無題 - コピー報告:遠藤一郎さん(全国一般全国協副委員長)

企業が世界で一番活動しやすい国づくり 雇用破壊攻撃、解雇特区・ブラック企業特区攻撃ゆるすな!





 安倍政権による労働分野の規制緩和攻撃は、特区構想も含めて事態はどんどん進んでいる。闘いの方向性について提起していきたい。



 ●労働法の変化の流れ



 小泉政権による構造改革は、「解雇をしやすくすれば、企業は安心して人を雇って、失業が減る」など言っていた。誰が聞いてもおかしいと思うが平気でこのようなことを言っていた。

 しかし小泉構造改革による行き過ぎた労働分野の規制緩和の動きに対して現場の労働運動と法改正の要求が結合して政治を動かした。

 第一がホワイトカラーエグゼンプションだ。第一次安倍政権の時に、労働政策審議会で建議までされて、法案要綱まで準備し、閣議決定して国会に提出する直前までいった。ところが私たちは、「過労死法案」、「過労死促進法案」、「残業ゼロ法案」だとして多くの労働団体が結集し、安倍は国会上程を断念した(2007年1月)。大衆闘争で法案要綱までできていたのに吹っ飛んだ。大きな出来事だった。

 リーマンショック後、派遣切りが起こり、年越し派遣村が作られていった(2008年12月)。派遣労働者が職を失うだけではなく、家がなくなり、生活のための賃金も失う状況を可視化させた。派遣企業は、派遣先から自分のマージンを取って労働者に賃金を払う。さらにそこから派遣労働者を管理するためのコンピューターに費用がかかるからと称してデータ管理費などをとっていた。派遣労働者は、二重のピンはねではないかと本社にむけて抗議行動をやった。

 例えば、私のところの組合で言えば、パナソニツクで二十数年近く働いていた佐藤昌子さんが派遣切りにあった。彼女は派遣ではないと思って働いていた。しかし、会社に色々と聞いてみたら派遣だった。2008年12月4日に「派遣法抜本改正日比谷集会・デモ」の集会で東北全労協から30人が闘争旗を林立させ、佐藤さんは壇上から発言を行った。さらに有期労働契約の規制緩和の攻撃に対しても反撃していった。

 このように労働運動と法改正を求める運動が結合しながら政治を動かしていった。それが自民党が敗北し、民主党政権に交代した(2009年8月)ことにつながった。労働者民衆の期待が民主党政権に込められる。中曽根から小泉まで日本の新自由主義的な攻撃と流れを転換させなければいけないのではないかという運動が起こり、自民党政権を退陣に押しやったという事態が進んだ。

 しかし民主党は、改正労働者派遣法、有期労働契約規制、高齢者雇用安定法に対して自民党政権はノーだと押し上げたエネルギーと比べ、きちっと実現させる立場をとれなかった。やがて民主党政権の変質と財界の巻き返しによって3つの法改正は、換骨奪胎、全く不十分な内容に終わる。

 大衆闘争の押し上げがあったが、政治的表現としては限界にぶちあたり、民主党政権に対する失望が拡大していった。労働法制だけの問題だけではなく、沖縄の問題とか、多くの問題について民主党政権の弱さが暴露された。民衆の期待が大きかったぶんだけ、その反動も大きく自民党政権への交代が再び起こり、安倍政権が登場した。労働運動の闘いの積み上げと、法改正へと結びついた流れが、残念ながら逆転してしまった。安倍政権の登場によって一挙に流れが反転した。



労働規制に穴を開ける



 安倍は、「日本を世界で一番、企業が活動しやすい国にする」と宣言し、成長戦略の柱とした。新自由主義路線の本質をそのまま、ものすごくわかりやすく表現している。国の首相は、少なくともこれまでの統治のあり方からすれば、国民全体を幸せにするという装いをともないながら、現実に資本の利益を追求する。そうでなければ国民統合ができなかったからだ。ところが安倍は、日本の政策目標の決定的な主語を企業にした。企業、財界の六重苦と言われる円高、高い法人税、FTAへの対応遅れ、労働規制、環境規制、電力不足を克服するということで、アベノミクス、TPP参加、原発再稼働・輸出で対応していくことを押し出した。残る最大の課題が岩盤のような労働規制に穴を開けるんだというのが安倍の成長戦略のポイントだ。

