今問題になっているISISと米国のイラク爆撃についての米国の同志の分析です。
…………
からまった帝国主義のクモの巣
デービッド・フィンケル
http://www.internationalviewpoint.org/spip.php?article3599
帝国主義は、自ら解決できない危機を創り出す。これこそオバマ大統領が九月一〇日に行った演説が最終的に残したものである。それはシリア、イラクからアフガニスタンなどにつながる破局の連鎖なのである。米国が次の中東戦争に滑り落ちるなかで、今度こそ違ったものになると期待できる理由などあるのだろうか?
テロリズムからエボラ出血熱にいたる、あらゆるグローバルな危機と闘う米国の「リーダーシップ」に関する、型にはまったたわごとはさておき――水責めの拷問、「異常な演出」、アフガニスタンやイエメンの結婚式パーティーを一掃する無人機爆撃、ガザへの連続的虐殺のためのイスラエルへのF16やヘルファイヤー・ミサイルの提供などでのわれわれの前衛的役割は知ったことではない――、オバマ大統領は少なくとも、イラクの石油収入で支払われる速やかで値段のかからない勝利というジョージ・W・ブッシュのウソを再利用してこなかった。オバマの演説は、敵を「弱体化させ、究極的に破滅させる」には時間とカネとリスクが伴うことを明らかにしている。
二〇一四年九月一〇日、オバマはイラクでの新たな米軍配備を発表した。
オバマは、実際には一つの国名も名指しをしないまま、同盟諸国の広範な連合について語った。一五〇〇人ほどの米軍「顧問団と訓練員」の派遣という大統領の発表は、確かに婉曲な響きがする。しかし戦術的な意味では、彼が概括した限定的で特殊な目的は確かに達成可能である。しかしイラク、シリア、そして地域全体で次に何が起こるかは、巨大な戦略的空白状況を招くことになる。
自称「イスラム国」なるものが、全体主義的でジェノサイド的存在であることは疑いない。しかしこの怪物は真空から生まれたものではなく、一部の頑迷な賢者がわれわれに信じ込ませたように七世紀のイスラムの教義から生じたわけでもない。それはむしろナチズムとマフィアの現代的混合である。そこではヒトラーを権力の座につけたドイツの強力な産業的基盤、あるいはコーザ・ノストラ(米国のマフィア)に無辜の非戦闘員の大虐殺を一般的には抑制させる社交儀礼を欠いているのだが。
もともとの呼ばれ方からすれば「イラクとアル・シャムスのイスラム国」(ISIS)、そしてかつての「メソポタミアのアルカイダ」は、二〇〇三年の米国の侵略によるイラクの破壊の直接の産物であった。第一次大戦後のドイツに強制された屈辱と経済的破壊からナチスが登場したこととおおまかに類比すれば、アルカイダのイラク支部は、イラク国家と支配政党のバース党を解体し、スンニ派主導の軍を廃止し、それを破壊された国家の諸機関に真空状態で置き替えた、ジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルドの「偉大な」決定から生み出されたものだ。
「産業的」スケールでの宗派間の殺害が続き、シーア派・スンニ派の混住地域は消滅し、イラクは内戦の中でほとんどメルトダウンしてしまった。そして米国の占領は惨害の中で泥沼にはまり込んでしまった。二〇〇六年から〇八年にかけて、米国はスンニ派の部族指導者にカネを出し、アルカイダに立ち向かわせて大きな成功を収めた。しかし資金が干上がる中で、ブッシュ、つづいてオバマの政権は、腐敗した宗派主義者のアル・マリキ政権に依存し、米国の戦闘部隊は不可避的に撤退した。ジャーナリストのロバート・フィスクは、米国の占領のきわめて初期に、先見の明ある言葉でこの物語を要約している。「米国はイラクから去らなければならない。米国はイラクから去るだろう。そして米国はイラクから去ることができない」。
