国賠写真 10月23日、国賠ネットワークは、「スペースたんぽぽ」で「秋季シンポジウム 再審と国賠  裁判所・検察・警察の責任を問う」を行った。

 ネットは、1990年2月、国家権力の犯罪を許さず、被害・損害の完全な補償と謝罪、人権の確立をめざして結成された。以降、えん罪事件を中心に国家賠償請求訴訟の原告、弁護団、支援の相互の経験交流を積み上げてきた。シンポジウムは、国賠を取り組むえん罪被害者、弁護士を向かえ、この間の課題と今後の方向性を解き明かそうと設定した。



「検察・警察・裁判所が一体となった冤罪作りを許さない」



 基調講演を布川事件で再審無罪(2011年5月24日)をかちとった桜井昌司さんが行った。

 「検察・警察の責任追及、冤罪発生の真相の解明、二度とえん罪を起こしてはならない決意をこめて10月に国賠提訴した。すでに再審の審理を通じて自白には任意性に欠け、全面的に信用できないこと、目撃証言も信用できないことが明らかになっている」。

 「国賠では私たちを犯人に仕立て上げるための捜査官の不法行為を示すすべての証拠を提出させ、警察の証拠でっち上げと検察の証拠隠しを明らかにする。さらに検察の公判維持のために無実の証拠はひた隠しにし、証拠開示の要求に虚偽の答弁をしたこと、取調官の偽証も明らかにさせる。冤罪を作り出すシステムを浮き彫りにさせ、二度と冤罪を起こさせないための闘いだ。29年間も獄中生活を強いられた。検察・警察・裁判所が一体となった冤罪作りの権力犯罪を暴きだし、勝利をかちとっていく」。

 ●布川事件―1968年8月30日、茨城県北相馬郡利根町布川で男性が自宅で殺害される。警察は二人組みの男性という推定のもとに強盗殺人事件として捜査。10月に別件で桜井昌司さんと杉山卓男さんを逮捕。過酷な取調べで「自白」。裁判で無罪を主張したが、最高裁で無期懲役が確定(1978年)。獄中から再審請求。仮釈放(96年11月)後も再審請求。水戸地裁浦和支部で10年7月9日に再審第1回公判、11年5月24日、再審無罪判決。



 パネル討論に入り、以下のような問題提起が行われた。



布川事件国賠



 秋元正匡さん(布川事件弁護団)は、「布川事件国賠訴訟にむけて」をテーマに布川事件の経緯を報告し、「事件の証拠構造は、自白、現場付近と周辺地域の目撃供述などであった。国賠訴訟は、国(検察庁)と茨城県を被告にする。えん罪の責任を①別件逮捕、自白強要、目撃供述のねつ造②公訴提起(無実の若者を被告人として起訴した)③無実の証拠を隠して公判を維持したことについて追及していく。無罪判決の後でもなお検察・警察は、2人を犯人であると言い続け、裁判所も自らの誤判の原因を明らかにしていない。責任を認めさせなければならない」と強調した。



富山(氷見)えん罪国賠



 竹内明美さん(富山(氷見)えん罪国賠訴訟弁護団)は、富山(氷見)えん罪国賠裁判の経緯を報告した。

 「被告国・富山県・個人(起訴検察官、取調官)を相手に約1億円の賠償請求裁判だ。口頭弁論は17回を終えた。原告側は柳原浩さんが犯人ではないと知りながら『でっち上げ』を強行したとして検察・警察を批判。アリバイ(電話記録)、似顔絵など捜査、鑑定(血液型)などからも明らかであり、捜査には故意・過失(重過失)があったと主張。被告は『供述の誘導があった』ことを認めるが、故意・過失(重過失)は否定。裁判は、『故意』『過失』が争点だ。今後は証人尋問が行われる」と述べ、「地裁が警察官や検察官ら10人を証人採用した。いかに『事件の真相』に迫ることができるか攻防が続く」と訴えた。

 原告の柳原浩さんも裁判闘争の局面を紹介しながら、力強く決意を表明した。

 さらに竹内さんは、東京拘置所で接見中、体調を崩した外国人被告の勾留中止を求めるために撮影をしたが(3月)、拘置所職員から映像消去をもとめられ、拒否したら接見中止となったことに対して「撮影も接見交通権の範囲であり、メモや絵より正確で弁護活動に必要不可欠だ。接見交通権侵害として国に慰謝料1000万円を求める国賠を東京地裁に起した」ことを紹介した。

 ●富山(氷見)えん罪国賠裁判―2002年、富山県氷見市で起きた強かん未遂事件で逮捕、起訴された柳原さんは、富山地裁で懲役3年の有罪判決をうけ服役。釈放後の2006年になって別の容疑により鳥取県警に逮捕された男性がこの事件の真犯人だったことが判明。富山地検は再審を請求後、07年4月に検察・弁護側双方が無罪判決を求める再審裁判が開始。同年10月無罪判決。09年5月、柳原さんは国賠を提訴した。



「ピース缶爆弾」フレームアップ事件国賠



 井上清志さん(「ピース缶爆弾」フレームアップ事件国賠原告)は、「再審国賠に対する最高検の姿勢は、『再審は認めるが、国賠までは認めない』という態度だ。最高裁は、裁判官の責任を断じて認めない姿勢だ。検察は、『自白が存在するかぎり起訴は違法でない』という立場だ。逮捕時、起訴時において嫌疑の有無にかかる判断過程に合理性がない場合のみ違法となる(職務行為基準説)論理だ。だから未開示証拠(捜査指揮簿、証拠リスト、送致目録など)を開示させることで『故意』『過失』を立証がしていくことが必要だ。困難なハードルだが、なんとか突破していきたい」と発言した。

 ●「ピース缶爆弾」フレームアップ事件国賠―1969年から71年にかけて日石本館地下郵便局爆破事件 、土田邸(警視庁警務部長)小包爆弾事件 などが発生。「ピース缶」事件
のみの逮捕・起訴。刑事裁判に14年(無罪確定)。その後、検察・警察の責任追及のため国賠を提訴。一審判決は検察側元証人Kの偽証を認め、200万円の支払い命令。しかし、国、都そして検察、警察の個人責任はすべて却下。控訴棄却。上告棄却、確定(2000年2月29日)。



 会場も含めた討論に入り、警察の裏金作りシステムを糾弾し続ける仙波敏郎さん(元愛媛県警巡査部長)、治安維持法による言論弾圧・拷問虐殺「横浜事件」の国賠を準備している木村まきさん(被害者・遺族)などから取り組み報告と連帯が呼びかけられた。

(Y)