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 八月一一日、水道橋の在日本韓国YMCAで「ブラック企業大賞2013授賞式」が行われた。この企画は昨年から、労働組合、弁護士、ジャーナリストらによって企画委員会が作られ行われている。昨年のブラック企業大賞は東京電力である。

 以下、企画委員会がブラック企業大賞をつくった理由について紹介する。

 パワハラ、セクハラ、残業代未払い、長時間労働、派遣差別、偽装請負・・・。日本の労働環境はいまますます悪化の一途をたどっています。それらの職場はここ数年で「ブラック企業」と称され、社会的にも注目されつつあります。しかし個別事例の調査やその問題の発信・解決も簡単ではなく、ブラック企業で働く当事者は、不当な処遇を受けていても声をあげられる状況ではありません。さらにはブラック企業を生み出す社会・経済的な構造についての分析や提言についても不十分であるため、きわだったブラック企業の存在は一時的に取り上げられても、企業全体・働く場全体の質の向上にはなかなか結びついていません。そこで私たちは、ブラック企業の個別の事例はもちろんのこと、それら企業を生み出す背景や社会構造の問題を広く伝え、誰もが安心して働ける環境をつくることをめざして「ブラック企業大賞企画委員会」を立ち上げました。

ノミネート企業選定について

 ブラック企業とは・・・・①労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている企業、②パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)。


 Web投票と当日の集会参加者の投票で全体の七割、二万数千票を獲得したワタミが2013ブラック企業大賞。ワタミは二〇〇八年、社員(当時26歳)を入社二カ月で過労自殺においやった。創業者である渡辺は遺族からの面談も謝罪も拒否している。教育的指導賞はいわゆる「追い出し部屋」で従業員から訴訟を起こされたベネッセコーポレーション、特別賞は薬学部助手が研究室から投身自殺した東北大学、業界賞は入社一年目の女性正社員が過労死し、労働災害として認定されたクロスカンパニー。

 このほかサン・チャレンジ(ステーキのくいしんぼ)、王将フードサービス(餃子の王将)、西濃運輸、東急ハンズの合計八社がノミネートされていた。

 ブラック企業大賞2013授賞式は昨年の受賞企業と今年度のノミネート企業八社の内容を紹介した(随時、次号以降本紙に掲載予定)。そして、昨年の受賞企業のその後が報告された。

 昨年の大賞の東京電力は福島原発事故の責任ということではなく、原発労働者の健康破壊や偽装請負での問題が指摘された。五日前に、福島第一原発で働いている労働者一万人以上が年間五ミリシーベルト以上の被曝をしていることが分かった。今後白血病を発症する可能性があるが確かなことは誰も分からない。東電は対応できない。また、社内アンケートで一万二千人の半数が偽装請負の経験があると回答した。新たな事実が発覚した。

 ありえない賞の牛丼のすき屋のゼンショー。首都圏青年ユニオンの闘いによって、残業代を一万人以上の従業員に払わせた。二〇〇六年以来、団交拒否していたのも再開した。目茶苦茶な扱いを受けていたが組合員になれば成果をあげることができる。ブラック企業をなくしていける。

 特別賞の天気予報を配信しているウェザーニュース。二〇〇八年過労自殺が起きた。研修と称して「追い出し部屋」を作った。それに対して外国人組合を結成して闘っている。事態は変わっていないが自分で闘っていくしかない。報道され応援が増えたのは心強い。


 次に「追い出し部屋」をキーワードにして実例が報告された。「朝日新聞」が二〇一二年一二月三一日にパナソニックの追い出し部屋について大きく報道した。一〇〇人がそこに追いやられ、結局三〇人以上が会社を辞めたとのこと。二〇一三年一月、厚労省がシャープ、ソニー、NEC、朝日生命に調査に入った。集会では文芸社などの実態が明らかにされた。

