原発事故と被曝労働
さんいちブックレット『原発事故と被曝労働』/被ばく労働を考えるネットワーク編/1000円
 
 本書は、「『3・11』後の被ばく労働の実態」と「深刻化する収束・除染作業、拡散する被ばく労働現場からの報告」を中心にした第一弾の告発本だ。同時に「被ばく労働問題を一部の専門家や労働運動の課題に閉じこめず、社会的に提示して、大衆的な反/脱原発の取り組みにきちんと位置づける」ことを強調する。

 すでに福島第一原発事故の収束作業に約2万人の労働者が投入された。放射線被ばくを避けることができずに過酷な労働が強いられ、しかも重層的下請構造の中でいいかげんな安全対策、ピンハネの横行、低賃金等々、深刻な人権・生存権破壊が拡大している。さらに原発事故によって拡散した放射能は、すべての労働者も被ばくしてしまう事態へと追い込んでいった。

 このような事態の中で被ばくに関係する労働問題の情報を共有し、検討し、共同で取り組む連絡組織として「被ばく労働を考えるネットワーク(準備会)」(2011年10月)が出発した。「どう取り組むか被ばく労働問題 交流討論集会」(12年4月22日)を行い、労働者の命と安全を守るための運動、被ばく労働に関する労働相談の実施と運動化・組織化、政府・自治体・事業者に対する取り組みなどをテーマに論議を深めた。この討論集会で提起した仲間たちの発言が丁寧に収録され、明日にむけた実戦書としてまとめられている。



 巻頭でなすびさん(山谷労働者福祉会館活動委員会)は「被ばく労働に隠されている原発の本質とこの社会の闇」を暴き出し、「被ばく労働をめぐる問題の深刻さ・根深さ」を解き明かしていかなければならないとアピール。続いて西野方庸さん(全国労働安全センター連絡会議)が「被ばく労働をめぐる政策・規制と福島の収束作業」を解説する。

 「さまざまな労働現場に拡がる被ばく問題」では松本耕三さん(全港湾書記長)、岸野静男さん(東京清掃労働組合一組総支部委員長)、中村光男さん(全国日雇労働組合協議会)、北島教行さん(フリーター全般労働組合)が各現場から報告。

 「福島現地の現状と家族の声」では、桂武さん(いわき自由労働組合書記長)、木幡ますみさん(大熊町の明日を考える女性の会)、木田節子さん(原発作業員の家族)が訴える。

 最後になすびさんが「除染という新たな被ばく労働」で「除染事業をめぐる制度整備や労働者の安全確保の体制は、付け焼刃的で不十分だ。除染―帰還―復興という流れの中で、除染事業はゼネコンにとってうまみのある新たな産業領域の公共事業として走り出してしまっている」と批判し、被ばく労働問題の社会的取り組みの重要性を再確認した。



 被ばく労働を考えるネットワーク準備会は、この一年間の取り組みの成果のうえで11月9日に「被ばく労働者に安全と権利を!11・9『被ばく労働を考えるネットワーク』設立集会」(午後6時半/江東区亀戸文化センター(カメリアプラザ)5階 第 1、2会議室/総武線、東武亀戸線「亀戸駅」下車徒歩二分)を行う。集会は、①福島における労働問題と被ばく問題=いわき自由労組②原発事故以降の被ばく労働に関する問題提起=神奈川労災職業病センター③福島での相談活動の呼びかけ=被ばく労働を考えるネットワーク準備会が報告する。

 翌日、アジア連帯講座の主催で「いわき自由労働組合の報告『労働者を襲う解雇・失業・被曝労働に抗して』」をテーマに桂武さん(いわき自由労働組合書記長)、齋藤春光さん(同組合員)が報告する(11月10日(土)/午後6時30分/文京シビックセンター(障害者会館3階C会議室)〔地下鉄三田線春日駅下車〕)。桂さんは、自由労組の労働相談活動、除染労働者の組織化などについて報告する。齋藤さんは、「脱原発運動の課題と今後」をテーマにいわきでの脱原発運動、被ばく問題を問題提起する。

 11・9「被ばく労働を考えるネットワーク」設立集会、11・10アジ連公開講座「いわき自由労働組合の報告」の事前学習として、ブックレット「原発事故と被曝労働」は必読書である。ともに被ばく労働問題を取り組んでいこう。(Y)