 すでにOECDの労働市場研究が世界の全体的な経済成長の限界、停滞のなかで、一国だけではなく、先進国の経済全体の危機の中でどのように乗り切るかと模索してきた。1980年代の終わりから90年代初頭に、その柱としてヨーロッパ大陸型の雇用のあり方を転換しなければならない、つまり緊縮財政と解雇規制緩和をはじめとする雇用破壊、労働分野の規制緩和、雇用改革が決定的だと方針を打ちたてた。

 さらに対日審査報告書を出し、日本的雇用関係の全面的批判をおこった。これに対して日本政府はまったく反対しなかった。この報告が基礎になって日経連が「新時代の経営戦略」(1995年5月)を提起した。このように緊縮財政、福祉の切り捨て、労働分野の全面的な見直し、搾取を露骨に行う流れが90年代から強まってきた。

 安倍政権は、もう一度、小泉構造改革の手法に戻って経済財政諮問会議、規制改革会議などの審議会、委員会を設置して、トップダウンで規制改革をやろうとしている。本来は、労働法制はILOの規制もあって、政労使の三者の構成による審議を経て、労働法の改正が進められるのだが、そういうあり方そのものを全部ぶっ壊して、上からやるというやり方だ。



 ●安倍政権の具体的狙い



 経済財政諮問会議、日本経済再生本部、規制改革会議、産業競争力会議は、全部、労働者の代表なしで進められている。八田 達夫、竹中平蔵、八代尚宏、鶴光太郎など名うての規制改革
論者が参加している。

 鶴光太郎は経産省上がりの慶応大学の教授で規制改革会議雇用ワーキンググループの座長だ。

 鶴報告は、①雇用維持型から雇用流動型へ。失業なき円滑な労働移動をめざす②正規・非正規二極化の是正、非正規労働の規制と待遇改善・均等待遇でなく③「正社員改革」ジョブ型(限定)正社員の普及・拡大、解雇ルールの明確化――を示した。

 経団連は今年四月に「労働法制提言」を行ったが、「労使自治の尊重」「良好な労使関係の下での労使自治に任せろ」という主張だ。つまり、「各規制を撤廃する方向で努力するのは当たり前だ」、「しかしその前提に牙がぬかれた良好な労使関係があるのだから、本来の労使自治にまかせろ」という主張だ。

 この間、これらが合わさって労働分野の規制緩和の議論が進行している。「日本再興戦略-JAPAN is BACKー」としてまとめ、そのうえで規制改革会議の実施計画を6月14日に閣
議決定している。

 雇用改革は、①限定正社員―多様な働き方、多様な正社員モデルの普及②労働時間法制の見直しだ。評判が悪いから「ホワイト・カラー・エグゼンプション」を再びやるとは言えずに裁量労働制条件緩和と提起している。さらに③労働者派遣法の見直し④有料職業紹介事業の規制改革を提起している。

 この四つを日本再興戦略として閣議決定した。財界は、解雇自由、ホワイト・カラー・エグゼンプション、有期雇用の規制緩和をねらっていたが載せることができなかった。だから有期と解雇の問題が残されているわけだ。



●多様な社員?