 特別報告として、郵政産業ユニオンの丹羽良子さん(郵政非正規社員の「定年制」無効裁判)が自爆営業について報告した。

 「一万二千人の非正規労働者が六五歳定年制で解雇されたが九人が雇用の継続を求めて提訴して闘っている。年賀状、かもメール、イベント小包、各地の名産品の小包にノルマが課せられる。ある支店の場合、年間で小包四〇個、かもメール三〇〇枚、年賀状二五〇〇枚。達成するためには自分で買い取る=自爆するしかない。会社から現金と引き換えで渡され、それを金券ショップに持ち込み換金する。正規・非正規も同じように扱われる。自分の場合も給料の三分の一から四分の一になってしまったことがある」。
 「目標額と売り上げを職場に張り出している。正社員になるにはノルマを達成しなければならないという恐怖感を利用している。生活できる賃金で雇うのが当たり前ではないか。郵政会社は知られざるパワハラ職場だ」。


 参加者が投票した後、すさまじい企業トップのブラック語録が紹介された。そして、大賞など各賞が発表され、最後に佐々木亮さん(労働弁護団事務局長)と竹信三恵子さん(ジャーナリスト、和光大教授)がまとめのトークを行った。

 佐々木さんは次のようにまとめた。

 「七〇社ほどピックアップした。順番をつけたりするのは本来いけないのかもしれないが、知らせることが重要だ。被害に合っているのは若者だ。正社員は転落すると非正規しかない、がんばる。これにつけこんでブラック企業ができる。労働者の意識を麻痺させる。だれかに相談することが重要だ」。

 「長時間労働の問題、過労死などたくさんある。精神疾患が増えている。これを防ぐ法律的仕組みが必要だ。厚労省が監視の取り組みを始めた。行政が何をするのか監視する必要がある」。

 竹信さんがまとめを提起した。

 「今回の特徴は大学や企業イメージのよい会社が入ったことだ。これは日本社会にはびこり、根づいていることだ。共通点は法律に反した労務管理、労働者の生存権をおびやかしている、ビジネスモデルになっている、長時間働かせている」。

 「かつて、日本の企業は労働者への拘束度が高く問題が多かった。例えば企業ぐるみ選挙、家畜のような社員を社畜と言った。国労組合員を解雇するための人材活用センター(追い出し部屋の大規模なもの)。このように企業戦士と言われ、日本の風土のように言われる根強いものがある」。
 「ではなぜ労働者は許容したのか。それは、保障はちゃんとするという高保障の約束だった。それがなくなっているのになぜ従っているのか。今の問題点。①正社員は非正規になりたくないのでしがみつく②会社はそういうものだと思わされている③就活が厳しいので、拾ってもらったらよいと思わされている。利益のために何をやってもよいという新自由主義と前の土壌の高拘束を使っている。このふたつを見直し二正面で闘わなければならない」。

 「ピンポイントだけでなく全体を変えていく。洗脳に負けず、外に優しい、緩やかなネットワークをつくる。その先に労働組合がある。非正規・正規職差別問題は同一労働・同一賃金がない、これを取り戻す闘いだ」。

 労働現場で何が起きているのか、知る手がかりになる重要な集会であった。(M)

2013ブラック企業 ノミネート企業

 選定基準は「労働法やその他の法令に抵触し、またはその可能性があるグレーゾーンな条件での労働を、意図的・恣意的に従業員に強いている」「パワーハラスメントなどの暴力的強制を常套手段として従業員に強いる体質を持つ企業や法人」。

 ワタミ・東北大学・餃子の王将・東急ハンズ・西濃運輸・ステーキのくいしんぼ・ベネッセ・クロスカンパニーの8つがノミネートされており、それぞれについて一体どういう理由でノミネートされたのかは以下のとおりとなっています。