そうした中で、アラブの春が二〇一一年にもたらされ、シリアで民衆蜂起が起こり、アサド政権がそれに大規模な軍事的残虐性によって対処した時、米国は政策的ワナにとらわれた。米国政府とその地域的同盟国は「アサドは退陣しなければならない」と宣言しつつ、反乱の結果を恐怖していた。その結果、ゆるやかに組織されていた「自由シリア軍」(穏健な反対派)の指導者たちは、アサドはイラン、ロシア、レバノンのヒズボラから全面的な支援を得ているのに対し、西側はかれらを支援するが実際にはかれらが失うものを補充する援助だけを与えている、という印象を持っていた。
シリアの悲劇の中から「メソポタミアのアルカイダ」の残党が立ちあがり、ISISという新名称の下にアサド政権と一定の戦術的共謀を行った(ジハーディストの囚人の釈放、ISISが接収した油田の秘密の購入をふくむ)。そしてイラクが混乱状況に舞い戻った時、イラク北部に乱入してモスルを奪取し、捕虜にした兵士数百人を処刑し、キリスト教徒とヤジディ社会(訳注:ヤジディ教はイラク北部のクルド人の民族的宗教とされる)で虐殺を行い、この暴虐行為をメンバー募集ビデオとして撮影し、「イスラム国」として征服を拡大するという願望をはっきりと言明したのである。
次は何か? 米空軍はクルド人勢力や部分的に再編されたイラク軍とともにISISによるこれ以上の領土征服の勢いを鈍らせるだろう。支配の空白領域で拘束されたかれらの輸送部隊は全滅させられる可能性がある。かれらの武器が倉庫に置かれている限り、破壊される可能性がある。ISISは自らの武器産業を持ってはいない。非スンニ派社会における、初期的段階でのジェノサイド的絶滅はほとんど予防できる。そして外国からのジハーディスト青年の流入は、トルコが国境管理を厳しくし、そしてとりわけ「イスラム国」がもはや勝ちそうもないと見られれば、減少することになるだろう。
クルディスタン地域政府とペッシュメルガ(訳注:イラク・クルド人ゲリラ部隊)武装勢力は、その弱点にもかかわらず、ISISの脅威に対して抵抗するとともに、かれら自身の自由のために闘っている。かれらは、それが手に入れられる場合にはどこでも、必要とする援助への権利を有している。住民たちののど元に突きつけられたISISのナイフを押し戻すために、かれらは最も重要な「地上兵力」なのだ。
これらは多かれ少なかれ容易な部分である。次に起きることはもっと困難だ。情報アナリストのジョージ・フリードマンは次のように指摘している。
「イスラム国は勢力を分散させ、非軍用航空機を標的にするのを否定するだろう。イスラム国支持者と他のスンニ派グループを区別し、支持者を殺害してイスラム国を打ち負かそうとするのは、最初の段階で失敗に終わるだろう……。今やかれらはスンニ派社会の網の目の一部であり、スンニ派社会だけがかれらを根絶できる」
このことは明らかに事実である。ISISはイラクのモスル、ファルージャ、シリアのラカアといった都市に根を下ろし、空爆では打ち負かされない。
要するに、イラク新政権(依然として重要閣僚の穴は埋まっていない)がアル・マリキ政権の閣僚の入れ替えのようなものになり、米国がシリアの政権――その軍事力、市民への残虐性は、その度合いにおいて「イスラム国」を超えている――と協力するようなことになれば、スンニ派ジハーディストの言説が確認され、ISISはもはや征服軍ではないかのように、かれらの影響力は持続的なものとなり、その病巣が転移することになる。
注意を払っている誰もが、最近の経験から多くの教訓を得ている。オサマ・ビン・ラディンを殺害したオバマ大統領の大きな成功は、何も変えなかったことが明らかになった。何か変化があったというなら、CIAの協力組織がビン・ラディンを追い詰める中でポリオ・ワクチン注射プログラムを創り出したことが、パキスタンの極端な原理主義者にワクチン注射の労働者を殺害する口実を与え、公共保健に深刻な事態を招いている、ということだ(訳注:CIAによるビン・ラディンの捜索・特定にあたっては住民への肝炎ワクチンの投与が口実として利用された。そのためタリバンはワクチン投与活動を攻撃するキャンペーンを行っている、と報じられている)。
