かしか 3月25日、日本弁護士連合会は、弁護士会館で「取調べの可視化を求める市民集会『取調室にシナリオは要らない~骨抜きを許さない!取調べ全過程の録画を~』」が行われ、240人が参加した。


 法務省は、大阪地検特捜部の押収資料改ざん・犯人隠避事件(10年9月)を通した検察機構の危機と社会的批判を収束するために法相の諮問機関である新時代の刑事司法制度特別部会(2011年6月)を設置し、取り調べの可視化をめぐる審議を行ってきた。賛成・反対派の委員(裁判官、検察官、弁護士、警察、学者、民間人26人、幹事14人)の構成で論議し、2015年の通常国会に向けて法案化をめざし
ている。


 すでに試案として①「裁判員裁判の対象罪名で逮捕された場合は原則的に全過程の録音・録画を義務付ける」案と、②自白の誘導と強要、「拷問」に近い脅迫場面を記録せず、えん罪防止には程遠い「録音・録画の範囲を取調官の一定の裁量に委ねる」案を併記した。可視化反対派の警察官僚は、徹底して抵抗するとともに新たな刑事司法制度と称して人権侵害に満ちた「供述証拠の収集/客観的証拠の収集/公判段階の手続き/捜査・公判を通じた手続き」を導入しようとねらっている。


 日弁連は、密室で作られた自白調書によるえん罪を繰り返させないために取り調べの全面可視化を実現するために集会を行った。


集会は、日弁連の山岸憲司会長のあいさつで始まり、可視化実現にむけた決意表明を行った。


 小坂井久弁護士(法制審特別部会幹事)は、基調報告として「法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の議論状況について」て提起し、「警察関係の抵抗は厳しいものがある。しかし、民間委員5人[神津里季生(連合事務局長)/周防正行(映画監督)/松木和道(北越紀州製紙株式会社取締役)/村木厚子(厚生労働事務次官)/安岡崇志(元日本経済新聞社論説委員)]が『原則としてすべての事件を録音・録画の対象とすべきである』(13年2月)という意見書を提出した。長い審議過程において歴史的な出来事であり、可視化の法案化にむけて大きなステップとなる」と強調した。


 えん罪被害者報告では桜井昌司さん(布川事件)、上田里美さん(北九州爪ケア事件)が発言した。


 桜井さんは、「1967年に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件で私ともう一人が逮捕され、長時間におよぶ強引な取り調べによって虚偽の自白に追い込まれた。無期懲役の判決を受け、29年間受刑さぜられていたが、2005年に再審決定され、11年5月、水戸地裁土浦支部で無罪判決が言い渡された。現在、国賠裁判を取り組んでいるが、権力はいまだに反省することなく開き直り続けている。可視化はえん罪を防ぐ前提だ。私の全体験を通して言えることだ」と訴えた。


 上田さんは、「北九州市の病院に勤めていたが、2007年7月、高齢者の患者の爪を剥がしたと傷害罪で逮捕された。警察のシナリオにもとずいて取り調べが行われ、爪切り行為そのものを楽しみとしたなどという供述調書が作られた。福岡地裁小倉支部は、それを証拠採用し、正当業務行為との推定が働かないとし、懲役6ヶ月執行猶予3年の判決を出した。控訴審では、看護行為として必要であり、正当業務行為だとして無罪判決(確定)をかちとった。供述調書は、誘導されたものと疑いが残るとして信用性が否定された。えん罪を防ぐためには可視化がもちろん必要だし、さらに弁護士接見、立会いの実現も必要だ」と指摘した。


 パネルディスカッションは、菊地幸夫弁護士 (第二東京弁護士会所属)がコーディネーター、パネリストが北尾トロさん (ライター)、小坂井久弁護士(法制審特別部会幹事)、周防正行さん (映画監督/法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会委員)。


 とりわけ周防さんが特別部会の審議状況を報告し、「警察関係委員は、自らの取り調べを絶対正しいという立場からウソをしゃべったえん罪被害者こそが悪いという主張だった。さらに被告にマイクとカメラをつきつけたら、喋れなくなるということを理由にして可視化に反対し続けているが、実は喋れなくなるのは取調官なのだ。それだけ酷い取り調べをやっていることを証明してしまっている。可視反対派の警察、揺れ動く検察と裁判官という構造があり、へたをすると可視化の実現さえも危うい状況にある。だからこそ私たちは『意見書』をまとめた」と批判した。


(Y)