 厚生労働省は、日本再興戦略の着実な実施について9月18日に発表した。労働改革の次のように進行している。

 第1が「雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」だ。

 これは労働運動をやっているものからすると大事な問題だ。これまでの雇用調整助成金から労働移動支援助成金へのシフトするということだ。今まで景気が変動すると、労使で交渉して申請をして、雇用調整助成金をもらう。生産が低下して仕事がない時に、助成金で生き延びる。再び景気が回復したら助成金を打ち切る。解雇をしない体制を作ってきた。

 ところが15年までに予算規模を逆転すると主張している。中小企業だけでなく大企業にも移動支援金を拡大すると言っている。

 すでに14年度予算案の労働移動支援助成金は、1・9億円から301億円へと概算要求している。雇用調整助成金は、前年には1175億円あったのを545億円にしてしまった。需要があるにもかかわらず削ってしまった。

 第2は、「民間人材ビジネスの活用によるマッチング機能の強化」を掲げた。要するにハローワークの民営化だ。

 第3が「労働者派遣法の見直し」だ。

 8月20日、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が報告を発表した。続いて労政審の労働需給制度部会で審議を開始し、年内に結論を得て、14年度通常国会で法制上の措置を行う。

 審議は超スピードだ。1998年の労基法改正、有期法制改正を強行した労政審の審議のやり方と同じだ。

 報告の問題点は、派遣の全面自由化だ。つまり、派遣が全面的に自由化され、業務の規制もない、期間の規制もないというのだ。派遣が一般的な働き方だとなれば、企業中枢は持ち株会社だけ持っていれば、丸投げしてもかまわないとなってしまう。正社員のごく一部の幹部要員だけを残して、あとは全部派遣でいい、有期でいい、こういうことになってしまう。本来の派遣という間接雇用という働き方は、口入れを禁止した職安法44条の特例として生まれた。派遣が全面自由化されれば口入れ屋がどんどんはびこるのだ。

 「『多様な社員』の普及・拡大のための有識者懇談会」が9月10日に発足し「限定正社員」の普及・拡大にむけて一六年度中にまとめようとしている。

 「限定正社員」は、今だって一般職、総合職とかで正社員の種類がある。しかし、この「限定社員」を普及・拡大するという考え方は、処遇の低い、解雇しやすい第二正社員を作るということだ。アルバイト、臨時の非正規の労働者を第二正社員に引き上げていくのかというと、そうじゃない。

 これは大変なことだから、有識者懇談会でどういう手続をしたらいいか、本人同意がかならず必要だとか、色々と論議している。

 今の無法化している職場環境では、「君は第二正社員になってくれ」と言われれば、実質的な命令と同じだ。だけどいちおう本人の同意を得なければいけないみたいなことを有識者懇談会で論議している。



●日本再興戦略と国家戦略特区



 産業競争力会議の国家戦略特区ワーキンググループ(座長・八田達夫大阪大学招聘教授)は、日本再興戦略で盛り込めなかった雇用規制をめぐる問題を突破するために雇用特区を持ちだし(9月20日)、特例諸措置を設けることを提言した。

 「有期雇用」については、すでに労働契約法18条が4月1日に施行されている。五年有期で働いたら無期転換権を付与することになっている。しかしまだ誰一人、その法律の恩恵に預かった人はいない。五年たっていないからだ。しかしこの労働者の権利をもう一度なくしたいというのがねらいだ。

 第2は「解雇ルール」について。契約締結時に解雇の要件・手続きを契約条項について「特区で定めるガイドライン適合する契約条項に基づく解雇は有効となる」とした。契約締結時に契約条項を拒否できる労働者はほとんどいないだろう。

 例えば、3回遅刻したら解雇という約束をして雇った場合、解雇できるというのだ。さらに特約条項で企業に都合がいい条件を付して雇用して、その条件が発生したら解雇できることにしてしまう。例えば、企業の業績が停滞したら解雇する。契約が打ち切られる。そういうようなことができるようにするということだ。特区内は解雇自由になってしまう。

 第3が「労働時間」の問題だ。

 一定の要件を満たす(年収など)労働者が希望する場合、労働時間・休日・深夜労働の規制をはずして、労働条件を定めることを認めるというのだ。

 「雇用特区」設定について、さすがに厚生労働大臣は、憲法・労働法との関係から特例措置導入は無理と抵抗した。竹中、八田は、厚労省の省利益を代弁する大臣だとして、特区戦略会議に入れておくからいけないんだと言った。結果として、特区戦略会議をやる場合、担当大臣は外すことになった。