オバマが米国の「スマート・ウォー(訳注:コンピューター情報戦争)」と考えたアフガニスタンでのブッシュの戦争は、想像できるかぎり最悪に近い形で終わろうとしている。米国の無人機爆撃は。イエメンやソマリアで起きたことを改善したという彼の主張は、幻想の飛翔である。
正直になろうではないか。強いリーダーというオバマ大統領のイメージは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフが幾度もくりかえしオバマを失望させたことで、ほとんど高まらなかった。
バランスをとることがほとんど不可能に見える、地域の政治的・宗派的紛争は、この新しい介入と米帝国のグローバル政策が直面する手に負えない矛盾の始まりに過ぎない。それはさらに拡大している。今やイランとの協力がイラク軍を保持する上で不可欠である。それはアサドを弱体化させる米国の意図にとって何を意味するのか。あるいはイランの核開発計画に関わる交渉にとってどういう意味を持つのか。代理人を通じたロシアの東ウクライナ占領によって混乱の淵にある欧州、そしてロシアが天然ガスの供給を削減すればこの冬に闇の中で凍える恐れに直面している欧州.を抱えるオバマ政権は、一度にいくつも複合的に起きる危機に対して、どのように「指導性を提供」しようとしているのか。
大気中の二酸化炭素濃度が三九六ppmという不気味なレベルに達し、地球を荒廃させる気候変動の影響が戦争によって悪化するだけだという時に、こうしたことが起こっているのだ。帝国主義のグローバルなテロは、タリバンから「イスラム国」に至る、醜悪な、地方的かつ領域的な片割れを生み出したのである。破壊された社会で生じるテロリスト勢力は、不可避的にかれらを育むグローバルシステムを根こそぎにしないかぎり根絶できないのである。(二〇一四年九月一二日)
▼デービッド・フィンケルは米国の社会主義雑誌「アゲンスト・ザ・カレント(流れに抗して)」編集長。
(「インターナショナルビューポイント」編集長)
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からまった帝国主義のクモの巣
デービッド・フィンケル
http://www.internationalviewpoint.org/spip.php?article3599
帝国主義は、自ら解決できない危機を創り出す。これこそオバマ大統領が九月一〇日に行った演説が最終的に残したものである。それはシリア、イラクからアフガニスタンなどにつながる破局の連鎖なのである。米国が次の中東戦争に滑り落ちるなかで、今度こそ違ったものになると期待できる理由などあるのだろうか?
テロリズムからエボラ出血熱にいたる、あらゆるグローバルな危機と闘う米国の「リーダーシップ」に関する、型にはまったたわごとはさておき――水責めの拷問、「異常な演出」、アフガニスタンやイエメンの結婚式パーティーを一掃する無人機爆撃、ガザへの連続的虐殺のためのイスラエルへのF16やヘルファイヤー・ミサイルの提供などでのわれわれの前衛的役割は知ったことではない――、オバマ大統領は少なくとも、イラクの石油収入で支払われる速やかで値段のかからない勝利というジョージ・W・ブッシュのウソを再利用してこなかった。オバマの演説は、敵を「弱体化させ、究極的に破滅させる」には時間とカネとリスクが伴うことを明らかにしている。
二〇一四年九月一〇日、オバマはイラクでの新たな米軍配備を発表した。
オバマは、実際には一つの国名も名指しをしないまま、同盟諸国の広範な連合について語った。一五〇〇人ほどの米軍「顧問団と訓練員」の派遣という大統領の発表は、確かに婉曲な響きがする。しかし戦術的な意味では、彼が概括した限定的で特殊な目的は確かに達成可能である。しかしイラク、シリア、そして地域全体で次に何が起こるかは、巨大な戦略的空白状況を招くことになる。
