7月1日、香港は返還15年を迎え、梁振英が三代目の行政長官に就任した。強まる中国支配への抗議として、主催者発表によると40万人の香港市民がデモに参加した。以下は香港・先駆社の声明。(H)


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真の普通選挙実施で中国による香港統治を一掃しよう!


香港・先駆社

これまでに香港特区行政長官を歴任した2人に加え、新たに就任する行政長官は、まさに「爛、爛、爛」(腐っている、でたらめの意:訳注)の三文字で表すことができる!


新たに行政長官に就任する梁振英の信用は破産した。辞任を迫らなければならない。だがこれは彼個人の問題ではなく、現行制度、とりわけ行政長官を普通選挙で選出するのではなく、中国政府の意向に沿った候補者が就任するという制度がもたらした必然である(訳注1)。


首をすげ替えるだけで制度はそのままなので、選挙で梁振英と争った唐英年の陣営は最も容易に新たな候補者を擁立することができるだろう。しかしそれは労働者民衆にとって、初代行政長官の董建華から二代目行政長官の曽蔭権への役職移行のドタバタ劇の再演に過ぎない。


それゆえ我々は梁振英の辞任を要求するとともに、行政長官の普通選挙の速やかな実施を改めて主張しなければならない。香港人は中国共産党による普通選挙導入のタイムスケジュール、つまり2017年に行政長官の、2020年に立法機構の普通選挙を実施するというタイムスケジュールを受け容れるべきではない。事ここに至り、じっと黙って耐えてさえいれば中国共産党は普通選挙を実施するなどと考えるのは余りにもお人好し過ぎるだろう。じっと黙って与えられるのは「腐ったりんごの中からよりましなものを選ぶ」という偽の普通選挙だけだろう。


実際、2007年末の中国全人代常務委員会による決定は、行政長官の普通選挙にたがをはめるものである。それは行政長官の候補者を選出する現行の選挙委員会を参考にして指名委員会の選出方法を規定したものである。現在の選挙委員会が、普通選挙ではなく業界団体によって組成されることが問題である(原注1)。これがまさに「腐ったりんごの中からよりましなものを選ぶ」ということなのである。


行政長官の普通選挙を実施する場合、少なくとも一人一人の有権者が平等に推薦権と立候補権を与えられる必要がある。たとえば台湾の総統選挙の立候補資格は、前任の総統、立法院(国会)選挙での5%以上の得票率、有権者の1.5%の推薦のいずれかが必要で、40歳以上の者に被選挙権が与えられている(原注2)。この立候補条件も確かに厳しい。だが少なくとも香港基本法や全人代決議のような最低限の形式民主主義にさえ反している、ということではない。


もし仮に、行政長官の選出方法を民主主義に反しないように修正するとなれば、それは2007年の全人代常務委員会の決定と衝突することになる。中国共産党による解釈のもとでは、民主政治制度も香港基本法と衝突することになる。実際のところ、行政主導など、香港基本法が規定する政治制度はそれ自体が反民主主義的であり、指名委員会の組成方法を修正すれば解決するという単純なものではない。香港基本法には、人権を保障する箇所もあるにはあるが、経済制度に関しては、たとえば財政赤字を認めないという社会福祉支出の抑制のための条項があり、完全に富裕層に有利なものである。一言で言ってしまえば、香港基本法の精髄は、資本主義という富裕層による労働者民衆への支配の制度を永遠に固定化するものなのである。(訳注2)


瓜のつるには瓜がなり、その花の木にはその花が咲くが如し。香港人自らが民主的に基本法を再制定してはじめて民主自治の政治制度が成立する(原注3)。親中派勢力は基本法の修正を、天が与えた戒律に反することかのごとくみなし、中国政府が自由に基本法を解釈できると宣伝している。まるで香港人のことを阿斗(訳注3)であるかのように扱っているのだ!


「西環治港」(訳注4)はすでに既成事実となっている。真の普通選挙を早期に実現せずに、2017年と2020年を座して待っていた結果もたらされるものは専制だけである。


香港基本法の民主的再制定を!
真の普通選挙の即時実施を!
民主主義は闘ってしか実現はできない!


中国大陸における中国共産党支配はすでに民心を失っており、官僚の横暴が民衆の抵抗を引き起こしている。香港人の奮闘は孤立していない。


2012年6月30日



原注1:香港基本法第45条は、行政長官の普通選挙を実施する際に広範な代表性を有する指名委員会を組成しなければならないと規定している。2007年末の全人代常務委員会の決定では、指名委員会は現行の選挙委員会に基づき設立しなければならないと解釈した。


原注2:2007年、社会民主連線(立法議員3名の民主派政党:訳注)は指名委員会の規定に明確に反対し、台湾総統選選挙に準じた指名方法を提起した。


原注3:すでに解散した政党「前線」は、1996年に全住民による憲法制定を主張したことがある。



訳注1:行政長官の選挙は5年に1回で、業界団体の代表ら1200人で構成される選挙委員会による間接選挙。政治・経済の利益団体である各種業界団体の代表である選挙委員の多くが中国政府の意向に従う傾向にある。行政長官に立候補するには150人以上の選挙委員の推薦が必要となる。3月25日に実施された行政長官選挙では、当初当選確実と思われた唐英年・行政長官代行の金満スキャンダルに対する香港市民の反発が強く、親中派の分裂と反中機運の高まりを考慮した中国共産党は、対抗馬として立候補していた梁振英に投票するように働きかけた。「【香港】行政長官選挙結果に対する声明」の記事を参照 http://monsoon.doorblog.jp/archives/53566063.html


訳注2:香港基本法の批判は「かけはし」2004年7月12日号の「香港返還7周年デモにあたって:一党独裁を排し政治を民衆の手に」を参照。 http://www.jrcl.net/frame04712f.html


訳注3:阿斗は三国時代の蜀の後主、劉禅の幼名。先主の劉備が関宇・諸葛孔明らとともに建てた蜀漢を滅亡させた人物で、他人の保護に頼る人物を比ゆして言う。


訳注4:「西環」は中国政府の代表部「中央人民政府駐香港特別行政区連絡事務所」がある香港島の一地区。1997年7月の香港返還に際し、中国政府は「港人治港」(香港人による香港統治)を謳っていたが、15年後の現実は中国政府代表部のある「西環」による香港統治を表している。