jpg 安倍政権は、9月10日、特定秘密保護法の年内施行強行にむけて運用基準の修正案を情報保全諮問会議に提示した。特定秘密保護法は、①「防衛」②「外交」③「安全脅威活動の防止」④「テロ活動防止」のうち行政機関の長が指定する「特段の秘匿の必要性」がある機密を「特定秘密」に指定し、特定秘密を漏らした政治家、国家公務員、民間人に最高で懲役10年を科すという超反動法だ。つまり「特別秘密」の範囲が広範で知るべき情報が安易に秘匿されてしまう危険性があり、都合の悪い情報を「特別秘密」に指定して秘匿する恣意的な運用のやりたい放題へと拡大し、逆に民衆の知る権利が制限されるのだ。

 


特定秘密保護法は、全国の民衆、司法、報道、文化など各界の猛烈な反対の国会包囲に追い込まれ、2013年12月に参院で強行採決で制定せざるをえなかった。だから安倍政権は、秘密保護法に対する批判をかわすために「第三者機関」と称して政府の御用機関である「保全監視委員会」、「情報保全諮問会議」、「情報保全監察室」、公文書の廃棄の適否を判断する「独立公文書管理監」を新設することをあわてて表明せざるをえなかった。やむをえず「民意を反映」するポーズとして情報保全諮問会議([座長]渡辺恒雄 〈読売新聞本社代表〉/宇賀克也〈 東京大学大学院〉/塩 入みほも〈 駒澤大学〉/清 水勉〈 日本弁護士連合会〉/住田裕子弁護士/永野秀雄〈法政大学〉/南場智子〈会社役員〉) を設置した。

 

会議は秘密保護法の運用基準の策定にむけて1月の第1回会議以降、素案を検討し、8月にパブリックコメントを募ってきたが、その役割は単なる首相に意見を述べるという位置づけでしかない。だからセレモニーとして全体会が開かれたのはたったの3回だけだ。裏で内閣官房などが根回ししながら、会議で運用基準の修正案を合意させ、10月に閣議決定し、特定秘密保護法の公布後1年となる12月12日までに施行するするスケジュールだ。

 

パブリックコメントは、33820件集まり、600項目に分類したが、修正は27カ所でしかなく特定秘密保護法の基本骨格を修正しなかった。安倍首相は、パブリックコメントの半分以上が秘密保護法の廃止や条文見直しだったにもかかわらず、「寄せられた意見を検討し(修正案に)採用した」とウソ発言し、ただちに会議主査の永野が「意見の半分くらいは法律全体に対する反対意見だったが、(諮問会議は)法改正を審議する場ではない。ただ、意見を反映してかなりの部分が改善された」と居直ったほどだ。


パブリックコメント無視


以下、提示された修正案の主な項目はこうだ。

 


〈1〉「法施行5年後に秘密保護法の運用状況を再検討。必要があれば運用基準を見直して公表する」。

 

パブリックコメントで寄せられた秘密保護法の廃止、批判意見を排除していくことを前提にしている。秘密指定の対象とされる情報の範囲が不明確/「独立公文書管理監」などの独立監視機関化の否定/通報者防衛の担保がない内部通報制度/裁判になった場合でも特別指定が非公開状態のままの不当性などが指摘されているにもかかわらず、とりあえず5年後に再検討すると述べ、先送りにしてあいまいにしようとするのが狙いだ。

 

とりわけパブリックコメントでは秘密指定のくり返し延長による永久機密化の危険性について集中的に指摘されている。「特定秘密」の指定期間を60年とし、公開の例外として7項目(①暗号②情報源の名前などの情報③情報収集の能力④武器・航空機などの情報⑤国民の生命や領域保全に関する外国政府との重要交渉方針など⑥外国政府から六〇年を超えて秘密指定を行うことを条件に提供された情報⑦これらに準ずる情報)をあげている。この例外は、手前勝手に秘密特定の対象を拡げたにすぎず、民衆の「知る権利」をことごとく圧殺するものだ。「7 これらに準ずる情報」は、権力が恣意的に判断できるということを明記しているに匹敵する。

 

〈2〉「知る権利について『憲法21条が保障する表現の自由や、民主主義社会のあり方と結び付いたものとして十分尊重されるべきだ』」と明記した。

 