自称「イスラム国」なるものが、全体主義的でジェノサイド的存在であることは疑いない。しかしこの怪物は真空から生まれたものではなく、一部の頑迷な賢者がわれわれに信じ込ませたように七世紀のイスラムの教義から生じたわけでもない。それはむしろナチズムとマフィアの現代的混合である。そこではヒトラーを権力の座につけたドイツの強力な産業的基盤、あるいはコーザ・ノストラ(米国のマフィア)に無辜の非戦闘員の大虐殺を一般的には抑制させる社交儀礼を欠いているのだが。
もともとの呼ばれ方からすれば「イラクとアル・シャムスのイスラム国」(ISIS)、そしてかつての「メソポタミアのアルカイダ」は、二〇〇三年の米国の侵略によるイラクの破壊の直接の産物であった。第一次大戦後のドイツに強制された屈辱と経済的破壊からナチスが登場したこととおおまかに類比すれば、アルカイダのイラク支部は、イラク国家と支配政党のバース党を解体し、スンニ派主導の軍を廃止し、それを破壊された国家の諸機関に真空状態で置き替えた、ジョージ・W・ブッシュ、ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルドの「偉大な」決定から生み出されたものだ。
「産業的」スケールでの宗派間の殺害が続き、シーア派・スンニ派の混住地域は消滅し、イラクは内戦の中でほとんどメルトダウンしてしまった。そして米国の占領は惨害の中で泥沼にはまり込んでしまった。二〇〇六年から〇八年にかけて、米国はスンニ派の部族指導者にカネを出し、アルカイダに立ち向かわせて大きな成功を収めた。しかし資金が干上がる中で、ブッシュ、つづいてオバマの政権は、腐敗した宗派主義者のアル・マリキ政権に依存し、米国の戦闘部隊は不可避的に撤退した。ジャーナリストのロバート・フィスクは、米国の占領のきわめて初期に、先見の明ある言葉でこの物語を要約している。「米国はイラクから去らなければならない。米国はイラクから去るだろう。そして米国はイラクから去ることができない」。
そうした中で、アラブの春が二〇一一年にもたらされ、シリアで民衆蜂起が起こり、アサド政権がそれに大規模な軍事的残虐性によって対処した時、米国は政策的ワナにとらわれた。米国政府とその地域的同盟国は「アサドは退陣しなければならない」と宣言しつつ、反乱の結果を恐怖していた。その結果、ゆるやかに組織されていた「自由シリア軍」(穏健な反対派)の指導者たちは、アサドはイラン、ロシア、レバノンのヒズボラから全面的な支援を得ているのに対し、西側はかれらを支援するが実際にはかれらが失うものを補充する援助だけを与えている、という印象を持っていた。
シリアの悲劇の中から「メソポタミアのアルカイダ」の残党が立ちあがり、ISISという新名称の下にアサド政権と一定の戦術的共謀を行った(ジハーディストの囚人の釈放、ISISが接収した油田の秘密の購入をふくむ)。そしてイラクが混乱状況に舞い戻った時、イラク北部に乱入してモスルを奪取し、捕虜にした兵士数百人を処刑し、キリスト教徒とヤジディ社会(訳注:ヤジディ教はイラク北部のクルド人の民族的宗教とされる)で虐殺を行い、この暴虐行為をメンバー募集ビデオとして撮影し、「イスラム国」として征服を拡大するという願望をはっきりと言明したのである。
次は何か? 米空軍はクルド人勢力や部分的に再編されたイラク軍とともにISISによるこれ以上の領土征服の勢いを鈍らせるだろう。支配の空白領域で拘束されたかれらの輸送部隊は全滅させられる可能性がある。かれらの武器が倉庫に置かれている限り、破壊される可能性がある。ISISは自らの武器産業を持ってはいない。非スンニ派社会における、初期的段階でのジェノサイド的絶滅はほとんど予防できる。そして外国からのジハーディスト青年の流入は、トルコが国境管理を厳しくし、そしてとりわけ「イスラム国」がもはや勝ちそうもないと見られれば、減少することになるだろう。
クルディスタン地域政府とペッシュメルガ(訳注:イラク・クルド人ゲリラ部隊)武装勢力は、その弱点にもかかわらず、ISISの脅威に対して抵抗するとともに、かれら自身の自由のために闘っている。かれらは、それが手に入れられる場合にはどこでも、必要とする援助への権利を有している。住民たちののど元に突きつけられたISISのナイフを押し戻すために、かれらは最も重要な「地上兵力」なのだ。
