(1) 6月4日、盗聴法廃止ネットワークは、「シンポジウム 原発事故も隠される!『秘密保全法×盗聴法』の危険な社会!」を渋谷区勤労福祉会館で行い、60人が参加した。

 安倍晋三首相は、衆院予算委員会(4月16日)でグローバル派兵国家建設の一環として国家安全保障会議(日本版NSC)創設とセットで外交と軍事情報、「公共の安全及び秩序の維持」に関する情報の漏洩を防ぐために罰則規定を盛り込んだ「特定秘密保全法案」を早期に制定することを表明した。秋の臨時国会で法案を提出する予定だ。

 米国は日本政府に対して米軍情報防衛のための「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)(2007年)の徹底を求め続け、その具体化の一つが秘密保全法だった。だが、これまでの政権では、反対運動によって法案制定に至っていなかった。安倍政権は、参院選後、憲法改悪の先取りとして市民の知る権利の否定、情報統制の強化にむけて法案制定をねらっている。

 法案の悪質性は、「公共の安全及び秩序の維持」に関する情報などと抽象的に範囲を広げ、権力にとって都合が悪い情報はすべて「機密情報」にして、漏洩したら処罰対象にしてしまうところにある。

 この動きと連動して法相の諮問機関である「新時代の刑事司法制度特別部会」では、取調べの全面可視化のブレーキと人権侵害に満ちた捜査導入を諮問しようとしている。とりわけ盗聴法の適用範囲拡大は、①窃盗、強盗、詐欺、恐喝②殺人③逮捕・監禁、略取・誘拐などと列挙しているが、第四番目では「その他重大な犯罪であって、通信傍受が捜査手法として必要かつ有用であると認められるもの」と明記した。

 つまり、権力の恣意的判断によって市民社会すべての領域にわたって盗聴のやりたい放題が行われるのだ。会話傍受(住居や車両内への秘匿による監視機・盗聴機の設置)の導入も犯罪謀議が行われる事務所、住宅であるとでっち上げれば、住居侵入罪を無視して合法的に隠しマイク・カメラの設置ができることになってしまう。

 ネットワークは、安倍政権の「秘密保全法×(かける)盗聴法」を駆使した人権侵害、監視・情報統制社会の野望を暴露し、秋の反対運動に向けたステップとしてシンポジウムを設定した。



秋の闘いに向けて



 冒頭、ビデオ「レーン・宮沢事件―もうひとつの12月8日」が上映された。この事件は、1941年12月8日、日本が太平洋戦争を仕掛けた日に、北海道帝国大の英語教師のレーン夫妻と教え子の宮沢弘幸さんらが軍機保護法違反で逮捕され、有罪とされたスパイ冤罪事件を告発したビデオだ。かつての冤罪事件を批判することを通して、現在進行している秘密保全法制定の危険性を訴えた。

 シンポは3人の報告者から問題提起が行われた。

 海渡雄一弁護士は、「秘密保全法制と盗聴法が掛け合わされたら表現の自由と民主主義の窒息がもたらされる」とテーマ設定し、福島第一原発事故での情報隠しや津波被害から命を救えなかった全員避難命令などの事例を取り上げて権力の情報操作と恣意的判断の犯罪性を明らかにし、それを法案によって正当化しようとしていることを批判した。

 そして、「盗聴制度や共謀罪法案に盛り込まれていた密告制度、秘密保全法制によって導入されようとしている秘密漏洩行為の厳罰化などの措置は、表現の自由を抑圧し、結果として市民の生命と安全を危険にする。法制審議会の議論を注視しつつ最も適切な時期に機敏に行動を起こさなければならない。安倍政権の暴走を止めるために参院選挙では自民党を勝たせてはならない」と強調した。

 田島泰彦さん(上智大学教授)は、「自公政権の復活で加速する表現規制と情報統制」の観点から「共通番号・秘密保全・人権委員会・児童ポルノ法改正・改憲」の危険性を浮き彫りにし、「『情報は市民のもの』との立場から、知る権利と情報公開の徹底、表現・報道の自由の擁護、プライバシーと自己情報コントロール権の確立を目指していかなければならない」と訴えた。

 村井敏邦さん(一橋大名誉教授)は、「国家秘密の独占と国民の秘密の管理体制 軍事化への道」から改憲の動きとセットで秘密保全法、盗聴法、共通番号制度の制定があることを明らかにした。盗聴法の拡大について取りあげ、「犯罪無関係の盗聴が拡大していることは確かだ。しかも警備目的だとして無令状盗聴を強行している。権力は、違法であるからこそ盗聴の対象拡大の合法化を獲得したいのだ」と指摘した。

 連帯アピールが米倉外昭さん(日本マスコミ文化情報労組会議幹事、新聞労連副委員長)、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、宮崎俊郎さん(反住基ネット連絡会)から行われ、ネットワークを強化し秘密保全法制定阻止の取り組みを強化していくことを確認した。(Y)