tomiko 自民党は、5月29日、天皇制と侵略戦争を賛美する「日の丸」旗を傷つけたり汚したりしたら処罰することができる「国旗損壊」罪を新設する刑法改正案を国会に提出した。法案は、「日本国に対して侮辱を加える目的で、国旗を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」など「思想・表現の自由」を否定する明確な憲法違反の法案だ。しかも構成要件及び刑罰は、現行刑法第92条に規定されている外国国章損壊罪に準拠すると規定し、外国の国旗と自国の国旗を同列に設定した。

 すでに改正法案は昨年3月の自民党法務部会の法律案審査に提出されていたが一部議員から「自民党が右傾化したと思われる」との反対論が出たため全会一致の賛同を得られず、石破茂政調会長(当時)預かりとなっていた代物だ。この時は、国旗の損壊とともに国歌の替え歌も処罰の対象にねらっていた(朝日2011年3月2日)。石破は、「国旗国歌法で日本の国旗が日章旗だと定められた時(1999年)に(国旗損壊罪を)立法しておくべきだった」と悔しがっていた。

 今回も高市早苗、長勢甚遠、平沢勝栄、柴山昌彦衆議院議による議員立法提出だ。いずれも日本会議議員懇談会、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会に属している札付きの天皇主義右翼である。高市らは、自民党の天皇元首化、基本的人権否定、現憲法九条改悪などを網羅した「日本国憲法改正草案」(4月27日)の第3条で「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない」との明記を根拠にして総務会で了承させた。天皇制統合力を利用しながらグローバル派兵国家の建設とセットで排外主義的なナショナリズムへと収斂していくことにある。



自民党の憲法改悪攻撃の踏み込み



 法案の提出理由を高市は、「現行の刑法では、外国国旗の損壊は処罰の対象とされている一方、日本国国旗の損壊については規定が無く、処罰の対象とされていません。外国国旗であれ、日本国旗であれ、国旗を損壊する行為は、国旗が象徴する国家の存立基盤・国家作用を損なうものであるとともに、国旗に対して多くの国民が抱く尊重の念を害するものです」などと天皇制と国家への忠誠を強要する暴論を主張し、平沢も「日本の刑法は諸外国からみれば常識外れ。それを普通の形に直したい」と手前勝手な珍説を強調した。

 そもそも現行の刑法92条「外国国章損壊等」は、「外国に対して侮辱を加える目的で、その国の国旗その他の国章を損壊し、除去し、又は汚損した者は、2年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する」「前項の罪は、外国政府の請求がなければ公訴を提起することができない」という規定になっている。つまり、外国国章損壊行為によって、その国との外交問題になることを避けるために刑法罰則を設けており、自国の外交利益を防衛することを目的にしている。だから外国政府の抗議があった場合、見せしめとして刑罰によって取り締まるために親告罪になっている。

 ところが改正案は、外国国章損壊の条文を引き写して「日本国に対して侮辱を加える目的で」とする条文を加え、「日の丸」旗の損壊が「国家の存立基盤・国家作用を損なう」、(国旗への)「尊重の念を害する」から違法だというのだ。「日の丸」旗への「損壊」は抗議の一形態でしかない。この行為そのものを刑事罰で禁止するのは、憲法19条「思想良心の自由」、憲法20条「表現の自由」の否定だ。違憲に満ちた改正法そのものが成立根拠がないのである。

 しかも親告罪とするならば、告訴するのは自分たちだとでもいうのか。いったい誰が、どういう概念で規定するのか。そんな文言は、まったくない。仮に「日本国に対して侮辱を加える目的」がないパロディーのケースは、どうするんだ。あくまでも天皇主義右翼らの主観的なレベルのレッテル張りのやりたい放題を認めさせ、身勝手な妄想によって「国旗損壊」罪を適用することでしかない。公安政治警察も仕事が増えて大喜びだ。要するに自民党の「日本国憲法改正草案」を前提としなければ改正法案の成立根拠が発生しないトンデモない反動法なのである。こんなフザケた法案を自民党が認めたところに憲法改悪攻撃の踏み込みがある。



愛国心と国威発揚のための国旗はいらない



 高市らは、「諸外国の法制度では、むしろ自国国旗損壊に対する刑罰の方が他国国旗損壊に対する刑罰よりも重くなっている」ケースとしてドイツ、イタリア、韓国、中国を取り上げ、「日本の刑法におけるアンバランスを是正することを期し、本法律案を起草しました」などとデマを飛ばしている。

 日本弁護士連合会会長の山岸憲司は、「刑法の一部を改正する法律案(国旗損壊罪新設法案)に関する会長声明」(2012年6月1日)で改正法案反対の立場から高市デマにも照準をあてて「米国では、連邦議会が制定した国旗保護法の適用に対し、連邦最高裁が『国旗冒とくを罰することは、この象徴的存在をかくも崇敬され、また尊敬に値するものとせしめている自由を弱体化させる』として、違憲とする判決を1990年に出している」と批判している。

 さらに米最高裁は、1989年に国旗焼却事件裁判で「我々は国旗への冒涜行為を罰することによって、国旗を聖化するものではない。これを罰することは、この大切な象徴が表すところの自由を損なうことになる」と判決を出している。また、同年に上院で可決された国旗規制法を却下し、「国旗を床に敷いたり、踏みつけることも、表現の自由として保護されるものであり、国旗の上を歩く自由も保証される」の判断もしている。親米右翼の連中が意図的に米最高裁判例をパスしているところに改正法案の欠陥を現している。

 このように国旗をシンボル化していく意図は、民衆を国家へと統合し、帰属意識と忠誠を強化させ、国家意志を強制していくものでしかない。天皇制、戦争と軍国主義、愛国心と国威発揚のための国旗はいらないのだ。今国会情勢下では法務委員会で本格的に審議されていないが、たとえ改正法案が成立しなくても、右翼運動の任務のひとつとして法案制定を設定しており、繰り返し国会提出を行ってくるだろう。天皇主義右翼らの意図を暴露・批判し、監視を強化していかなければならない。「国旗損壊」罪に反対していこう。

(Y)