これらは多かれ少なかれ容易な部分である。次に起きることはもっと困難だ。情報アナリストのジョージ・フリードマンは次のように指摘している。
「イスラム国は勢力を分散させ、非軍用航空機を標的にするのを否定するだろう。イスラム国支持者と他のスンニ派グループを区別し、支持者を殺害してイスラム国を打ち負かそうとするのは、最初の段階で失敗に終わるだろう……。今やかれらはスンニ派社会の網の目の一部であり、スンニ派社会だけがかれらを根絶できる」
このことは明らかに事実である。ISISはイラクのモスル、ファルージャ、シリアのラカアといった都市に根を下ろし、空爆では打ち負かされない。
要するに、イラク新政権(依然として重要閣僚の穴は埋まっていない)がアル・マリキ政権の閣僚の入れ替えのようなものになり、米国がシリアの政権――その軍事力、市民への残虐性は、その度合いにおいて「イスラム国」を超えている――と協力するようなことになれば、スンニ派ジハーディストの言説が確認され、ISISはもはや征服軍ではないかのように、かれらの影響力は持続的なものとなり、その病巣が転移することになる。
注意を払っている誰もが、最近の経験から多くの教訓を得ている。オサマ・ビン・ラディンを殺害したオバマ大統領の大きな成功は、何も変えなかったことが明らかになった。何か変化があったというなら、CIAの協力組織がビン・ラディンを追い詰める中でポリオ・ワクチン注射プログラムを創り出したことが、パキスタンの極端な原理主義者にワクチン注射の労働者を殺害する口実を与え、公共保健に深刻な事態を招いている、ということだ(訳注:CIAによるビン・ラディンの捜索・特定にあたっては住民への肝炎ワクチンの投与が口実として利用された。そのためタリバンはワクチン投与活動を攻撃するキャンペーンを行っている、と報じられている)。
オバマが米国の「スマート・ウォー(訳注:コンピューター情報戦争)」と考えたアフガニスタンでのブッシュの戦争は、想像できるかぎり最悪に近い形で終わろうとしている。米国の無人機爆撃は。イエメンやソマリアで起きたことを改善したという彼の主張は、幻想の飛翔である。
正直になろうではないか。強いリーダーというオバマ大統領のイメージは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフが幾度もくりかえしオバマを失望させたことで、ほとんど高まらなかった。
バランスをとることがほとんど不可能に見える、地域の政治的・宗派的紛争は、この新しい介入と米帝国のグローバル政策が直面する手に負えない矛盾の始まりに過ぎない。それはさらに拡大している。今やイランとの協力がイラク軍を保持する上で不可欠である。それはアサドを弱体化させる米国の意図にとって何を意味するのか。あるいはイランの核開発計画に関わる交渉にとってどういう意味を持つのか。代理人を通じたロシアの東ウクライナ占領によって混乱の淵にある欧州、そしてロシアが天然ガスの供給を削減すればこの冬に闇の中で凍える恐れに直面している欧州.を抱えるオバマ政権は、一度にいくつも複合的に起きる危機に対して、どのように「指導性を提供」しようとしているのか。
大気中の二酸化炭素濃度が三九六ppmという不気味なレベルに達し、地球を荒廃させる気候変動の影響が戦争によって悪化するだけだという時に、こうしたことが起こっているのだ。帝国主義のグローバルなテロは、タリバンから「イスラム国」に至る、醜悪な、地方的かつ領域的な片割れを生み出したのである。破壊された社会で生じるテロリスト勢力は、不可避的にかれらを育むグローバルシステムを根こそぎにしないかぎり根絶できないのである。(二〇一四年九月一二日)
▼デービッド・フィンケルは米国の社会主義雑誌「アゲンスト・ザ・カレント(流れに抗して)」編集長。
(「インターナショナルビューポイント」編集長)