死刑反対 八月二七日、衆議院第二議員会館で「再審が出来なかった二人への滝実法相による死刑執行に抗議する緊急院内集会」が死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90、死刑廃止を推進する議員連盟、(社)アムネスティ・インターナショナル日本、NPO法人監獄人権センター、「死刑を止めよう」宗教者ネットワーク、死刑に異議あり!キャンペーンが主催して行われた。国会内院内集会は初めて開催された。

 滝実法相は就任後二カ月たらずの八月三日、服部純也さん(40歳)と松村恭造さん(31歳)の死刑を執行した。今年に入り二度執行が行われ、五人が殺された。

 死刑廃止を推進する議員連盟会長の亀井静香さんが最初に議連の活動を報告した(別掲)。次にかつて議連事務局長だった山花郁夫さん(民主党、衆議院議員)と橋本勉さん(民主党、衆議院議員)が連帯のあいさつをした。
 安田好弘弁護士が死刑をめぐる全般的状況を報告した。

 「死刑廃止議連は死刑廃止に向けて一歩をやってほしい。それは国会に法案を出して欲しい。韓国では法律に手をつけないで一四年間死刑を執行していない。フランスではミッテランの時に、死刑廃止の法律を作ったがその前五年間執行をしなかった。執行しないことによって、死刑存置の世論は下がっていった」。

 「八月三日というのはお盆前で執行しないことになっていたがこのタブーが打ち破られた。松村さんは本人が一審死刑判決後、控訴を取り下げ、それが確定してしまったので一審の判決だけで執行された。国際人権規約では恣意的な死刑を排除するために上訴権を保障しなければならないとなっているので、これに反している。さらに、強盗殺人とされているが、数万円を奪っただけなので殺人と窃盗ではないか。精神的にも大きな問題を抱えていた」。

 「服部さんは一審が無期で、死刑判決が出るはずがない事件だった。永山最高裁判決では、いろいろ総合的に考える、なおかつ死刑が許される。死刑しか選択がない時のみ死刑は許される。この基準に照らしても誤判の可能性がある。二人とも再審をしようとしていた。再審を願うと執行される。年四回執行体制に戻そうとしているのではないか。このままでは年内に後二回はあるだろう。検察が死刑執行の維持を強く進めている。死刑廃止に向けてハードルの低い法律を考えてほしい」。

 この後、執行された二人の担当弁護士が裁判の問題点、面会の様子など詳しく報告した。宗教者ネットワークの「死刑は殺人だ」の訴え、集会決議を採択し法務大臣に届けた。静岡県清水市で起きた袴田事件で袴田さんは死刑が確定しているが新たなDNA鑑定結果、再審の可能性が高まっている。何人もの死刑囚が再審無罪をかちとってきた。死刑制度の廃止を実現しよう。(M)

亀井静香さんの報告から

 残念ながら死刑廃止が出来ていない。刑の厳罰化を望む風潮が増して、国民のほとんどは目をそらしている。弱者を強者が押さえつけて豊かになっていく。これが当然だという考え方が強く覆っている。純ちゃん(小泉純一郎)が総理になってブッシュ大統領との約束でネオコン政策を持ち込んだ。私の力では止めることはできなかった。

 いま中東、ヨーロッパ、アメリカでも抵抗する流れが生まれている。日本でも起きている。民主党が自公と同じようになってしまった。消費税、原発、オスプレイ、三年前とはまったく違ってしまった。

 死刑についても、民主党は当初、命を大事にすると対応したがかつてに戻ってしまった。自民と同じように死刑を執行している。死刑廃止議連は一〇〇人程度いたが大きな政治混乱の中で、前に進めていこうという状況にないが、少しでも前に進めていきたい。

 第一に、法務省が三年に一度やっている死刑問題での国民意識のアンケートによると八十数%が死刑存置。このアンケート調査のやり方がおかしい。深層心理まで出るような結果になっていない、と法務省に変えるように申し入れ議論した。法務省は中身を検討すると謙虚さをもって始めている。検察をめぐるさまざまな不祥事で法務省は自信喪失状態だ。これは非常に大事だ。

 いっきょに死刑廃止にもっていけなくても、近づける一里塚があればということで衆参でぜひ調査する調査会の設置を求めている。これは全員一致でないともてない。また議員立法でも、会派の政調のOKをとらなければならない。特別無期刑の導入に対して、日弁連は最初ダメだと消極的だったが変わってきた。それを進めたい。国会議員は選挙違反や汚職などでやられるのではないかということで、検察・法務省に弱い。そういう困難さを抱えているが次の臨時国会に向けて進めていきたい。

 死刑廃止運動が強い圧力となっている。法務省は国際会議にいくと肩身が狭いという。犯罪人引渡しでも日本に引き渡さない理由に、日本に死刑制度があるからという。事務上の障害になっている。みなさん、死刑廃止に向けてがんばろう。(発言要旨、文責編集部)