◆ワタミフードサービス

hdr_logo居酒屋チェーンや介護事業を全国展開している同社では、2008年6月に正社員だった森美菜さん(当時26歳)が、厚生労働省が定める過労死ライン(月80時間の残業)をはるかに上回る月141時間の残業を強いられ、わずか入社2カ月で精神疾患と過労自殺に追い込まれた。昨年2月に労災認定されたあとも、同社は責任を認めることなく、創業者である渡辺美樹会長は遺族からの求めに応じず、いまだに面談も謝罪も拒否している。

 亡くなった森美菜さんは連続7日間の深夜労働、午後3時から午前3時半の閉店まで12時間働かされた。閉店後も遠く離れた社宅には始発電車まで帰ることもできず、休憩室のない店舗で待つしかなかった。ほかにも休憩時間が取れない、休日出勤、強制的なボランティア活動、早朝研修、給料から天引きで買わされた渡辺会長らの著書の感想文提出などで疲労は蓄積した。残業に関する労使協定(36協定)も店長が指名したアルバイトに署名させるという違法行為が労働基準監督署から是正指導を受けた。

 遺族と支援する労働組合は、森美菜さんの労働実態と原因の解明のために経営者ら責任ある立場の人との面談を同社に求め続けているが、同社は顧問弁護士のみとの面談を除いて応じる姿勢を見せていない。逆に同社は昨年11月、遺族を相手取って同社が支払うべき損害賠償金の確定を趣旨とした民事調停を申し立てた。

 報道によると、同社が全社員に配布している「理念集」という冊子には「365日24時間死ぬまで働け」と書かれているという(『週刊文春』2013年6月13日号)。


◆クロスカンパニー

logo 人気女優の宮崎あおいをCM起用したメインブランド “Earth Music&Ecology”で若い女性に人気の企業であり、また、店舗従業員も含めて、全員が正社員として雇用されているとして一部で「女性社員の働きやすい企業」として宣伝されている企業だが、その労務管理には、大きな問題があった。

 2011年2月9日、立川労働基準監督署は、入社1年目の女性正社員(2009年10月死亡)が極度の過労・ストレスにより死亡したとして労働災害として認定している。この女性社員は、大学を卒業した年である2009年4月にクロスカンパニーに入社。同年9月に都内の店舗の店舗責任者(店長)に任命された。店長就任以来、日々の販売の他に、シフト・販売促進プランの入力、レイアウト変更、メールによる売り上げ日報・報告書の作成、本社のある岡山での会議出席などに追われた。スタッフが欠勤連絡のために、深夜0時や早朝5時に携帯電話に送ってくるメールにも自宅で対応しなければならなかった。勤務シフトは通常3~5人で組まれていたが、相次いで3人退職した後も会社は人員を補充しなかった。売り上げ目標達成に対する上司からの追及は厳しく、マネージャーから店長に「売上げ未達成なのによく帰れるわねぇ」という内容のメールが送られてきた。

 亡くなった女性のノートには、本社のある岡山での会議で「売り上げがとれなければ給料も休みも与えない」旨の指示があったことが記されている。この女性は、働いても働いても売り上げ目標が達成できないので、2009年9月には、売上額を上げるために自分で計5万円以上も自社商品を購入していた。彼女の2009年9月の時間外労働は、労働基準監督署の認定した時間だけでも少なくとも111時間以上だった。そして、極度の疲労・ストレスの中、2009年10月に亡くなった。


◆ベネッセコーポレーション

header_ci 2009年、人事を担当する人財部のなかに「人財部付」という部署が新設された。ここに配属された女性社員は、「あなたたちには問題があります。受け入れ先を獲得する活動をしなさい」と上司から指示された。電話に出ないように指示され、名刺も持たされなかった。社内ネットにもアクセスさせなかった。自分を受け入れてくれる部署をさがす「社内就職活動」をしながら単純作業をするように命じられていた。また、他部署をまわって雑用をもらってくることも命じられた。

