bbcea243-s 野田政権は、グローバル派兵国家建設の一環として秘密保全法案を今国会に提出しようと策動している。法案は、公務員らが「国の存立に重要な情報」(特別秘密)を漏らした場合、厳罰化によって統制強化しつつ、同時に民衆の知る権利や報道の自由を規制強化することがねらいだ。日米安保軍事情報、沖縄基地問題情報隠しなど、とりわけ脱原発運動のうねりの中で政権は秘密保全法を使って原発事故・再稼働・放射性汚染などをめぐる情報隠し、敵対を強めてくることは必至だ。

 法案制定策動は、直接的には中国漁船拿捕事件ビデオの動画投稿サイト「ユーチューブ」流出事件(2010年9月)、公安政治警察外事三課の対テロ捜査書類のインターネット流出事件(10月)が発生し、当時の菅政権が統治能力の脆弱性を立て直すために「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」(11年1月)をあわてて設置し、「秘密保全」法の制定を提言する報告書(8月8日)をまとめたことになっている。

 だが、すでに米軍情報防衛のための「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)(2007年)の徹底を求める米国の圧力によって治安担当官僚らは、米国の軍事戦略と連動した治安弾圧体制強化のために新防衛計画大綱で「情報収集能力・分析能力の向上」と「各府省間の緊密な情報共有と政府横断的な情報保全体制を強化する」ことを押し出し、「秘密保護法の制定」を確認していた。その結果として内閣官房長官、内閣官房、警察庁、公安調査庁、防衛省、外務省、海上保安庁、法務省の官僚によって「政府における情報保全に関する検討委員会」(2010年12月)を立ち上げていたのだ。

 自民党政権時の「スパイ防止法」案(1985年廃案)は、秘密保護の対象を防衛・外交秘密にまで広げ、最高刑は死刑とする内容だった。「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」としたが「努力義務」のレベルであり、人権侵害、報道・取材の制約を狙っていた。この流れをも取り込みつつ、前段の蓄積を引き継ぐ形で有識者会議が法案の骨格となる報告書を提出し、野田政権が法案制定に着手することになったのである。



新たな治安弾圧を跳ね返そう



 法案の全文は、まだ未公表だが有識者会議報告書を土台にすることは間違いない。以下が報告書の主な内容だ。

 第1は、国の安全、外交、公共の安全・秩序の維持の三分野において当局の恣意的判断にもとづいて秘匿性が高い情報を「特別秘密」とした。この「特別秘密」を取り扱ったり、知り得たりした人が「故意」に情報を漏えいした場合、懲役五年、あるいは10年以下の懲役刑としている。現行の情報漏えいに対する罰則は、国家公務員法では「職務上知り得た秘密」を漏らした公務員を「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」、自衛隊法では「五年以下の懲役」だが、重罰主義で対応する方針なのである。

 また、「特別秘密」の漏えいをそそのかした場合(教唆)も処罰対象になる。「独立教唆」とし立件するとしている。

 第2の柱は、「適性評価制度」だ。各行政機関の長が実施権者となって「特別秘密」を取り扱う職員を制度にもとづいて人定事項調査、公安機関を動員したスパイやテロへの関与調査、犯罪歴、薬物・アルコール・精神問題での通院歴などを事前調査し、判定しておけというのだ。人権侵害の対象はこれだけではない。「配偶者のように対象者の身近にあって対象者の行動に影響を与え得る者についても」事前調査をやっておけというのだ。プライバシーの侵害を否定し、監視・調査対象の拡大である。

 警察白書(11年)は「情報保全の徹底・強化のための方策を推進し、情報保全に万全を期す」と述べ、法案制定を応援し、公安政治警察は大歓迎している。新たな治安弾圧の踏み込みを許してはならない。

 第3が取材の自由の制約である。報告書は「不当に制限するものではない」と言っているが、全くの嘘なのだ。「国民の知る権利等との関係」で「正当な取材活動は処罰対象とならないことが判例上確立している」、「特定取得罪は、取材の自由の下で保護されるべき取材活動を刑罰の対象とするものではない」などと言いながら、すぐに「刑罰法令に触れる」取材は処罰対象だと明言し、恫喝しているところに現れている。

 わざわざ「財物の窃取、不正アクセスまたは特別秘密の管理場所への侵入など、管理を害する行為を手段として特別秘密を直接取得する場合」、「欺罔により適法な伝達と誤信させ、あるいは暴行・脅迫によりその反抗を抑圧して、取扱業務者等から特別秘密を取得する場合」などをあげながら、「犯罪行為や犯罪に至らないまでも社会通念上是認できない行為を手段とするもの」も処罰対象とするとしている。これが本音なのだ。



法案反対のスクラムを



 結局のところ「社会通念上是認できない行為」が政府・治安担当官僚の手前勝手な秘密範囲の認定、弾圧対象を拡大し、取材制限することなのだ。強引な手法を駆使しながら内部告発を阻止し、民衆の知る権利への敵対に貫かれている。

 秘密保全法案に対しては日本弁護士連合会、日本新聞協会は知る権利や取材の自由の制約につながると懸念を表明している。

 なかでもムスリム違法捜査弁護団(旧:公安テロ情報流出被害弁護団)は、公安政治警察外事三課の対テロ捜査デッチあげ書類のインターネット流出事件の国家賠償請求訴訟を闘っている中で、「秘密保全に関する法制の整備に対する意見」を公表し厳しく批判している(2011年11月24日)。

 意見は、「本事件が『国際テロ対策に係るデータのインターネット上への掲出事案』として『主要な情報漏えい事件等の概要』に掲げられ、秘密保全法制の必要性を裏付ける事案とされていることに抗議」し、「警察による情報収集活動の名のもと、イスラム教に関係する個人、団体等に関する個人情報が人権を侵害する態様で違法に収集・保管されていたものであり、秘密保全法制がこのような行政機関による人権侵害の秘匿を容易にする」危険性を明らかにしている。

 法案を通した国家権力の人権軽視と居直りを許さず糾弾していこう。表現・取材・報道の自由(憲法21条)に敵対する秘密保全法の制定を阻止していこう。

(Y)