しかし特定秘密指定の行為者は、権力であり、官僚らの手前勝手な認定を乱発していく。従来の情報隠蔽の罪業からすれば当然の立ち振舞いとして拡大しいくのは明白だ。「行政機関の長」が「特定秘密」を指定したり解除したりする際首相が「第三者機関的」に関与すると言っているが、首相が「第三者機関的」に関与すること自体が、独立性もない機関でしかなく首相の御用機関だ。政府は、すでに特定秘密事項が42万件もあると答弁しているが、これだけ膨大な事項を一つ一つ首相と「第三者機関」がチェックするというのは、ウソであり、官僚が提出する書類を追認するだけの通過儀式でしかない。これらのプロセスは秘密保護法が国家安全保障会議(NSC)の強力な武器となり、集団的自衛権行使容認にむけた自衛隊法などの関連法改悪と一体となって米軍とともにグローバル派兵に参戦する軍事大国化への踏み込が当面する獲得目標として設定している。

 


〈3〉「特定秘密事項を緊急廃棄した際は、理由を記載した書面を作成し行政機関の長に報告」する。

 


身内同士でアリバイ的にチェックするシステムを基本にしており、第三者による点検機能が介入する余地はない。民衆がまったく知らないまま機密文書を闇に放り込むことにある。


人権侵害に満ちた「適性評価」

 

〈4〉「特定秘密を扱う公務員や防衛産業従業員の身辺を調べる『適正評価』に関し、苦情申し立ての結果を通知する際には判断根拠を具体的に説明」する。

 

「適性評価」とは、各行政機関の長が実施権者となって特別秘密を取り扱う職員の思想・生活などを事前にチェックする制度だ。秘密情報を取り扱う適性があるかどうかを判断するための事前調査事項として、①人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍(帰化情報を含む)、本籍、親族等)、②学歴・職歴、③我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関与、④外国への渡航歴、⑤犯罪歴、⑥懲戒処分歴、⑦信用状態、⑧薬物・アルコールの影響、⑨精神の問題に係る通院歴、⑩秘密情報の取扱いに係る非違歴などを判定しておけというのである。

 

政治活動、労働運動、地域活動などを「我が国の利益を害する活動」であると認定することによって排除が可能なのだ。「配偶者のように対象者の身近にあって対象者の行動に影響を与え得る者についても」事前調査をやれとも言っている。

 


対象者は、特別秘密を作成・取得する業務、その作成・取得の趣旨に従い特別秘密の伝達を受ける業務に従事する者と設定しているから、その範囲は行政機関職員、独立行政法人、地方公共団体、民間事業者・大学に勤務する者も含むことになってしまう。

 

「精神疾患と情報漏洩に因果関係はなく、適性評価は差別を助長する」というパブリックコメントでの批判に対して「具体的症状、治療の経過、再発の可能性を踏まえ、個々具体的に判断する」と述べ、障がい者差別を前提にしている。

 

適性評価は明らかに人権侵害であり、プライバシー侵害に満ちている。「行政機関個人情報保護法」の違反だ。秘密保護法によって無限に監視・調査対象を拡大し、プライバシー権、思想・信条の自由等の侵害を強行していくのである。マイナンバー(共通番号)が2015年10月から番号の付番・通知、16年1月から社会保障分野や税分野の利用を強行する。マイナンバーの個人情報にリンクさせ民衆監視・管理を拡大していこうとしている。


司法改悪法制定と共謀罪


安倍政権は、国家安全保障会議(日本版NSC)を司令部にして特定秘密保護法施行、司法改悪法制定(取調べの全面可視化否定、盗聴法改悪、司法取引制度導入)をステップにセットとして共謀罪法の制定を狙っている。とりわけ秘密保護法の「秘密の保有者の管理を侵害する行為」について「未遂、共謀、教唆、扇動」を含めて罰しようとしているが、これは第一歩でしかない。

 

すでに自民党の脇雅史参院幹事長が「共謀罪」制定について、「必要な国内法の整備は当然やらねばならない。国際的にみても、要請がある」と述べ、組織犯罪処罰法改悪など関連法案の提出を急げとぶち上げたが〈7月22日〉、あわてて菅義偉官房長官は否定した。松島みどり法相も9月11日の日本経済新聞のインタビューで「慎重な上にも慎重に検討していくべきだ」と述べたが、要するに安倍政権は2020東京五輪のプロセスとして対テロ治安弾圧の一環として共謀罪を制定する意志を堅持していることを明らかにしたに等しいのである。

 

特定秘密保護法の施行は、改憲の先取りであり、民衆の日常生活にまで処罰対象を広げようとしている。年内施行を許さない国会内外の闘いを取り組んでいこう。

 

(Y)

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