 仕事の大半は、段ボール箱の片づけや懐中電灯へのテプラ貼りなどの単純作業だった。「再教育」は名ばかりで、単純作業をやらせることによって、社内には仕事がなく、退職以外には方法がないと思い込ませる場として設置されていた。ベネッセ側は、「『人財部付』は従業員の配属先を決めるまでの一時的な配属先。退職を勧めるための場ではない」と主張していた。

 2012年8月、東京地裁立川支部判決(中山典子裁判官)は、人財部付が「実質的な退職勧奨の場となっていた疑いが強く、違法な制度」と判断し、この部署への異動も「人事権の裁量の範囲を逸脱したもの」として「無効」を言い渡している。


◆サン・チャレンジ(ステーキのくいしんぼ)

header 2010年11月8日午前1時ごろ、株式会社サン・チャレンジ(本社東京都渋谷区 上田英貴代表取締役)が運営するレストランチェーン「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店の店長だった男性(当時24歳)が、店舗が入居するビルの非常階段の踊り場で首吊り自殺した。男性の自殺は、2012年3月に渋谷労基署が過労によるものと認定。同署が認定したところでは、男性が亡くなる前8カ月間(4月1日から11月7日)の残業時間は最も少ない月で162時間30分。最も多い月で、227時間30分に達していた。またこの間に男性が取得できた休日はわずか2日のみであり、亡くなった当日まで連続90日勤務していた。

 これほどの長時間労働をしながら、男性は名ばかりの「管理監督者」として扱われ、残業代、ボーナスも支給されていなかった。また、やはり渋谷労基署が事実として認定した内容によれば、男性上司から「ひどい嫌がらせやいじめ、または暴行」を受けていた。「業務の指導の範疇を超えた、人格否定または罵倒する発言」が執拗にあったほか、「時には頭を殴るなどの暴行も行われていた」という。


◆王将フードサービス(餃子の王将)

ohsho 2013年2月5日、「餃子の王将」で働いている25歳の男性が、王将フードサービスを相手取り損害賠償を求める裁判を起こした。男性ははじめアルバイトとして王将で働き始め、10カ月後に正社員として登用される。京都府内の店舗で調理などの業務を担当していたが、長時間労働のためにうつ病を発症し、11年4月から休職を余儀無くされている。うつ病を発症する直前の6カ月の時間外労働は平均して月に約135時間だった。男性のうつ病は、労災として認定されている。

 餃子の王将では労働時間管理をコンピュータで行っており、1日10時間を超える労働時間は入力できない仕組みになっている。このように、組織的に残業代の不払いを行っていたことも明らかとなった。原告の男性は、マスコミに対して「何やと思ってんねやろう、人を」とコメントしている。また、王将フードサービスは、過酷な新人研修についても度々報じられている。逃げ場の無い合宿形式で行われる研修では、「2メートルでも瞬間移動」などの指導に始まり、「王将五訓」の暗唱や王将体操などをさせられる。一連の研修は、「人権」の考え方を「ペスト菌」のようなものだと主張する染谷和巳氏の経営するアイウィルが請け負っており、パワハラとみなされてもおかしくない状況が延々と続く。



◆西濃運輸

picture_3kv6hoqdmvnte4b0b5jq4atoi5_20091118091309 岐阜県に本社を構え、「カンガルーの西濃」として知られる運送大手の西濃運輸。神奈川県内の支店で事務職をしていた23歳の男性が、2010年12月31日にキャンプ場で硫化水素を発生させて自殺した。「毎日12時間以上働かせ、サービス残業を強要した」などと遺書に綴っていた。

 男性は2007年3月に入社し、荷物管理やクレーム対応などを担当していたが、タイムカードを実際の帰宅より早い時間に押させられて恒常的にサービス残業を強制されてうつ病を発症。亡くなった月の残業時間は98時間だった。

