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共産党広東省委員会の対策チームを迎える烏坎村民たち

民主化を求める中国広東省・烏坎の村ぐるみ闘争は、村外へのデモ行進(=武装警察との衝突が予想される)が呼びかけられていた12月21日に転機を迎えました。同日午後、広東省のナンバー2である中国共産党広東省委員会の朱明国・副書記率いる対策チームが烏坎に入り、村民らの求めに応じて問題を解決するという約束をしたからです。今回の事件で逮捕された村民を順次釈放し、報復的措置はとらないことも約束しました。


烏坎村が所属する汕尾市の鄭雁雄・市党委員会書記も同行しました。彼はこれまでこの運動に批判的であったことから、村民たちから野次が飛ぶ事態になったようです。


村民らの自治組織についても非合法化せずに、制度圏に適合するように調整することになるでしょう。


香港では「左翼21」というグループなどが、21日に香港・九龍の繁華街で連帯のための宣伝・署名活動を行いました。


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香港「左翼21」メンバーらの街頭署名

烏坎村の村民代表たちは、これをうけて闘争をひとまず収拾させる方向で動き始めました。烏坎村の村ぐるみ闘争は、ひとつの勝利を勝ち取ったといえるでしょう。これによって烏坎村の闘争は収束していくことになるかもしれませんが、同じような状況は中国各地、とりわけ資本主義の先進的地域である広東省全土で発生しているようです。


この事態を受けて、共産党の機関紙「人民日報」はウェブページのヘッドラインで「『烏坎の転機』はわれわれに何を示しているのか」という論評を掲載しました。論評は、地元当局に初動のミスがあったことから対立が激化した、村民の要求は正当である、利害関係が多様化する中での衝突をどのように緩和するかが党の役割である、などとかかれています。


中国共産党がこの事件から何を教訓として導き出しているのかについては興味深いところでありますが、以下の箇所について関心を持ちました。


以下、抄訳を紹介します。


+ + + + + + +


人民時評:「烏坎の転機」はわれわれに何を示しているのか(張鉄)
原文 http://opinion.people.com.cn/GB/16677909.html


(略)


今日の中国は、まさに社会の転換期にある。経済社会が不断に前進する中で、一部の矛盾が蓄積することは避けられず、利益主体が多元化し、利益要求が多様化し、利益衝突が顕在化する。広東は改革開放政策の先行地域であり、経済発展も早く、開放の度合いも高く、社会の転換が速く、流動人口も多く、治安管理の圧力も大きく、社会矛盾は早くから多発し、顕在化した問題は典型的事例であり、また警鐘的性質をもつものであった。


烏坎事件の直接的原因となった土地問題は、全国の他の地方でも見られるものであり、これらの問題は個別の利益と公共の利益、短期利益と長期利益が織りなすものであり、「偶発性」の背後に「必然性」の動因が存在する。


利益の衝突は恐れるべきものではない。このような衝突があって初めて、いっそう良く利益は均衡し、関係は協調するのであり、社会全体を動的安定性のなかに位置づけさせることができる。


(以下、略)


+ + + + + + +


以上、抄訳。


人民時評が自覚しているのかどうか分かりませんが、これは資本主義から社会主義への過渡期社会における資本主義復活の典型事例が語られているように思えてなりません。


「利益主体の多様化」とは、従来は労働者、農民、官僚という「労働者国家」を基礎として存在した利害関係者が、現在では資本家と結託し、みずからも資本家と化した官僚たち、そしてそこにつながる内外の資本主義勢力である「グローバル資本主義」という新たな利益主体がとっくに現れているということだと思います。


「利益衝突」とは、つまり労働者国家における農民らの土地に対する権利(集団的所有)に対するグローバル資本主義による土地収奪(本源的蓄積)であったり、工業地帯においては労働者と国内外のブルジョアジーとの衝突であったりする、ということです。


事実、11月18日の烏坎村民大会で発言した村民代表の一人はこのように訴えています。


「さまざまな証拠や明らかになった事態からみて、 
 烏坎の中国共産党支部は、すでに党支部ではありません!
 烏坎の村民委員会は、すでに村民委員会ではありません!
 かれらはすでに別な会社の副董事長〔取締役会の副会長〕、
 董事〔取締役〕、総経理〔社長〕になっています!
 烏坎人民の血肉をむさぼり、あれこれとでたらめばかり語り、
 上の人間も下の人間もだましてきました。
 組織的で、計画的で、実行のともなった非合法な
 闇組織だったのです!
 かれらは烏坎の資源を利用し、権力のある庇護者を買収し、
 不法に土地を売買し、多額の資金を動かし、
 道路を整備すると言ってきました。
 なにが先進的な党支部でしょうか!
 なにが強固な村民委員会でしょうか!
 すべてでたらめだったのです!」


この演説は、地方官僚たちが資本主義企業の経営者となって村の財産である土地を収奪する構造を赤裸々に告発しています。


資本主義化による矛盾の衝突が激化する中、硬軟織り交ぜた対策を通じて矛盾を緩和することが中国共産党の役割である、と先に紹介した人民時評は語っているのですが、資本主義との闘争については一言も触れてはいません。それはすでに現実のものであり、容認されるべきものとして党の機関紙が論じています。


資本主義的に多様化した利害関係にある7000万人の党員の総意である中国共産党にとって、資本主義との闘争は不可能だとおもいます。