと衝突関係にあり、かれらが支配する地域で厳しい新自由主義政策を採用している、

 誰が、いかにして、この武器の大部分を現実に手に入れるのか、という問題には何の言及もない。しかしすべてのクルド人勢力は、ISISと闘う共同の軍事戦線を結成した。かれらが現実に武器を分け合っている証拠が存在しており、PKK/YPGは最も効果的な戦闘を遂行している。

 この問題に関連した反対意見と向き合い、かつ結果についての一〇〇%の保証がない中で、私と委員会の多数派は、国会議員が議会で賛成投票することを認める決議に賛成した。われわれの多くにとって賛成か反対かのバランスを決めたのは、社会主義者をふくむすべての進歩的クルド人勢力、そして当該地域ならびにデンマークのクルド人組織――幾人かのRGAのメンバーを含めて――が、たんに賛成票を投じるようアドバイスしただけではなく、決議に反対しないよう懇願したという事実にあった。かれらは、こうした決議がPKK/YPGに武器をもたらし、ISISとの闘いの強化だけではなく、地域の進歩的勢力を強化する上でも必要だと確信している。

 この決定を補足するものとして、RGAはISISへの軍事的・財政的供給を阻止する別のイニシアチブを取った。それはクルド民族の自決権のための闘いを大衆化し、また米国とEUのいわゆるテロリスト・リストからPKKを取り除くためである。デンマークの特殊な観点からすれば、全欧州のクルド人向けTV局は、最近禁止されるまでデンマークにあり、クルド人コミュニティーの一〇人が、警察の主張によれば資金を集めてPKKに送金したとして裁判にかけられている、という事情もある。

 米国の指揮下でデンマークの航空機によってPKK/YPGへの武器が輸送された時、政府当局にとってテロ組織に物資を供給したと説明することはむずかしくなるだろう。

(国境なき欧州連帯[ESSF]のサイトより)