花崎講演会 「いま成田空港で何が起きているのか」プロジェクト(成田プロジェクト)は、5月26日、文京シビックセンターで「今だからこそ花崎さんの話を聴く会」を行い、四〇人が参加した。

 成田国際空港会社は、現行の年間発着枠23・5万回から2014年度中に30万回へ突き進んでいる。B滑走路南端の東峰地区は、着陸するジェット機が約二分間隔で頭上四〇メールで通過して、すさまじい騒音と排気ガスの撒き散らし、航空機事故の危険性が強まっている。人権と生存権に対する著しい侵害だ。

 成田プロジェクトは、東峰住民と連帯する「声明 人権・生存権を侵害する航空機騒音をただちに止めるべきです」(2010年12月)を出し、国土交通省と成田空港会社に騒音問題で申し入れ、現地騒音調査、成田バスツアーなどの取り組みを行ってきた。

 さらに昨年五月、福島第一原発事故後、「空港と原発―巨大科学技術を考える」というテーマで鎌田 慧さん(ルポライター)、伴英幸さん(原子力資料情報室共同代表)、平野靖識さん(地球的課題の実験村)、三里塚農民と共に集会を行った。

 今回の講演会は、福島第一原発事故と原発開発破産という歴史的局面を哲学者花崎皋平さんの提起をヒントにして論議を掘り下げていくことになった。

 司会の中里英章さん(成田プロジェクト)から開催あいさつとこの間の活動報告が行われた後、花崎講演が始まった。



エコロジーと倫理



 花崎さんは、昨年4月、「ドイツの脱原発論に接して」を発表している。その中で三里塚農民が主張した「腹八分目」の思想を「節 度(ソープロシュネー)」という詩で取りあげた。「急速に進んでいる地球環境の破壊の真の原因は『抑制を失った自由』という思想」だと批判し、だからこそ「科学技術を神のように崇め自然を切り刻んできた文明の転換のためには賢慮(フロネーシス) 節制(ソープロシュネー)が必要だ」とアピールしていた。

 この延長から花崎さんは、今回、「エコロジーと倫理」というテーマを設定し、以下のように問題提起した。

 ドイツ政府の安全なエネルギー供給に関する倫理委員会の提言書「ドイツのエネルギー転換―未来のための共同事業」の「倫理的立場」を取りあげ、「核エネルギーの利用やその停止やエネルギー生産の別の形態への変更についてのあらゆる決定は、社会の価値決定にもとづくものであり、技術的経済的観点に先行する」という提起に焦点をあて、「この優先順位の置き方はきわめて重要である。社会の価値決定が第一にされなければならないのである」と確認する。

 そのうえで学び、継承すべきものとして「近現代史の持続可能性の倫理の提唱者として田中正造がもっとも重要な思想家だ。石牟礼道子が水俣の被害者たちにまなびながら語っている倫理思想もより切実に顧みられるべきだ。持続可能性の倫理を農の現場から生み出した重要な文書として『三里塚芝山連合空港反対同盟/児孫のために自由を律す―農的価値の回復を』(1994年7月)がある。東北の大惨事で被災した人たちの中からも重要な思想が表現されている。昨年九月の『さよなら原発五万人集会』での武藤類子さんのスピーチだ。反原発の行動宣言であると同時に、いまを生きるすべての人が胸に刻むべき倫理を示している」と浮き彫りにした。

 最後に、「どうしたら原発のない世界を作っていけるか」と問いかけ、「まだ明確な答えのない課題に対してできることは、一人一人が自分で考え、決断して行動することであると思うという個の自立の決意が表明されることだ」と結論づけた。

 質疑応答では、「自然に対する人間のエコロジー的責任」、「持続可能性と責任」、「世界責任憲章と国際社会共通の倫理原則」、「人間の自然に対する特別な義務」「三里塚の『腹八分目の思想』と地球的課題の実験村」などについて意見交換が行われた。



闘う拠点を防衛しよう



 「三里塚現地はいま」では山下一夫さん(成田プロジェクト)から報告があり、「三里塚闘争破壊のために横風用滑走路の完成を阻む横堀地区の柳川秀夫さん(対同盟世話人)持分土地裁判、現闘本部一坪共有地裁判、横堀くぼ地一坪共有地裁判を提訴した(2010年10月)。併せて三里塚大地共有委員会(Ⅱ)(加瀬勉代表)の連絡先である横堀団結小屋(労闘―労活評現闘)の撤去・土地明け渡しを求める裁判も起こした。

 千葉地裁は、現闘本部裁判、柳川裁判、横堀裁判で空港会社の単独所有を認める不当判決を出した(11年9月)。横堀・団結小屋破壊裁判も一審不当判決に続いて東京高裁も団結小屋の「撤去・土地明け渡し」追認した(12年4月25日)。しかし空港会社は、木の根ペンションとプールの共有地、横堀大鉄塔と団結小屋、案山子亭、横堀研修センターなどの闘う拠点への破壊にまったく着手できないでいる。東峰地区住民への追い出しを許さず、闘う拠点を防衛し、空港会社を追い詰めていこう」と訴えた。(Y)
 
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