 憲法で認められた法の下の平等を無視してある特定の地域には、労働時間を八時間働いても、10時間働いても、同じ扱いでいいようなことを、36協定を結ばなければ残業ができないという労基法法規をごまかして労使で勝手にできるというのは、いくらなんでもできませんというのが当然だ。

 だが安倍は、これを制して、具体的提案の提示を厚生労働大臣に求めた。竹中は、大臣に向かって「できないことをやるのが特区なんだ」と言った。憲法違反をやれと言ったに等しい。

 さらに10月8日、ワーキンググループは最終決定(雇用条件の明確化、有期雇用の特例)を出したが、朝日新聞が「解雇特区」と報道した。八田と竹中は、朝日新聞に乗り込んで「誤報だ」と抗議し、「われわれは、この特区で働きやすい労働条件を守るための制度を作ろうと思っている」などと言った。



特区構想とは



 ワーキンググループの特区構想は、東京圏、名古屋圏、近畿圏を設定し、圏内に本社を置くところが対象となる。また東京に本社があり、特区の適用が受ければ、系列の全国工場が全部適応される。東京圏、名古屋圏、近畿圏は、日本の大企業はほとんど入っている。これは特区という名を借りた労働分野の規制の岩盤に穴を開けるということだ。

 ところが財界から文句が出た。3つの経済圏に入らないところにある企業は、まったく別の条件でやらなければならない。ひどいじゃないかと財界で文句が出た。

 最終的に特区内では、雇用条件の明確化と有期雇用の特例の二つに絞られた。雇用条件の明確化とは、「雇用労働相談センター(仮称)」を特区内に設置して、企業に「雇用ガイドライン」を適用して、個別の相談について対応すると言っている。しかし、この中身は、日本の解雇裁判の判例を資料にして、それを免れるために対応することだ。雇用条件について相談窓口を作り、解雇自由特区を作りたかったが、とりあえずこれでやらざるをえなくなった。

 有期雇用の特例では、5年の期間を取っ払って、有期雇用18条の適用を除外させたかったが、5年の有期の期間を10年に伸ばせと提言している。これは特区じゃなくて全国対象であり、労政審で検討せよと言っている。要するに今年4月1日に施行された法律を、また一からの有期規制の見なおしをやれというのだ。

 日本再興戦略で決めた労働分野の規制改革、特区でねらったものはかなり削った。だけれども特区のほうで切り縮められたから、いいかというとそうはいかない。もうすでに4項目は、どんどん進めている。



●反撃の視点



 労働の規制緩和は、派遣法、有期法、限定正社員などパックになって押しかかっている。つまり、職場の無法化地帯をねらっている。ブラック企業がどんどん増えていくことだ。

 この攻撃に反撃していくためには、個別労働法改悪の問題だけではなく、トータルで跳ね返していかなければならない。労働分野だけではなく安倍政権がやろうとしていることに対して反撃していくことだ。

 例えば、JAL争議の集会では、争議と憲法改悪反対の闘いを結び付けないと勝てないと強調していた。労働法制だけではなく特定秘密保護法、憲法改悪、集団的自衛権、原発、沖縄などの問題など安倍政権と全面対決する行動の中に労働分野の規制緩和を許さない闘いを行っていくことが求められている。

 職場の闘う勢力として物分かりが悪い、異議申立てができる、必要な時に実力行使ができる、そういう職場の力を、労働組合をどのように作るか。全体の政治状況の中で労働法制の改悪反対闘争と結びつけて、政治闘争を闘っていくことだ。この二つがないと喧嘩にならない。

 全労協は、今後、対労政審闘争に取り組み、広範な戦線づくり、共同闘争を追求していく。すでに労働法制プロジェクトを設置し様々な取組みを展開している。さらに安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクションにも参加している。

 労働は商品ではない、人間らしい労働と生活の確立!直接雇用原則、安定雇用原則、均等待遇原則を主張していこう。非正規雇用の規制こそ必要だ。入り口規制を!均等待遇の確立を実現しよう。