IMG_0805 一月一六日、東京・水道橋の在日韓国YWCAで「緊急集会 『原発? No,
thank you!』ヨルダンの国会議員・弁護士は訴える」が行われ、一〇〇人以上が参加した。主催はミーダーン≪パルスチナ・対話のための広場≫。FoE Japan、JACSES(「環境・持続社会」研究セ ンター)、JSR(アル・ジスル――日本とパレスチナを結ぶ)、JIM―NET(日本イラク医療支援ネットワーク)、NINDJA(インドネシア民主化支援ネットワーク)、福島原発事故緊急会議、アジア太平洋資料センターが共催した。

 集会には一月一四日、一五日に横浜で開催された脱原発世界会議のために来日したヨルダンのモオタシム・アワームレさん(国会議員、医師、議会の保健・環境委員長)、ジャマール・ガッモーさん(国会議員・エネルギー委員長)、ムナ・マハメラーさん(弁護士)が発言した。

 昨年一二月、臨時国会はわずか半日ほどの審議でヨルダンとの原子力協定を承認した。


通常国会では、八月二四日に参考人として発言したJACSESの田辺有輝さんが人口密集地域での原発建設の危険、水資源に乏しい砂漠地帯で冷却水の供給が首都アンマンの下水処理場の処理水しかない問題、シリア・アフリカ断層の上に位置する地震多発地域であること、さらに被占領パレスチナ、シリアなどと接する紛争地域であることを指摘し、そのこともあって承認は見送られた。だが原発輸出競争で勝ち抜くことに原発延命の活路を見出そうとする資本の圧力によってヨルダンとの原子力協定はついに承認されてしまったのである。

 しかしヨルダンでは国王が議員を任命する上院(六〇人)は別にしても、普通選挙で選ばれる下院(一二〇人)では反対する議員が多数派であり、福島第一原発事故以後は世論でも反原発の気運が高まっている、と言われる。この日の緊急集会は、野田政権が進める「原発輸出」政策を批判し、ヨルダンの人びとの生の声に耳を傾けるために設定された。
 
 田浪亜央江さん(ミーダーン)が進行役をつとめた集会では、最初にフリーランス・ジャーナリストの鈴木真奈美さんが、原発輸出の問題点を鋭くえぐり出した。

 鈴木さんは、日本での原発の新設は、かりに福島原発事故がなかったとしてもきわめて困難であったこと、新設がなければ運転年数の上限四〇年なら二〇四五年にはすべて終わり、仮に六〇年に延ばしても二〇六五年にはなくなることを指摘した。米国では価格競争力、事故リスクなどの面で一九七〇年代以後新設原発はゼロとなり、原子炉の設計能力はあるものの製造・建設の技術と人材が衰退してしまった。米国は核兵器という軍事用技術に特化した形でしか人材を維持できていないこうして今のままでは世界で運転される発電用原子炉は二〇五五年にはほぼゼロになってしまう。

 こうした中でいま新興市場・途上国市場をねらった原発輸出で原子力産業の延命を図ろうという動きが進んでいる。中国、インド、ベトナムでは電力供給の拡大と将来の原発輸出国となることを目標として、リトワニアではロシアへのエネルギー依存を減らすために、中東・インドネシアでは石油・天然ガス資源を外貨獲得用に残すために、など新興国・途上国の側の思惑はさまざまだ。

 澤明・三菱重工原子力事業本部長はヨルダンを契機に他の新興国市場への原発輸出を進めていくこと、そしてそのためにフランスのアレバ社との協力を強めていく、と語っている。二〇〇六年の「原子力立国計画」では、建て替え需要が始まるまでに輸出により技術と人材を維持し、法的・制度的整備を進めていくと述べている。二〇〇七年の「日米原子力共同行動」では、日本が米国の新規原発建設を支援するとともに日米でパートナーを組んで「世界の原子力拡大に貢献」することをうたっている。こうして、原子力輸出とは核産業の延命策であり、輸出国と輸入国の双方の政治・社会・経済を核のしがらみにしばりつけるものだ。

 鈴木さんは、このように語って「ポスト・フクシマ」の時代での「開かれた議論」の必要性を訴えた。



 次にヨルダンからの三人のゲストが報告した。

 ジャマール・ガッモーさんは「福島の悲惨な事故がヨルダンでも世界のどこでも起こってはならない」と述べ、次のように語った。

 「ヨルダンは被占領パレスチナ、イラク、シリアに接しており、そうした地域では数々の戦争で禁止された兵器が使われてきた。木も枯れ、植物も育たなくなった。イラクでは劣化ウラン弾が使われた」。「二〇〇三年以前、ヨルダンはイラクから非常に安く石油を輸入してきた。半分は無料、半分は半額だった。したがってエネルギー自立など考えてこなかった。二〇〇三年以後、イラクからの石油は止まりそれへの代替戦略として、国内備蓄への依拠、エジプトからの天然ガス、国内のウラン採掘などが挙げられた。そして国内のウランを使って貧しい国から豊かな国になることができる、との希望が呼び起こされた」。

 「このウラン開発で中国、ベルギー、フランスとの交渉が始まったが、三年後中国とベルギーは撤退した。国内には十分な量のウラン鉱がないことが分かったからだ」。

 「いまどこに原発を作るのかの場所もはっきりしないまま、入札が行われてきたが、ヨルダンには十分な冷却水供給減もないし、人材面でも運営に限界があり、廃棄物処理技術もない。結局、利益だけを求める企業に食い物にされてしまうだけだ」。

 モオタシム・アワームさんは「ヨルダンでは代替エネルギーとしての太陽光の発電の可能性が大きい。しかしその可能性は意図的に無視されてきた」と語り、次のように批判した。

 「核大国クラブは原発ルネッサンスの計画で途上国を説得している。しかしそれは技術を持つ国への依存を深めるだけだ。私は議会の環境委員長として、また医師として放射能の危険性を認識しており、その影響は一時的なものではない。米国、ソ連、日本といった先進国でも事故が起こった。こうした事故がヨルダンで起こればどうなるのか。ヨルダンはトルコから紅海に至る断層の上に位置している。政治情勢も不安定だ。かつてイラクやイランの発電施設が攻撃された。廃棄物処理はだれが責任を持つのか、その費用はだれが負うのか。被害をもたらすエネルギーではなく、農業などへの支援をこそ期待する」。

 弁護士のムナ・マハメラーさんは「ヨルダンは世界で最も水資源の乏しい国の一つであり、電力を化石エネルギーに依存している。その九七%が輸入だ。うち七五%がエジプトからの天然ガスだ」と説明した。

 「パレスチナの正義と平和を求める国連決議は一貫して無視されてきた。近隣にはイスラエルという核保有国、そして核兵器開発を進めているとされるイランがある。事故や戦争の危険性に私たちは取り巻かれている。もし日本がヨルダンに原発を輸出すれば、ヒロシマ・ナガサキの惨劇に同情してきたヨルダン人の日本へのイメージが変わるだろう。ぜひ日本政府に原子力協定を取り下げる運動をしていただきたい」。

 この呼びかけに参加者たちは共感の拍手で応えた。

 原発輸出政策をやめさせ、世界の人びととともに脱原発を実現しよう。

(K)