 西濃運輸の過労死事件が特に悪質な点は、2009年11月以降、三度にわたり男性が退職を申し出ているにもかかわらず、会社側がそれを拒否していたところにある。一度ならず三度にまでわたり退職を拒否し、一年以上仕事に縛り続けたのであるが、もし退職できていれば、男性は命を落とさなくて済んだかもしれない。

 その後、労働基準監督署で彼の死は労働災害として認定されたが、遺族に対する真摯な反省などもないため、男性の両親は2012年12月8日に同社に対して慰謝料や時間外労働の未払い賃金など約8100万円の損害賠償を求める裁判を横浜地裁に提訴している。報道によれば、男性の母親は、「会社側はサービス残業の実態を認めず、反省していない」「改善して墓前で謝ってほしい」などと話している。


◆東急ハンズ

header_logo 生活雑貨の大手量販店として有名な「東急ハンズ」では、バレンタインデー商戦の裏で30歳の男性が命を落としている。男性は、1997年に東急ハンズに入社し、1999年から心斎橋店(大阪市中央区)の台所用品売り場を担当するようになった。亡くなる直前には、チームリーダーを務め、7000点の商品の仕入れから販売までを管理しながらアシスタント3名の指導も担当していた。亡くなる直前の2カ月間はバレンタイン商戦などの繁忙期で、時間外労働は平均して月に約90時間を数えた。そして、2004年3月、帰宅後に「しんどい、もう限界や」と話した後、心臓に異常をきたして就寝中に突然死した。

 2013年3月13日、神戸地裁で遺族が東急ハンズに対して損害賠償を求めた訴訟の判決が下り、東急ハンズは約7800万円の支払いを命じられる。長井浩一裁判長は、長時間労働からくる睡眠不足で心身が不調をきたしていたことにくわえて上司から怒鳴られるなどの精神的ストレスがあったことを指摘し、男性の死を過労死と認めた。また、「残業は指示していない」と主張する会社に対して、「会社側が設定した残業制限時間では、こなせない仕事量になっていたのが実情。カウントされない不払残業が構造的に行われていた」、「会社は業務軽減などの対策をとらずに単に残業の規制をしただけ」だと評価し、安全配慮義務違反を認めている。


◆国立大学法人東北大学

site-title 2007年12月、東北大学薬学部助手の男性(当時24歳)が「新しい駒を探して下さい」との遺書を遺し、研究室から投身自殺した。

 同大大学院薬学研究科博士課程に在籍していた男性は07年6月、「人手不足」との理由で指導教授から請われ退学し、助手に就任。当初の話では学位取得のための研究を優先できるはずが、実験機材の修理や実習指導に忙殺され、自殺直前2カ月の時間外労働は104時間、97時間だった。また07年10月からは指導教授の指示により、生殖機能異常などの副作用がある抗がん剤の実験に従事。排気も十分にできない環境で、ほぼ一人だけでの実験を強いられ、友人達に「もう子どもはできない」と漏らしていたという。このような環境にもかかわらず指導教授は、「仕事が遅い。他の子を採用すれば良かった」などと男性を叱責。自殺前にはうつ病を発症していたと見られている。12年3月に宮城県労働局が「業務上の心理的負荷が強い」として過労自殺と認定。12年12月には、遺族が大学側に安全配慮義務違反があったとして、仙台地裁に約1億円の損害賠償を求める訴えを起こしている。

 さらに東北大学では12年1月にも、工学部准教授の別の男性(当時48歳)が自殺している。この准教授は、室温でリチウム高速イオン伝導を示す水素化物の開発に世界で初めて成功するなど、学会で注目を集めていたが、11年3月の東日本大震災で研究室が全壊。再開を目指し、授業と並行して国内外に93日出張するなど奔走したものの、ようやくメドがついた12年1月、大学側から「2年以内の研究室閉鎖」を一方的に告げられた。心のバランスを崩した彼は、そのわずか半月後に自ら命を絶った。

 男性の死後、遺族は労災を申請し、2012年10月に「過重労働の恣意的強制があった」と認定された。